Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王   作:天々

4 / 24
ストックは完全に尽きた!
そしてやはり見せ場はない。





2017/8/5文章を諸々訂正
8/30アサシンの台詞を微修正


四話 少年

「それで、どういうつもりで俺達を助けたんだ?」

 油断なくナイフを構えながら、緑衣のサーヴァントに問を投げる。緑衣のサーヴァントは手にした弓の実体化を解いて魔力に還すと、涼やかな笑みを浮かべた。

「いや、そこの子がどうにも聖杯戦争のことをわかってないみたいだったからね。覚悟を持った参加者でもないマスターを射殺す、というのも目覚めが悪いじゃないか」

「なるほど」

 その発言を受けて、アーチャーは軽く唇の端を持ち上げた。

 巨漢のサーヴァントを撃つことができたということはサーヴァントから離れていたマスターを狙えたというのと同義である。

 マスターを失えばサーヴァントはその存在を保てなくなる。なぜならサーヴァントはマスターの魔力供給と、マスターとの縁に頼って現世に留まっているからだ。

 そのマスターを放置したならば、相手にはすぐにこちらをどうこうする気は無いだろうと推測できた。

「それで?そこの子は聖杯戦争についてはどこまで知っているのかな?」

「え?わ、私?」

 話についていくことができずに今まで固唾を飲んで状況を眺めていた少女は、唐突に話を振られて、驚きに身をこわばらせた。

「えーと、その、何か魔術師の殺し合いだとか言うのは聞いたけど…」

「マスター!」

「えっ、あっ、ごめんなさい!」

 問に答えようとした美奈へとアーチャーが叱責する。

「なるほどね」

 緑衣のサーヴァントは相槌を打つと、数秒何かを考えるような顔つきをして、

「どうだろう?良ければうちのマスターから色々説明してあげられると思うけど、会ってみる気はない?」

そんな提案を持ちかける。

「断る」

 少女が返答するより早く、アーチャーが拒絶した。

驚きを顔に浮かべる少女と、「まあそれはそうだ」と言うように肩をすくめる緑衣のサーヴァント。

「理由は?」

「悪いがそちらを信用できない、こちらを誘い込んで令呪を奪われる可能性だってあるしな。そもそもマスターが聖杯戦争について知らないなんて誰が言ったんだ?」

 アーチャーはそう返すが、美奈の反応を見ればあからさまに聖杯戦争について詳しくは知らないと言っているようなものではある。しかしここで弱みを見せるわけには行かなかった。

「あはは」

 投げた問へに対する冷たい返答にバツが悪そうな顔をして、緑衣のサーヴァントはぽりぽりと頬を搔いた。

「それじゃあ、こっちから出向いたらどうかな?」

 そういっていたずらっぽく笑う緑衣のサーヴァントをアーチャーは怪訝そうに見つめ……、近づいてきた何者かの気配に公園の入り口へと視線を向けた。

 そこにいたのは一人の男性である。頭の先から踝近くまでをすっぽりとローブで覆い隠している。顔の辺りは流石に露出しているのだが、幻惑の術でもかかっているのかどうにもぼやけてよく分からない。その周囲には魔道の気配を漂わせ、見るものが見れば彼の正体が魔術師であることが伺い知れるだろう。

「はじめまして。僕がそこのサーヴァント、キャスターのマスターだ」

 そう言って来訪者、キャスターのマスターである小野正裕は芝居がかった仕草で一礼した。

 

 

「キャスター?」

 正裕の言葉を受けて、青年のサーヴァントが怪訝そうに顔を歪めた。

(まあそうだよな)

 かつての自分と同様の反応をみて、正裕は胸のうちで賛同した。

 剣を背負い弓を扱うキャスターなど普通は想像し得ないだろう。

「とにかく、そいつはキャスターで俺はそのマスターだ。さて、えーと…」

 正裕は言葉を詰まらせると、

「すまないそちらのクラスは何だろうか?」

 そう青年のサーヴァントに問いかけた。

 サーヴァントはクラス名で名乗り、呼び合うのが普通である。しかし、青年と巨漢のサーヴァントに関しては特に名乗りもなく会話もなく戦闘を行っており、結果としてクラス名が不明のままであった。まあ巨漢の方に関してはバーサーカーであろうと予想されてはいたが。

「俺のクラスはアーチャーだ」

 そう答える青年のサーヴァント、もといアーチャー。

「アーチャーか、了解した。さてアーチャーとそのマスターに提案がある、こちらと同盟するつもりはないか?」

 右手を差し出しつつの提案。

「私は…」

「断る」

 しかしその提案は先程と同じくアーチャーによって却下された。しかもマスターの発言をぶち切って。

「助けてくれたことに感謝するが、そこまで信用はできない」

 そう告げるアーチャーの傍らで彼のマスターはおろおろしながら事態を眺めていた。

 そんな彼女の姿を見て微笑ましく思いながら、正裕は更に話を続けた。

「そうかそれは仕方ない。だがアーチャー、君のマスターは見たところ魔術師未満の見習いだ。それでも同盟は組まないというのか?生き抜く上で味方はいたほうがいいぞ、お互いにな」

 アーチャーの顔が一瞬歪んだ後、すぐに平静を取り戻す。どうやら図星のようであった。

「隠したくなる気持ちもわかるけどな。こちらも魔術師としての流儀を知らないままに聖杯戦争に参加されても困るんだ。同盟は組まなくてもマスターと話だけはさせて欲しいのだが」

 正裕の要請を受けてアーチャーは苦々しそうに顔を歪め、やがて大きなため息をついた。

「仕方ない、か」

 諦めたように、アーチャーの口からぽつりと言葉が漏れる。

「とりあえず、ここは監視されてるだろうから場所を移したほうがいいと思うんだけど」

「そうだなそうしよう」

 自らのサーヴァントからの進言に正裕は軽く頷いて同意を示す。

 サーヴァントの戦いは監視するのが定石だ。敵の情報は大いに越した事はないのである。運良くサーヴァントの真名やマスターの居場所や素性を探れれば、それは勝敗をも左右しかねない貴重な情報である。

「監視、か」

 アーチャーが呟き、ぐるりと首を巡らせそして、

「そこか」

 四方へと雷撃を放った。

 電撃は藪の中、電柱の上方、遊具の陰等にとんでいきそこにいた何かを黒焦げにした。

 どうやら潜んでいた使い魔を一掃するための攻撃であったらしいそれにより自身の使い魔も撃墜され、正裕は使い魔からのフィードバックを受けて軽くよろめいた。

「俺の使い魔もいたんだが、出来れば相談してからやってくれ」

 恨みがましく漏らす正裕を、しかしアーチャーは横目でちらりと見たのみにとどめた。その視線は公園のとある一点を凝視したまま動かない。

「おい、そこのサーヴァント。そこにいるのは分かっているからさっさと去れ」

 アーチャーの忠告の後、何もなかったはずの場所から何かの気配が滲み出した。唐突に現れたその何かにアーチャーを除く三名は身構える。

「へえ、スゴいね。俺のこと見えるんだ」

 幼さを残した気楽そうな少年の声が響き渡り、サーヴァント二人は怪訝そうに眉をひそめる。

「良いよ、引いてあげる。サーヴァント二人じゃ分が悪いし」

 気配を消して潜んでいたことを考えるとアサシンであるはずなのだが、その言葉からは暗殺者の冷酷さと程遠い無邪気さを感じさせた。

「じゃあね」

 直後その気配が消えた。

 アーチャーは周囲を見回すと「ふう」と軽く息を吐く。

「これで近くに監視はいなくなったはずだけど」

「助かったよアーチャー。多分あれはアサシンだろう。あんなのに追跡されたらたまったものじゃない」

「まったくだ、周囲を探って正解だったよ」

 キャスターの言葉を受けて、アーチャーはその顔に少しの安堵を浮かべた。

「あのー、アサシンって暗殺者のことだよね?」

「それは後で説明しようか。とりあえず場所を変えてからだ」

 不安そうに尋ねる美奈への解答を先送りにして、正裕はその場を離れるよう三人を促すのであった。   

 

 

「いや~まさか見破られるなんて思わなかったよ!」

 呑気な声を上げて帰還してきた少年の姿をしたサーヴァントに軽く殺意を覚えつつ、アサシンのマスターである彼は己の従者を問い質した。

「何故アーチャーのマスターを殺さなかった?」

 アーチャーとバーサーカーらしきサーヴァントの戦闘が始まった際、彼はアサシンにアーチャーのマスターを殺すよう命じていた。しかし、アサシンはそれを拒否していたのである。

「だって何も知らない女の人を殺すのなんて嫌だし」

「は?」

 予想外の理由を聞かされて、彼は二の句をつげなかった。まさかアサシン、暗殺者のクラスであるサーヴァントがそんな理由で相手のマスターを殺すのを躊躇うなど誰が思うものか。

「それにあの時手を出してたら多分アーチャーとバーサーカーを同時に相手するハメになったと思うぜ。あそこは手を出さないのが一番。そうじゃない、マスター?」

「まて、何故バーサーカーまで敵に回る?」

 無邪気に笑いながら言うアサシンに問う。

「ん?だってマスターがバーサーカーのマスターだったとしたらどっちを狙うんだ?」

「まずアーチャーはアサシンを攻撃するだろうし、そしたらバーサーカーはフリーになるか。アーチャーはマスターが死んで放置しても問題ないし、そうなると…」

 問い返されてアサシンのマスターは思考を巡らし、はっと気がつく。

「そうか、バーサーカーのマスターにはアーチャーを攻撃する理由がないのか」

「ピンポーン、大正解」

 大輪の笑顔を咲かせるアサシン。その姿もあいまってとても微笑ましいものである。

「それにほら、オレアサシンじゃん?そしたら真っ先に潰したいと思うよね、そんな危険なやつはさ」

 アサシンが気配を消してのマスター殺しを得意とする以上、どのマスターもアサシンの存在を恐れている。そんなアサシンが目の前で姿を表したら全力で潰しにかかるに違いない。

「ああ、そうだな…」

 従者、それもこんな少年の姿をした、に言い負かされて彼は意気消沈する。

(悪いサーヴァントではないと思うんだけどな。うん)

 彼が気を沈めた理由はそれだけではない。

 本来彼が狙っていたのは別の英霊であった。

 その英霊は忍びの頭領の長子であったが、その忍びたちの力を恐れた大名に里を焼かれた。しかし彼は生き延びることとなりやがて大名の首を獲り、仲間達の仇を討ったという。

 その大名の暗殺劇自体に謎が多いために数ある伝説の一つ、いわば与太話の一つ、として語られていたのであるが、アサシンのマスターはその英霊の遺品を得ることに成功したのであった。

 その遺品を触媒にして呼び出されたのが彼である。

 しかし彼はその英霊そのものではなく英霊の義弟に当る人間であり、その英霊よりも弱いらしい。

(まったくどうなることやら…)

 この先の展開を思い、彼は頭を抱えずにはいられなかった。




【CLASS】アサシン
【マスター】?
【真名】?
【身長・体重】145㎝・47kg
【イメージカラー】金
【属性】秩序・善
【性別】男性
【特技】パズル
【好きなもの】義兄
【嫌いなもの】不義
【天敵】?
【ステータス】 筋力C 耐久C 敏捷A 魔力D 幸運B 宝具C

『保有スキル』

<クラス保有スキル>
・気配遮断(C)

<固有スキル>
・直感(C)
・軽業(C)

【解説】
・気配遮断
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば、発見することは非常に難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

・直感
  戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。

・軽業
 身の軽さ。
 ほとんどの地形で十全に戦闘力を発揮できる。


<所有宝具>

不明
ランク:?
種別:?
レンジ:?
最大補足:?
由来:?
詳細不明
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。