クレストが兎と出会うのはまちがっているだろうか 作:立花・無道
待っていてくださった方々と初めて読んでくださる方々が楽しんでいただければ幸いです。
「ベル...お前は誰か殺さねば事を成せぬ時、一体どうする?」
数年に及ぶ旅の中で、たまにある1つのやり取り。
師匠の問いに、僕は自分の身体が固まったのがわかった。そして理解する。師匠は人を殺したことがあるのだと、そして知っているのだ。誰かを殺めなければ誰も救えないことがあることを。
「師匠、僕は...」
覚悟もなく、何かを口にすることが憚られ、そこで僕の言葉は止まる。
誰かを殺すか殺さないか。きっと今、殺さないと言うのは容易いことだ。それが一番、人間として楽なことだから。誰かを殺すかなど思い浮かべず、今を精一杯生きる事。それは素晴らしいことだと思う反面、心のどこかで...僕はその考え方で守れなかった
「ベル...お前は戦う為の力を身につけた。そして、それは誰かの命を奪う力でもあることをゆめ忘れるな。」
「はい......お言葉、胸に。いえ、小宇宙に刻んでおきます。」
誰かを
間違いでもなく、正しくもない覚悟だと思う。
それでも、先生が消えてすぐに選択の日は訪れた。
僕は人を殺す事で人を救ったその日。
すべてを救えない、自分の無力を思い知った...
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ダンジョン地下50階層
「事前に伝えた通り51階層以下に挑むのは特定のメンバーのみだ。」
「待てよフィン...納得いかねぇぞ!」
団長であるフィンの言葉にかみついたのは、
「どうかしたのかい。ベート?」
「どうしたじゃねぇ!そこの白髪野郎が50階層よりも下についてくるってのはどういうことだ!」
ベートが指をさした先は、椿の隣に座っているベルだった。
指を指されたベルは、やはりこうなったか。と予想していた通りの反応に溜め息を我慢していた。
ベルはこれまでの戦闘にほとんど参加していない。
単純にロキ・ファミリアの2軍以下メンバーが優秀であったためなのだが、そんな人物が深層のさらに奥に同行するという話に、ヘファイストス・ファミリアとの協力には納得していたロキ・ファミリアの他のメンバーも口には出さないながらも、ベートと同じような反応を見せている。
「ベート。僕は確か、ヘファイストス・ファミリアとは別に協力してもらう人物がいると言っておいたはずだよ。」
「実力も素性もわからねぇやつを、同行させるなんて話は聞いてねぇぞ!!」
にらみ合う2人に周りは無言のまま成り行きを見守っている。
フィンを愛していると公言しているティオネですら、困惑するようにフィンを見る。
当然ながら、ダンジョンを知る全員が、足手まといになりうるかもしれないベルを最前線に連れて行くことを訝しんでいた。
「そこまでにしておけ。」
不穏な空気が生まれ始める中で、当事者であるベルが話に割って入る。視線がベルに集まる。
「あぁ?なんだてめぇ、だいたい何者だよ雑魚が。」
「
ベルの言葉に、全員の目が見開かれ表情が驚きに染まる。
「君も君で何を言い出すんだい?」
「当然だろう。信頼も信用も得ていない状態で死地に同行しても、不利な要因にしかなりえない。迷いや雑念があれば死ね。この先はそういう場所なのだろう?」
にらみ合いが、ベートとフィンからフィンと見知らぬ男に代わり、蚊帳の外へと追い出されたベートは怒りに染まった顔で歯ぎしりしている。そんなベートから周りの者が離れ始めたとき、フィンがため息を吐く。
「余計な混乱を避けるために言わないで置いたが仕方ない。ベート...彼は君も戦った赤髪の調教師に
フィンの言葉にベートは明らかに顔色を変える。
「ハっ!手傷ってんならアイズも負わせてるだろーが!」
「違います...ベートさん」
「なんだよアイズ?テメエもあと一歩のとこまで追い詰めただろーが。」
「その人は赤髪の人に何もさせませんでした。」
アイズの発言を聞いて、ベートは疑わし気にベルへと視線を戻す。値踏みするようなその視線をベルは、飄々とした態度で受け流す。隣にいる椿はその態度を見て、からかうように「爺臭い...」とこぼしたが、ベルはそれを無言で無視した。
「けッ!勝手にしろ!」
吐き捨てるように、そう言って視線をベルから外したベートを見て、フィンは咳払いをして視線を集め直した。
「異論があるものは、今のうちに名乗りでろ。彼を参加させるのはパーティの生存率を上げるためだ。それ以上でも以下でもない。僕は彼を信頼できる人物だと思っている。」
フィンの言葉に顔色を変え全員が静まりかえる。そこにあるのは、団長に対しての敬意と信頼。
しばらくしても意見が出ないことで、その沈黙を納得と認識したフィンは、解散と就寝を命じた。
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「ねぇラウル...」
「んっ?どうかしたんすか、アキ?」
テント内での準備の途中、不意に同僚の女性猫人、アナキティ・オータムに話しかけられたラウルは、隣で作業を継続しながら返事をする。
「あの冒険者なんだけど、見たことある?」
「自分はないっすね。だけど、団長やアイズさんのお墨付きなんすから心配しなくてもいいんじゃないッスか?」
「そうなんだけど、やっぱり自分の行ったことない場所に、無名の冒険者が足を踏み入れるっていうのはなんか気になるのよ。」
アキの言葉を聞いて、ラウルは少し驚いてニヤリとした笑みを浮かべる。
「アキ…そういうのを嫉妬って…ごっふ!!」
「調子に乗らない…ラウルの癖に。」
アキの肘打ちがラウルの脇腹を捉える。アキはそのままラウルを見もせずに、作業を続ける。
「り...理不尽っスよ、アキ...」
「下らないこと言ってるからよ。」
脇腹をさするラウルの言葉をアキは、ぴしゃりと切り捨てる。彼らはロキ・ファミリアの古参メンバーであり、フィン・ディムナという人物が不要な行動をしないと知っていた。
「ですが、やはり素性については調べたほうがよろしいのではないでしょうか?」
「アリシアもやっぱり気になるの?」
アキの言葉に首肯を返したのは、エルフのアリシア・フォレストライト。ロキ・ファミリアの中核を担うメンバーの1人である。エルフらしく美しく整った顔立ちだが、この時ばかりはわずかであるが眉間にしわが寄っていた。
「当然です。あの方は以前、酒場でリヴェリア様と対話されていた人物。オラリオの外から来たそうですが、そんな方がどうやって団長やリヴェリア様を納得させるだけの強さを手に入れたのでしょう?」
アリシアの言葉にその場にいた全員がわずかに唸る。オラリオの冒険者の強さは外の恩恵を持った人間の強さとは一線を画している。理由としては、外のモンスターとダンジョンのモンスターの強さの違いがあげられる。稀に外でもレベル2や3の力を持つもの同士で殺し合い、レベルを向上させるものがいるが、ベルがその類とはラウルやアキたちはどうしても思えなかった。
「こんな大人数で考え込んで、どうしたのだお前たちは?」
全員の思考を打ち切らせたのは、物資保管用のテント内に顔を出したファミリアの幹部 リヴェリア・リヨス・アールヴ。その人だった。
数人がリヴェリアの質問に対して、言葉に詰まらせるなかで少ししてアリシアが口を開く。
「リヴェリア様、実は...」
「なるほど...確かにお前たちの心配は尤もだな。奴がもしも
「そ、そこまでは流石に...」
「私が聞いた話では、彼以上の力を持った師がいたらしい。」
「その師匠が修行を付けたということですか?」
「おそらくな...下界は広くレベルという物差しでは測れない力も少なからずある。ということだろう。」
全員が驚く中で、最も頭のキレるアキだけはリヴェリアの言葉にある違和感を聞き取った。
「ねぇリヴェリア。レベルじゃ測れない力って、彼ってレベルはいくつなのよ?」
「んっ?そういえば言っていなかったな...」
珍しくバツが悪そうにするリヴェリア周りは首を傾げる。リヴェリアとしては伝えておくべきタイミングを誤ったという思いで、額に手を当て彼に関する恩恵の話をすべきか迷っていたが、しばらくして「突入前に伝わるよりマシか...」と思い直した。
「彼は恩恵を受けていない。」
「「「はぁ!?!?」」」
「驚きは理解できるが落ち着けお前達。」
「ですが、リヴェリア様!?そんなことがあり得るのですか?恩恵を持たずにあの外見で、オラリオの頂点に届くほどの強さを?」
「ロキや神ヘファイストスに確認を取ったが、それが事実であり真実だ。怪人が人外の力を受け入れた怪物、我らが神からの可能性を掴んだ者達だとすれば、彼は人の身で可能性を乗り越えた者...なのかもしれんな...」
リヴェリアの言葉に対して、皆が息を呑みながらも喧騒はしばらく収まることがないまま夜は更けていった。
ダンジョンの深層への階段、そんな喧噪すら飲み込む闇が彼らを見つめながら...
最近はシンフォギアとダンまちのクロスとか書ければ面白いなーと思っています。
響がロキ・ファミリア幹部の3巨頭と同期で、オラリオの若者を導く、もちろん歌と拳で。二つ名は『拳姫』か『鋼拳』。アストレア・ファミリアは救っていて、闇派閥の依頼で口封じの相打ちを狙われたルノアとクロエを救い、女主人へと斡旋。ルノアを弟子に、クロエはまぁ恩は感じてる。ロキ・ファミリア2大オカンの1人として奮闘しているが、婚期が遅れ過ぎた(40代半ば)ことを少しだけ気にしていて、年齢のことを言われると「こんなおばさんじゃ頼りないよね...」と落ち込む。(基本的にベートが言ってくる。たまにロキ。)シャクティとは拳闘を高め合う友人。
誰かクロスオーバー書いてくれませんかね?