少年成長記   作:あずき屋

5 / 41
「ラジエル、貴方は今が成長期なんですから、栄養のあるものを沢山食べなければなりません。
しかし、他者から与えられては本当の成長になりません。
なので、自分から獲物を捕ってきなさい。
ノルマ達成出来るまで帰ってきても、その場で食べてもいけませんよ?」


「ししょー、後ろのそれ、山のごはん全部とってきてない?」



第4話 少年、温かみを知る

 

 

「そ、そんな悲しい出来事って……有り得るの?」

 

「残酷過ぎまひゅ……」

 

「それは、ジャーキーも喉を通らない……」

 

「ラジエルの記憶が曖昧になってしまっているので、聞いた限りではこれが全てです。

そして、彼の師よりこのオラリオへ向かうよう言いつけられたようで、今に至るみたいです」

 

 夕餉を済ませ、リューはラジエルの過去を眷属全員に話した。

少年から許可は貰っているものの、悲惨な過去を語るのはあまり気分の良いものではない。

リーヴァたちは少年の話を悲痛な表情を浮かべながら聞いていた。

 

「彼の本当の目的は分からない。

それを探すためにここまでやってきたと言っていました。

信用するには難しいかと思われても仕方がない。

でも、決して悪い子じゃない。それは私が保証します」

 

「だいじょぶだいじょぶ。

他でもないリューが信じてるなら私達はなにも疑わないよ?

安心して、ラジくんは存分に可愛がってあげるから!」

 

 

皆は一同に頷いてくれた。

これまで決して少なくない時間共に生活し、背中を預けあった仲だからこそ、胸を打つものがある。

 

 

「ありがとうリーヴァ、みんな。

話した通り、彼は人の優しさや温もりに満足に触れてこなかった。

だから、出来るだけ気にかけてあげて欲しい。

どうも見る限り危なっかしくて……」

 

「………にっひひ」

 

「な、なんですかリーヴァ。

そのきも、厭らしい笑みは」

 

「今気持ち悪いって言いかけたよね!?

いやね、あのリューが子どもとはいえ、人ひとりにここまで心配するなんてなーって思ってさ。

なんて言うか……そう!

お姉ちゃんみたいな空気出してるよ?」

 

「姉……私が?」

 

「うん、リュー本人も無自覚かもしれないけど、それぐらいあったかい感じだったかな。

早速なれたじゃん、ラジくんにとって寄り添える人のうちの1人に。

ほーんと、あの頃ツンツンしてたリューからしたら考えられないよ」

 

 

 リーヴァはケラケラと笑いながらリューに対する感想を述べていた。

裏を感じないのは、それが彼女の紛れもない本心だからだろう。

他の皆も同様に賛同しながら、リーヴァの言い分に対して笑みを浮かべていた。

 

 

「……後は、どれだけ本人が変われるかが勝負」

 

「そうですね。

私も全力で援助はしますが、それだけは本人次第ですから。

後は信じます」

 

 

結局のところ、これからを変えていくのは本人の気持ち次第。

周りはあくまでサポートの枠を越えることはできない。

リューたちはそのことを承知していたため、ただ単純に甘やかそうとする気は無い。

ただ、少年が頑張ったことに対してはしっかりと褒める。

間違ったことをしようとしていたのなら諫める。

過ちを犯したのなら叱る。

リューたちは、この三つを重点的に行えば良い。

子どもを正しく導くための必須事項を行うことが、周囲の者達にできることだろう。

 

 

「まぁ、それもこれも、まずはラジくんの住むところから確保しておかないとダメでしょ?

初めてオラリオに来るんだから、宛も何もないんだよね?」

 

「はい。

野宿すればいいとか言っていたので、まず間違いなく決まった寝床は持っていないでしょう。

どうすれば……」

 

「え?簡単じゃない。

うちのホームに泊めちゃえばいいのよ。

それこそずっとね。

部屋は余ってるし、何よりアストレア様もそう言ってたしね」

 

「それはそう……なのですが……」

 

 

 アストレアは好きなだけここに居てもいいと先程そう明言した。

確かにホームの部屋に空きはある。

入浴に関しては時間をずらせば問題もない。

そう、アストレアファミリアのホームに住むことに関しては、理解してくれた眷属たちの手前可能であった。

しかし、リューの懸念はそこではない。

アストレアファミリアは闇派閥に対する抑止力のうちの一つ。頻繁に対立することはないが、ある日唐突に襲撃なんてことも珍しくない。

この街に来て日の浅いラジエルでは対処が困難と思える。

故に、彼を危険域に置くことになってしまう。

リューの一番の心配どころはそこであった。

 

 

「リューの考えも分かってるつもりだよ。

だからさ、早めに判断させてもらおうよ。

ラジくんが、どれほど出来るのかさ」

 

「……分かっています。

予定より早いですが、仕方ありませんね。

彼の力を試させてもらいましょう」

 

 

リーヴァは時に冷酷とも呼べるような態度を取る。

もちろんそれは、家族に対して被害が及ぶような懸念材料があった場合に限る。

団長代理を任せられているだけあり、団長は自分たちの眷属の命を預かる。

家族を無事にホームに帰すため、周囲に対して非情な感情を持たなければならないこともある。

彼女の言葉は正論だ。

この街で自衛の手段を持たない冒険者など、あっという間に命を落としてしまう。

モンスターのような直線的な敵意なら対処もできる。

しかし、敵はモンスターだけではない。

悪意を持つ冒険者こそ最も危険だ。

害をもたらす存在は、時として味方の振りをしつつ、いつの間にか懐に入りこむ。

問題に直面する前において、トラブルに直面してしまった際に自分でどう切り抜けられるかが求められる。

 

 

「まぁ、今は待ちましょ。

リューの認めた弟クンが冒険者になる時をね」

 

 

──────────────────

 

 

「では、始めようラジエル」

 

「うん、始めようあてな様」

 

 

 アストレアファミリアのホームのとある一室にて、神の恩恵(ファルナ)の継承は行われた。

神は自身の眷属となる者の身体の一部に“神血”(イコル)を用いて“神聖文字”(ヒエログリフ)を刻む。

それは、眷属の証であると同時に冒険者の証でもある。

ラジエルの了承を得ると、うつ伏せになった少年の背に跨り、恩恵を刻む準備を整える。

アテナは自らの指に針を突き立て、その指先に赤い雫を膨らませる。極小の赤い風船を少年の背に押し当て潰し、古の文字を描いていく。

 

(小さな背だ……。

だが、これは本当に人間の子どものものなのか?)

 

 子どもの体格であるため、成熟した者と比べて随分と小さな光景だ。

未熟なためそればかりは致し方がない。

しかし、アテナの疑問はその小さな身体に付けられた無数の傷跡。

跡はところどころ薄くなっていて目立ちにくくなってはいたものの、到底子どもにつくようなものではない。

 

(特筆硬いという訳ではない。

確かに硬いが、それ以上に目を引くのがこの柔軟な筋肉だ。

この身体で子どもとは……)

 

 少年の身体は、一般の成人男性より遥かに強靭な肉付きをしていた。

無駄を一切なくしたかのようにたるみがない。

細いように見えるが、筋肉ですら無駄に付いていない。

少年には体づくりの指導者でもいたのだろうか。

彼には師がいたと聞いた。

恐らくその者の指導故の賜物と言ったところだろうか。

 

指先がまるで筆のように、滑らかに文字や図形を形作る。

そして、この行為は特に時間を欠けることなく終了する。

全てを描き終えたと同時に、刻印は淡い赤の煌めきを放つ。

神の恩恵の授与が完了した証だ。

 

 

「うん、初めてだったが故に緊張したが、やり終えてしまえば存外呆気ないものだな。

これで恩恵の授与は終了だ。

おめでとうラジエル。

お前は私の最初の家族となった」

 

「かぞく?」

 

「そう、新たな家族となったのだ。

お前には、私という主神の血を直接刻んだ。

まぁ、実際に私から産まれた訳では無いが、冒険者としてのラジエル・クロヴィスは私から生まれた。

これからは私がお前の親となろう。

存分に甘えるが良い」

 

「…………かぞくって、よく分からないよ」

 

「アストレアの子から話は聞いた。

お前はどうやら記憶と感情に明らかな欠如を持ってしまったと。

だが心配するな、私にもよく分からん!」

 

「そーなの?」

 

 

 アテナは高らかに、隠すことなく告げた。

自分にも家族の意味は分からないと。

少年は、純粋な疑問を親に投げかけた。

 

 

「あぁ、本当だとも。

私もお前と同じ、家族というものがよく分からん。

つい最近オラリオに来たばかりだからな、眷属もお前以外いなければホームもない。

私もまた、ゼロから始める者のうちの一人という訳さ」

 

「じゃあ一緒?」

 

「そうだ、これからよろしく頼むぞ」

 

 

 そういってアテナはラジエルの頭を撫でた。彼女は決して慈愛の女神ではないが、その手には確かに慈しみがあった。

神だからではなく、誰かに対して思いやりを持つ心があるからこそ示せるものである。

その手はとても、温かかった。

手が離れても仄かに熱が残っていると錯覚するほどに。

 

 入浴に駆り出されたラジエルが去った部屋に一人残ったアテナは、彼のステイタスを写した羊皮紙を見ながら考えていた。

 

 

「……うん、これで問題は無いはずだ。

神気(アルカナム)も込めていないし、何の不備もなかったはずだ。だが、これは本当に恩恵を与えたばかりの者のステイタスなのか?アストレアはそんなこと言っていたかな……。

ステイタスに関する情報は誰であろうと漏らすことは出来んし……困ったな」

 

 

 プライバシー保護のため、ステイタスに関しては機密事項扱いになっている。

故に、主神と恩恵を与えられた者以外、その情報を知ることは出来ない。

基本アビリティは誰であろうと基本的にはゼロからのスタートとなる。

しかし、アテナは知らない。

少年が誰にも想像出来ないほどの鍛錬を積んできたことを。

その結果、初期段階の基本アビリティに影響を与えていたことを。

この事実は誰にも分からない。

アテナはおろか、少年ですらも知りえない。

誰かに話すつもりもなければ、神気も使っていない。であれば、他の神たちも変に騒ぎ立てることはないだろうと思った。

後に、大変な騒ぎになるとも思わず。

 

──────────────────

 

ラジエル・クロヴィス

Lv.1

種族:ヒューマン

所属:アテナ・ファミリア

力:I 0

耐久:I 0

器用:I 0

敏捷:I 0

魔力: 0

 

(魔法)

 

 

《スキル》

魂魄の枷(スピリトゥス・アイロズ)』 

・魔力の放出に対して制限が掛かる

・魔力充填に対して著しい遅延効果

・???

 

 




 

いらっしゃい、あずき屋です。

今回は短めです。
恩恵を受ければ後はお待ちかねの戦闘描写に入っていきます。
うまく表現できるか不安で仕方ありませんが、ヤるだけヤってみます。
ステイタスに関しては、これ以上ないミスが発覚したためゼロに戻しました。
本当に失礼しました。
代わりにフラグたるスキルを一つ追加しておきました。
現段階ではお荷物以外の何物でもありません。


ぶっちゃけ言うと、リアルが忙しいのもあって若干やる気が下がり気味です。
自分なりにモチベを上げようと思ってます。
そして、今まで飛ばしてきたこともあるため、これからペース落ちるかも知れません。
出来れば声援下さい。
やる気上がります。

ではでは、また次のページでお会いしましょう。





PS
次回、ラジくん暴れるかも
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。