浦の星の一般生徒   作:紅いきつね

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初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。この作品は『浦の星の王子様...ではなくただの生徒です』をリメイクした物となります。

ではでは、良ければお楽しみください。


廃校と転校と

「廃校......だと?」

 

 それは誰が呟いたか。

 

 高2の三学期末、終業式が終わった後のHRで担任から突然の廃校のお知らせをされた教室は皆、現実を受け止められず静まり返っていた。どこのクラスもHRの筈だが学校中が静かということは恐らくどこのクラスも同じような状況なのだろう。

 

「あぁ、俺も正直なところ信じたくはないが......先程の職員会議で話があった。お前らには迷惑をかける、本当にすまない」

 

  担任が生徒達に対して頭を下げる。状況を知らない人が見れば何事かと思うであろう異様な光景だ。生徒に対して頭を下げる事のできる教師もなかなかいないだろう。そんな人柄のおかげか、この教師は生徒達からの信頼も厚かった。

 

「先生が謝ることないですよ、それよりこれから僕達はどうなるんですか?」

 

  大体クラスに1人はいるようなリーダー格の男が質問する。

 

「お前らの親御さんに学校から連絡がいってるはずだ。近辺の学校への編入手続きについての書類もじきに届く」

 

「なるほど、でも当たり前ではあるけどこのクラスとはお別れってことか......」

 

  リーダー格の男のその呟きはクラス全体に信じ難い現在の状況を再認識させた。

 

  その後も話し合いというか慰め合いが続き、いつの間にか先生も含めてお別れ会のような流れになっていった。

 

 一方、俺こと鳴海 和輝(なるみ かずき)は

 

(廃校......編入......俺はどこにいけばいいんだ......)

 

 という思考の無限ループに陥っていた。

 

 

*****

 

 

  そんな終業式から何日か過ぎた。

 

  俺は高1の時から沼津のとあるマンションに一人暮らしをしている。というかさせられている。

 

  いや、おかしいのは分かってる。自分でもおかしいと思ってる。全てあの両親が悪いのだ。

 

  なにが「じゃ、かずくんも大きくなったことだしかずくんに費やしてパパとイチャイチャ出来なかった分、これから思いっきり過ごしてくるわ♪」だ。

 

  なにが「お前ももう男として一人前だってとこを見せてみろ、俺は母さんといちゃつ......なんでもない」だ。

 

  お袋は隠す気も無いし親父も最後に本音漏れてるし。

 

  生活費は親父達から仕送りとして送られてくるからなんとかなってはいるのだが。ぶっちゃけこれ傍から見たら育児放棄ですよね?義務教育は終わってるし生活費あげてるから大丈夫みたいなそんな考えなの?そうなの?

 

  まぁ、そんなわけでいくら仕送りがあるといっても節約しないと不安な俺にとっては学費でゴッソリもっていかれるような学校は困るわけだ。

 

  そんな時、何気なくポストから取ってきたチラシやらなんやらを整理していると、一つの封筒を見つけた。その封筒に書いてあった文字を読んでみる。

 

「なになに......浦の星女学院編入手続きのご案内......は?」

 

  俺は一瞬、いやもうしばらく固まった。確実に送るとこ間違えてるよねこの学校、だって俺は今をときめくJKでも無いし飛び級した幼女みたいなラノベキャラでもない。正真正銘、日本男児だ。

 

  あれ?実は俺って知らないうちに性転換手術でもしたのでは、などとアホな妄想をし始めたその時、電話がかかってきた。スマホの画面には非通知と表示されている。

 

「はい、もしも「きゃー!!!!かーずくーん!!!!おっひ」申し訳ございません、宗教の勧誘はご遠慮ください。それでは」

 

  何だったのだろうか、なぜだか妙に聞き覚えのある声だった。具体的に言うとまるで自分を産んでくれた人のような声だった。だが恐らく偶然だろう、ほら、電話ごしに聞こえる声ってサンプルから似た声が流れてるだけらしいし。何より自分の母親があんな頭の悪そうな喋り方をするとは思えな......信じたくない。

 

  そこに再度着信。表示されているのはもちろん非通知。

 

「ちょっとかず」

 

「おかけになった番号は、現在使われていないか相手に出る意志がありません。ピーとも鳴りませんので二度とかけてこないでください」

 

  すかさず3度目の着信。どうやら現実を受け入れる必要があるらしい。真実は残酷だ。

 

「もしもし」

 

「かずくんったらひーどーいー!!突然切るんだもーん」

 

「分かった分かった、で、何の用だよ」

 

「浦の星女学院ってとこからの編入手続きの書類って届いたー?」

 

  もうなんか狙ったようなタイミングで電話きたし嫌な予感はしてたけどさ、やっぱお前か。

 

「あぁ、届いてるよ。送るとこ間違えたって連絡でもきたんだろ?そうだろ?そうと言ってくれよ」

 

「ちーがーうーよー!!かずくんったらニブいんだからー!!このこのー!!」

 

  うざい。無性に腹が立つ。男の友人とかだったらもれなく殴ってるレベルだが一応相手は母親だし何よりもどこにいるかすら分からない。

 

「いや、おかしいでしょ。俺は男だぞ?男が女学院に?まさか悪ふざけで?そうなの?そうだろ?馬鹿なの?嘘と言ってよ!!」

 

「その学校ね、生徒少ないから男子生徒募集してみようってことで試しに1人募集してたの私が見つけてさ〜」

 

「で、送ったら採用されちゃったと?」

 

「そゆこと♡」

 

「そゆこと♡じゃねえよアホか!!!!!!」

 

  本当に何を考えているんだ。女学院とかなんか名前からして金持ちだらけで金かかりそうじゃないか。具体的に言うとみんな語尾にですわとか付いてそう。

 

「ちなみにテスト編入ってことで学費免除らしいよ〜」

 

  学費免除だと!?......いやいや、いくらとんでもない条件だからといってこの俺がそんな簡単に釣られるはずが

 

「でもそんなに嫌ならやっぱ断っとくね~」

 

「ありがとうございます母上いやお母様、愛しのママ大好きでございます愛してます」

 

  やっぱりお金には勝てなかったよ......。

 

「まったくもーいつもそれぐらい敬ってほしいわ〜。あ、パパに代わるわね〜」

 

  そう言って電話ごしに何やら少し会話しているのが聞こえた後、聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。

 

「もしもし」

 

「あ、親父?」

 

「私だ」

 

「お前だったか」

 

「暇を持て余した」

 

「神々の」

 

「「遊び」」

 

「じゃ、そういうことで「え、ちょ」」

 

 

  なぜ両親と通話するだけでこんな疲れるのだろうか。やはり俺の両親が頭おかしいのは間違っている。略して俺がいるという名のラノベでも書いてやろうか......いや、やめておこう。

 

  それにしても学費がタダなのは嬉しいけど......女学院......不安でしかないよな、だって確実に男子生徒俺だけだし。

 

 

  結局その日は編入手続きの書類をずっと眺めていた。

 

 

 *****

 

 

  春休みが明けた。

 

  結局手続きを済ませた俺は、正式に浦の星女学院に編入することとなり、学院の校長室に来ていた。

 

「君が鳴海和輝君か、テスト編入を受けてくれてありがとう。男子生徒1人でやりづらいとは思うけど楽しい高校生活を送ってくれることを願ってるよ」

 

  そう言ったのは定年間近な雰囲気のある校長のおじいさん。

 

「いえこちらこそ、通っていた学校が廃校になってどうしようもなくなった自分を受け入れてくれるだけでなく学費免除までしていただいて、本当にありがとうございます」

 

「やっぱ学費免除は釣られる?」

 

「......かなり魅力的でした」

 

「はっはっは!正直な子は嫌いじゃないよ。繰り返すようだが楽しい高校生活を送ってくれたまえ!では鳴海君を教室へ案内してくれ」

 

「分かりました。では鳴海さん、私についてきてください」

 

 

 

  こうして俺は校長に指示された女の人(どうやら担任らしい)に連れられ、教室の前に着いた。

 

「では、私が呼びますのでその時に入って自己紹介をお願いします」

 

「分かりました」

 

「お願いします。それでは」

 

  そう言って先生は教室へ入っていった。

 

 

 

「......以前にも言っていた通りこのクラスにテスト編入として男子生徒が転校してきます」

 

  しばらく聞き耳を立てていたがそろそろのようだ。教室の中からは「イケメンかな!イケメンかな!」「がっちりした人がいいなぁ!」「いや痩せてる人がいい!」などと聞こえてくる。

 

  ハードル上げるのほんと勘弁してください、僕はイケメンでも筋肉質でも筋肉モリモリマッチョマンの変態でもありません。

 

「それでは、入ってきてください」

 

  そうこうしているうちに先生から呼ばれてしまった。

 

  さて、当たり障りのない程度にやるしかない。

 

  「えー、男子生徒のテスト編入としてきました。鳴海和輝です。適度に絡んでくれると助かります。よろしくお願いします」

 

  俺が自己紹介を終えると、暖かな拍手が聞こえてきた。思っていたよりも普通に迎えてくれたみたいだ。誰も反応しないとかだったら登校拒否ルートまっしぐらでしたね。

 

  朝のHRが終わり、授業前の休み時間になった。

 

「好きな食べ物は?」「好きな女優は?」「趣味は?」「好きなタイプは?」「スクールアイドルとか好き?」etc...

 

  前言撤回。普通どころか大歓迎してくれました。クラスのほぼ全員が俺の机に集まってきたのは流石に驚いた。こんなに自分の席に人が集まったのとか生涯で初めてじゃないか?ついに俺にも春が......それはないな。

 

 

 *****

 

 

  放課後、俺は編入の案内の書類に混じってた地図を片手に学院内をうろついていた。この学校の生徒としてこれから過ごすからには校内の構造ぐらいは覚えておこうと思ったからだ。

 

 ソンナコトヲカンガエテイタジキガボクニモアリマシタ

 

 そう、高校3年生、絶賛迷子中である。

 

「ちくしょう、どこだここは」

 

  さっきから同じとこをぐるぐる回っている気がする。おかしい、何故だ、訳が分からない、ありえん(笑)。しかも何故か誰にも会わないから道を聞くことすらできない。

 

  方向音痴に運の悪さが重なるとこうなるのである。朝のめざ〇しテレビの星座占いでも12位だったしな。

 

  そんな時、俺に光が差した。ようやく生徒を発見したのだ。女の子(当たり前だが)が2人、茶髪の子と赤髪の子が仲良さげに歩いていた。

 

  もうチャンスは今しかないッ!!

 

「すみません、恥ずかしながら迷子になってしまったので道を教えてもらいたいんですけど」

 

  俺は恥を捨てて女の子2人に駆け寄った。すると2人が振り向き、茶髪の子が耳を塞いだ。

 

  え、なんで耳塞いでんの?汚い声で喋らないでくれませんか耳が穢れてしまいますわみたいなやつですか?登校初日からイジメ案件ですか?いじめダメ、絶対。というかそれはいじめなのか?そんなことはどうでもいい、なら赤髪の子はというと、何やら口をパクパクさせている。分かったぞ、おまわりさんこっちですって叫ぶんだろ、心が叫びたがってるんだろ!!

 

「ピ......」

 

  ピ?なんだろ、何も思いつかないそんな事を思いながら話すのを待っていると、赤髪の子が持っているクリアファイルが偶然視界に入った。

 

「ピギャ「あ、μ's」......え?」

 

  しまった、何か言おうとしていたところを見事に遮ってしまった。いやこの場合周りの人呼ばれる可能性もあったし遮って良かったのか?取り敢えず謝らねば。

 

「あ、ごめ「μ's知ってるんですか!!」え?は、はい」

 

  謝ろうとしたら次は俺が遮られた件について。

 

  しかもこの子めっちゃ近くに寄ってきたしなんかめっちゃ目がキラキラしてるし女の子特有のいい匂いと言いますかもうなんかやばい、取り敢えずなにか起きる前にこの場から立ち去りたい。道分からないけど。

 

  だが立ち去るわけにもいかない以上、この状況を整理して上手く対応して見事、学校からの脱出ルートを聞き出すしかない。

 

  それにこの子、μ'sと言ったか。μ'sとは超がついてもいいレベルの有名なスクールアイドルである。ちなみに俺もなんとなーく見に行ったライブでまんまと虜にされてしまったのだ。

 

「ルビィちゃんが......叫ぶこともなく......男の人と喋ってる......ずら......?」

 

 茶髪の子が何やら呟いていたが必死の俺にはよく聞こえなかった。




・真実は残酷だ
言わなかった、言えなかった

・暇を持て余した神々の遊び
あの人達どこいったんだろ

・俺がいる
いろはす可愛いよいろはす

・筋肉モリモリマッチョマンの変態
He's one gigantic motherfucker.

・ありえん(笑)
図に乗るな!

・めざ〇しテレビの星座占い
単純に作者がめざ〇し派だから

・心が叫びたがってるんだろ!!
実写化するらしいですね

・女の子特有のいい匂い
あれほんとなんなんですかね、男は臭いだけなのに


ということでここまで読んでくださりありがとうございます。誤字脱字の指摘や感想、お待ちしております。
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