底辺プロトレーナーぼく、明日から頑張る 作:ねこまんま
久し振りの投稿となります。チラシ裏から移動させてから初更新ですので楽しんでいただけたら嬉しいです。
〜フエンタウン〜
アスナは身の毛がよだつほどの底知れぬ何かを感じ取っていた。ジムで挑戦者を待っていたところ、パトカーのサイレンが鳴り響いたため彼女は外へ飛び出した。何があったのかは知らない。職務の一貫で治安維持の役割を全うしていた彼女は日が浅いながらもさまざまな悪と向き合って来たはずだった。そんな彼女が目の前の人物に警戒心を抱かせることとなる。
フエンタウン、ほのおタイプのジムリーダーであるアスナが拠点とする街にして温泉が有名で観光地として知られている。
ジュンサーさんから手錠を嵌められて連れられる一人の男、、、
男は三十代後半で長身かつ細身、髪は白のオールバックが乱れており何本か額に垂れている。目は獣のような鋭さを持ちながらも猟奇的な存在感を放っていた。
「ケヒヒヒヒ、俺は罪を犯したんじゃねぇ。この不完全な社会に適合しなかった哀れな男だ。“エデン”はすぐそばだったが俺は天に選ばれなかったみたいだな。」
騒ぎに集まった人々はただの犯罪者の戯言だと笑っていた。これは当然の反応である。犯人はパトカーに連れ込まれる寸前に無意味な抵抗をしているのだ、やつの言葉に耳を傾ける必要はない。その日の夕食を作っている頃には忘れている程度のほんの些細なことだ。
しかし人々の嘲笑には気にも留めずその男は初めからひとりの少年しか眼中になかった。
「だがお前は違う。備えろ、ミント。いつかその禁断の果実をお前は目の当たりにするのだ。」
男はまだ小さな女顔の少年へ向けて何らかのメッセージを伝えているかのようだった。“禁断の果実”、男は全てを言い終えると再び狂ったように笑いながら自ら開けられたドアから車内へ乗り込んだ。
群衆は走り去るパトカーを見送ると熱気が冷めたのかそれぞれの戻るべき場所へ帰っていく。しかしアスナだけは男が見ていた少年だけをジッと見つめている。外見からはタイプではないが整っていることは理解できる。
この子は何者なのか、私は奥底に深い深い裏の社会の闇に目の当たりにしたのかもしれない
アスナはそう結論を出すと少年へ声をかける
「ねぇ君、私とポケモンバトルをしないか」
私が彼を見極める、、、
***
数時間前
〜フエンタウン・温泉〜
モワモワと白い湯気の立ち昇る室内はコダックを型どった湯口からお湯が広い浴槽の中へゴボゴボと流れ落ちている。微かに白く濁ったサラサラとしたお湯には体力の回復などの効力などがあるらしい。
そのお湯を堪能している少年がいた。名前はミント、しがないニートである。彼は義父であるテッセンが気まぐれで山籠りをしようと思い立ったため家事をおやすみし、彼からフエンタウンの温泉旅行のペアチケットを貰い羽根を伸ばしにきた。当然もう一人だけ呼ぶことができたが、当日しかも平日に旅行へ行けるのは長期休みの学生を除けばニートぐらいである。というよりニートには彼女はともかく友達もいない。
結果として一人旅を決行するに至った。バスの座席はチャーターする必要があったが彼はその手間を面倒がって自身のポケモンの背に乗って飛んできたのである。
そんな彼は温泉に浸かりリラックスしていながらも思考回路だけはめまぐるしく稼働しているのだった。
(女湯を、女湯を覗きたい・・・)
この建物、及び温泉の間取りは既に把握済み
そして女風呂は男風呂とでは壁を挟み繋がっている
壁の広さは叩いた感触からして1.5メートル
天井には1メートルほどの隙間
だがその隙間に何があるかは不明
想定し得るのは乗り越える者を捉える監視カメラ、及び番をするポケモン(略して番ポケ)
ここは温泉、蒸気により機械の類いは機能することはないだろう。あるとすれば“ガラス越しに設置する、しかしその場合は蒸気による水垢が付着するはずだ。その掃除は困難を極める。故にカメラは考え難い。
だがこの温泉地は観光名所、何も対策をしてないはずはない。おそらく“番ポケ”
もし目を光らせているならば気配があってもいいはず、足音に鳴き声や蒸気でむせる音などがあってもいいだろう。故に存在しない
(A.壁を登れば覗ける)
ふむ、その前にしなければならないことがある。それは背後からの裏切り、つまり密告者及び妨害を行う不埒な童◯クソ野郎である。
お宝が目と鼻の先にあるのに手を伸ばさず、『お、俺はピュアなんだ!』『悲しむ人がいる!』などという戯言で我ら健全な男子の夢を踏みにじる事に快楽を覚えるとんだ変態野郎がいることをミントは知っている。
幸いな事にピークの時間を過ぎていることから人は僕を除いて一名、白のオールバックで色は黒い。年齢は三十代後半といったところ。僕の
「参りました。」
僕はこのおじさんが僕より上手であることを認めざるを得ない。彼ら小さくダンディな目を細めてニヤリと笑う。
我らに言葉など不要
同盟を築くにはただ一度の握手で足りる
ミントはニヤリと笑いながら立ちあがり目の前の同志に手を差し伸べた。男はやはりお前も
「私の調査では
「・・・ッ!!!」
おじさんはミントへ向けて彼では知り得ぬ情報を与えた。どうやら協力関係を承諾するのだった。ミントがここへ訪れたのは今日が初めてである。それに対してこの男は通い詰め情報をかき集めていたのだと察せられる
「ふふふ、初めは君が出るのを待っていたのだが、それはお互い様だったようだ。」
「そのようだ。ではこちらの考察も伝える必要がある」
ミントは知りうる限りの情報と考察をこの男へ包み隠さず話した。結果として風呂桶と椅子を縦へ重ねて壁を登り切る作戦となった。
だがミントにはこの協同作戦を決裂し兼ねない一抹の不安があった。それを包み隠さず言うことこそが信頼関係だと彼は考え口を開いた.
「ではどちらから行く?先に行く方がリスクは大きい。」
「・・・私が行こう。」
「ッ!」
男は少しの間をおいてそう答えると床に落ちたていた風呂桶を男湯、女湯を隔てている壁の手前に音を立てぬように逆さまに置く
「もし私が
「どうして、どうしてお前は、、、
おじさんの言葉にミントは心より感銘を受けた。自分が逮捕されても自分はミントを売らない。そういう意味合いを含めていたからだ
「子供に危険が及ばぬよう守るのが大人の役目だからだ。いいかい
おじさんはそう言うと無言で天高く積み重ねられた風呂椅子を登り始める。手を上へ、上へと伸ばし足をかけて登る。その姿はまるで崖の上にある一輪の花を息子の為に取りに登る父親の背中である。
おじさんは遂に巨大な壁を登りきった。そして目の前に監視の目がないことを確認すると拳を縦に握り、ミントへ向けて親指だけをたてて合図を送る。そしてお前も俺のあとをついてこいと背中が物語っていた。
だが突然、男は手のひらをミントへ向け、こっちに来るなと合図を送った。まさか見つかったのか、彼はそう危惧するどうやら違うようだ。微かに膝が前後に震えている。しかしこれ以上、ミントにはそれを探る術がないのである。
おじさんは激しく歯軋りをして悔しさを目に滲ませていた。固めた拳を壁のてっぺんを上から叩きつける。鈍く響く音は小さく指の根元の関節がジーンと痛む。
(やっと、やっとここまで来たんだ。なのにこの仕打ちはねぇだろうよ。俺の背後にゃ胸に期待を膨らませている小さなボーイがいる!)
それなのに、なんで、、、なんで
「ババァしかいないのだぁぁぁッ!!!!!」
おじさんは捕まり錯乱した
***
現在
〜フエンタウン〜
「ねぇ君、私とポケモンバトルをしないか」
アスナは静かに闘志を燃やしていたのである。先ほどの男が言っていたこと、それは決して妄言などではない。ジムリーダーの勘がそう言ってる。この少年をここで無視できない存在といつかなりうるのだと
「・・・僕とですか?」
ミントは少し目を開き驚いたような素振りを見せる。その瞳には哀しみに溢れているものの奥に確か意志が見受けられる。
「えぇ、貴方とバトルがしてみたくなった」
(ふふ、決まった!これでジムリーダーとしての風格も備わっ・・・
アスナはジムリーダーとしてはまだ日が浅く書類と業務に追われながら少しずつ慣れてきたものの、まだ彼女の納得のいく立ち振舞い即ちキャラが定まっていないのである。
「お断りします」
そんな事情を知らないミントはマイペースにそう答えるとスタスタと自分の泊まる旅館へ帰ろうと歩き始める。
「ちょ、ちょ、ちょ!!!」
アスナは慌てふためきながらミントを引き止めようと声をあげる。
「あ、もうヒートバッチ持ってるんで」
ミントは既にこの街のバッチは手に入れており、彼女とのバトルを受けるメリットはほとんどないのである。
「えぇっと、賞金を倍に・・・。ダメだ!本部に経費の横領や脱税に疑われちゃう」
予期せぬ事態に一人であたふたし始めるアスナにミントは少しだけバトルをしてもいいかと感じたが、なにやら背中が痒いので帰ることにした。これは早めに部屋へ戻り安静にしなければならない。
「ちょいストォォ〜〜ッップ、なにか、なにかいい物あげるから!」
結局、余っているわざマシンを参加賞としてくれることになった。ミントはアスナに連れられてフエンジムへ向かうとバトルフィールドへ案内された。使用ポケモンは一体、交換ナシのシングルバトルとなる。
審判の『バトル開始!』の掛け声と共に二人はモンスターボールを手に取ってスイッチを起動し空へ投げる。
「出番よ、コータス!」
黒い甲羅を持つオレンジ色の亀のようなポケモンが現れる。鼻から機関車のように激しく煙を吐き出し戦意を示している。
「出てこい、フライゴン。」
緑色の触角のような頭に赤いゴーグルからはつぶらで優しそうな瞳、全身は緑色の華奢な身体に大きな羽根で空を飛んでいる。
「相性の上ではコータスは分が悪い。でもこの子は私のエースよ。長い間一緒に戦って来た実績がある。負ける気がしない!」
アスナの言葉に答えるかのようにコータスは鼻から吐く煙を更に勢いよく噴き出させる。このコータスはチャレンジャー用にレベルを合わせたポケモンでなく、アスナの相棒そしてエースとして長い付き合いがある。まだ彼女がトレーナーの頃から苦楽を共にしてきたと言えばわかるだろう。
「それは僕も同じことです。フライゴン、“すなあらし”!」
彼もまたフライゴンがアスナのコータスと同じ役割を担うポケモンである。ナックラーの頃から共に過ごしてきたため、他の手持ちと比べてもミントとのコンビネーションは群を抜いていた。
フライゴンは軽く鳴き羽根を激しく羽ばたかせると地面から砂が舞いあがりコータスを巻き込むように吹き荒れ閉じ込める。小さな砂の破片がコータスの皮膚を少しずつ傷つけていく。アスナとコータスは想像以上の威力に驚き思考が停止する。だがジムリーダーは経験から自然と最善の手をとる。
「コータス、“こうそくスピン”で吹き飛ばして!」
コータスは自分の甲羅の中に身を仕舞うとグルグルと激しく回転させ、その遠心力で“すなあらし”を吹き飛ばしてみせる。宙を舞っていた砂が地面へパラパラと落ちていく様を見てアスナは笑みを浮かべまぶたを閉じ、口を開く。
「ジムリーダーを甘く見な・・・『“フライゴン、どくどく”』
フライゴンは口から禍々しいヘドロ液のようなモノを吐き出してコータスへ命中させる。一瞬で全身に猛毒を巡らせるとコータスは苦悶の表情を浮かべて痛みに耐える。
「え、ちょっと。今は悔しがる表情をチャレンジャーが浮かべるところぉぉ!!!」
アスナは己のジムリーダーとしての威厳を保てなかったことを悔しがっている。まだ彼女はジムリーダーとして理想的な立ち振舞いをするための間を覚えていないようだ。
「え、なにか言ってました?すみません。」
当のミントはキョトンとした表情を浮かべ、ペコリと頭を下げて謝った。どうやら相性的にもミントとの波長は合わないらしい。
「んぐぐ、まぁいいわ!頑張って、コータス “ほのおのうず”ッ」
コータスは苦しみながらも口から渦を巻く炎を吐き出してフライゴンへ放つ。
「“でんこうせっか”で回避。もう一度“すなあらし”で閉じ込めろ。」
範囲の広い攻撃を“でんこうせっか”で加速して回避すると再び砂の渦へコータスを閉じ込める。先程の地面へ落ちていた砂をも巻き込んで激しくうねる。“どくどく”によるだんだん激しくなる内部からの痛みと外部から削られる“すなあらし”によるダメージ。たとえジムリーダーと共に歩んで来たポケモンだとしても無事では済まない。
だがその逆境こそが不慣れな体裁を保とうとするアスナの迷いを断ち切ることとなる。彼女はジムリーダーではなく、ひとりのトレーナーとして現在のバトルに勝ちたいという純粋な闘志を思い出したのである。
「コータス、空へ向かって“オーバーヒート”」
コータスは全身に熱気を溜め、そしてそのエネルギーの全てを口へ集めて空へと放った。爆発的な火柱は昇り、天を焦がす。すると弾かれた砂塵が灰へと変わり果てる。
(ありがとう、私にジムリーダーの風格なんかよりも大切なモノがあると気づかせてくれた。)
アスナの瞳にもはや迷いなど微塵もない。無理に繕う必要などなかったのだ。これまで通り自分とポケモン達とで自分達のバトルに全身全霊で臨むだけで良かったのだと感じる。
彼女には着させられていたはずの不恰好なジムリーダーのマントを始めて着こなせた気がしてきた。
(せめてものお礼に全力で挑ませて貰う!)
「コータス、“かえんほうしゃ”ッッ!!!」
コータスは口から炎をフライゴンへ向けて放出した。ミントはアスナの指示を聞いた瞬間にニヤリと笑い、即座に指示を出す。
「“ドラゴンダイブ”でかき消せ!」
フライゴンは青い龍のエネルギーを纏いコータスの放った“かえんほうしゃ”の中へ突っ込んだ。ミントはダメージを与える事で更に優位に立とうと考えていたが、すぐにそれが悪手でだったことを彼は感じざるを得なかった。
なぜなら“オーバーヒート”で下がったはずの“とくこう”の威力とは思えなかったからである。フライゴンの“ドラゴンダイブ”は次第に押されていき後方へ弾かれてしまう。
「“しろいハーブ”か」
“しろいハーブ”、それはポケモンに持たせるアイテムの一種で一度だけ下がった能力値を元へ戻す効果を持つ。そのため“オーバーヒート”のデメリットを一回限定で無くすことができるのだ。
またコータスは彼女の成長に応じて殻を破ったのか、ただの“かえんほうしゃ”の威力とは思えなかった。それから放たれる“オーバーヒート”の威力が急所に当たればフライゴンを一撃で戦闘不能に追い込んだとしても不思議ではない。
「コータス、“ストーンエッジ”」
コータスが地面を強く踏みしめると無数の岩の刃が浮きあがり、鳴き声と共にフライゴンへ襲いかかる。
「フライゴン、“りゅうのはどう”」
青色のエネルギーの波動を放つと岩のナイフを砕きながら“コータス”との距離を縮めていく。その刹那に研ぎ澄まされたアスナの思考回路は的確に最適な手段を取る。
「コータス、“どわすれ”で耐えるのよ!」
コータスはフライゴンの放った攻撃を避けることができず、クリーンヒットする。激しい土煙が舞い視界からコータスが見えなくなる
「お願いコータス。耐えて、、、」
アスナは囁くように願う。数秒後、煙が晴れコータスの影が薄っすらと見える。ミントが視界に捉えたのは『え、なんかあったの?』と言わんばかりの惚けた表情のコータスである。
「よし、よし!コータス、反撃よ。“えんまく”」
コータスは口から黒い煙を放出してフライゴンの視界を遮る。フライゴンは空へ飛んで命中率を下がらないようにするが、完全にコータスを見失ってしまう。キョロキョロと目を動かして気配を辿るが見つからない。
「コータス、“オーバーヒート”ォォッッ!!!!」
土煙の中で赤く光りが現れると即座に強烈な炎の火柱がフライゴンへ襲いかかる。かろうじて直撃は避けられたものの左側の羽根へ命中し、ダメージから十分に羽ばたくことができず地面へ落ちていき墜落した。地面はボコンとへこみ、フライゴンは痛みをこらえているようだった。
「フライゴン、大丈夫かッ⁉︎」
フライゴンはまだいけると言わんばかりの声をあげるが、ミントはコータスの“どくどく”での戦闘不能をのぞむような長期戦は望ましくないと判断する。この勢いのまま後手に回れば負けるのは自分達だと確信したからだった。
(フライゴンの羽ばたく音でおよその位置を割り出したのか・・・)
ミントは“オーバーヒート”が正確に放たれた理由を見抜くと、頭を切り替える。
幸いにも“えんまく”の煙は先程の炎で吹き飛ばされ視界は良好である。だが客観的には飛ぶことのできないフライゴンにもはや攻める手はないかのように見える。
「コータス、“ジャイロボール”でトドメよ」
使うポケモンの速度が遅ければ遅いほど威力のあがる“ジャイロボール”をするためにコータスは頭と両足を甲羅の中に引っ込めようと力を込める。だがその瞬間にこれまでにないほどの猛毒の痛みが全身にほとばしる。
「逆王手です。“だいちのちから”。」
フライゴンは右手を握り地面を殴りつけると大地が尖るように隆起し、コータスへ迫る。毒の痛みにより全身が瞬時に硬直したため回避を取ることができず甲羅の覆っていない下腹部へめり込み吹き飛ばす。
コータスの巨体は突然の衝撃を受けて宙へ舞うとそのまま甲羅を背に地面へ叩きつけられた。土煙がフィールド中へ広がるとすぐに逆さとなって戦闘不能となっているコータスの姿がそこにはあった。
「コータス〜〜〜ッッッ!!!!」
アスナは戦闘不能となったコータスの元へ走って向かうと安否を確認する。意識は戻ったようだが毒とダメージにより疲弊しきっているようだった。
「えぇと、“どくけし”は残っていたかしら」
アスナはジムの倉庫の方をチラリとみるが、買い足していなかったのを思い出して顔が青ざめる。
「これを使ってください。」
ミントはバックから取り出したジップロックの封を切って乾燥した桃色のきのみ、“モモンの実”をアスナへ手渡した。長持ちさせるために乾燥させており、小さくなっているが効果は充分ある。
そしてアスナが“きずぐすり”を取ってくる間に乾燥させた“オレンの実”もコータスに与えてやると弱々しくも嬉しそうな声をあげる。
やがて大きな救急箱を持って戻ってきたものの、どう治療していいか分からないアスナから必要な道具を受け取ると、ミントが慣れた手つきでの治療をしてやる。終える頃にはコータスはスヤスヤと眠り始めた。何度もお礼を言うと彼女は安堵しながらモンスターボールの中へ戻す。そしてミントはご機嫌なフライゴンを褒めながら治療を始める。
「私達の負け。でももっと強くなれるってわかった。それだけでもバトルには意味があったのだと思った。本当にありがとう。」
アスナは治療を終えたミントに握手を求めると彼は素直にそれに応じる。そして約束通り“オーバーヒート”のわざマシンだけでなく感謝の意を込めて貴重な“ほのおのいし”を彼へ渡した。
このバトルを得たアスナはトレーナーとしてさらなる高みへ登ることとなる。そしてそう遠くない日に彼女はジムリーダーとしての風格を備えるのであった。
「ねぇコータス。私達は今日のバトルで成長できた。これからもついてきてくれる?」
ミントが去った後にアスナはコータスの入れたモンスターボールに語りかける。するとそれに返事をするように左右に揺れた。
「今日はいいバトルだった。まだ興奮して心臓の鼓動が止まらないもの・・・。」
アスナはいつまで経っても治らないこの動悸に病気だと思い、医者に行くと苦笑いされながら健康そのものだと診断された。この感情に気づくのは彼女がジムリーダーとして一人前になってからであった
〜後日談〜
キンセツシティのフレンドリーショップからミントが2750円と貴重なので買い取れないと言われた“ほのおのいし”を持って出てきたのが目撃されたとか、されないとか
アスナの口調を思い出そうとアニメを見返したところ、幼稚園児の頃に見た記憶が残っていました。当時は気にも留めなかった“おくのサイドストリート”に爆笑したのは成長を感じました。
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