IS DESTINY ~蒼白の騎士~   作:ELS@花園メルン

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すれ違う友

SIDE イチカ

 

ミネルバが航行するその進路に地球軍とオーブ軍の同盟艦隊が網を敷いていた。

ミネルバはジブラルタルへ向かう必要があったが、その行く手を再び遮られてしまっていた。

 

俺たちはパイロットルームでのブリーフィングを行っていた。

 

 

「戦力では以前と同様にこちらが不利なことに変わりは無い――――が、それは突発的な乱入に対して上手く対処が出来ていなかったからだ」

 

 

戦力図をモニターに展開し、アスランがそう言った。

 

 

「更にこの戦闘において、向こうはエース機を二機俺たちに鹵獲されている。

つまり、戦力低下は否めないということだ。

そこを突くことでより被害を抑えつつ、ジブラルタルへの道を切り開けると俺は思う」

 

「じゃあ、今回もフリーダムとアークエンジェルが奇襲を掛けてきたらどう対処するんですか?」

 

 

ルナがアスランへそう質問する。

 

 

「フリーダムの乱入への対処は俺が行う。

その間に君たちがオーブ並びに地球軍の部隊を相手して欲しい。

今作戦では、シン、お前はブラストシルエットによる後方からの火力支援を行ってくれ。

前回の戦闘ではミネルバ周囲の防衛が手薄だった。

敵の出方によっては換装し、敵母艦への対艦攻撃を行ってくれ」

 

「分かりました」

 

 

モニターに表示されていた図に二つの駒が現れ、一つはミネルバ周囲に、もう一つは少し外れた場所に移動した。

セイバーとインパルスの展開位置ということだろうか。

 

 

「次に、レイ、ルナマリアだ。

君たちには前回同様、ミネルバの護衛を行ってもらうが、その際、レイにはガナーを装備して出てもらう。

レイの射撃の正確さはこれまでの戦闘でよく分かっている。

遠方から接近する機体をシンと共に落としてくれ。

ルナマリアはその後詰めだ。

シンとレイの網を抜けた機体を排除してくれ。

ここが抜かれたらミネルバへの被害は相当なものだと思っておくんだ」

 

「「了解しました」」

 

 

ミネルバと同位置の所に二つの駒が配置された。

 

 

「最後にイチカ、マユの二人だが君たちには最前線での遊撃を頼む。

本来、君たちの機体は連携を行うことでその真価を発揮できる機体だ。

だからこそ、二人のみを前に置くことでより連携を取りやすくなると俺は思う。

作戦開始時、敵MS部隊に対して一斉射撃を行ってくれ。

マユはエネルギーが尽きる寸前まで撃ったらミネルバにて補給を行ってくれ」

 

 

「はい」「了解です」

 

 

最後に二つの駒がミネルバと敵艦隊の中間に配置された。

 

 

「グラディス艦長から出撃の命があるまで待機してくれ」

 

 

俺たちは機体へ向かうが、その途中でシンはアスランに呼び止められた。

 

 

 

SIDE シン

 

 

俺はコアスプレンダーへ向かう前にアスランに呼び止められた。

 

 

「何ですか?」

 

「議長からの連絡だ。

君が救出したステラという少女のための治療を行うことが可能かもしれないらしい」

 

「本当ですか!?

で、でもそれじゃあ、アウルにも可能なんですよね!イチカにも——「その、治療を行うことができるのは、現段階では一人が手一杯だそうだ。

議長もそのことを悔やんでおられた」――けど、このことはイチカには…?」

 

「ああ、既に話をしてあるらしい。

だが、アイツはその上で、ステラを助けてほしいと議長に進言したそうだ」

 

 

そう、だったのか…。

 

 

「伝えてくれて、ありがとうございます。

俺、少しイチカと話をしてきます」

 

「ああ、分かった」

 

 

俺は、イチカを追いかけるため急いで部屋を飛び出した。

 

 

 

SIDE イチカ

 

 

「イチカ!」

 

 

MSデッキ近くで俺はシンに呼び止められた。

 

 

「アスランから聞いたけど、ステラへの治療を進言したって本当か?」

 

 

そっか、聞いたのか…。

 

 

「本当だぜ。

アウルを治療するかステラを治療するか、より良く二人を助けられる方法があるんだ。

その方法に縋らない手は無いと思うけどな」

 

「だったら、なんでアウルを治療して欲しいって頼まなかったんだよ!?」

 

「…今のシンには、ステラが必要だと思ったから、かな?

シン、前よりも表情柔らかくなったの気づいてるか?」

 

「…え?」

 

「ステラと遭難してた時、その日以来、お前、少しずつ変わってるんだよ」

 

 

僅かな変化だったけど、俺とマユは分かってた。

 

 

「は?本当か?全然、実感ないんだけど」

 

「馬鹿、何年家族やってると思うんだよ?

お前の顔もマユの顔も散々、見てるんだぜ?

分かるに決まってんじゃんか。

———だからこそ、お前を変えてくれたステラにはお前と一緒にいてもらいたいんだよ。

アウルのことは、きっと、何とかなるからさ」

 

「イチカ……、ありがとう、本当に!」

 

「イヤイヤ、俺がステラにお礼を言いたいくらいだからな。

その代わり、お前がしっかりと守ってやれよ?」

 

「ああ!」

 

 

俺とシンにとっての心のわだかまりの様な物が無くなった気がした。

俺たちは機体へ搭乗し、出撃の合図が出るまで待機していた。

 

 

『あ、お兄ちゃん、やっぱり表情良くなってるね』

 

『なあ、俺ってそんなに分かりやすいか?』

 

「まあ、俺らからしたら、って付け加えるけどな」

 

『今のお兄ちゃんはそうだね——好きな人ができた!って、感じの顔してる』

 

『は!?な、なんだよそれ!?

す、ステラは別にそんなんじゃ!』

 

「お~い、シン、墓穴掘ってるぞー?」

 

『はっ!?』

 

 

シンの顔が珍しく、赤面していた。

 

 

『しかもこれ、ブリッジや他の機体とも通信繋がってるんだよね』

 

『ちょっと、シン~?

聞いちゃったわよ~?』

 

 

ルナがシンをからかうために反応してきた。

 

 

『わ!これって敵との禁断の恋って奴かな?』

 

 

メイリンもそれに乗じて、口を出す。

 

 

「あー、シン?お疲れ様」

 

『何だよそれ!?

ってか、ルナもメイリンも煩い!!』

 

 

『楽しそうなのは良いけれど、戦闘前ということも忘れないで頂戴ね?』

 

 

と、グラディス艦長に制される三人。

 

 

『敵MS多数展開を確認。

今のところ、アークエンジェルの姿は確認されていません』

 

『では、イチカ、マユから順次MSを発進!

ここを乗り切る!』

 

 

俺たちは機体を立ち上げ、出撃していく。

 

 

「マユ、敵の大隊を引き付ける。

最初に火砲を敵中心に集中させるぞ!」

 

『分かった!』

 

 

出撃した俺たちは先行し、全砲門を展開し、俺たちの後方にいるミネルバを狙うために接近してくるオーブ、地球軍の同盟MS部隊を一斉射撃で撃ち抜いた。

更にマユはフリーダムのフルバーストを連射し、敵へ追い打ちを掛けていく。

 

 

『イチカ、ごめんちょっとエネルギーを消費しすぎたから少し補充してくるね!』

 

「ああ、マユのおかげでかなりの量を墜とせたから、後は任せてくれ」

 

 

と、マユはミネルバへエネルギー補充のため、後退した。

 

 

「さてと、行くぞ、ジャスティス!」

 

 

脅威を排除しようと部隊を分け、ジャスティスへと向かってきたオーブ軍部隊に俺はフラッシュエッジビームブーメランを投げ、腕を切り裂き、攻撃を開始した。

 

すると、別方向から俺とオーブ軍の間に艦主砲らしきビーム砲が飛んできて空を裂いた。

 

 

「やっぱり来たか、アークエンジェル。それにフリーダムも!」

 

 

ブリーフィングの時に来るだろうと予想はしていたから、前回の様な戸惑いは無かったけど、戦場を混乱させる行為を今回も行うのだと思うと、アレが邪魔にしか思えなかった。

 

 

 

 

SIDE アスラン

 

 

マユがミネルバ付近へ後退してきたとき、予想通りアークエンジェルが戦場にやってきた。

 

 

「各機、手筈通りに行くぞ」

 

 

俺はそう指示を出すと、MA形態へ変形させ、セイバーでフリーダム付近を目指した。

その途中、カガリの乗っているであろう【ストライク・ルージュ】がアークエンジェルより出撃し、前回のように停戦の呼びかけをしていた。

 

 

「…お前は、なんでいつもそう突っ走ることしかできないんだ、カガリ。

争いを止めるために争いの火種に飛び込むんじゃ、火に油を注ぐだけだって何故分からない。

キラ、お前もお前だ。

カガリの意見に賛同するのはいいが、もっと別の方法だってあったはずだ。

なのにわざわざ戦いを選ぶのか、お前は…?」

 

 

俺は誰にも聞こえないようにそう呟いた。

俺は変形させ、フリーダムへビームライフルを放った。

フリーダムはそれを避け、ビームサーベルを抜き、俺に切りかかって来る。

俺はそれをシールドで止め、同じようにビームサーベルで切りかかる。

 

 

『そこを退いてくれ、アスラン!

僕は、戦いを止めないと!』

 

「そう言いながらお前が力を振りかざしてどうする!

俺たちからすればお前やカガリのしていることはただの敵対行為だ!

そんな行いを受けながら、戦いをやめろ?ふざけるな!!」

 

『退く気は無いんだね?』

 

「それをお前が言うのか!」

 

『平和な世界の為に、僕は、君を撃つ!』

 

「ならば、今度こそ、俺がお前を撃つ!」

 

『アスラァァァァン!!』

 

「キィィラァァァァ!!」

 

 

セイバーとフリーダムが距離を取り、再びぶつかり合った。

 




キラVSアスランになります。
今回の戦況はアビス、ガイアがいない分、エース機の数はオーブが少ないですが、物量で言えば同盟艦隊の方が有利です。
さぁ、次回はどうなるのか・・・

カガリの声は届くのか・・・?






あれ?そういえば、ダーダネルス海峡での戦いって、セイバーが落とされたときの戦いでしたっけ?

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