「ではな、グレン。学院に行ってくる。外に出るときは戸締りをちゃんとしろよ」
「じゃあ私も行くね。グレン君」
「ああ、行ってらっしゃい。セリカ、
あれから一年の時が流れた。
俺は亡き国王陛下から受けた、エルミアナ様の監視・護衛を行っていたが、基本的に彼女が孤立することがないため、彼女を襲い掛かりに来る外道を先に狩る以外では、仕事を余りしていない。
誘拐された時は、一気に敵を叩くためにわざと捕まらさせたが、セリカにバレた後はこってり絞られたから、餌作戦は恐らくもう使えないだろう。
アリシア女王陛下からも小言を貰ったしな。
こういう戦闘行為に対する部分は死神で居られるが、他はもう愚者の影響で昔ほど感情を切り離せなくなっている。
だから、家に居るときは鍛錬と家事、そして昼寝だろうか。
この昼寝と夜中から明け方にかけてしか俺に睡眠時間はない。
合計して四時間あれば良い方だろう。
特にこの昼寝の時間は安心してできる。
近くにセリカやセラ、それに昔の先輩や他の講師や教授がいるからだ。
セリカは教授で、セラは事務や植物の世話をしている。
稀に授業を行うときがあるが。
だが、本日はそういうわけには行かなかった。
「これから寝ようと思っていたのに、仕事か」
外道魔導士を見つけたのだ。
見つけるのは簡単だ。
アキュレイト・スコープを使って街を見ていた時に見つけたのだ。
いつもの仮面とコートを取り出して身に纏う。
敵は三人、動きもそこそこ、下っ端か。
俺は戸締りをすると、直ぐに向かう。
「我・秘めたる力を・解放せん」
フィジカル・ブーストを使って一気に跳躍する。
路地裏に向かっているのか。
路地裏の出口から先周る。
「おい、お前ら何をコソコソしている」
「なんだ、てめぇ!!俺らの邪魔すんじゃねえよ!!」
「変な仮面つけて、ヒーローごっこのつもりか?ああん!?」
「殺されたくなかったら、そこをどきな!!」
「実力差も分からず、正体を隠す気もないか...天の智慧研究会の刺青が見え見えだぞ」
「へっ!どうせ今から死ぬおまえには、どうでもいい事なんだよ!!」
一人の男が右手をかざす
「吠えよ炎獅子」
ブレイズ・バーストを一説詠唱で撃てるのは、それなりに鍛錬している証拠だ。
しかし、俺はそれを容易く躱す。
当然だ。
戦場に置いて一番必要な技術、それは先読みの力。
ある軍人の男は言った『超感覚』と。
相手の仕草、目の動き、重心の位置、光、影、音...と感覚を研ぎ澄ませ、あらゆる情報から動きを先読みして行動する。
何故なら、見てからでは遅いからだ。
かつて銃弾飛び交う戦場に身を置いた俺はそれを痛感している。
積み重ねた技術と経験が、研ぎ澄まされた感覚を力に変えるからだ。
彼らにはそれが無い。
故にその攻撃が俺に当たるわけがない。
「なんでだよ!!何で当たらねえんだよ!!」
「くそっ!!クソッ!!」
「止まりやがれ!!」
三人から炎熱・冷気・電撃のC級の軍用魔術が放たれる。
それを躱し、ワイヤー付のナイフを投げて、一人の大きなスキンヘッドの男の首に絡めてこちらに引き寄せ、肉壁にする。
驚き攻撃が止んだところを接近して、小柄で猫背な男をフィジカル・ブーストをしながら蹴り上げて、叩き落す。
地面に大きなクレーターが出来上がる。
そして、刺青を見せているリーダー格の男の頭を鷲掴む。
「情報を吐け。目の前の男どものようになりたくなければな」
やはり、戦いになると俺はまだ、死神になれるようだ。
「わかった!!言う、言うから、目的はルミア=ティンジェルとかいう餓鬼だよ!!それ以外は何も聞いてない!!ホントだ。だからっ助けてくれ!!」
「お前らはそう言ってる人間を何人殺したんだ?」
「あっ、そんな...助けてくれよ...助けてくれよ」
「貴様らの様なのを見ていると...反吐が出そうだ」
それを最後に電撃を流し込む
「ガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
一応死んでいるかの脈は測っておく。
後は警備隊に突き出すか。
屑とは言えども、人は人だ。
こんな屑を殺した自分に胸糞が悪くなる。
誰も殺さないヒーローなんていないのに、それに憧れ縋りつこうとしている。
やはり、妹の...白の言う通り俺は仮面がないと人を殺せないのかもな。
そんな事を思いながら、自虐的な笑みを浮かべ、昼寝をしに家に帰る。
「...ん、...れ......ん、グ...ん、グレン君!!」
「セラか?むっ寝すぎたみたいだな。すまないな、今から夕飯を作る」
「もう...疲れているんだったらしっかり寝ないとダメだよ。今日ぐらい見張り変わろうか?」
「いや...俺一人で...」
セラが笑顔で俺を見つめている。
断ったら殺されるのが目に見えた。
周りを頼り過ぎないのもいけないな。
「頼む。何か動きがあれば起こしてくれ、白犬」
「うん、分かったよグレン君」
時折
彼の意識は赤子の時に融合している。
一体化した時にお互いが記憶を共有した事によって、俺という存在が彼という存在に上から色を塗ったような感じになっているというのが正しいのだろう。
具体的に言うと、グレン=レーダスという白紙に、
しかし、色合いにむらが生じているのだろう。
セラのことを白犬と呼んでいるのはその影響もあるだろう。
魔術が嫌いになって行っているのも影響だろう。
そもそも、本来の俺ならば使えるか、使えないかで大抵は判断をする。
あの壊れた望遠鏡や銀が例外だ。
だが、正義の魔法使いを夢見たり、魔術を好きになって、嫌いになるのは恐らく影響されている。
俺は魔術は便利で使い勝手がいいと判断しているからだ。
そこに感情は含まない。
急に眠気が襲ってきた。
きっと余計な事を考えていたから、脳が疲れたのだろう。
ならこのまま眠ろう。
あの日から一ヶ月ほど時間が流れた。
三日に一回、夜の監視は白犬と交代して行うことになった。
今日はセラが監視を行う日だ。
夕飯を作り、それをテーブルに置きに行くと、席にはセリカがナイフとフォークを手にして待っていた。
余程我慢していたんだろうか?
「まるで子供みたいだぞ、セリカ。そんなに楽しみだったか?」
「当然だろう。グレンの料理は美味しいからな。あんないい匂いをずっと嗅いでたんだぞ!!お腹がすくに決まっている!!」
「じゃあ、後はセラを待つだけだな」
セリカが、いくら監視の任務でも、夕飯ぐらいは全員で食べるというルールを作ったため、夕飯の時間はセリカが水晶に映像を映しながら全員で夕飯を食べることになっている。
「お待たせ~、セリカさん、グレン君」
「グレン!!全員揃ったぞ!!早く食べるぞ!!」
「はぁ、食べるぞ」
そう言うとセリカは一目散におかずを取る。
今日は青椒肉絲、唐揚げ、ハンバーグ、ロールキャベツ、きんぴらごぼう、炒飯を再現したものだ。
食事は俺の数少ない楽しみだ。
前に腹いっぱい食べたときは、何時だっただろうか?
ある軍人に交渉された時は、軽めにしたからな...それでも十人前は食ったがな。
「なあグレン。お前、アルザーノ帝国魔術学院で働く気はないか?」
「...確かにメリットはある。だが、反面デメリットも大きい。それに俺は職員免許を持っていないし、授業をする気もない。そもそも俺は人に物を教えるのが好きではない。よって俺は今の生活で十分だ。外道を殺したり、捕えればそれなりにお金も入るしな」
「不定期なのが玉に瑕だね」
「実はな、講師が一人いなくなってな、枠が余っているんだ。アルバイトと思ってやってくれないか?」
「どうせお前の事だ。書類を提出していてもおかしくない。諦めてアルバイトをするが、条件がある」
「なんだ」
「俺は俺のやり方で授業を行う。様子見をしてから授業内容等も全て決める。正直俺の合格基準に到達する奴なんていないだろうしな。セリカの期待には応えれないからな」
「それでも構わんよ」
「じゃあ、これからはみんなで一緒に学院に行こうね」
こうして、俺は再び人に教える立場となった。
しかも一対一ではなく、多対一というめんどくさい立場に。
書いていて、外道よりも外道なやり方だな~と思うけど、DARKER THAN BLACKを見直すと別段そうでもないね!!
愚者の世界使えば被害無いと思ったけど、やっぱり一回は派手な戦闘をさせてみたかった。