IS DESTINY ~蒼白の騎士~ 作:ELS@花園メルン
SIDE カムイ
この状況、キツい...キツ過ぎるぞ......!
俺カムイ・リンクスはIS学園内の食堂で1人、食事を摂っていた。
俺と山田先生の戦闘が終了し、寮へ戻ってから食事を取りに向かったのだが、当然、寮にはまだ男は俺一人なので周りは女子だらけだ。
そんなとこで食事を取っていれば、どうなるか分かるだろうか?
「あの子がこの前、ニュースで分かった男の操縦者?」ヒソヒソ
「みたいね。何でも篠ノ之束博士の所で暮らしてたとか」ヒソヒソ
「嘘っ!?じゃあ専用機とか持ってるのかしら!」ヒソヒソ
と、色々と話している女子生徒たちの声が聞こえる...。
そう。全員の注目が俺に集まっているのだ。
山田先生に案内され、寮を歩いていた頃には陰口のようなものを言われていたのだが、今は何というか興味深々という感じがあちらこちらからにじみ出ている状態だった。
最初の方はまだ、少なかったから助かった。
けど、人が人を呼んで今はこの食堂には大勢の人が集まっている。
誰か...せめて気をまぎらわす相手をしてくれ...!
俺が心でそう願っていると、1人の生徒が話しかけて来てくれた。
「ここ、空いているか?」
「!あ、ああ!空いてるぞ!」
そう言って俺は声のした方を向くと、そこには以前電話で会話をした、俺の幼馴染の篠ノ之箒が立っていた。
「では、失礼させてもらう。
それで、久しぶり...で構わないか?」
「ああ、そうだな。
久しぶり、箒。
ちなみに今の俺はカムイ・リンクスだからな?」
「分かっているさ。
姉さんから何も言われていないと思ったか?
ちゃんとそこいらの情報も得ているに決まってるだろう」
と、言いながら箒は皿に入っていた天ぷらを齧る。
「部屋に男物の荷物があったからな。
お前が来ているのだろうと思って、こっちに来た。
その予想は見事に当たったな」
「てことは、俺の相部屋相手は箒なのか?」
「だろうな。
恐らく、姉さんが手回しをしたんだろう。
後、私の自衛用に機体を預かっていると聞いてるが?」
「ああ、それなら部屋に戻ってから渡すさ。
流石にここで渡すのは...な?」
「う、うむ。
それもそうか。
随分と見られているな...食べづらいぞ...」
たくさんの視線が集中する中、俺と箒は何とか食事を終えて、そそくさと寮の自室へと戻り、一息をついた。
「はぁ...食事だけでここまで疲れるとはな...」
「全くだ。
...少し失礼するぞ」
箒はそう俺に断りを入れるが、俺が返事を返す前に箒は俺を抱き締めてきた。
「お、おいっ!?」
「...本当にお前が生きていてくれて良かった!
電話では声を聞けたが、実際に目で確かめないと実感が無くてな...。
再会出来たならこうしようと考えていたのだ」
箒はそう、涙を流しながら俺に話した。
「ちゃんと生きて帰ってきた。
ただいま、そして久しぶり、箒」
「ああっ!ああっ!
おかえり、一夏っ!」
箒が泣き止むまで俺は彼女の頭を撫でていた。
泣き止むと、箒は疲れ切ったのか、そのまま寝てしまった。
箒をベッドへ寝かせたあと、俺は束さんへ連絡するために端末を起動し、束さんのラボへと通じる秘匿回線で連絡を取った。
『もすもすひねもす〜?束さんだよ〜!』
「こんばんは、束さん。
一応、IS学園に着いて一段落したので連絡しました」
『うんうん!無事に着いてよかったよ!
あ、箒ちゃんは?』
「さっきまで起きてたんですけど、今はぐっすり寝てますよ」
『ホント!?じゃ、じゃあ!箒ちゃんの寝顔写真を!!』
連絡を行い、同室の幼馴染の話をすると、束さんは寝顔写真をしつこく要求してきた。
『ッッ!!これでまた、私は...戦えるっ!!
私の戦いを...!!』
束さんは俺が送った箒の画像を見て、歴戦の戦士が新たな剣を受け取り、戦場へ赴くようなセリフを言っていた。
「それと、千冬姉にも会えました。
最も、ただの教師と生徒としてですけどね」
『それにしてはカー君嬉しそうだけど?』
「まあ、自分の家族が元気な姿を見ることができたんですから、ね。
でも、その幸せを与えたのが敵、だというのなら複雑な気持ちなんですけど」
『大丈夫。
ちゃんとカー君がちーちゃんに幸せを与えられるようになれるよ。
そのために君も、私も箒ちゃんも戦うって決めたんだもんね』
「ありがとうございます。
とりあえず、今日の所はこの辺で切りますね。
また、時間のある時に連絡します」
『はいは~い!
まったね~?』
そう言って、束さんは通信を切った。
俺も端末を切り、入寮時に受け取った参考書を読んで予習を行ってから横になって眠りについた。
翌日、目を覚ました俺と箒は束さんから受け取っていた箒の専用機【赤椿】の性能調査の為に、織斑先生から許可をもらい、アリーナを借りていた。
「じゃあ、展開してみてくれ、箒」
「う、うむ…!」
やや緊張した様子で箒はISの待機形態である勾玉の付いたブレスレットを握り締めていた。
そして箒が眼を瞑り、少しするとブレスレットが光り、箒をISの装甲が包んでいた。
「これが…私のIS…」
赤椿を身にまとった箒はその姿に目をきょろきょろとしていた。
「それじゃあ、軽く飛んでみてくれ」
「う、うむ」
すると箒の機体は徐々に浮上し、アリーナの客席辺りにまで上昇すると、そのままゆっくりと移動し始めた。
俺はそんな箒の後を追うように飛び、隣に並んだ。
「どうだ?
束さんが言うには、箒が扱うように調整してるから扱いやすいだろうって言ってたけど」
「ああ。
思ったよりもしっくり来る感じだ。
使い慣れた竹刀で素振りをしているかのように、スムーズに動ける」
確か、束さんは操縦者支援のシステムを組み込んで、更に箒の動きにのみ合わせるように専用の調整をしてるらしい。更には箒が動かせば動かすほど、ISが学習し、より箒が扱いやすくなるように進化しているそうだ。
そしてそれを証明するかの様に見る見るうちに箒の動きは洗練されて行き、飛行を行うのみに関しては自由に飛ぶことができていた。
「じゃあ、箒!
次は、武装を展開してみてくれ!」
「武装?
ああ、この刀とそれにこれは……脇差か?」
箒が展開した武装は日本刀と日本刀の二分の一くらいの長さの脇差だった。
これは束さんが箒用に搭載した武装だ。
箒は父親が剣道の師範をしており、小さいころから剣に触れていた。なので、剣道や更には剣術を教わっているので、篠ノ之流剣術において用いられる彼女が慣れ親しんだ武器を搭載しているのだ。
「刀の方は【雨月】、脇差の方は【水月】らしい。
実際に振るってみたらいいと思うぞ?」
「では、そうしてみよう」
そう言って、箒は二本の武装を振るった。
すると、それぞれの刀から赤い斬撃が振るった先へと飛び、途中で消えた。
「これは…?」
「その武装にはエネルギー発生装置を搭載しているらしくて、振るうことで遠くにいる相手に斬撃を飛ばせることができるそうなんだ。射撃武装を扱うのが苦手だろうという束さんなりの配慮らしいぞ」
「…なるほど」
それから何度か試し切りを行った後、的を表示させ練習を行い、箒はISを解除し今日の練習は終了した。
そして時は少し過ぎ、IS学園の入学式が行われた。