サーヴァントー !
いまだ記憶に深く根付くそれは、過去と同じように
俺の大切なものを奪い去ろうとしていた。
そうしてそいつを深く睨みつけようとして
正体を探ろうとして
「―――え?」
彼女を、視認した。
手に嫌な汗がこびりつく、喉が粘力を増して、俺を刺激した。
「アルト――リア」
ざわざわという感情が脳を駆け巡る。
彼女を目にしたことによって俺は――
オレ、は
「助けて...怖いよ!誰か....助けてよぉ!!!!」
瞬間、迷いをすべて振り切った。
知っている声
誰より守ると誓ったこの世界のあの声。
衛宮士郎は、家族のためなら
色んなものを振り切れるらしい。
「わかった。あとはお兄ちゃんに任せろ」
そうして、あの背中に追いついた。
「お兄―ちゃん―?」
ボロボロになった妹を見る。
「悪いな、色々言いたいことはあるだろうが。あとにしてくれ」
「よく頑張ったな」
セイバーの前に対峙する。
撃鉄を落とした。
身体を戦闘用にシフトさせる。
これより先は死と隣り合わせ。
それでも、俺の心は踊っていた。
「奇しくも逆だな、あの時と」
生前、最期にアルトリアと対峙しなければいけなくなったとき
「お前にその記憶はないだろうけど、それでもこう言わせてもらう。」
これは”あのとき”の再現のようだ。
今度はこちらが言うぞ。
「ここから先へは。行かせない!」
「ア――ア―アアアア!」
あちらの出力が目に見えて上がる。
ギアが上がったということだろうか、勝ちを譲ってもらったあの時より
認められたような気がしてうれしかった。
「投影―開始《トレース・オン》」
手にするは陽剣干将・陰剣莫耶。
今回も、お前の剣は使ってやれない。
「行くぞ―!」
お互いに同時突貫する。
セイバーからの力任せの縦切りは、それでも豪速で俺の命を狩りに来ている。
莫耶を斜めに受け流し、返す干将で首を狙う。
セイバーはそれを自分のバイザーに当てることで回避した。
「チッ!」
「アア!!」
距離を離す俺にセイバーからの猛攻が襲い掛かる。
縦。斜め。円に一線。
そのすべてが俺に襲い掛かり、そのすべてを交わすのは容易だった。
「お前...」
技量に任せただけの大振り。
力に任せた叩きつけ。
傷を負いはするが、それでも負け筋は全く見えなかった。
十
二十
三十
打ち合い、打ち合い、打ち合う。
俺はまだ―立っていた。
怒りがこみ上げる。
俺の信じたセイバーは、俺が憧れたセイバーは、こんなものじゃなかった。
誰かが、俺の思い出を汚している。
衛宮士郎の触れてはいけない場所に土足で踏み込んでいる。
「待っていろ。今オレが解放してやる」
「―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎむけつにしてばんじゃく)」
再びセイバーへの突貫
逃げの点から攻めの線への急変化は、今の彼女には対応しきれない。
懐に潜り込み怯んだセイバーを双刃で切り刻む。
重要なのはここだ。
切ったとき、双刃の欠片をセイバーの体内に残す。
「―――心技、泰山ニ至リ(ちからやまをぬき)」
動きが鈍るセイバーに干将・莫耶を投擲する。
それを力任せに弾くセイバーを確認し、
さらに投影
「―――心技黄河ヲ渡ル(つるぎみずをわかつ)」
何かを悟った彼女からの猛攻を受け流し。
タイミングに合わせて大ぶりの攻撃を弾く。
―――唯名別天ニ納メ(せいめいりきゅうにとどき)
干将・莫耶は夫婦剣、この手の中にもう二組の干将・莫耶がある限り
弾かれた二つも戻ってくる。
「投影―過剰強化《トレース・オーバーエッジ》」
手の二つを強化し、後ろからの二組の迎撃に向かったセイバーに
「―――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われらともにてんをいだかず)……!」
それを叩き込んだ。
「―弾けろ」
俺の投影した俺の武器は、世界から消えるまで俺とつながっていて
手から離れていたとしても強化の魔術が通せるのだと、生前になって知った。
故に、体に残った破片を強化し、目標の中で弾けさせ、内側から切り刻む。
それがおれの鶴翼三連だ。
消滅していくセイバーを最後まで見届けた。
カードだけがひらりと舞っていた。