クレストが兎と出会うのはまちがっているだろうか 作:立花・無道
実習などで時間が取れず執筆を中断していました。
今回は説明会のようなものですので、物足りないという方がおられるかもしれません。
次回は戦闘と組み込むつもりで構成を考えています。
これからも感想などいただければ幸いです。
「つまり貴方は、この鎧をクレストと言う貴方の師から受け取ったということで良いのかしら?」
「ああ、もっとも先生から一方的に譲り受けたといった感覚だが...」
僕は現在、数日前にダンジョンで追いかけられた人物...
椿・コルブランドが団長を務める『ヘファイストス・ファミリア』にて、主神である女神ヘファイストスと言葉を交わしていた。
椿がしつこく黄金聖衣を見せてほしいとお願いしてくるため、口外しないという約束の元...椿と彼女が黄金聖衣の話をした、主神ヘファイストスだけに見せるということで納得してもらったのだ。
「単刀直入に言うけれど、これは下界の
「神具とは何だ?主神様よ?」
「そうね、簡単に言うと神が全力で創った武具かしらね...ただ、これは神具にしては脆い方ね。」
「どういう意味か?」と、彼女の言葉を理解できず、僕と椿は首を傾げる。
「神具というのは神が自身、もしくは他の神に使わせることを目的に作られるの。だけど、これは全力の神が使うにしては心もとない...
「神が...と言うと主神様が創ったという訳ではないのだな。」
「ええ...下界に降りてからならともかく、天界でわざわざ神具を創るなんてやってるのは、戦争をしようとしてる神ぐらいだもの。」
「物騒な話だな...」
ヘファイストスは僕の言葉に苦笑とともに首肯を示す。
黄金聖衣に興味深々だった椿は、主神の言葉でさらに好奇心を持ったようで、黄金聖衣を持ち上げて内側を観察していた。
「それとこの黄金聖衣の名前だけれど...『
「ああ...先生はそう呼んでいた。」
「水瓶座か、すると他の十二星座の黄金聖衣が存在していてもおかしくはないな。」
椿の言葉に僕は、「確かに...」と思った。
この黄金聖衣を受け取ってから特に考えなかったが...
先生のように黄金聖衣を受け継ぎ、弟子に託してきた誰かがいてもおかしくはない。
さらに、これ程の力を宿す神具。逆に狙う者たちがいても不思議ではない。
「まぁ、一旦黄金聖衣の話はおしまいにしましょう。正直、私にも詳しいことはわからないから、判断のしようがないわ...」
「むぅ...仕方なしか...」
ヘファイストスの言葉に椿はわずかに唸る。
黄金聖衣のことを、さらに詳しく知りたかったのだろう。
僕としても、現在は先生の形見に等しい聖衣のことは詳しく知りたいが、鍜冶神であるヘファイストスが知らない武具のことを知る神など、オラリオ創成神『ウラノス』、時と空間の概念神『クロノス』の二神くらいのものらしい。
その二神と会うには条件が厳しく、神であってもなかなか会う機会は訪れないと有名だ。ウラノスはオラリオにいるが、クロノスに至っては
時を超える力を持つと言われる神...そんな概念そのものである神が姿を隠す理由自体あるのだろうか?
人間嫌いと言われてしまえば、そこまでだが...
僕がそんなことを考えていると椿が不意にこちらに視線を向けた。
「ならば、とりあえずだ!手前と一緒にダンジョンに行かないか?ベル..」
「...何?」
そして、好戦的な笑顔でそう言い放った。
ダンジョン18階層 通称〈
そこに、僕と椿はいた。
「ふむ、ここで休むのも随分と久しぶりだな...」
「すまないが椿、そろそろ目的を聞かせてくれないか?」
こちらを一瞥した彼女は、唇に手を当て考える仕草をするとこちらに向き直る。
その顔は得意げで、いかにも楽しいことを考えているといった顔だった。
「単純に素材集めだ。この籠を見ればわかるだろう?」
「そうだな。だが、なぜ私が同行する必要があるのか、それがわからんのだが?」
そう言うと彼女はため息をついて「これだから堅物は...」と言葉を吐き出す。だんだんと遠慮がなくなってきているのは気のせいではないようだ。
「手前はLv.5の上級冒険者だ。」
「...知っているが、どうしたんだ?」
「はぁ、だからお前はダメなのだベル...良いか?上級冒険者はLv.ひとつで実力に大きな違いがでる。それが常識となっている。ところがだ、お前は恩恵なしで手前と同等以上の強さを持っている。これは本来は特殊な事なのだぞ?」
「そう言われてもな。悪いが正直、実感が沸かん。」
椿の言葉に、思ったことをそのまま口にしたが彼女は納得とは真逆の表情でこちらを見ている。
ジーという音でも出てきそうな視線に、気まずくなった僕は、彼女の顔とは別の方向に視線を向けた。
「ハァ...どうやらお前の師は、俗世の情報には疎い人物だったらしいな。」
「...クレスト先生には文字や数字、星読みを教わった。冒険者に興味がなかっただけだろう。」
少しだけ、彼女の物言いにムッとした僕は、考えるよりも先に反論を口にしていた。
自身の未熟は否定する気はないが、それによって先生が安くみられるのは我慢できない。
すると彼女は、少しだけ目を開いて驚いた表情を浮かべる。
「どうかしたか?」
「いや、見た目のわりに大人びていると思ったが、そういうところは子どもっぽいな...」
そういう彼女は薄い笑みを浮かべて楽しそうにしている。つかみどころのない彼女に、わずかに困惑する。
始めたあった時は荒々しい印象が強かったが、今の椿は猫のような身軽さを雰囲気として纏っていた。
「そういえば、お前は歳はいくつなのだ?」
「今年で15になる...」
「ふむ、思っていたより若いな。ちなみに手前はお前よりも年上だ。」
「見ればわかる..がっ!」
失礼なことを言ったと思ったのは、無言で高速の突きを腹に受けた瞬間だった。
クレスト先生の攻撃を受けなれていた僕だったが、こんな時に初めて女性の底力と言うべきものを実感することになるとは思いもしなかった。
女性を怒らせると怖いというのは、死んだ祖父も常々口にしていたことだ。忘れないようにしよう...と改めて僕はその教えを魂に刻み込んだ。
「手前が見た目通りの歳で悪かったな...」
「そこまでは..言っていない..」
思いのほか鋭い一撃に、腹をさする。
これが彼女の言う上級冒険者、本来の力の一端ということなのだろう。油断していたとはいえ、一撃をもろに受けてしまっては、彼女の強さを認めるしかない。
全力で闘えば負けはないだろうが、気は抜けない戦いになるだろうという予感さえする。
「まぁ、手前に対しての無礼は置いておいて。ここに来たのは単純に預かってもらった素材を引き取りにだ。」
「引き取りと言うと、まるでこの階層に倉庫でもあるといった口ぶりだが...まさか、リヴィラにあるのか?」
「知っているなら話が早いな、先日下層にて素材を集めたのだが、少しばかり多くてな...1人では持ち帰るのが面倒だったのだ。」
彼女はそういったが、ならば今持ってきた籠は...と思いなおした。
椿の方を見ると、その足は明らかに下層へ続く階段に向いていた。
「まて!荷物を引き取りに来たのだろう!」
「ああ、だが気が変わった!下層で素材を集めてからここに戻るぞ、ベル!」
「...一応聞いておくが、ここに預けてある荷は、誰が持つんだ?」
「ハハハ...頼んだぞ!」
「初めから、素材を集めるつもりだったな...まったく..」
僕は椿に聞こえない程度に愚痴を言いつつ、先を行く彼女に続いた...
やっぱりかと、予想通りの返答に肩をわずかに落としながら。
この後に訪れる闘いの気配に気づかずに。
『裏話』
「おい!聞いたか、滝が凍り付いたらしいぜ!」
「そんなわけあるか!どうせホラに決まってんだろ!」
「騒がしいね...どうかしたのかな?」
「いつものことでしょ...それより団長~~~♥♥今日はどこまで行きます?」
「そうだね...久しぶりにクエストでもどうかな?『下層に響く歌声の調査』だってさ?」
「ねぇ...これ?」
「どうかしたか?アイズ...ん?これは...」
「どうかしたんですか?リヴェリア様...」
「レフィーヤ...これを見てみろ。」
「えっ?は、はい!...これって『ギルド依頼 調査任務 凍り付いた
「何々?付近に滝を凍り付かせるほどの力を持ったモンスター出現の可能性あり...上級冒険者数名のパーティーでの受注が望ましい...か。」
「面白そう!!」
「馬鹿!!こんな報酬が低くて、危険度ばっか高いクエストのどこがおもしろいのよ...」
「え~だって、あの滝が凍るなんて今まで聞いたことないじゃん...」
「気に..なるかも...」
「アイズ...お前はそのモンスターと戦いたいだけだろう。」
「あ、危ないですよ!アイズさん!」
ベルと椿がおいかっけこをしてから数日...
1人の少年が気まぐれに行ったことが、地上では大騒ぎになっていた。