Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王 作:天々
「魂喰いか」
拠点として間借りしているウィークリーマンションの一室で、朝食を摂りながらローカルニュースを見ていた小野正裕はポツリとつぶやいた。
最近風宮市の街中で意識不明になる人間が多く出ている。そのニュースを見たとき、正裕は即座にそれの原因と思しきものに思い当たった。
魂喰い。それはその土地に住まう無辜の人々の魔力を食らい、サーヴァントの力に変える行為である。サーヴァントは魔術師の魔力を大量に消費する。加えて宝具を解放するとなれば更に甚大な量の魔力を持っていかれるのである。それをカバーする為に行われるのが魂喰いであった。しかし魂喰いを行うと世間に異常が漏れ、最悪の場合魔術の存在が世間に露見してしまう。故に魂喰いをやりすぎれば聖杯戦争を管理する教会や魔術師の組織である魔術協会から狙われる羽目になる。制裁の理由に人を襲う事に関する禁忌が無いのは正裕としてはやや不愉快だが、最終的に下手人が排除されれば問題はあるまい。
「普通の聖杯戦争だと、まあキャスターが犯人であることが多いんだけど」
そう漏らしながら、正裕は手にしたカップを傾ける。
キャスターは絡め手を得意とするサーヴァントが多く、魔術を得意とするだけはあり魂喰いに適性のあるサーヴァントが多い。そもそも英霊達はこの手の無辜の民を犠牲にするのを嫌う事が多いが、キャスターは魔術師のクラスだけあって変わり者も多い上、そもそも魔術師である為にその手の倫理観が抜けている事もあるようだ。
「疑われるのは癪だよなあ」
そう言って正裕はため息をつく。
今回キャスターを召喚しているのは正裕であり、それはすなわち疑惑の中心にあるという事でもある。そして正裕は魂喰いをやっていないし、サーヴァントが隠れて魂喰いをしているという疑念もなかった。彼がサーヴァントとして従えているのは国一つを救った英雄であり、善性の象徴とも言える英霊である。魂喰いを指示したらむしろ反旗を翻されてもおかしく無い。それは、この数日の彼との交流を通して何となく察していることであった。
しかし、そうなるとどこの陣営の仕業なのか。
「バーサーカーかな」
バーサーカーはとりわけ膨大な魔力消費を要求するクラスである。魔力不足を補うべく魂喰いを行うのは自然だ、そして何よりマスターでもなかった美奈が襲われたという話とその後バーサーカーと戦っていた事を鑑みればバーサーカー陣営が一般人を襲って魂喰いを行っていたという推測が成り立つ。
「一応確認は取るか」
そう言って食卓を立つと、正裕は美奈のところへ向かうべく身支度を整え始めた。