Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王   作:天々

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正裕と美奈のOHANASIAIはようやく終わりです。



三話 決意、そして同盟締結

「さてサーヴァント何だけど、彼らはそれぞれに切り札を持っている。それが宝具と言うものだ」

 

「ほうぐ?」

 

 聞き慣れない言葉を聞いて、美奈は鸚鵡返しにその言葉を口にした。

 

「そう、宝具。ノーブルファンタズムとも呼ぶな。宝具って言うのは、英雄達のいわゆる伝説の象徴が形になったものかな。伝説の聖剣とか、名馬だとか、あるいは超人的な肉体なんてのもある」

 

「アーサー王のエクスカリバーみたいなもの?」

 

「そんな感じだな」

 

 宝具の説明を聞いた美奈の挙げた例の正しさに、正裕のは満足そうに頷いた。

 

「宝具はそれぞれの逸話に基づいた能力を持っている。そしてそれらの能力には2つのタイプがある。常時発動型と真名解放型だ」

 

「常時発動はなんとなくわかるけど…、真名解放って?」

 

 またもや美奈の知らない単語であった。

 

「常時発動型は普段からその能力が発揮されてるタイプだな。不死身の体とかその武器につけられた傷が治らないみたいな能力が代表的かな。そして真名解放型は真名…宝具の名前を詠唱して発動しするタイプだ」 

 

「えーと、例えば『エクスカリバー!』とか叫ぶってこと…?」

 

「そんな感じ」

 

(うわぁ…)

 

 躊躇いがちに尋ねた問に対する正裕の肯定に、美奈は心の中で軽く引いた。何ていうか恥ずかしい感じがしたのである。

 

「真名解放型の宝具は大体一発で戦局をひっくり返せるくらいの力がある事が多い。例えばさっきから言ってる『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』なんてまともに当たれば一発で相手サーヴァントを倒せるだけの攻撃を撃てるらしいしな」

 

「じゃあ宝具の真名解放だけしてれば勝てるって事になりません?」

 

 美奈が浮かべた素朴な疑問を、しかし正裕は頭を振って否定した。

 

「確かにその可能性はあるけどね。大抵はそれだけじゃ終わらないことが多い。相手だって同じような宝具を持っていたりするし、何より真名解放型には問題も多い」

 

「問題?」

 

 小首を傾げる美奈。

 

「まず魔力を大量に使うこと。つまり乱発はできないってことだな。あとは真名……宝具じゃなくてサーヴァントの方だな、要するにサーヴァントの正体がばれる」

 

「どういう事?」

 

「宝具は英雄の伝説の象徴だ。つまり宝具の名前から英雄の正体が分かってしまう。例えばエクスカリバーを使う英雄だからアーサー王みたいな感じでな。更に正体がバレると能力も分かる。何せ英雄の活躍は伝説に記されているからな。使う武器に戦い方、場合によっては弱点が分かる事まである」

 

「ああ、なるほど」

 

 美奈は納得してぽんと手を打った。

 

「だから真名解放は最後の切り札程度に考えておかないと駄目なんだ。まあだからアーチャーの正体とか宝具が分かってもそれを軽々しく口にしないほうがいい」

 

「分かりました」

 

 そう言って、美奈は後ろに控えているアーチャーの正体に思いを馳せる。彼がどんな英雄でどんな過去を辿ってきたのか。そして、何を願い聖杯を求めているのか。

 

(あとで、聞いてみよう)

 

 そう考える美奈であった。

 

「えーと、あと話すべきことは…。あ、そうだ」

 

 その前で話すべき内容を考えている正裕を意識の端に追いやりながら。

 

 

 

「さて、説明を聞いてどう?聖杯戦争を戦う気はある?」

 

 その後、聖杯戦争の大雑把な取り決めや教会についてなどを話した後で正裕は美奈へ切り出した。

 

「私は…」

 

 真っ直ぐに見つめてくる正裕の眼差しから、美奈は思わず視線をそらしたくなる。

 

「私は…」

 

 しかし、そらす訳にはいかなかった。この意思だけは逃げることなく伝えなければいけないと、美奈がそう感じたから。

 

「私は、聖杯戦争に参加します」

 

 しっかりと視線を合わせながら、つっかえることも無いまま美奈は己の決意を宣言した。

 

「私はこの人に助けて貰ったから、だからここで逃げてこの人の願いを潰すような事はしたくないからだから。私は、聖杯戦争を、戦う」

 

 それは彼女の精一杯の決意の表現であった。

 

「そうか…」

 

 その決意表明を受けて正裕は少し残念そうに漏らす。

 

「じゃあ次だけど、君はこちらとの同盟を受ける気はある?」

 

「一つ聞きたいんだが」

 

 その問に対して質問を返したのは美奈ではなく彼女のサーヴァントであるアーチャーである。

 

「同盟を組めば確かにこっちにはメリットがある。何せこっちは魔術師未満のマスターだ、半人前以下だと言っても良い。同盟を組むことでフォローしてもらえるならこっちとしては助かる。だけど、そちらのメリットは何だ?何を考えてこちらとの同盟の望んでいるんだ?」

 

 感情を消して正裕を見つめるアーチャー。その言葉と表情の奥には正裕による裏切りへの警戒がある。

 

「メリットはいくつかある」

 

 だからこそ正裕は堂々と話し始めた。私心など無いのだと、その心配は杞憂であるのだとそう伝えるように。

 

「まず、サーヴァント二人が組めば勝てる確率は間違いなく上がる。何せサーヴァントは七人、その3分の1近くがひとつにまとまるなら勝率は大きく上がる。そして、半人前のマスターの動きをコントロールできる。これは自分の思うようにする為ではなくて、下手な事をして聖杯戦争が続けられなくなる事を避けるためだな。あとここまで教えておいて、放り投げるのも後味悪いしな」

 

 アーチャーは表情を変えない。そう、ここまでは普通の話。アーチャーの感情を動かすには足りない。だからこそ正裕はここであえて普通ではない話を口にする。

 

「そして最後、聖杯を求めるなら同盟を組んでいた相手とも潰しあわなきゃいけないが、それが半人前のマスターとそのサーヴァントなら勝てる確率が高い。要するにだ俺は俺達の勝利のために同盟を組もうと言っている」

 

 あまりにも傲慢で自分本位な宣言。それを聞いた美奈は唖然として口を開き、アーチャーは眉をひそめ、正裕のサーヴァントであるキャスターまでもが呆然としていた。

 

「つまり」

 

 怒気を孕んだ声が響く。

 

「俺達を利用して捨てるために同盟を組むと?」

 

「捨てるなんてとんでもない。最後に勝つか負けるかなんて所詮は実力次第さ。悔しいのならお前たちが勝てば良いだけだろう」

 

 殺気すら滲ませたアーチャーの問い掛け。それを前にして正裕は飄々と答えてみせた。

 

「それに、利用するのはお互い様だろう。そちらは俺達に助けてもらう、そしてこちらはそちらと組んで最後の戦いまで確実に駒を進める。そちらも一緒にだ。捨てるなんて的外れもいいところだろうよ」

 

 にやりと不敵に笑ってみせる正裕。

 

それを受けてアーチャーは

「はははは、なるほどそりゃそうだ」

心底おかしそうに笑いだした。

 

「確かに最後に俺が勝てばいい、それだけの話だ。利用するのもお互い様だし、最後まで進めるのはこちらも同じか。そりゃあその通りだ、はははは」

 

 そう言って笑い続けるアーチャーを誰もが唖然として眺めていた。

 そうしてひとしきり笑ったあと、アーチャーは居住まいを正して言った。

 

「マスター、この同盟受けよう」

 

「いいの?」

 

 散々同盟に反対していたはずのアーチャーによる提案に思わず問い返す美奈。

 

「変に取り繕おうとしない物言いも気に入ったにし、何よりサーヴァント相手にこれだけの啖呵を切れるやつはいない。いい同盟相手になるよ」

 

 そう言ってニヤリと笑うアーチャー。

 

「それじゃあ同盟を受けてくれるのか?」

「ただし」

 

 思わず表情を明るくする正裕。そんな正裕の出鼻を挫く様にアーチャーはぴしゃりと言い放つ。

 

「ただし?」

 

 思わず身構える正裕。その様子に満足したのかアーチャーは笑みを浮かべながら言った。

 

「もし俺が消えてもマスターを殺すような真似はするなよ」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 力強く宣言した正裕は更に続けて、

「そっちもキャスターが消えた時は頼むぞ」

冗談ぽく笑いながらそういった。

 

 アーチャーは呆気に取られてしばらくは固まった後、

「任せてくれ」

そう言ってそれを請け負ったのだった。

 

 

 

 斯くして、緑の勇者と白い魔王の2つの陣営はここに同盟を締結したのである。

 

 




よし、説明回終わった!
話が進む!

前回のタイトルから①の記号を外しました。
本当は今回もまるまる一話聖杯戦争について語る予定だったのですが省略したので。
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