IS DESTINY ~蒼白の騎士~ 作:ELS@花園メルン
まあ、出てくるのは最後なんですがね
再会
SIDE イチカ
「それで束さん。
早速と言っては何ですけど」
「お?何だいいっくん!
束さんにできることならなんでもしてあげるよ?」
「そうですか――――じゃあ、この部屋、片付けましょうね?」
俺と束さんがいる、この束さんの隠れ家の束さんのプライベートルームは言っては何だが、ごみ屋敷と言っても過言では無いほどの部屋だった。
脱ぎ散らかされた服、開発材料なのか何なのかよくわからない部品、強いては食べかすなど、千冬姉の部屋を見ているようで少し懐かしさを感じた。
「え~束さんまだ使えると思うんだけど―――「いいですね?」…はい」
こっちの世界へきて、最初にやったことは束さんの部屋の掃除だった。
数十分経って、ようやく部屋は綺麗になった。
「いやぁ!すごいね!あんなごみ屋敷だった束さんの部屋がこんなに綺麗に片付いてるよ!」
「自分でごみ屋敷だって言うんならもう少し片付けましょうよ…」
「はは~やろうとは思ってたんだけどね~」
その後、情報交換を行うため、お茶を淹れて休憩しながら話を行った。
「それで束さん。
今後の方針なんですけども」
「そうだね。
とりあえずはいっくんにはIS学園へ行ってもらうことになるかな」
「何でです?」
「そういやまだいっくんは知らないんだよね。
あの偽者がISを動かしたんだよ。
つまりは世界初の男性IS操縦者ってことだね。
まあ、そいつの正体を探るっていうのを今はいっくんにはやって欲しいんだよ。
あのフリーダム?っていうISは神出鬼没だから情報が少なくってね?
出来ることからやった方が良いと思うんだよね」
「でも、それって俺もISを動かせることが前提ですよね?
俺、男だから無理だと思うんですけど?」
IS学園はそもそもIS操縦者、整備士を育成する学校だ。
当然、カリキュラムにIS系の物も含まれているので、ISを動かせない、つまり男は入学ができない。
俺の偽者は何かの要因で動かせるみたいだが、束さんが俺をIS学園に送るにしても、俺がISを使えるかどうかはまだ分からない。
「いっくんは動かせるよ!
いっくんはさっき白騎士と会話したって言ってたでしょ?
IS適性の高い人はコアと共鳴して会話することが出来るんだよ!
原因はちょっと分かってないんだけど、つまりいっくんはISを使えるってことだよ!」
白騎士、つまりISのコアと会話をできる人というのはそのコアとの親和率が高く、検査を行うとその適正結果は高い値を出すらしい。
ちなみに参考として千冬姉のIS適正はSランクだったそうだ。
俺の適正を測ってみるとA+と中々な高ランクだと束さんも言っていた。
「じゃあ、いっくんはIS学園に行ってもらうっていうので構わないよね?」
「まあ、適正があってやるべきことの為に必要なら俺はそうしますよ。
じゃあ、何か勉強できる参考書みたいなのってありますか?」
流石に勉強せずに学園に入学しては自分としても恥だし、何より知識を得ておくことで自分にとって利益になるかもしれないからだ。
「一応、束さんがISを開発する段階でまとめておいたレポートや各国で主流の機体のデータならネットで見られるよ~」
「じゃあ、それを使わせてもらいますね。
束さんはどうするんですか?」
俺がISについて学んでいる間、束さんは何をするのだろうか、俺は少し気になっていた。
「実はね~いっくんの乗る専用機を開発するんだよ!」
「俺の、専用機?」
「そう!
しかも、ザフト軍のMSっていうのをモチーフにした奴を!
データを貰っているからね~。
いっくんの為にも束さん頑張るよ!
――――とは言っても、フェイズシフト装甲とかデュートリオンエンジンっていうのはまだまだ難しそうだから、量産機をベースに開発してみるんだけどね」
「ありがとうございます、束さん」
俺はエッヘンと胸を張っている束さんへ頭を下げてお礼を言った。
「いっくんにはこれから負担を掛けるかもしれないからね。
万全に動けるように束さんも力を入れるよ!」
そう言って、束さんは別室へ移動し、俺は部屋にあった束さんの開発レポートを読んでいった。
そこに書いていた内容は、IS整備、開発において必要な知識や、ISの内部機構に関しての説明が殆どで、これをISを開発し始めてた頃の束さんが書いたレポートなんだっていうのを忘れてしまうくらいに、凄い出来のレポートだった。
俺が士官学校を卒業する前に出したMS工学の論文なんかじゃ、束さんのレポートにはまだまだ遠く及ばないっていうことが分かった。
俺がレポートを読みふけっていると、部屋を誰かがノックした。
「?どうぞ」
「失礼します。
お食事の用意が出来ました、いっくん様」
「え、あ、ああ、ありがとう。
君は、一体?」
部屋に入ってきたのは杖を片手に持った銀髪の少女だった。
しかし、その両目を彼女は閉じていた。
「私はクロエ。
【クロエ・クロニクル】と申します。
束様に助けられて今はここで束様の生活のお手伝いをしています。
...家事は練習中ですが」
「そっか。
よろしく、クロエさん」
「よろしくお願いします、いっくん様」
「その『いっくん様』ってのは、止めてもらってもいいか?
様付けで呼ばれるのはちょっと慣れてなくてな」
「分かりました。
では、『いっくんさん』と」
さん付けじゃなくてもいいんだけどな。
まあ、様って言われるのは慣れてないし、それでいっか。
クロエさんに連れられて、束さんのラボを歩いて行く。
そこで俺は一つの疑問を尋ねてみた。
「クロエさんって、その、目が見えないのか?
それにしては綺麗に歩けてるなって思ってさ」
「いえ、別に失明したわけではありません。
私はとある施設で実験体として扱われていたため、その影響で目が少し変なのです」
そう言って、クロエさんはその両目を開き、俺に見せてきた。
その眼は金と黒に彩られており、何か引き込まれそうな感じだった。
「…気持ち悪いでしょう。
変なものをお見せしました」
「そんなことは無いと思うぞ?
綺麗な金色だったと俺は思う」
「そうですか。
ありがとうございます、いっくんさん。
ちなみに、私が歩けているのは束様に頂いた生体同期型のISがあるからです」
生体同期型…。
そんなISまで存在するのか…。
少し歩くとテーブルとイスがあり、そこには料理が並べられていた。
品数は多くは無かったけれど、どれも一生懸命作ったという気持ちがこもった料理だと俺は思う。
「お!いっくん来たね!
じゃあ、くーちゃんの作ったご飯を食べようか!」
それから三人で食事を行い、束さんが提案してきた。
「ねえ、いっくん!
くーちゃんに家事を教えてあげられない?」
「家事をですか?」
「そうそう!
くーちゃん!いっくんはね?すっごく料理が上手なんだよ!
掃除や洗濯ももはや主婦レベル!」
「いやいや、そんなこと無いですって」
と、俺は束さんの言葉を否定したが、
「いっくんさん!是非、教えてください!
私、もっと料理ができるようになりたいです!」
と、クロエさんがグイグイと押してきたので俺は折れ、クロエさんに家事を教えることとなった。
すると、束さんの持っていた携帯に電話がかかってきて、ディスプレイを束さんが見ると、とても嬉しそうな顔をして電話に出た。
「もしもし!箒ちゃん!!
電話待ってたよ~!!」
どうやら電話の相手は俺の昔の幼馴染で束さんの妹の【篠ノ之 箒】みたいだ。
束さんがISを作り出した関係で、箒の一家は要人保護プログラムの下、各地を転々してたと千冬姉に聞いたことがある。
束さんはこんな感じで人のいないところで暮らして、箒とは離れ離れだが、その関係が良好そうで俺は良かったと思う。
「――そうそう!箒ちゃんにスペシャルなゲストがいるんだよ!
さ、しゃべってみてよ!」
と、束さんは携帯をスピーカーモードへと変えて、テーブルに置いた。
『姉さん?クロエの事はもう何度も聞いてるから分かっているのですが…』
と、電話口から聞こえる久しぶりに聞く幼馴染の声は勘違いをしていた。
「えっと、久しぶりだな、箒?」
俺はそう話しかけた。
久しぶりに話すからこそ、何を話すべきか良く分からなくてそんな短い言葉になってしまった。
『一夏……なのか…?』
モッピー登場!
それと、クロエの話し方が難しいです!
IS側の時間帯は大体、偽一夏が入試でISを動かしたって辺りで、世界が騒いでいる辺りです