Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王   作:天々

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ペースを…取り戻す…!
2017/09/21ランサーの予測について修正


七話 初戦を終えて

 セイバーとランサーの交戦を上空から偵察した後に帰還してきたライダーを前に、しゃがみ込んでその顔を眺めながらライダーのマスターであるフォリオは彼から話を聴き取っていた。しかし、

 

「ぽーよ?」

 

 きょとんとした顔で、身体をかしげるライダー。聴き取りは遅々として進んでいなかった。

 そもそも片言しか喋れず幼児並みの知能しか持たないライダーである。どんな質問をしても先程のような反応しか帰ってこないのであれば聞き取りは無駄であった。

 フォリオはライダーの知覚を横取りして映像や音声の情報は抑えている。この聴取は英霊として戦士としての見分を欲していたが故であった。

 

「はぁ」

 

 半ば予想していたこととはいえ、その現実にげんなりしてため息をつくフォリオ。

 

「じゃあ最後に聞くぞ。お前はアイツラに勝てそうか?」

 

「ぽよっ!」

 

 これなら流石に答えられるだろうと期待したその質問、それに対してライダーは元気よく右手を上げて答えた。どことなく顔つきもキリッとしているその姿は幼稚園ならはなまるを貰えそうである。ここは幼稚園でもなく、ましてや目の前にいるのは園児などではなくサーヴァントという英霊の写し身なのであるが。

 

「……まあ、勝てるのならいいか」

 

 その姿に毒気を抜かれたのか、フォリオは呆れたように表情を崩すと部屋に置いてあるベッドに飛び込んだ。流石に今夜はこれ以上の戦闘は起きないだろうと考えてのことである。そして何より彼は異様に気疲れしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、あのキャスターめ!」

 

 彼、荒見冬馬は怒り狂っていた。

 彼はバーサーカーのマスターである。風宮市において聖杯戦争が開催されるに当たり協力者として招かれた彼は、しかし思うように進まぬ戦況に腹を立てていた。

 必勝を期したはずの召喚は失敗し、キャスターに横入りされてアーチャーの始末はできず、結果的に貴重な魔力を浪費したのみである。

 また、怒りの捌け口になる対象がいないことも彼の鬱憤を加速度的に溜めさせていた。彼の鬱憤の原因となるサーヴァントはバーサーカーである、理性の無い彼に下手に当たり散らせばどのような反応を返してくるかわからない。最悪襲い掛かってくることも考えられ、そんなことで令呪を使うのは無駄遣いもいいところであった。

 

「くそ、魔力を補填するしかないか」

 

 椅子に荒々しく腰掛けながら、冬馬は苦々しく吐き捨てる。とにかく魔力が足りなければどうしようもない。そう考えた冬馬は使い魔に市井からの魔力の徴収を指示するのだった。

 その判断が彼に更なる波乱を呼ぶことを知らないぬままに。

 

 

 

 

 

「ランサー、セイバーと戦ってみてどうだった?」

 

 神奈が間借りするマンション一室で、神奈はランサーから交戦への意見を求めていた。

 

「そうだな……、流石に最優のサーヴァントと言われるだけのことはあると感じたな。マスターはステータスを見れたのだろう?どうだったあのセイバーは」

 

 所感を軽く述べた後、ランサーはマスターへと問いを返した。

 マスターにはサーヴァントのだいたいの強さを見る事のできる透視眼を与えられる。それを使えば、筋力や敏捷といったステータスを大まかに見透せるのである。

 

「そうね…、ランサーより弱いくらいじゃなかったかしら」

 

 ランサーの視界越しに見えたセイバーのステータスを思い返しながら神奈は漏らす。

 ランサーはそれを聞いて「やはりか」と呟き、顎に手をやり考え込む。

 

「マスター、多分セイバーには何かある。実際に戦ってみてわかったが、奴はセイバーにしてはステータスが異様に低い。何かしらのハンデを背負ってるのか、もしくは宝具による代償でもあるのかどちらかだろうな」

 

「宝具による代償、つまりその分強力な宝具を所持してるということ?」

 

 ライダーの推測を受け、神奈はそれの意味することを悟った。

 強大な力は時として持ち主に何かしらの代償を強いる事がある。聖杯戦争で代表的なのはバーサーカークラスの狂化スキルであろうか。サーヴァントのステータスを上昇させる代わりに理性を奪うという呪いじみたスキルである。それと同じような代償の代わりに何かを授ける伝説など枚挙に暇がない。今回の場合は力を奪われているが、その分のリターンがあるはずであった。

 

「あと、さっきのセイバーは代償だけ支払ってリターンを得ていないようにも見えたな。終始戦いづらそうにしていたし、代償を支払わせる様な類のものはもっていなさそうだった。あの剣がそうだったのかもしれないが多分違うだろうな。あれは代償を求めるような魔剣とは違う、俺の見立てでは聖剣よりだ。生前にはどちらにも縁があったからな、何となくだがその辺は分かる」

 

「なんですって?」

 

 ランサーのその言葉に神奈は怪訝そうに顔を歪ませた。

 ランサーの推測通りならセイバーはただ自分を弱くしただけである。なぜそんな事をするのか神奈には考えつかなかったのである。

 

「多分、様子見だろうな。初戦から全力を出すサーヴァントはいない、そう高を括って俺達をまんまと実験台に使った訳だ。俺自身全ての手札を見せたわけじゃないが何とも大胆なことをする奴だ」

 

 そう忌々しそうに吐き捨てるランサー。

 今までの堂々とした態度を崩して感情を顕にするその姿を見て、神奈はふと心細くなった。

 

「勝てるの?」

 

 不安げに尋ねる神奈。その姿を見て、ランサーはその不安を吹き飛ばす様に不敵に笑ってみせる。

 

「安心しろ、マスター。マスターの実力不足による能力低下の可能性だってある、俺の予想が全てでは無いだろう。それに切り札を伏せているのはお互い様だ。ならば俺がこの槍を以て切り札ごと相手を蹴散らしてしまえばいいだけの事さ」

 

 堂々と宣言するランサー。その言葉に勇気づけられ、神奈の眼に力が戻る。

 

「頼りしてるわよ、ランサー」

 

「フッ、まかせておけ」

 

 神奈の言葉を、ランサーは気障に笑って返した。

 

 




各陣営のお話。
交戦後について触れられてない残り三陣営を纏めて書きました。
そろそろ話を動かせそうかな。
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