IS DESTINY ~蒼白の騎士~ 作:ELS@花園メルン
でも、アニメでのこのシーンは名シーンの一つなのでは無いかと思い、自分なりに頑張って書きました。
SIDE イチカ
「本当かよ、それ!?ユニウスセブンが!?」
ミネルバの修理が難航しているため、談話室で待機していた俺たちにそんな知らせがメイリンから来た。
「あれだけの質量の物がそう簡単に軌道変更するものなんですか?」
「隕石にぶつかったか、何かの影響で軌道がズレたか。
実際に見てみないと分かんないけどな」
マユの質問にヨウランが何となく答えた。
「それが何でまた、こんな急に?」
「それよりもユニウスセブンが地球へ落下コースってのは本当なのか?」
シンが俺たちに知らせてくれたメイリンに聞いた。
ミネルバへ来た通信もメイリンが受け取っていたので、ある程度の情報は持っているだろうしな。
「うん。
バートさんもそう言ってたから多分そうだと思う」
メイリンが返す。
それを聞き、ルナはぼやいた。
「はぁ~。
アーモリーワンでの強奪騒動もまだ片付いてないのに次は隕石って何でこうも次から次へと…」
確かにそうだ。
カオスたち三機が所属不明艦に奪われて、それがまだ解決していないのにミネルバへ連絡が来たってことは何かしらの対処を俺たちがしなくてはならないのかもしれない。
「で?今度はそのユニウスセブンをどうすればいいの?」
と、ルナマリアはヴィーノ、ヨウランを見た。
「どうって…」
「どうするんだ…?」
「砕くしかない」
悩んでいた二人ではなく、レイがそう述べた。
「砕く!?あれを!?」
「軌道変更が既に不可能なら、もうアレを砕くしかない。
そうすれば細かな破片は大気圏で燃え尽きるだろう」
「でも、デカいぜアレ!?」
「そうそう。
現時点の大きさが大体半分で8キロはあるし」
「そんなに!?どうやって砕くのよ!?」
レイの言葉にヴィーノ、ヨウラン、ルナが驚く。
「それにあそこには、まだあの時のお墓が残ってますし…」
そう、マユがつぶやいた。
ユニウスセブンには血のバレンタインの悲劇があって多くの人の遺体がまだそのままになっている。
マユはそのことを危惧しているのだ。
「だが、このままでは地球に衝突して地球は壊滅する。
そうなればユニウスセブンどころか、何も残らないぞ」
レイはそう言った。
このままただ待っていたら本当に取り返しの付かない事態になってしまう。
ユニウスセブン以上の死人が出てしまうぞ…。
「…地球、滅亡……?」
「…だな。
けど、さ?そうすれば地球軍や、ザフトの基地にも被害が出て、戦争なんてやめて手を取り合おうなんてならないか?」
と、ヨウランが言った。
その性格から暗くなった場の雰囲気を戻そうと、軽く冗談半分で言ったんだろう。
でも、それが裏目に出てしまった。
「よくそんなことが言えるな!お前たちは!!」
運悪く、廊下に人がいてそれを聞き、怒鳴り込んできた。
しかもその人が今、ミネルバにて保護されているアスハ代表とアレックスさんだった。
あ、アレックスさんは偽名で本当は前議長の子である【アスラン・ザラ】だそうだ。
俺たちはヨウランの言葉を聞き、怒りながら入ってきた代表に敬礼をした。
「やはりそういう考えなのか!お前たちザフトは!!
あれだけの戦争と犠牲を払って!ようやくデュランダル議長のもとで変わったんじゃなかったのか!!」
「…おい、カガリ」
と、アスランさんが代表を止めるが、睨まれてしまっていた。
「別にヨウランだって本気で言ってた訳じゃないさ」
沈黙を破ったのはシンだった。
「聞いてたんなら分かるだろ?
俺たちの雰囲気がどんなもんだったか。
ヨウランはそれを少しでも和ませようと、軽い冗談を言っただけだ。
俺たちの事なんて知りたくもないだろうけど、本気で大勢人が死ねばいいだなんて俺たちだって思ってないさ」
そりゃそうだ。
そもそも俺たちはこれ以上、人が死ぬのを減らすために軍に入ったんだ。
すると、レイがシンを制した。
「シン、言葉に気をつけろ」
「……。
ああ、そうでした。この人オーブの代表ですもんね。
偉いんでした、すみません」
と、最後に皮肉気に言ってコーヒーを啜った。
「お前っ…!」
「いい加減にしろ、カガリ」
と、シンの元へ行こうとしていたアスハ代表をアスランさんが止めた。
「オーブが嫌いみたいだな、君それとそこの彼女も」
アスランさんがアスハ代表の前に出て、シン、マユに向けて言った。
「議長から聞いたが昔はオーブにいたみたいだが、何故嫌うんだ?
くだらない理由で関係の無い代表にまで突っかかるのであれば唯ではおかないぞ」
その言葉がシン更にはマユに火をつけた。
「くだらない?くだらないなんて言わせるかっ!」
「それに関係ないって言うのも大間違いです!
私達の家族は国に、アスハに殺されたんだから!!」
その言葉にはアスランさんも驚いた。
「国を信じて、あんた達の掲げる理想ってのを信じて!
そしてあの日!オノゴロで殺されたっ!」
「アーモリーワンで、代表は言ってましたよね?
『強い力は新たな争いを呼ぶ』って!
貴女のお父上があんなものを作らなければ、国が焼かれることも無かったんです!
それに、力を持つことがいけないことだって先日、言ってましたけどっ!
なら私たちはただ殺されるのを待ってればいいんですかっ!?
黙って撃たれてろって言いたいんですかっ!?」
シン、マユは実の親が死んでるからこそ、余計にそういう念があったはずだ。
…少なくとも、俺だってあの時の事を少し恨んでないってわけじゃない。
オーブが焼かれたのは理念を貫き、国民を守ることより優先してたからじゃないのかって俺は今でも思ってる。
「だから俺は!あんた達を信じないっ!オーブという国も信じない!
そして、人よりも国の理念を推すあんた達を信じないっ!!」
「あなたたちはっ!その理念を貫き続けることでっ!自分たちの言葉でっ!
誰が傷つき、死ぬことになるか考えたことがあるんですかっ!?」
シンとマユはそう言うと、談話室から出ていった。
当然、目はアスランさんと代表をにらみつけていて、涙を浮かべていた。
「シン!マユ!」
二人が出ていったことで、再び部屋に沈黙が漂った。
代表もすぐ、部屋を出て行ってしまった。
「カガリっ!」
アスランさんが追いかけようとした。
しかし、それをヨウランが呼び止めた。
「あのっ…。
さっきは、不躾なこと言って、すみませんでした…」
そう言って、頭を下げた。
「あ、ああ、カガリにもそう伝えておくよ」
そして、アスランさんは代表を追い、部屋を出た。
「…ねぇ、イチカ?
シンとマユってオーブで家族失ってたの知ってるけど、さっき言ってたことってホントなの?」
と、メイリンが俺に聞いてきた。
他の皆も気になるようだった。
「あんまり、言いたくはないんだけどな…。
少し、話すよ」
俺は、談話室に残っていたルナ、メイリン、レイ、ヴィーノ、ヨウランへ簡単に説明した。
俺たちが一緒に暮らしてて、オーブが戦争に巻き込まれ、避難してたらモビルスーツの戦闘に巻き込まれた。
など、簡単に説明をした。
皆の反応はなんとも言えない渋い顔だった。
しかし、その後、艦内放送でユニウスセブンへ向かうということを知らされた俺たちはそんな状態ではあったが、すぐに準備にとりかかった。
修理を行っていた間に俺やマユの機体も整備、調整されたので今度は普通に戦うことができる。
パイロットスーツに着替え、待機場所へ向かうと、マユが既に準備をして待機していた。
「あ、イチカ。
さっきは、ごめん」
「気にすんなよ。
お前やシンが言ってくれたお陰で俺も少しは清々したしさ」
「…うん、でも、私この前も代表に対して変な態度取ってたし…」
「仕方ないさ。
オーブで、あの戦場にいて、何も言わないって言う方が難しいんだからさ」
すると、レイ、シンが入ってきた。
「シンにも言ったが、俺は別に気にしていないぞ」
マユが何を言おうとしたのか察したのか、レイが先に口を開いた。
「え?」
「どちらが正しいのか、そんなのは誰にもわからない。
もちろん俺や議長にだってな。
だが、今は守るべき者を守るために戦うだけだ、違うか?」
「ううん、違わない。
これ以上、たくさんの人が死ぬのを見たくないもん」
マユはそう答えると、MSデッキへ向かった。
俺もシン、レイと共にデッキへ向かい、出撃の指示が出るまで、機体で待機することにした。
本来ではシン一人がカガリを責める話ですが、今回はマユと共に、訴えるということにしました。
イチカは今回は見守る役って感じです