ゴジラ ~我が名は怪獣王~   作:t-eureca

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王の帰還 4

「はい、はい、わかりました」

 

「どうしました?」

 

「お二人ともすみません、予定を変更して行き先を議事堂から総理官邸に変更します」

 

「何かあったのですか?」

 

「本来は一度議事堂に向かう予定でしたが上が少しでも速く情報が知りたいと言っておられるので」

 

「は、はぁ…」

 

(尾形、こりゃあ予想以上にとんでもないことになっているぞ…)

 

(仕方あるまい、ゴジラだけでも大騒ぎなのに他の怪獣まで現れたんだそりゃこうなるさ)

 

尾頭達が乗った車は総理官邸に到着し、急いで車を降りる。

 

「着きました、今から案内します」

 

「ありがとうございます」

 

「では着いてきてください」

 

尾頭に案内され治仁と牧は総理官邸にも関わらず急ぎ足で進む。

進んだ先には部屋の扉の前に立っていた。

 

「ここでお待ちを…」

 

尾頭は中に入り、少し経ってまた扉が開く。

 

「お待たせしましたどうぞ」

 

「失礼します」

 

2人が中に入ると部屋にはの人間が居た。その中でのリーダーらしき男性がこちらに歩いてくる。

 

「よくお越し下さいました、この部署……巨大生物特別対策課通称《巨特対》の責任者片桐と申します」

 

「どうも、大学で教授をやっている尾形治仁と申します」

 

「同じく牧幸太郎と申します」

 

「よろしくお願いします。早速で悪いのですが、例の巨大生物の細胞は?」

 

「はい、こちらの箱に」

 

「これですか…」

 

片桐の要請に治仁はすぐに応じ、牧は細胞を保管してある金属製の特別なケースを取り出しテーブルに乗せ開ける準備をする。

 

「冷凍させてあるので動く心配はないと思いますが気を付けてください、開けた瞬間出て来る可能性もあるので」

 

「動き出す?それは完全に死んでいないということですか?」

 

「はい、尾頭さんから聞いたかもしれませんが、あのヒトデ擬きそのものが小さな微生物の集合体なんです、しかも細胞が一つでも生存していればまた大量発生してしまいまた一つの形になってしまうんです」

 

「それでは開けます」

 

開ける前に治仁が言った注意に片桐が疑問を抱き、質問し治仁はその質問に答えた後に牧はケースを開ける。

ケースを開けると周りに居た人物は大きくどよめいた。

 

「尾形教授、これが?」

 

「そうです、死んだ細胞から引きはがして生きている少量の細胞のみを集めると自然と融合し、大人の手と同じくらいの大きさの蠍の様な姿になったのです」

 

「見たときは驚きました。大さじ位の量であそこまで大きくなるなんて」

 

「あの、少しよろしいですか?」

 

「はい、どうぞ……あ、申し訳ありません、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

治仁と牧が説明しているときに壮年の男性が話しかけ、治仁が応対する。

 

「あ、申し遅れました。私はここで勤めている錦山と申します。ここの生物学のアドバイザーをやっております」

 

「どうも錦山さん、それで質問はなんでしょうか?」

 

「はい、その生命体がこの群生体になるのにどの位の時間を要したのでしょうか?」

 

「はい、資料で取っていた映像を確認すると2時間弱でこの群生体になっていました」

 

「そんな短時間で……」

 

「ですが生物と言うことは熱に弱いのでは?」

 

「そうです、この生物は増殖力は高いですが熱には弱く、死滅していた細胞もすべて熱により焼き殺されていました」

 

「もしあの巨大生物とこれが同じ細胞で生まれた生物であればあの巨大生物も殺す事は可能などでしょうか?」

 

「可能だとは思いますがあの大きさのものですとかなりの熱量が必要になります」

 

治仁が錦山に説明しているときに徳井が片桐に何かを耳打ちする。

 

「片桐さん」

 

「なんだ?」

 

(熱に弱いとなるとあの巨大生物にメーサー兵器を使うのはどうでしょうか?)

 

(メーサー兵器か?確かに熱に弱いなら聞くだろうだが空中となるとメーサー攻撃機しか使えないぞ?)

 

(はい、問題はそこですが群体とは言え何らかの習性があるのではないかと)

 

「(そうだな)尾形さん、その生物に関して他に何かありますか?」

 

片桐はシノムラに関する情報を少しでも欲しいと考え治仁にその他の事を質問をする。

 

「はい、雑食性らしく肉は勿論、野菜や魚もこの姿で捕食していました。そうなると群体になれば一つ生物として活動してるのではないかと」

 

「後は……そうですね、微弱ですが放射線反応も感知しました」

 

「放射線……ですか?」

 

「はい、これはまだ想像の範囲ですがもしかすると通常の食事の他にも放射線を吸収しているのではないでしょうか?」

 

「ならゴジラに向かっていったのは偶然では無い可能性もあると?」

 

「はい、無関係では無いと言い切れません、自分より小さいならともかく自身と同等の大きさを持つゴジラになぜ向かって行ったのかが不思議なのです、やられる可能性があるのに…」

 

「もしゴジラと同じを放射能を原動力としているなら、ゴジラのように巨大な放射能の塊はあの巨大生物にとって極上の餌である可能性も否定できません」

 

「ならばもし二匹とも本国に来たのならどちらも原発を襲撃する可能性もあると?」

 

「そうです、最悪同時に襲撃してくる可能性も…」

 

治仁が片桐に説明している途中に扉からノックする音が聞こえ、片桐が入るように促すと勢いよく扉が開かれる。

 

「大変です片桐さん!」

 

「ああ、奥野か。どうした?」

 

息を切らせながら入って来た奥野と呼ばれた男は顔を真っ青にしながら片桐に報告する。

 

「ゴジラが…ゴジラが蒲田に!」

 

「何!?」

 

 

 

 

グワアァァァン……。

 

ゴジラはすさまじい音量の咆哮を上げ蒲田に上陸しようと移動する。そして避難しようと移動している人々はゴジラの姿を見てその恐怖から恐慌状態に入ってしまった。

 

「早く逃げろ!」

 

「助けてくれぇ!」

 

「押さないで、押さないでください!」

 

「ママー、ママぁー!!」

 

家族とはぐれたもの、恐怖でパニックになるもの、この状況にも関わらず立ち止まってしまうもの等様々な反応をしていた。

 

ズウゥゥン……。ズウゥゥン……。

 

そしてゴジラはゆっくりと、しかし力強い音を踏み鳴らしながら上陸し、町に入る。それを見た人々は更にパニックに陥る。

 

「ご、ゴジラだ!ゴジラが来る!」

 

「うわあぁぁぁあ!」

 

人々が急いで避難している中陸自の戦闘ヘリ「アパッチ」5機が到着し、ゴジラの正面に浮遊する。

 

『糞!まだ市民の非難が完了していないってのに!』

 

『責めて避難までの時間を少しでも稼ぐぞ』

 

『全機目標が射程範囲内に入ったらヘルファイアをゴジラの頭部に一斉発射だ!!』

 

『これだけの数では勝ち目ありませんよ!』

 

『それでもやるんだよ!』

 

グワアァァァン……。

 

『ゴジラ目視で確認!射程範囲内に入ります!』

 

『発射!!』

 

5機のアパッチはそれぞれヘルファイア対戦車ミサイルをゴジラに向けて発射する。

発射されたミサイルは全てゴジラの頭部に命中し爆炎と煙が頭部のあたりに立ち込める。

 

グワアァァァン……。

 

『目標効果なし!』

 

『各機散開!30mmで牽制してまた頭部にロケット弾で攻撃!せめて避難民から奴を遠ざけるんだ!』

 

『了解!』

 

ヘリ部隊の隊長の指示で他のアパッチは散開し、ゴジラの頭を囲うように並ぶ。そして固定武装の30mm機関銃を発射する。

弾丸は全てゴジラに命中するが悉くはね返されてしまう。

 

グゥゥゥ…………。

 

『ロケット弾発射!』

 

『発射!』

 

隊長の指示で他のアパッチも次々とロケット弾を発射する。

ロケット弾は次々命中し再び煙が上がる。

しかし煙の中から青白く何かが光りそれを見た隊長はそれがなんの前触れかに気づいた。

 

『逃げろ!出来るだけ奴の射程外に……』

 

『隊長!』

 

しかし隊長が言い終えるうちに、隊長が搭乗していたヘリに熱戦が直撃し爆発四散する。

隊長機が撃墜されたのを見て他のアパッチも回避しようとするがゴジラは熱戦を放射したまま首を横に回し残ったアパッチを熱戦で薙ぎ払った。

それでもまだ足りないのかそのまま地面に向けて放射し、次々と爆発と火の手が上がる。

 

グワアァァァン……!!?

 

再び咆哮を上げ、ゴジラは方角を市街地に向け突き進んで行く。

一方その頃上空にシノムラが飛行し、ゴジラがいる蒲田に向けて飛行していく。

 

ギュウゥゥゥアアア……。

 

 

 

 

 

 

「すぐにフルメタルミサイルとメーサー兵器を防衛線に組み込むように伝えろ!」

 

「はい!」

 

ゴジラ上陸を聞いた片桐はすぐに自身の部署で開発した物を防衛線に組み込むように支持する。

それと同時に別の官僚が慌ただしく入室した。

 

「片桐さん!先程あの巨大飛行生物が!?」

 

「!?」

 

片桐への報告と同時に現総理大臣である大河内は声を荒らげながら対策を講じる。

しかし内心では自衛隊だけでは対処できないのでは?とも考えていた。

 

「すぐに奴の進む方向に防衛線を張れ!通常兵器の他に片桐君の部署が開発した兵器群も動員しろ!」

 

「例の巨大飛行生物を日本海付近の領空に出現しました!」

 

「なんだと!」

 

「すぐに空自に連絡を取れ!見つけ次第攻撃の許可を与える」

 

シノムラが日本領空に出現した事を聞いて大河内は頭を抱える。

ゴジラ一匹でさえ最悪の事態だというのにもう一匹現れたのだから仕方がないだろう。

 

「はい!」

 

「クソ!ゴジラだけでも手一杯だってのに…!」

 

「総理!ここは在日米軍の応援も呼びかけた方が……」

 

「そうだな……」

 

「総理!米国から緊急に特使がこちらに来る通達が来ました!」

 

「早いな…」

 

 

 

 

自衛隊の空自の基地で公衆電話で実家の母親に電話を掛けている。

彼女の名前は「尾形美咲」尾形家の長女であり、治仁の娘である。

彼女は家族の安否を心配して実家に電話を掛けていた。

 

「うん、うん、わかった。母さんも気を付けて」

 

「おい美咲!招集がかかってるんだ早くいくぞ!」

 

彼女が電話で話している途中、一人の男性士官が通話の途中で話しかけてきたので彼女は公衆電話を切る。

彼は「家城義人」美咲の同じ空自の同僚であり、戦闘機パイロットである。

 

「わかってるわよ義人、じゃあまた後で」

 

「行くぞ!」

 

「尾形三尉、家城三尉遅いぞ!」

 

「「申し訳ありません!」」

 

「早く席に着け!」

 

遅れて来た美咲と義人を叱咤する上官に謝罪し二人は席に着いた。

上官は全員揃った事を確認し次の説明に入る。

 

「たった今例の飛行巨大生物を発見したという連絡が入った。我々はこの巨大生物を見つけ次第攻撃するようにとの命令だ」

 

「しかし敵は再生能力が異様に高いらしく生半可な傷では意味がない、よって出来るだけ火力を集中させ、大きなダメージを与えろ」

 

「何か質問は?」

 

誰も手を上げていない事を確認し、上官は指示を出す。

 

「よろしい、諸君の健闘を期待する」

 

「解散!」

 

上官の解散の言葉の後すぐに他の空自のパイロット達はそれぞれの機体に乗り込み、シノムラ迎撃に向けて発進をした。

 

 

 

 

「こちらイーグル1目標発見!」

 

『了解、攻撃を開始せよ』

 

「了解、攻撃を開始する」

 

美咲達のF-15の飛行隊が離陸し、シノムラを発見した空域に向かっている途中にシノムラを発見し、飛行隊の隊長がシノムラの攻撃の指示を出した。

 

「目標を補足、ミサイルの安全装置解除、発射」

 

まず初めに隊長機のF-15が対空ミサイルを発射する。ミサイルは命中するが、あまり効果は見られない、シノムラは攻撃された事により飛行隊を敵と認識し、飛行隊に向かって突っ込んでいく。

 

「命中!しかし効果は認められず!」

 

「イーグル2、目標を補足。発射!」

 

イーグル1に続いて義人の機体も対空ミサイルを発射するがやはり効き目は薄かった。

 

「命中!こちらも効果なし!」

 

「!こっちに来たぞ!」

 

「散開!」

 

シノムラが突っ込んでくるのを確認し、各機体は散開する。

しかし美咲は機体をシノムラの方に向けて加速する。

 

(口に直接叩きこめば…!)

 

「隊長!奴の顔に直接みまいます!」

 

美咲の機体はシノムラの後ろに付こうと機体を加速させる。

 

「イーグル3!?無茶だ!やめろ!」

 

「あの馬鹿!」

 

悪態を突きながら義人は美咲のフォローに向かう。

シノムラは追跡されてるのに気づいたのか上空に向かって上昇する。そして美咲の機体の真上を取り、口を開け美咲の機体を喰らおうと急降下をした。

 

美咲も操縦席からシノムラが上に向かって飛んで行くのを確認し、機体を上に向ける。

そしてこちらに来るシノムラを確認し、その大きな口を標的に目標補足しミサイルのボタンを押す。

 

「……喰らえ!」

 

ミサイルはシノムラの口内に命中し、口の中に爆炎が上がる。

流石にこれは多少効いたのか、一瞬落ちそうになるがすぐに持ち直した。

 

「くそ!これでも駄目か!」

 

予想よりも効果が少なかった事に美咲は愚痴をこぼす。

しかし他の僚機がシノムラの異変に気づく。

 

「なんだ?様子が変だぞ?」

 

「なんか蠢いているようにみえるが…」

 

そのパイロットの言う通りシノムラの身体の表面が少し蠢いていた。

暫く様子を伺うと背中からシノムラ本体の三分の一程の大きさのシノムラが背中から飛び出した。

それに合わせて本体も若干身体が縮んでいた。

 

「ぶ、分離した!?」

 

小型のシノムラは本体を守るかのように飛行隊に襲い掛かる。

身体が小さい分、小回りは良く利いていた。

小型シノムラは義人の機体を追い掛け回す。

 

「くそ、元々の奴より小さいが、小回りはこいつの方が効く!けど…」

 

「こっちのほうがお前らよりも良く動けるんだよ!」

 

義人は機体を旋回させ、それに合わせて上昇してきた小型シノムラの右翼をミサイルで破壊する。

すぐに右翼を再生されるが小型シノムラは少し小さくなる。

 

「小型化した?」

 

「こいつ!止まりやがれってんだよ!」

 

「!イーグル6避けろ!」

 

「え?」

 

同じく小型シノムラを追跡していた僚機が鉤爪状のなった本体のシノムラの尻尾に捕まれそのまま握りつぶされる。

 

「イーグル6がやられた!」

 

「隊長!奴が急降下を始めました!」

 

「海に潜る気か?させるか!」

 

本体のシノムラが海に向かって急降下を開始する。

それを僚機の通信で確認した隊長はそれを阻止しようとするが、小型のシノムラがそうはさせじと邪魔をしに入る。

 

「うわ!こいつ、邪魔する気か!」

 

「イーグル4、イーグル5、俺と一緒に来い、デカいのを止めるぞ!」

 

「「了解!」」

 

「イーグル2、イーグル3、小さいのを抑えてくれ!」

 

「「了解!」」

 

隊長が僚機を連れて本体のシノムラの追跡を始め、美咲達は小型シノムラを排除するために機体を小型シノムラに向ける。小型シノムラも気づいたのか美咲達に突っ込んでくる。

 

「イーグル3!回避して後ろを取った後私は右翼をやるからあんたは左翼をお願い!」

 

「了解、任せろ!」

 

小型シノムラの突進を避けた後イーグル2の美咲とイーグル3の義人が小型シノムラの後ろを追跡する。

両機ともミサイルの目標を小型シノムラに補足しミサイルを発射し両翼とも破壊する。

小型シノムラは墜落しながらもすぐに両翼を再生させ持ち直す。しかしその分更に小型化していた。

 

「やっぱりだ、どういう訳か小型化してる…!」

 

「となったら大きいのはともかく、これぐらいなら充分倒せる!」

 

「ああ!比較的面積の大きい部分を狙え!」

 

そう言って両機は突っ込んでくる小型シノムラの両翼に再びミサイルを発射して破壊する。

またしても両翼を破壊されたシノムラは再生させるが、本能で不利と悟ったのか、逃亡を始めようとする。

しかしそれを許す2機ではなかった。

 

「逃がすか、ここで落とそう!」

 

「ええ…!」

 

そこに隊長機から通信が入った。

 

「こちらイーグル1、聞こえるか?すまん、逃げられてしまった」

 

「こちらイーグル2、イーグル1聞こえますか?小型の奴はあと少しで倒せます。援護を願います!」

 

「イーグル2、こちらも敵を確認した。掩護する、行くぞイーグル4」

 

「了解!」

 

合流した二機も小型シノムラに接近する。

小型シノムラは小回りを活かして逃げようとするが前方に合流した二機が現れ、機関銃を発射し僅かに怯ませる。

その隙をついてミサイルを発射した。

 

キュアアアアアアア!!?

 

ミサイルは小型シノムラの頭部と右翼に命中し吹き飛ばす。

小型シノムラは再生するが、最初のころに比べてその大きさは大人と子供位になっていた。

 

「後少しです!」

 

「これで……!」

 

最後に美咲と義人がミサイルを発射し、命中。今度こそ爆散した。

 

「撃破!」

 

「……だがあのデカいのが残っている、急ぎ報告しよう」

 

「了解です!」

 

 

 

 

美咲達がシノムラを見失った後、総理官邸ではもう一つの騒ぎが起こっていた。

シノムラが日本の領域に現れたと聞いてどう対応するかもめていたのだ。

それは巨特対も変わらない。

 

「徳井、すぐに量産体制に入っているメーサー兵器を全機種投入しろ、俺は今から花山防衛大臣に『X-1』の投入を要請してくる」

 

「え?でもあれって有事の為の…」

 

「そんなのは予算を得るための方便に決まってるだろ、元々は対ゴジラ用だ…」

 

「ですがあれはまだ試作段階……!」

 

「なりふり構っていられん!それに最悪『轟天』の封印を解かねばならなくなるかもしれん……」

 

「片桐さん、それは…!」

 

「片桐さん、米国の特使が今しがた到着しました」

 

「…わかった」

 

一方大河内の執務室にも特使が来たという通達が来ていた。

 

「総理!米国からの特使が到着しました」

 

「わかった、すぐにこちらまでお通ししろ。君、片桐君を呼んできてくれ」

 

「はい」

 

大河内の指示で米国の特使を大河内達が待っている部屋まで案内する。

同じく大河内に呼ばれた片桐は一足先に入っていた。

そして待っていると一人の日系女性が入って来た。

 

「はじめまして総理、上院議員のエイミー・パターソンと申します」

 

「総理の大河内だ、隣に居るのは巨大生物特別対策課の責任者である片桐君だ」

 

「片桐と申しますよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

「ではいきなりだが、今回の訪問の目的は今現れている例の怪獣達の事と考えていいのかね?」

 

「はい、大統領から今回の騒動の片割れである巨大飛行生物…『シノムラ』に関する資料を持ってきました」

 

「シノムラ?あの怪獣はそう呼ばれているのですか?」

 

「随分と和風な名前だな…」

 

「片桐君、彼女を君の部署に案内してくれ、少しでも解決の糸口を見つけたい」

 

「わかりました、パターソン上院議員こちらに」

 

「わかりました」

 

片桐はエイミーを巨特対の会議室にまで連れて行く。

会議室に入ると片桐はエイミーを巨特待のメンバーに紹介した。

 

「こちらは合衆国から来たエイミー・パターソン上院議員、今回彼女が来たのは今回ゴジラの他に出現した飛行巨大生物『シノムラ』の資料を彼女が持参して来たからだ」

 

「シノムラ…」

 

(それが新たに出た怪獣の名前なのか?)

 

「これが大統領が私に持っていくように言われたシノムラの資料よ」

 

片桐の紹介の後にエイミーは持参して来た封筒から資料の束を取り出し、テーブルに置く。

治仁を始めとした巨特対のメンバーは資料に目を通し始め、お互いに考察や意見を交わし始める。

 

「数百万の細胞であの巨体を象っていたのか……」

 

「やはり尾崎教授が言っていたように放射線で代謝をしていたのか」

 

「それなら何故ゴジラに戦いを挑んだのかも説明がつく」

 

すると先程治仁に質問をしていた錦山が治仁の方を向き、意見を聞き始める。

 

「どう思いますか尾崎教授?」

 

「そうですね、先程言ったように放射線を使って代謝を行っているとしたらゴジラに戦いを挑んだのはゴジラを捕食するためだと言う推測をこの資料を読んで確信にすることができました。ですが何故我々よりアメリカがあのシノムラについて詳しく知っているんですか?パターソン上院議員?」

 

尾崎のこの発言に他の人間たちもエイミーに視線を向ける。

エイミーはその視線に臆する事もなくハキハキとした口調で発言した。

 

「わかったわ、シノムラについてはよくは知らないけど何故現れた経緯は聞かされているからそれを話すわ」

 

そして彼女は自分が知っていることを話し始めた。

 

「事の始まりは数年前、本国の海辺に打ち上げられていたシノムラの小さな破片を発見したの」

 

「本国の科学者たちはそれを研究しているうちにシノムラの破片に放射線を餌に吸収して代謝する働きをすることを知ったの」

 

「その報告を知った一部の政府の高官達はシノムラの破片を使って原発の事故対策や核弾頭発射後の後始末としてこれを使おうと主張して来た」

 

「しかし研究もまだまだ不十分という理由で他の高官や大統領が反対した」

 

「特に大統領は人一倍使用することに反対していたわ、他から見たら異常なぐらいに…」

 

エイミーはそこで一息を付け、話を再開させる。

 

「けれど成果が出れば逐一報告すると言う条件付きで研究を続けるのは認められていたわ、けどある問題が起こったの」

 

「問題とは?」

 

「とある場所の原発が事故を起こして周囲一帯を危険区域として封鎖、そこでシノムラの破片を推していた高官達が使用解決策としてシノムラの破片を使用する事を進言したの」

 

「もちろん周囲は最初は反対していたのだけれど世論や事態の一刻の解決をしたいと次第に焦っていってとうとう大統領も折れて極秘裏にシノムラの破片のごく一部を使用…」

 

「短時間で放射能は吸収されていき、ついに完全に消すことができその成果に周囲も湧いのだけれどそれまでだった」

 

「全ての放射能を吸収したシノムラは急激に成長、1cmにも満たなかった欠片が80mに匹敵する巨体にまでなった」

 

「この事態に政府はすぐに軍を派遣、多大な犠牲とその区域を犠牲に大量の爆撃とバンカーバスターによってこれを殲滅したわ」

 

「この事態は表向きでは事故として片づけられ、シノムラの破片の研究を一切禁止しそれを推していた高官達も処罰され、破片は極秘の保管場所へ封印された。しかし…」

 

「ある日シノムラの破片を保管していた場所が何故か爆発、シノムラの破片やそれに関する研究資料も全て消えていたらしいの」

 

エイミーの言葉に牧は疑問をぶつける。

 

「消えていたという事は人為的な出来事と言う事ですか?」

 

「ええ、極秘に研究していたモノを保管していた場所を襲撃したという事は本国の誰かが手引きしたんじゃないかって事でCIAが非公式に捜査を始めたんだけど、結局発見されなかった」

 

そこで言葉を切り「私の権限で知っているのはここまで」と言った。

そこに片桐がエイミーに質問をする。

 

「つまりあのシノムラは何者かの意図的な目的で現れたと?」

 

片桐の質問に肩を下ろし、質問に答える。

 

「ええ、まだ完全に決まったわけではないけど本国ではこれを極めて残虐なテロ行為として認定しているわ、肝心な誰がやったのかはまだわかっていないけれど」

 

(しかし何故このような行為を…人為的な行いだとしたら目的はなんだ?)

 

片桐が一人考え込んでいると徳井が片桐の元に歩み寄る。

 

「片桐さん、花山防衛大臣がお呼びです」

 

「わかった、済まないが一旦席を外す」

 

 

 

 

グワアァァァン……。

 

ヘリ部隊を撃破した後もその勢いを落とさず前進するゴジラ。

その目は何も見ず、只前のみを見据えている。

その目の真意は誰もわからない。

そして再び天に咆哮を上げた。

 

グワアァァァン…………。

 

ギュアアアアアア……。

 

美咲達との交戦により小型のシノムラを生み出し、先の交戦によって元のサイズから半分以下にまで縮んだシノムラは海底に潜り巨大な深海魚の様な形態になり、魚やクジラ等を捕食しながら失った自身の欠片の分を増殖させている。

暫くそれの繰り返しをしていると元の大きさの3分の2までの大きさにまでなった後水面に上がり、すぐにいつもの飛行形態になり飛び立った。

 

ギュアアアアアア……。


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