黒の魔術講師と禁忌教典   作:ギルオード

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男の選ぶ道は愚者か死神か

俺はグレン=レーダス《愚者》と呼ばれている。

かつては黒の死神と呼ばれていた。

死んだ銀の導きによって、この世界へ来た。

だが、記憶に穴がありあやふやなのだ。

言ってしまえば過去が抜け落ちているのだ。

銀に導かれたのは憶えている。

生まれたばかりの少年の魂と結びついたのも憶えている。

そして、大きくなっていて《世界》...セリカに拾われる所は憶えている。

この間の出来事が思い出せないのだ。

思い出せないが、悲観しているわけではない。

銀の事を忘れていないなら、俺はそれだけで十分だ。

そして、能力自体も消えていないし、こちらで生み出した切り札もある。

切り札である【愚者の世界】をメインに戦っているから切り札と言っていいかは分からんな。

俺自身の能力はまだバレてはいないだろう。

だから、過去の事で縛られるよりも、今自分が出来ることに専念した方が良い。

時間は有限だからな。

それに、今の俺は彼と結び付いた事により、性格が足して割った様な物になっている。

前なら考えられないが、柄にもなく正義の魔術師に憧れを抱いている。

実際に行っていることは昔と変わらず人殺しばっかりだがな。

まるで一昔前のダークヒーローみたいなものだ。

表に出ることなく悪を消す。

特に上は俺の実力を買っているようで、そういう仕事が山のように来る。

そのうち口封じされるかもしれないな。

まあ、そんな事をしそうなほど、度胸のあるやつはいないがな。

しかし、そろそろ潮時なのも事実だ。

これから俺はある大罪を犯すことになるからだ。

奴がここまで仕組んでいたかは知らない。

こればかしは俺も自分の勘の良さを呪いたいぐらいだ。

現段階では俺しか気づいてないだろうしな。

証拠があるとはいえ、特務からは絶対に追放されるし、高確率で国からも追放を受けるだろう。

いや、処刑もありえるかもな。

既に、机の中に証拠は残してある。

そして、俺は目的の場所に着いて口を開く。

 

「チェックメイトだ、ジャティス=ロウファン。お前が何をしようとしているかは知らんが、国王を操り人形にしているのは大罪だぞ」

「まさか、グレン。君が一番に気づくとは思わなかったよ?どこで気づいたんだい?」

「寧ろ気づかれないと思っていたのか?手段問わずに悪を潰すやり方を国王は酷く拒んでいた。それでも最小限の犠牲は必要だから、俺たちの様なのがいるがな。そんな国王が民を思う国王が民を犠牲にしかねないお前に任務をここ最近渡すようになった。唯の魔術がらみなら理解もできるが、それがブラックリストや貴族の暗殺だと別だ。確かにお前なら任務を完全に遂行するだろうが、犠牲者が未知数だ。それなら《魔術師》...イヴにでも頼むさ。しかし、中々な洗脳だと思うぞ。国王の行動に目を向けなければ全く違和感がないからな。お陰で行動に目を向けるのに時間がかかったさ」

「正解だよ、グレン。国王が死ぬまでは騙し切れると踏んでいたんだけどね。それで君はどうするの?」

「お前を殺して、国王を殺す」

「あははは!!僕を殺すだって!!それに国王を!!何故だい!?」

「あれほどの洗脳だ。生半可な物じゃない。魔術でもないだろう?魔術だったらイヴに気づかれるからな。なら薬物に違いない。だが、さっきも言ったが生半可な物じゃないだろう?綺麗な死体に出来ないだろうからな。女王の為にも綺麗な死体の方が良いだろう。でだ、お前を優先したのは...お前のような奴は見ているだけで、反吐が出るんだよ!!」

 

俺は特注のナイフを取り出す。

あの頃愛用していた一品と変わらない。

そして、仮面を被る。

 

「いいよ、相手になるよ。グレン=レーダス。格の違いを見せてあげるよ」

 

人工精霊を創り出したジャティス。

ここに戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いには勝った。

最初からアイツが俺を格下に見ていた時点で勝敗は決していた。

殺せていると思うが、違和感は残っている。

だが、立ち止まるわけにはいけない。

急がないと、国王を綺麗な状態のまま殺せないかもしれない。

それでは元も子もない。

王の自室へと向かって行く。

人目を欺きながら進んでいく。

部屋へと続く通路への扉の前に居る見張り二人を直ぐに気絶させて、通路を進む。

聞き耳を立てると、寝息は一人分それも静かなモノしか聞こえてこない。

コッソリとドアを開けて入ると、酒を飲んでいた国王がいた。

姫は既に寝ているようだ。

女王は恐らく寝かせているのだろう。

 

「やはり来たか、グレン君」

「陛下、貴方を殺しに来ました。操られていたとはいえ、貴方は機密を一個人にバラしています。.........お覚悟を」

「ああ、やはり漏らしておったか。うっすらとだが記憶が戻ってきておる。グレン君、私が飲まされたものは天使の塵(エンジェル・ダスト)で合っておる。君の読み通りだ。今日までは体は持つだろうが、今を逃せばもう後はないだろう」

「やはりですか」

「グレン君、君に最後の任務を渡す。エルミアナの事を遠くからでいい、守ってやってほしい」

「...やはり噂は本当だったのですね。分かりました。貴方の娘は必ず守りましょう」

「ああ、君が私の右腕で良かった。エルミアナの事、頼んだぞ」

「貴方?誰かがいるのですか?エルミアナが起きてしまいます。...もう」

 

足音が聞こえてくる。

早く殺さねばならない。

 

「さようなら、陛下」

 

気持ち悪く聞きなれてしまった音がなる。

肉を貫き血を流す音だ。

血で仮面が汚れ、自身のマントも汚れる。

 

「あな...た」

 

俺は無言でその場を離れる。

窓から脱出する。

 

「随分と派手に動いたなグレン。説明してもらおうか?」

 

後ろから声を掛けられる。

ブロンドの髪を持つ、女性にしては背の高い人...俺の育ての親セリカだ。

 

「机の中を既に見たのだろう。それが全てだ」

「お前の口から聞きたいのだ!!グレン、お前はこのような事はしない奴だ!!何故お前はこのような手を使った。他にも手があっただろう!?」

「いや、ジャティスの行動を最初から止めれなかった時点で、国王の死、そして多大な犠牲は確定していた。俺はそれを最善な形で終わらせただけだ。王の死体を綺麗に残し、ジャティスを殺す。これが、後手に回った俺の最善の手だ。俺がこれを実行しなければ、多くの犠牲が生まれていた。執務からも出ただろう。王の死体も惨たらしい物になる。だからこれが最善だったんだよ、セリカ」

「グレン...」

「俺は暫く身を隠す。少なくとも天使の塵(エンジェル・ダスト)の事が表に出るまではな。じゃあなセリカ」

「待て、グレン!!」

 

特務はもとより、セリカにも迷惑をかけるわけにはいかず、俺は放浪の旅を選んだ。

勿論、潜伏先はエルミアナ様の近くになるが、バレるつもりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数か月後、俺の行った罪は女王陛下が直々に無実にすると言われた。

俺は、特務に戻されたが、エルミアナ様追放とほぼ同時期に執務を抜けることになる。

何も説明せずに出ていったので、セラやリィエル、アルベルトには迷惑を掛けることになる。

そして、久しぶりにセリカの家に帰ることになった。

だが...

 

「セリカ、これはどういうことだ」

「何だ?グレン?」

「何で、セラ(白犬)がここにいるんだ!」

「お前に対する嫌がらせだ。あの時は中々に傷ついて寂しかったんだぞ~。だから一人暮らしだった彼女を呼んだ。そして、お前が帰って来るなら、お前に仕返しする名目でここの住人にした。どうせお前の事だ、働く気はないんだろう?この娘がいれば、働くんじゃないかな~と思ってね」

「そうだよ~。グレン君が頼ってくれなかったの悲しかったんだからねぇ。あと以外にグレン君めんどくさがりだからねぇ」

「家事はやってもいいが、俺は最後の任務があるから働く気は無いぞ」

「グレン君、最後の任務って?」

「エルミアナ王女の監視兼護衛。一応極秘扱いだからな」

 

ああ、本当に喋っていると黒の死神()とは思えない事を口にしてしまう。

使い分けをしていた頃でも、ここまで友好的には少なくとも情報は漏らしていなかったのにな。

やはり一体化が原因だな。

いずれはこの考え方も...いや、本来ならそれがいいのか。

銀が俺をこちらにやったのは、平和な世界での幸せを望んだと今ならハッキリわかる。

黒の死神はあの日に死んだ。

今の俺は、黒の死神と同じことが出来る別人...愚者だ。

これからは、黒ではなく、グレン=レーダスという一個人と割り切ろう。

それはきっと難しい事だが、きっと出来るだろう。

銀、俺は変わっていくよ。

 




見ていただきありがとうございます。



続きを書く予定はありません。
要望が多くなったら、アニメの所ぐらいまでなら不定期で出すかも。
現段階ではありません。
家のグレン君はロクでなしではありませんので...つまらないとおもいますが...
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