底辺プロトレーナーぼく、明日から頑張る   作:ねこまんま

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少し際どい話もありますのでご了承ください(下ネタや犯罪的なの)


第3話

 

 

 

 

 

 

〜キンセツシティ、上空〜

 

 

 

 

初夏の微かに差し込む日差しの中、1人の可憐な少女が双眼鏡を片手に空に羽ばたく鋼鉄の皮膚を持つ飛行ポケモンの背に乗っていた。紫色の長い髪に水色を基調とした被るタイプのゴーグルに飛行服を身につけている。

 

エアームドの背に乗る少女の名はナギ

ヒマワキシティのジムリーダーである

 

 

 

「はぁ、なぜこんなことに・・・。」

 

普段は穏やかな彼女だがほのかに哀愁を漂わせていた。エアームドの鋼の鎧は太陽を浴びて彼女の細い脚に熱を与える。時折双眼鏡を除いてある家のリビングの窓を覗く、ジュンサーさんから職務質問をされそうになったが、なぜか敬礼だけをして去っていった。バードウォッチングをしていると思われたのだろう、ジムリーダー万歳

 

 

彼女はむろんバードウォッチングに勤しんでいるわけではない。ただ自分が気にかけていた後輩の頼みを聞いた結果、ただそれが犯罪行為に近かっただけの話だ。だが手段を選んだのは彼女の独断であるが・・・

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

数日前

 

 

 

 

〜ヒマワキシティ〜

 

 

 

 

建物はヒマワキジムを除いてほとんどがツリーハウスの変わった特色のこの街にツツジが訪れていた。まだ年端もいかぬ少女であるが彼女の身の安全は彼女自身の実力で保証されているため、一人で遠出をすることに不安を覚える者は誰もいなかった。

 

 

「ふーん、友人のニートを連れ出してほしいと?」

 

ヒマワキジムの一室でツツジはナギへ1つの頼み事をするために訪れていた。彼女は目をキラキラさせながらナギを見つめる。ナギは自分が慣れないジム作業や同性の先輩としてアドバイスをしていたためによく懐かれ頼られていたのである、ツツジはミントの引きこもりを改善させるには自分の力では足りないと感じ協力を仰いだのだ。

 

「はい!取り敢えず鳥ポケモンか何かで誘拐しちゃってください!」

 

「は?」

 

ツツジの突拍子もない頼み事にナギは戸惑う

 

「兄さ・・・、ミント君を狭い世界から引きずり出すために、荒療治も必要なんだと思ったんです!」

 

ツツジはきっかけが大切だと考えていた。ミントも元々はトレーナーとして旅へ出てプロ資格を待っている。なぜあの様になってしまったのかは知っており、それを脱却させるには強い何かが要ると感じたのである。

 

とにかく外の世界の素晴らしさ、これをミントに再認識させなければならない。ツツジはそう思っていたからこそ何度も旅行や遊びに連れ出していたが、現実の域を脱することは難しい。そこで鳥ポケモンの力を借りて空を飛べば何か歯車は変わるのではと考えたのである。

 

ツツジの説明を聞いたナギは正直、乗り気ではなかった。幼馴染のニートのために激務の合間を縫って気にかけてやる必要がないと以前から感じていたからだ。

 

(彼女の年頃じゃ年上の男の子が魅力的に見え過ぎるモノ、どうせニートなんてデブでニキビ兼クソ眼鏡の底辺でしょ。)

 

だが可愛い後輩の頼みを聞かないわけではない、気づかれない程度の冷めた目でニートの改善計画を話し合った。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜ナギside〜

 

 

 

 

 

 

(でも私はいつまでこうしておくのかしら、だいたいニートが出てこないとダメじゃない。)

 

ナギはエアームドの背に乗ってほんの少し苛立ちを覚えていた。そろそろ1時間ほど監視と張り込みを続けていたがターゲットが動く気配はない。双眼鏡を使って窓から見えた景色にかろうじてニートの背中を確認できる。

 

彼女がそろそろ出直そうかと悩み始めたころに一台の側面に大きなプリントがされたトラックが家の前に止まった。黒い帽子と杖を持ったピジョットがシンボルの全国にシェアを持つ大手運送会社のモノである。中から運転手が降りると積荷の中から両手にギリギリ収まる程度の段ボールを持って門の横にあるチャイムのボタンを押した。

 

「すみませ〜ん!ピジョット運輸の者ですが、お荷物をお届けに参りました〜」

 

ツツジはこの家の荷物だと察して素早くエアームドを入り口から見えない背後へ移動させる。今回はニートをエアームドで誘拐して大空を旅を行う算段であり、ターゲットにこちらの狙いを読まれて家の中へ逃げ込まれたら厄介であるからだ。

 

鍵が開く音がしたあとにゆっくりとドアが開いた。黒いサラサラな髪と痩せている人が出てくる。さきほど双眼鏡で見ていた特徴と一致しており、ヤツがニートであると判断した

 

「あぁどうも、お疲れ様です。」

 

「それでは、ここにサインを」

 

ミントはボールペンを受け取り受取人の欄に自分の名前を書き込んだ。

 

「エアームド、GO」

 

荷物の受け取りの手続きを済ませ荷物を受け取ろうとする瞬間をナギは狙った

 

 

エアームドは狩りで獲物を捕らえるかのごとく急降下をして、鋭い爪でニートの肩と二の腕の間を掴んだ。自分の爪が突き刺さらないようにしながら力を込めると再び空へ飛んだ。

 

 

「「ファッ⁉︎」」

 

ピジョット運輸の社員とミントが声をあげ終わる頃にはエアームドは空高く飛びその場から去っていった。戸惑う社員はジュンサーさんに連絡を取ろうとすると肩をちょんちょんと叩かれた。振り向くとジムリーダーの少女がおり友人へのサプライズであることと荷物を受け取るとの趣旨の説明を受けた。彼はジムリーダーが荷物を窃盗するとは考えにくいだろうと判断して素直に渡してトラックで次の配達先へ向かっていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜ナギside〜

 

 

 

 

 

 

「え〜っと、エアームドさん?僕を離して欲しいんだけど、地上でとかだと嬉しい。」

 

ニートはエアームドへ語りかける。素直に話し合えば分かり合えると思ったのだろう。

 

「ツツジちゃんに頼まれたのよ。だいたい貴方ねぇ、女の子に心配なんかさせるなんて男としてどうかと思うわ。」

 

ナギは呆れたようにエアームドが餌としてニートを誘拐したのではなく人間の指示であるということを伝える。彼女はツツジの悩みのタネを摘むためにニートへ厳しい言葉を投げかける。このまま自分のペースで説教を続けようとしたが、一瞬だけニートが全身を小さく痙攣させるように震えたのが見えた。何か身体に異変が起きたのかとナギは思った

 

「・・・おろしてくれ。」

 

だが普通に会話ができるようで、ナギは自身の杞憂であると理解でき少し安心したようだ。だが少し思いつめたような声でように感じたナギはニートの様子を確認しようとエアームドの翼から顔を覗かせながら声をかける。

 

「もしかして高所恐怖sh...っ⁉︎」

 

ニートは自分の方を向いていたために自然と目が合う。ナギは驚いたように数秒間固まるとゆっくりと体制を元へ戻す。目を何度かパチクリさせると彼女は心の中で絶叫した

 

 

 

(カッコいいじゃないのぉぉぉぉぉ〜〜っ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

ナギはニートに対する偏見が一般的な認識より強かった。彼女のしっかりしている性格がニートという存在に対して無意識に毛嫌いしていたからである。ミントは逸脱しているほど容姿がよいわけでない、もちろん顔面偏差値は60は硬い。だが顔を武器とするモデルや俳優と比べると、やはり見劣りするのも事実である。しかし今のこの状況でナギはミントに心を奪われかけていた。

 

ニートという下劣で醜い、極論を言えば人間よりのオークのような印象しかなかった彼女にミントのような恵まれた容姿であったからこそ効果が著しかった。

 

つまりギャップである、メガネをかけている平凡な男性がそれを外した途端にイケメンであると判明したとき女性は弱い傾向にある。それはその男性がもともと優れた容姿でありメガネが偶然似合っていなかったからにすぎない。

 

メガネを外したらイケメンなのではない

それは元々、皆がメガネをかけた平凡な男と認識してしまっているからで当人は初めからイケメンなのだ

 

 

 

つまりこのギャップ現象が今も起きていた、ナギは自分がこの少年に好意を抱いていると理解し、どうやってこの状況を好感度を下げずに切り抜けるかを考えなければと思った

 

だが突然、ミントは下の方をチラリとみると顔色が代わり凄まじい勢いで振り返った

 

「戻せ、今すぐ俺を戻せぇぇぇぇッ!!!」

 

「え・・・えぇと」

 

「引き返すんだ、今すぐに!」

 

 

その表情は鬼気迫るものがあり、決して容易に見逃すことなどできなかった。ナギはミントの豹変に圧倒されながらも素直に聞き入れて全速力で彼の家へ戻る。彼の逆鱗に触れた何かがあったのか、もしくは誘拐そのものに怒りを覚えたのか、少なくとも自分がそうさせてしまったのは事実であるため彼女は申し訳ないことをしてしまったと反省していた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

〜テッセン、ミントの家〜

 

 

 

 

 

 

「すまない、取り乱してしまった。ツツジと君が俺の為を想っての行動だというのはわかってる。せめてものお詫びに茶でも呑んで行ってくれ」

 

玄関の前でナギはエアームドを労うとボールの中へ戻した。ミントはドアを開けようとするが鍵がかかっている、するとナギがツツジが鍵を閉めてポストに入れていると教えると確かにあった。

 

そのまま中へ彼女を招き入れるとリビングのテーブルの椅子に座らせ彼は奥へお茶を淹れに行った。ナギは内心、ドキドキしていた。同じ世代の男の子との接点はないわけではない、だがそれはジムリーダーの職務ぐらいでバトル以外にすることはほとんどない。せいぜいアドバイスやバッチを渡すくらいだ。

 

彼女にとっては数少ない異性と2人っきりの状態で、少し気になり始めたばかりの子だ。展開が余りにも早すぎるが、このままどうなってしまうのかという妄想が捗ってしまう

 

彼女は実は少女漫画を好む、意外と大多数の女の子はそれを有しているものの男性が訪れた時に隠しておくため知られていない。同年齢の男の子より精神的に比較的落ち着いているため内容が少し過激なのだ。展開は恐ろしく早く進み、ご都合主義に踊らされる主人公

 

そんな姿が今の自分と重ねてしまったのだ

心臓をばくばく言わせながらソファーに行儀よくきちんと背筋の伸ばして座り、とても厳しい警戒と微かな期待を胸に寄せて彼の帰りを待った。

 

 

 

だがそんな心はすぐに潰えてしまう。ナギがソファーの前の小さな横広いガラスの机の上に重ねられた幾つかのチラシが目に入った。その中の一番上に“ネイティオ弁護団”のモノで過払い金を取り返そうというフレーズで有名な弁護士事務所である。偶然かもしれないが一番上にあるということは手にとっていた可能性が高い、つまり彼は借金をしているかもしれないということである。

 

 

「お金・・・あるの?」

 

ナギは目を細め視線をしたにやるも可能な限り控えめにミントの心を刺激せぬように恐る恐る尋ねた。すると彼は湯気が立ち上るお茶をゆっくりとガラスの机へ置き、チラシへと目線をやる。

 

「・・・お金ならもうないよ。既に全部奪われてしまったんだ。」

 

ミントは哀しく儚い、今にも壊れそうな表情を浮かべる。彼はそのままソファーへ座ると右手で目元を抑えて疲れて果てているかの様だった。ナギはその様子に胸を痛めて口を開く。

 

「だったら頼ればいいじゃない、貴方にはそんな人達がいるでしょう?」

 

「皆を巻き込むことは僕には出来ない、ヤツらは常に俺を陥れようと誘惑してくる。だから僕が家にこもるのが最善の道なんだ。」

 

彼は手のひらを下ろすと静かに語り始めた、ナギにはなぜ自分にだけそんな話をするのだろうと思いながらも静かに耳を傾ける。もしかしたら彼が抱え続けている何かを見ず知らずの自分に話すことで楽になりたいのだろうと思ったからだ。

 

 

(でも、さっきから何を話してるの?)

 

 

彼女はあくまでも借金があるのか、それを返すあてはあるのかという内容だと思ったがどうやら違うようだ。

 

「なぜ、なぜ貴方はそうなってしまったの?」

 

彼女はミントの抱えているものが何かを探るために当たり障りのない質問を投げかけ、ヒントを得ようとする

 

「・・・初めは軽い気持ちだったんだ、先輩からいいバイトがあると聞いてね。」

 

ミントは静かに語り始め、ナギは静かに耳を傾ける

 

「僕はその言葉に耳を傾けてしまったんだ。友人や知らない人をいっぱい抱き込んで、大金を手にした時に辞めようと思ったんだ。」

 

 

いいバイト、というワードにナギはなんとなく悟り始めた。こういうのは月並みに犯罪の片棒を担がされる場合である

 

・ポケモンを育てる商売をしながら失踪して裏で売り飛ばす“育て屋詐欺”

 

・保護地区での密漁や違法薬物での強制繁殖などの“密売行為”

 

・“コラッタ講”

 

つまり彼は違法な行為の手伝いをしてしまった過去があり、それに罪悪感を感じて引きこもってしまったのではないかと考えた

 

 

だが彼女が思い浮かんだ3つはミントの過去に当てはまっていないと理解させられた。彼の左腕の肘の関節の内側に黒ずんだ小さなシミのようなモノが幾つかあったのである

 

 

「ほんとに軽い気持ちだった、僕ならすぐにやめられると思って、つい打ってしまっただ。」

 

彼はそういうとナギの視線に気づいたのか右手で隠すように覆った。このことで彼女はピンときたらしい。

 

(アレはシミじゃない注射痕よっ!!!)

 

 

確かにそれは注射痕であった。そして先ほど彼の言っていた“いいバイト”、“友人や知らない人”。これらのワードで彼女は1つの結論に辿り着いたのである。

 

 

覚せい剤(・・・・)、つまり薬物である

急な態度の変化も後遺症として頷ける

 

 

ポケモンスクールでは旅に出る上での注意事項や犯罪に関わらないための授業がよく行われている、そのお陰か犯罪率は減少傾向あるものの今でも稀に検挙されるらしい

 

 

かつてカントー地方で蔓延した“ゴースのペロリンキャンディ”、シンオウ地方では“ドラピオンズ・スピナ”など数多の覚醒剤は闇社会で売買されマフィアや違法組織の資金源となった過去がある。それらを取り締まる法律が強化され今ではかなり落ち着いている

 

 

 

確かにミントが行ったと思われる行為は犯罪である、だが彼も悪の組織の犠牲者なのかもしれない。懺悔を続けているために引きこもっている、なぜならそれが最善の選択だと思ったからだ。もう十分なのではないか?

 

 

彼は自分を責め続けているのだ

彼を支えてあげなくてはならない

彼が自分の罪を許すまで

彼が社会に赦しを乞うまで

彼が自分や社会に赦すまで

その日まで、自分は彼の味方でいよう

 

 

まずは貴方が私に全てを話してくれるまで私は静かにその時を待っています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナギはダメ男に引っかかるタイプであった

 

 

 

***

 

 

 

 

〜ミントside〜

 

 

 

 

 

僕、ミント。エアームドに乗った美少女に誘拐されかけた美少年だよ。自分で言うのは痛い子になるから事実を言うね。ぶっちゃけ僕の顔はそこそこ整ってる方だ、ナルシストとは言わないでくれ。ただこの顔で特をして来たことが人より多くあること、あと人からよく褒められるから純粋に客観的に自分を見ているだけの事なんだ。

 

でも僕もつい調子に乗ってしまう時もある、確かに整ってるが上には上がいる。もちろん下には下がいるが生まれ持った才能のようなモノとは言い難い。そこで僕が編み出した秘策がある。

 

まずは鏡の前に立ってくれ、そして自分が一番イケてると思う角度の後に自分が一番ブサイクに映る角度を見るんだ。すると自惚れずに済み、容姿の自身もある程度保てるのでお風呂上がりに実践している。

 

 

 

ここで話は置いておくことにしよう、まぁ別に拾い直してもいいのだが飽きられそうなのでやめておく。僕は誘拐された身だが綺麗なお姉さんを驚かせてしまったのかもしれない。それにツツジの差し金だと聞いたからな

 

 

 

ここはクールな男を演じ、好感度を元に戻す必要がある。あら、ミント君って年下なのに頼り甲斐も可愛さも持ち合わせてる。結婚し(養っ)てあげるわ、と言わせる必要がある。

 

あと少し前に思い出したが、彼女はジムリーダーだった気がする。国家公務員よりも給料が高い人材をみすみす見逃すようなニートではない。あと可愛い

 

「すまない、取り乱してしまった。ツツジと君が俺の為を想っての行動だというのはわかってる。せめてものお詫びに茶でも呑んで行ってくれ」

 

僕は彼女を自宅へ招きスマートにソファーへ座らせお茶を用意して長居をさせる計画。これも美少年(諸説あり)のなせる技なのだよ。

 

僕はドアノブへ手をかけ引っ張ろうと手をかける。だが問題に直面して閉まったようだ

 

 

 

鍵閉まってるですやん

ツツジちゃんめ、せっかくのチャンスをッ!!!

でも可愛いから許すよ

ん、ポストに直してあるって?

ホントだ、ツツジちゃんのしっかり者め

ぜひとも養ってください

 

 

 

ツツジが我が家で待機していないことが判明し、ミッション達成の確率はあがった。目の前で僕をおいて2人でガールズトークを永遠と続けられる悪夢は回避した。

 

僕が計画通りスマートにソファーへ座らせお茶の用意をするため奥へ行った。だがスマート過ぎる、逆に罠なのではないか?戻ってきた所で彼女が指をパチンと鳴らしカイリキーとゴーリキーに連れ去られ慰み者にされる薄い本の展開ような可能性もある。いや、それならエアームドでそのまま誘拐すれば済む話だ。

 

僕は安心してお茶をお盆に乗せて持って戻ろうとしていると彼女の目線がガラスのテーブルの上のチラシにある。マズい、近所にあるゲームセンターの新台入れ替えのチラシがあったような気がする。ヒモにギャンブル癖があると思われたら致命的だ。

 

スマートに回収するしかない。

今、気がつきましたよ、的な反応の後に

 

『ギャンブルってやられます?』

『お仕事で忙しいのでやれません。』

『ですよね〜、僕もしないですよ。』

 

これしかない、

全ては僕のヒモライフのために

いざ行かん!

 

 

僕は静かに湯気の立ち昇るお茶を静かに机へ置いた。そしてスマートにチラシを回収する

 

 

 

 

「お金・・・あるの?」

 

 

彼女の一言で伸ばしかけた手を引っ込めてしまう。なぜその言葉が出る?まさか気がついた上での先制攻撃、確かに僕はゲームセンターの常連でギャンブル中毒の一歩手前だったことがある。だがもう貯金を使い果たしたのに気がついてやめたんだ。ギャンブルとは店側に利益が出るようになっているから成り立つのだ、つまり得するよりも損をするのだと

 

僕がさっき声をあげたのがゲームセンターがあったからだ。正直、新台入れ替えというのぼり看板があったら危なかった。チラシとタイミングだけでギャンブラーと見抜いていたか、流石はジムリーダー。バトルと同様に一筋縄ではいかないな

 

くぅ、バレているのでは仕方がない。素直に話そう。僕は借金などしていない、ただ貯金がないだけなんだ。親の脛を噛みちぎるレベルで養って貰っているだけだ。まずは手元にギャンブルの資金がないことを話すんだ。

 

 

「・・・お金ならもうないよ。既に全部奪われてしまったんだ。」

 

スロットの中へ消えていった僕の諭吉達を走馬灯のようなイメージを思い浮かべる。僕は悲壮感をだしつつ反省してますオーラを出すために手のひらで両目を隠すように添える。これで表情は自然と隠せる。ゲスな下心のカモフラージュとするのだ。

 

 

「だったら頼ればいいじゃない、貴方にはそんな人達がいるでしょう?」

 

ナギの言葉に僕は戸惑いを隠せない、まさか君はギャンブルをするニートでも許してくれる天使、いや大天使様なのか?

 

だがこのニートは甘い言葉で懐柔などされないのだよ、ここで敢えての誠実アピールに転じよう。ギャップ萌えを狙うのだ。

 

「皆を巻き込むことは僕には出来ない、ヤツらは常に俺を陥れようと誘惑してくる。だから僕が家にこもるのが最善の道なんだ。」

 

 

僕は彼女の庇護欲を、つまり私がどうにかしてあげなきゃ、という気持ちを掻き立てなければならない。または彼には私が居なくちゃダメなの的なヤツでもいい。

 

正直なところ、これは難題だ。ヒモとは通常よりも稀有な才能と意思がなくてはならない。仮にあったとしても当人が男としてのプライド持っているかもしれないからだ。あいにく僕は無自覚に相手に養うという行動を植え付けられるようなスキルを有していない。だから考えて手を打つ必要があるのだ。

 

ちなみに誘惑とはチラシやなんかヒラヒラしてる旗のような広告、かつてのギャンブラー仲間であるキヨとタゴサクによる電話のお誘いのことである。

 

これでギャンブルをやらないようにしているんだ感は伝わるはずだ。

 

 

 

「なぜ、なぜ貴方はそうなってしまったの?」

 

ん、ギャンブラーになった経緯かな?

 

「・・・初めは軽い気持ちだったんだ、先輩からいいバイトがあると聞いてね。」

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

〜ミントの記憶、3年前〜

 

 

 

 

 

 

その日、僕はポケモンを持ち旅へ出た。結果としては最高だった。

 

自分の知らない土地を自分の足で歩き、迷いながら、野宿をしながら目的地へ着いた時の達成感。明らかに強さが格上のトレーナーとバトルをして戦術と絆で勝った時の高揚感。

 

そしてポケモンリーグで優勝してプロトレーナーの資格を得た時の興奮はとどまることを知らなかった。あとはチャンピオンリーグで優勝して四天王を勝ち抜けばチャンピオンとバトルできる。チャンピオンを目指す身としてはここが夢の一歩だと、越えるべき壁を1つ超えた感覚を覚えたんだ。

 

 

 

僕は義父であるテッセンの元へ戻った。つまり里帰りである。全てのジムリーダーとのバトルは共通して興味深かった、だが所詮は挑戦者のバッチの数に合わせた事務的バトルに過ぎない。僕は本気のバトルをしたいのだ

 

本気のジムリーダーに勝てなければ四天王やチャンピオンには手も足も出ないだろう。それはもう身をもって実感(・・)した。

 

「ようミント〜、キンセツに戻って来たのか。」

 

僕は僕の家へ帰る途中で昔、通っていたポケモンスクールの先輩と出くわした。いい先輩できのみや傷薬を分けてくれた記憶がある。

 

仲は良かったが座学とバトルの腕は人並みだったため旅へは出なかったと聞いている。

 

「あ、キヨさんお疲れです。」

 

「キヨでいいよ。いいバイトあるんだけど興味ある?」

 

話を聞いてみると、どうやらキヨはバイトをして生計を立てているようだった。10歳から大人として認識されるため税金を納める義務が発生する。強制的に配布される図鑑にはバトルの成績が記録されており、勝率やトレーナー歴によって賞金が決まる。後日、貯金口座の引き落としがされるため足りなくなれば自分でアルバイトなどで稼いで入金するか引退して働く者が多い。集められた税金はポケモンセンターの運営やポケモンの保護、そして暴れたポケモンやテロリストによって破壊された建物などの修繕の強制加入の保険として支給される。

 

 

僕はキヨに連れられて見覚えのない派手なライトを放つ建物へ連れていかれた。怪しげな感じがしたが合法でやましいことはないらしい。聞いたところ僕が旅へ出てすぐにできたとのこと、ゲームセンターという言葉で取り繕ったギャンブル場である。

 

どうやらそこのオーナーがキヨの親戚らしく、彼の話を聞けばオープンしたばかりで賑わっていなかったとのこと。そこでコインケースの無料配布をして、ゲームセンターへ人を紹介するだけで仲介料の入る簡単なバイトだという。コインケースは仲介屋に無料で支給され名前と住所、重複して持っていないかを確認したら報酬を渡すとのことらしい。この手法が当たり次第に軌道に乗ってきたため仲介役の数を増やそうと考えていたのだ。

 

僕は友人や知り合い、通りすがりの人へコインケースをばら撒いた。特に近所で一番強いお爺ちゃんのタゴサクは変貌ぶりがすごかった。

 

旅へ出る前に彼の手強いマグカルゴと何度もバトルをしてみて、“かえんほうしゃ”の威力が凄かった記憶がある。だが今ではマグカルゴではなく彼の年金が火を噴いている。

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜ミント宅、現在〜

 

 

 

 

 

「僕はその言葉に耳を傾けてしまったんだ。友人や知らない人をいっぱい抱き込んで、大金を手にした時に辞めようと思ったんだ。」

 

 

ギャンブルが良くはないと僕は確かに知っていたんだ。でも目先のお金欲しさにのめり込んでしまった。そして報酬を貰った頃に僕は紹介したみんながギャンブラーになっていた事に気がついて、すぐにバイトを辞めようと決心したんだ。

 

 

ミントは本当に当時は後悔していた。だが別に違法じゃないからいいんじゃね?と三日後に思い直した。そして皆がのめり込むギャンブルに興味を持ってしまったのである。

 

「ほんとに軽い気持ちだった、僕ならすぐにやめられると思って、つい打ってしまった。」

 

僕は突然、彼女の視線が僕の左腕に注がれていることに気がついて右手のひらで覆った。これはちょっと恥ずかしいから隠しておこう

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

〜ミント宅、3日前〜

 

 

 

 

 

 

ミントは賞味期限と消費期限を間違って解釈しており、期限が切れたら食べてはいけない“消費期限”の切れたコンビニ弁当を食べてお腹を壊してしまった。トイレとベッドを往復する羽目になった彼は無気力に倒れていた

 

その時、ツツジが出直してくれたため看病をして貰ったあとに病院へ連れて行ってくれたのである。心配そうな表情を浮かべている彼女を見て僕はこう思った。

 

ツツジちゃんは天使だ、結婚しよう。

僕がこれまで通りニートをやるから

君はこれまで通り働いてくれ。

 

 

僕は君のご厚意に答えるために全力で体調を元へ戻そうと思った。

だが僕は全力で抵抗することとなった

 

理由は一つ、腹を壊した程度で点滴など必要あるのだろうか?い、いや。別に注射が怖いわけじゃないんだけど必要あるのかな〜って思っただけなんだ。

 

ジョーイさん(人間版)には無言で護ってあげたいような可愛らしい笑顔を浮かべるだけだった。つまり黙ってろ、ということだ。

 

ジョーイは少し目を細めて冷たい表情をする。そして僕の左腕の中心の太い血管へ向けて針を忍ばせる。

 

「ん〜、なんだが元気になってきたなぁ、これは退院だなぁ」

 

僕はさり気無く元気になったフリをした。注射が怖いのではない、身体に得体の知れない液体を注入されるのが怖いのである。なぜならこのジョーイさんは医者の格好をした悪魔の可能性があるからだ。少年が毒物により悶え苦しむ様を目に焼き付けるのが趣味の可能性があるからだ。

 

僕はベッドからゆっくりと立ち上がろうとすると、上半身をピンク色の柔らかい何かに押さえつけられる。ポケモンセンターでジョーイさんの補助ポケモンであるラッキーであった。ポヨポヨとしたボディとは裏腹にかなりのパワーだ、僕は辛うじて動ける程度しかできない。するとジョーイさんが注射のボタンを軽く押すとピュッと薬品が出る。その様子を見たラッキーはニヤリと笑う。

 

お前のような輩は何人もいたよ、的な悪どい目をしている事に僕は気がついた。

 

「ラッキー、テメェ!」

 

勝ち誇った顔を浮かべるラッキーに僕は少し暴れる。するとジョーイさんが針を打つ場所を間違えたようだ。

 

「んんんんッ!!!」

 

僕はチクチクとした痛みに悶えた。絶対このジョーイさんはサイコ野郎だと、いやサイコレディだと確信した。

これはジュンサーさんに少年の身体に針を突き刺した女として逮捕して貰うしかない。

 

僕は冷たい視線を感じるとジョーイさんがヤンデレのような薄汚れた瞳でこちらを見ていた。ヤバい、これはガチかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも悪くない・・・

キュンと心臓の奥が反応したことで

僕は自分がMだという事を思い出した

 

「大人しくなさい、すぐ済むから。」

 

ジョーイはいつもの笑顔を浮かべながら、優しくなだめるように言い聞かせる。ふむこれも悪くない、でもすぐ済む(・・・・)のか・・・

 

「それは、それで嫌だああああ!!!」

 

僕は全力で抵抗した、

そして2、3発の延長によりジョーイさんの蔑んだ目と少しずつ強くなる口調を愉しんだ

 

 

やがて『動くんじゃねぇブタ野郎』まで頂けたので、そこそこ満足していた。ただこれ以上は本当に塩酸などを撃ち込まれそうなので抵抗しないと決めた。だがジョーイは大きな溜め息をつくとラッキーに僕を離すように言った。まさか諦めてくれるのかと僕は歓喜した。ジョォーウ(女王)さま、いやジョーイさんは一瞬で僕の背後をとると左腕で僕の首を前からクリンチした、彼女の肘が僕のアゴをぐりぐりされるが悪くなかった。そして怯んだ僕の胴体を彼女の細い足でロックする。

 

背中に感じる柔らかい感覚と滑らかでスベスベな細い脚を堪能している隙に左腕の的確な場所に注射をされた。

 

僕はそれからこの病院に通い続けようと決心したのである

 

 

 

***

 

 

 

 

〜現在〜

 

 

 

 

なんか知らんがナギさんのメアドとポケギアの電話番号をゲットした






願わくば感想を恵んでください
こういう形態の物語を書いたのは初めてなので
皆さんのご意見を聞きたいです
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