Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王 作:天々
「話がそれたな、ここの守りなんだけどどうだ?」
名前を付けたあと、アーチャーは顔を少し顰めながらプロピーに尋ねた。
「どう、とは?」
アーチャーからの質問を受けてプロピーが問い返す。
「お前一人でここを守れるかどうかだ」
アーチャーの返答を受けてプロピーは顎に手をやり黙考し、やがて顔を上げて答えた。
「厳しいですね。今回はドアからのみでしたし少数でしたが、さらに多い戦力でドアや窓から入られれば対処できません。できればもう少し戦力がほしいです。それこそサーヴァントに食い下がれる程度にあれば理想的ですね」
「そうか、わかったありがとう」
その要望を聞いて、アーチャーはしばし考えた後、美奈の方へと向き直った。
「マスター、このアパートを俺の領域として固定したいんだけどいいかな?」
「領域?結界みたいなもの?」
提案を受けた美奈はそう尋ね返した。
「まあそんな感じだな」
「アーチャーの領域にすると何ができるの?」
美奈が更に具体的な内容について問い質す。
「俺が活動しやすくなる。そのままだと制限がある使い魔も使えるし、領域内の状況もわかるから不意打ちも防ぎやすくなるな」
アーチャーの告げたその内容ははまさにいいこと尽くめであった。
「じゃあ、お願いしていい?」
それならば、と美奈は許可を出す。
「それじゃあ行くぞ」
許可を得たアーチャーはそう言って片膝をつくと、右手を軽く上に挙げる。その対面にいた美奈はその手に『目に見えない何か』が集まるのを感じていた。
(ああ、これが魔力なんだ)
美奈がそんな感慨に浸っていると、それが禍々しさすら覚える不快なものに変化する。そしてアーチャーはそれを床に叩きつけるようにして振り下ろした。
『混沌なる――(キャッスル)――』
「ちょと、まっ――、うっ…ぐっ…」
美奈が慌てて引き止めるその寸前に宝具が発動し、美奈は苦しみのあまりその場でうずくまった。
「で、説明してほしいんだけど」
部屋の中で仁王立ちした美奈は、その前に正座しているアーチャーを睨みつけていた。ちなみにプロピーはいない、彼女はアーチャーが既に魔力に還していた。
「その、ごめんなさい。あれが一般人には毒だって忘れてました」
恐縮のあまりアーチャーの返答は敬語であった。
「忘れごとが多いのね…」
呆れたような美奈の冷めきった声音に、アーチャーは首をすくめる。
「まあ、いいけど。とりあえず今のやり方は無しってことで別の方法を考えないとね」
ため息を吐きながら、前向きな意思を見せる美奈。
取り敢えず赦されたらしい事に安堵しながら、アーチャーはそっと提言した。
「あの、多分影響は抑える様にできると思うんだけど…」
「はじめから、やりなさい」
「うっ」
美奈にぴしゃりと言われて再び恐縮するアーチャーであった。
「これでいいかな?」
領域の調整を終えたアーチャーが美奈に確認した。
「んー、良いんじゃない?」
先程の件で魔力を感じれるようになった美奈が周囲の魔力を探ったあとでそう返答した。結局アーチャーの宝具の影響は注意深く探れば違和感を感じる程度に抑えられていた。
「ふう良かった…」
美奈からの承認を受けたアーチャーはほっと胸をなでおろした。
「そう言えばさっき使ったのって宝具なのよね?」
「そうだよ」
美奈の問をアーチャーは肯定する。
「その…宝具の真名に聞き覚えがあったんだけど…、あれって何かの魔王の別名じゃなかったけ?確か、何十年かに一度蘇るとかいう…」
(ああ、またか…)
恐る恐る尋ねる美奈。そんなマスターの様子に少しの寂寥感を覚え、アーチャーは「はあ」とため息を一つつくとそれについて説明すべく口を開いた。
「確かに俺は生前魔王なんて呼ばれる存在だった。でも俺自身は魔王らしいことはしていないし、する気もない」
「そうなの?」
予想とは違う返答に美奈の顔から僅かに怯えが消える。
「でも、伝説だとそんな感じじゃなさそうだけど」
美奈が聞いた伝説において、その魔王は世の人々に恐怖と絶望を撒き散らす存在であったという。それについて確認すると、
「それは俺の前に魔王だったやつだな」
そんな返答が帰ってきた。
「前?」
「俺は魔王が転生した人間だったんだ。俺が生まれる少し前に魔王が滅ぼされたんだけど、魔王の力自体は世界に残った。そしてそれを受け継ぐ器になったのが俺だ。でも俺自体は魔王なんかになりたくなかったから力はほとんど使わなかったんだ」
彼は確かに魔王であったがそれを望まなかった。それ故に彼は英雄なのだ。魔王を己の中に秘めたまま世に出さず、魔王の復活を望む人間を退けた彼は、魔王でありながら反英霊ではない特異な英霊であった。
「ごめんなさい、私貴方を疑ってた」
それを聞いた美奈はアーチャーへ謝罪した。
彼女はアーチャーを疑っていた。魔王である彼は本当は悪人で、自分を騙して聖杯を手に入れようとしていたのではないかと。
「仕方ないさ、そもそも教えてなかった俺が悪いんだし」
そう言って、彼は美奈へと手を差し出した。
「そう言えばちゃんと自己紹介できてなかったな。俺はアーチャーのサーヴァント、真名は――――だ。これからよろしくマスター」
「私は白山美奈。よろしくね、アーチャー」
美奈はそう言って笑顔を浮かべると、力強くその手を取った。
差し込む朝日が、手を繋いで見つめ合う二人の姿を照らし出していた。まるで二人の門出を祝福する様に。
「ところで貴方の真名に聞きおぼえがないんだけど…」
「ああ、それは…」
彼らの話はもう少し続きそうであった
『混沌なる――(キャッスル――)』
ランク:?
種別:?
レンジ:?
最大補足:?
由来:?
掌握した土地をアーチャーの『城』として機能させる。
『城』となった土地はアーチャーの領域となり、その中の状況をアーチャーは把握できる他、アーチャーの使い魔に存在する特殊な使役制限が緩和される。一般人が入り込めば一晩で死ぬような環境にもできる、というか何も考えずに使えばそうなる。
真名の前半のみ判明しているが…?
美奈さん情緒不安定。まあ彼女なりに現在の状況に対応しようとしているということでもあります。……完全にキャパオーバーしてますが。
そろそろアーチャーの真名をわかる人も出てきそう。