虹色物語   作:暗殺 中毒

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ノリで書いた。とても清々しい気分だ。


歪んだ感情

午前6時。ハイジャックされた飛行機に忍び寄る影が四つ。見張りの目をかいくぐり、前方搭乗口に立つテロリスト二人を速やかに音を立てず撃ち抜く。最も大柄な男がハンマーを手にバリケードを破壊、同時に一人が飛び出し不意をつかれたテロリストをナイフで殺傷する。そのまま敵の捜索を続けながら進行し、貨物倉で四人のテロリストと交戦。ガスグレネードにより二名を殺害、残り二名は後退した。

 

大柄な男と一人が別行動をとり、残された二人はドローンを使い慎重に歩みを進める。敵は総勢五人。侵入経路はバリケードで封鎖され、ニトロセルを起爆する態勢も整っている。更にはシールドの後ろに隠れている敵まで。

 

先に動いた片割れはバリケード付近に機械を設置すると、ニトロセルから信号音が消える。それが突入の合図だった。遠くから覗き込んでいた残りの一人がポンプアクションショットガンでバリケードを粉砕、片割れも物陰に隠れつつ銃撃を開始する。そして、テロリスト達の頭上にある落とし戸が破壊された。

 

大柄な男が突如姿を現し二名の頭部を撃ち抜き、間髪入れずに照明が落ちる。その隙に仲間の援護によりテロリスト二名の排除に成功。明かりが再び灯った時、シールドの裏に隠れていたテロリストの首にはナイフが深々と突き刺さっていた。

 

 

飛行機ハイジャック事件を無事収束させたSASのレインボー隊員達は、帰還のヘリに搭乗していた。

 

「マイク上官、浮かない顔をしてどうしました?」

「スレッジ、上官呼びはやめろ。ここでは対等の立場だ」

「そうか……なら改めて、どうしたサッチャー? 気になることでもあるのか?」

「クソでもガマンしてるのか?」

「それはお前だろう。今まさにそんな顔をしている」

 

下品な言葉を口にした男は皮肉めいた返答にはまるで反応を示さず、悠々と水を飲み続けている。それが男、サッチャーと呼ばれた初老の隊員の怒りを益々(ますます)燃え上がらせる。彼はこの男が気に入らない。ハッキリとした理由は無い。ただ嫌なヤツ、そうであることは間違いがなかった。

 

性格の不一致ではない。彼は二つの戦争を経験し、様々な経験をして来た。たったそれだけの理由で機嫌を損ねるほど子供ではない。ならなぜ嫌だと、絶対に分かり合えないと感じるのか? それは彼の中で(つちか)われた感が、そう警告しているからだ。

 

数多くの軍人を指導し、数え切れない人間と出会って来た彼にとって男は未知の存在だった。男は特殊部隊という、命を掛けて人々を守る仕事に従事している。だがその背後にどうしても正義感や道徳観という物が見えない。むしろ、破壊や混乱を目当てにこの仕事をしているのではないかと感じる時さえある。

 

事実、この男はボクシングや任務の最中に見せる嬉々とした目を普段の生活の中で見せたことは一度としてない。それが彼が疑心暗鬼となっている最たる理由だった。もし仮にこの男が働く理由が破壊を楽しむ為だったとしても、彼にそれを止める権利は何一つ無い。だがもしそうだったとするならば、彼は永遠に男を嫌い続けるだろう。

 

「サッチャー、考え事か? もう着いたぞ」

「……そうか」

「久しぶりにナイフ戦の訓練をしてくれないか? まだまだ教わることが多い。おい、付き合え」

「いや、オレは用事がある。代わりにミュートに付き合ってもらえ」

 

三人がヘリから去って行く中、残った男はゆっくりと地面に降り立ちその姿を見送る。彼の背中だけを。

 

男は破壊を好む、混乱を楽しむ、狂気を喜ぶ。それは男が幼い頃から持って生まれた天性の物。だがそれはこの仕事を続ける理由ではない。男がここにいる理由は、彼だ。男は彼と出会い初めて負けた。そして何度も挑み、未だに勝つことは出来ていない。

 

相手は老人なのに、何故(なぜ)勝てない? 力や体力では自分が優っているのに、何故(なぜ)勝てない? 自分が劣っているのは身長差だけだというのに。

 

彼に負けたその時から、男は彼を倒すことを目標に生きている。彼を倒すにはこの仕事を辞める訳にはいかない。彼がこの仕事を辞めるまでに、どちらかが死ぬまでに必ず超えなければならない。そうしなければ、男のプライドは一生傷付いたままだ。

 

「待ってろよ、必ずお前の技術を全部盗んでやる、師匠」

 

男の名はジェームズ・ポーター。またの名をスモーク。歪んだ尊敬の念を持った、特殊部隊の隊員。

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