ヒロインちゃんまだ正式には決まっていないので、とりあえず意見を下さい
始動
『うぃー今日はここまでー!! 閲覧あざしたー!!』
机の上に載っているパソコン画面にそう向かって話すと、画面上にたくさんの白文字が右から左へ流れてきた。
[お疲れ様ー!]
[お疲れ様でした!]
[1時間おつ!]
一通りコメントを見てから、青年は満足したように頷き生放送を終了させた。
「ふいー、疲れたぁー」
パソコンをシャットダウンさせ、電源をしっかりと切ると、大きな欠伸をしつつ自分の椅子の背もたれに寄りかかった。
大きく天井に腕を上げて、体の疲れを解す。そして一気に脱力し、腕をぷらーんと重力に従って下に降ろした。
「今日は何曲歌った……?」
気だるそうに椅子から立ち上がって、自分のベットに向かって飛び込み、柔らかそうな枕に顔を埋めながら、青年は声を部屋に響かせた。
青年の声は低く、誰もが聞き惚れる様な美声であった。元々の素材が良いのか、声だけではなく歌唱力も備えている。その綺麗な声と歌唱力が上手く混じり合い、一つの作品ができた。おもしろ半分、不安が半分の状態でネット上に公開したその日から、予想をいい意味で裏切り、青年は爆発的に人気者になった。それが彼……『アルシエル』の誕生だった。
イケメンボイスと言われる他、高音もよく出て、心地いいと評判で、それに加え音程も正確である。とコメント欄で溢れているが、もちろんアンチコメントもしっかりある。
それでも彼はめげること無く、歌うことに夢中になっていた。
「あー眠い……」
今にも閉じそうな瞼を無理やり開いて、ベットに放り投げていた携帯を開いた。
とあるアプリを開くと、自分のつぶやきに何件ものコメントが来ていた。コメントの内容は先程の生放送の感想などが濁流のように流れてくる。止まることのないコメントを半目で見ながら、彼……アルシエルは指で画面をスクロールさせた。
当たり前であるが、もちろん全てが賞賛している訳では無い。自分の悪かったところを容赦なく叩くコメントもある。しかし彼はそのコメントを見つけてはしっかりと読み、反省することを日常としていた。……が、今回は眠気が強いらしく、今にも瞼は閉じそうだった。
「…………」
瞼が閉じると、彼の意識は遠く、遠くに飛んでいった……
ハズだった。
「ぐはっ!?」
突然、空中から落ちる感覚がして気がついた時には、彼のお腹と顎に衝撃が電流のように流れ、彼の眠気を一気に覚ました。
「えっ!? え?」
辺りをキョロキョロ見渡すが、そこは先程まで自分がうつ伏せで寝ていたベットの上ではなく、見知らぬ場所の床だった。
それなりの衝撃が彼を襲ったため、彼の整った顔立ちから見える、痛さで赤くなってしまっている顎はそれなりに浮き立って見えていた。
しかもそこにいるのは自分だけではなく、他の人間までいるのを、今、彼は知ることになる。
「あの、大丈夫……ですか?」
突然声をかけられて、体をビクッとさせ、恐る恐る顔を上げると、そこには一人の女性がいた。
声のした方を見ると彼と同じ目線になるように、しゃがんで、心配そうに顔を覗き込む可愛らしい女性だった。
短い黒髪に、大きな目、左目と口元にあるホクロが大人っぽさを醸し出している。全体的に整っている顔に、大人しそうで落ち着いた雰囲気。これをまさに美少女と呼ぶのだと、この時彼は思った。
「あっ、はい……大丈夫です」
落ち着いた様子で彼は起き上がると、自分の服をパンパンと払った。そして、あることに気づく。
「あっ、顔見せちゃった……」
「……? 顔がどうかしたんですか?」
不思議に思った彼女は可愛らしく首を横に傾げるが、青年は誤魔化すように苦笑いを浮かべるだけであった。まるで何かを隠すように。
「ん、大丈夫ですよ。気にしないでください」
無理やり笑を浮かべて、さりげなくフードを被った。
幸い、出かけた後に生放送したおかげか、服装は部屋着ではなかったことに軽く安堵した。これでもしも部屋着だった時のことを考えると、軽く身震いするところである。
なんにせ、部屋着には顔を隠せるようなフードがないからである。
マスクがあれば少しはいいのだが、部屋ではマスクは着用しないタイプなので、顔を覆い隠すようなものがあるのが、不幸中の幸いである。
青年がフードを数ったことに違和感を感じたのか、黒髪の女性は声をかけようとするが、次の瞬間そんなことを忘れるくらいの衝撃が彼女を釘付けにした。
「おいあれ、マーブルじゃね?」
誰かの呼びかけるような一言。誰かが気づいて指さされた方を向くと、集団心理が働き、皆が指さされた方に視線を移した。その中の一人の人間として、二人も視線を向けた。
そこには、見覚えのある顔をしたマスコットキャラクターがいたからである。
「はいどうも〜 皆さんおなじみマスコットキャラのマーブルです」
【リアルアカウント】
国内最大級のSNSの名称で、ここ最近では誰もがスマホを片手に持ってリアルアカウント……通称『リアアカ』をするほど有名なサイトである。気になった人をフォローしたり、逆に気に入られたらフォローしてもらえたり……また、一言をつぶやいて『いいね』を貰ったり、お互いにメッセージを送りあったりすることが出来るサイトで、10人に9人くらいの確率でリアアカをしているほどの人気っぷりである。
そんなリアアカについ先程、大量の人間がリアルアカウント内に入ったことを青年は知ることになる。
「リアアカに夢中になってる皆さんの脳を、リアルアカウントの中に閉じ込めたのですよ!」
そのたった一言は、大量の人間を混乱させるには十分だった。
「はっ? 何言っちゃってんのアイツ、頭大丈夫か?」
ちょうど隣にいたチャラめの男性が、頭を気だるそうに掻きながらそんなことを呟くと、瞬く間にありえないような出来事が起こった。
どぷゅり
そんな気味の悪い……何かを突き抜ける音が、隣から聴こえてきた。恐る恐る首を動かし目で確認すると、青年は恐怖で半歩ほど後ろに下がり、目を大きく見開いた。
近くにいる人も、視線を向けさせるが、誰もが言葉を飲み込み、息が止まった。
そこにはステージ上に立っているはずのマーブルが、届くはずもない腕を触手のように伸ばし、ついさっき隣で呟いた男性のちょうど心臓にあたる位置に、触手の様に伸びている腕を貫通させていたからだ。
「おっとすみません。腕が滑ってしまいました」
鼻をほじりながらマーブルは何事もないように腕を元に戻すと、動かないはずの顔がニッコリと、不気味に笑ったような気がした。
「あっ、言い忘れていましたが、ここ……リアアカ内で死ぬと、死んだ人をフォローしていた現実世界にいるフォロワー達も巻き添えになって不審死するんです〜!!!」
一瞬の静寂が、この場の空気を凍らせた。そして、一気に会場が混乱の渦で染まる。
「ウソ…ですよね……」
先程の美少女は、口元に手を当てて、目に涙を浮かばせていた。恐怖で脚がガクガクと震えてしまっていて、立つだけでも精一杯である。
青年は先程まで生きていた人間が、自分のすぐ近くで死んでしまったことを、未だ信じれずにいて、冷たくなっていく死体を、ただただ呆然と見ることしか出来なかった。
「はいはい、落ち着いてください皆さん。怖いのは中の人だけではなく外の人もなんですよ? そんな外の人達になんと……3分間だけフォローを外せるようにしておきました!! 躊躇わずに外しちゃって下さいね! ただし、フォロワーが0になると中にいる人は死ぬので気をつけてください。さぁ、フォロワー同士のキズナ、見せつけちゃって下さい♡」
マーブルが言い終えると、周りは悲鳴と絶叫……懇願の声で溢れかえり、誰もがこの状況で冷静でいられる訳がなかった。
ただ一人を除いては。
なにかアドバイスや、これは間違えてる。などとした意見……バンバンください!
作者はとりあえず趣味で書いていくウチに本気になるタイプなので、是非ともたくさんのアドバイスよろしくお願いします!