RWBY Mask of Grimm   作:人間のダスト

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 なにジョジョ?カーディンって奴がクズい?
 逆に考えるんだ、これ以上奴の株が下がることはないんだ、って……

 本当に酷いから擁護できない……こんなんナルホド君も匙投げるわ。

 こういったジョック野郎が出てくるのは向こうのお国柄を感じますね。



Mental trouble

 あの晩から一週間後、欠伸をしながら教室へと向かおうとしたが、朝に強い……というよりも笛の練習で早く起きていたハルトに引き止められた。

 ……ああ、そうか。まだ頭が回っていなかったからか。すっかり忘れていた。

 

 学ぶという事は何も室内で籠りきりになって本とにらめっこするだけではない。今日はグリンダ女史の引率で課外授業を行うことになっていた。そのため教室ではなく、屋外に集まり、フォーエバー・フォールまで来た。そこまでは良かったのだが……

 

「ジョーン君よぉ、俺たちの分もやっておいてくれよ?」

 

 ジョーンがカーディンの荷物運びをやっている。大方、あの晩の話を聞かれていて脅されて付き従っているといったところか。

 本気でその選択を選んでしまったというならもう止めないが、正直見損なったと言わざるを得ない。切った啖呵はその程度の価値だったという事になる。

 

 自分の観察眼も鈍ったか?いや、ジョーンは卑屈な目つきにこそなってはいるが、下水のようには濁っていない。何かきっかけがあればまだ……

 

 ん……?ジョーンとチームCRDLの人数分の瓶。まだ不自然な点はない。あのカーディンのことだ、課題を他の奴にやらせようという浅はかな考えが見え透いている。だがその数が6本だとすると途端に不可解な点が出てくる。

 あのダンボール箱から羽音のような、エンジンのような音が聞こえる。……そういえば今日の課題は一人一本瓶に樹液を詰めるという、危険な場所でさえなければ子供ですらできる簡単なものだ。

 

 

 六本目の瓶。甘い樹液。ダンボール箱から聞こえる謎の音……ふと脳内でこの三つの点が線で結ばれる。

 

 

 まさか。いやいやあり得ない。ここが危険であるという事は重々承知している筈だ。いや、それでも質の悪い悪戯のような真似をするのがあいつらだ。もしその標的が……

 

「ジョーン……」

 

 あの赤髪の才媛(ピュラ・ニコス)だとしたら。動機としても十分だ。ウーブレックス博士の講義でも腹を立てていたし、ファウナスに対して庇い立てしていた彼女が気に食わないといった理由で報復を仕掛けようなどと考えていてもおかしくはない。

 

 

「なあカルマ……」

 

「あ?ああ、成程……わかったっつうの。そんな顔すんなって。まあいざって時は……俺たちの出番ってわけか」

 

 カルマが親指を目立たないようにしてジョーンを指し示し、ハルトとゴルドにアイコンタクトを送っている。どうやら意図は完全に伝わったようだ。

 

「だけど勘違いすんなよ……限界までは手を貸さないし、手は出すな。これはあいつの問題であって本来は首を突っ込むようなことじゃない。それ位お前だってわかっている筈だ」

 

「耳が痛いねぇ……その通りだけど。だからハルトやゴルドには相談してないんだ、分かってくれよ」

 

「ちょちょちょ、それだと僕は冷血漢か何かみたいに聞こえてしまうじゃないか!カルマとはまた別のアプローチをしたさ」

 

「私に相談しないのは英断だったな。面倒事は嫌いだし、そんな奴らは徹底的に潰してしまえばちょっかいなどかけてこなくなるからな」

 

 ゴルドの方法は確かに一番手っ取り早いが、ジョーンの成長に繋がらない。ハルトに至っては普通に友達になれとか言い出しそうだから却下。向こうはジョーンをお友達(パシリ)だと思っているらしい。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 まさかあの晩こいつ(カーディン)に話を聞かれているとは思わなかった。決定的な弱みを握られた俺はへこへこせざるを得ない状況に置かれている。そのせいでチームのみんなと離れてこいつらと一緒に動かないといけなくなっちまった。

 

 ああ、この樹液は俺の体によくないようだ。手がかぶれているし、頭もクラクラする。だけどこいつらの分と俺の分、それに余分にもう一本何とか集め終わった……

 

「おう、ジョーン君よ、ご苦労さん。まあこれくらいは楽勝だったろ?」

 

 こいつら、俺の弱みに付け込んで木に背中を預けているのには腹が立つが、ここでプッツンしてバラされたら……更にチームのみんなに迷惑かけちまう。それだけはダメだ。

 

「まあジョーン、お前さんも気になってんだろ?なんで俺たちは五人しかいないのに瓶六本分も樹液を集めさせたか」

 

 気になるが嫌な予感しかしない。カーディンがにやけながら得意げに語りだそうとしたが、それを制止される。

 

「まあそんな顔すんなよ……気になるのは分かるがお楽しみはこれからだ。俺たちと来い。説明してやるよ」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「おいおいおいおいカルマ何やってんの!?」

 

 いざ樹液を集め終わったと思ったらその瓶の中には何も残っていなかった。向こうでジョーンの分まで樹液を集めてあげているピュラを見習って欲しい。

 

「何って……樹液を啜ってるんだろ」

 

 それは見たらわかる。先程この樹液を少し舐めてみたが、かなり甘い。とはいえ瓶に集めた先から勢いよく飲み干されてはたまったものではない。

 顔に蜜を付けずに飲み干す様はシュールだが、これでもう五杯目だ。いい加減飽きてほしい。

 

 少し離れたところでノーラも同じことをしていたが、カルマの飲み干す速さにドン引きしていた。それでレンが「助かった……」と言っていたので彼はいつも苦労しているのだろう。そんなオーラを感じるし。

 

「ふっ……これだからカルマは。僕みたいにプレーンシュガーを愛するって拘りがないからそんなアホみたいなことができるんだ」

 

 ハルトはまーた食の好みで戦争を起こそうとしてるし……甘いものは好きだが、カルマ程に見境なしというわけではないが、ハルト程譲れないものがあるわけでもない。

 

「こればっかりは理解不能だ。オレにはそんなものは不要だからな」

 

 ゴルドに至ってはこの手の甘味は興味の外にあるらしい。まあらしいと言えばらしいが、後ろで二人が取っ組み合いを始めている。

 

「随分とクールだね……食べることにはあんまり拘りってないの?」

 

「食べろと言われれば食べるがね。まあ美食は程々がいいというのは父が散々言っていたからな」

 

 ……ゴルドの顔はしょんぼりしていた。いつもは自信満々に言い放つ皮肉もどういう訳かキレがない。というかそこまで皮肉になっていないような気がするが気のせいだろうか?

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 背のそこそこ高い草の生えている、切り立った低い段差から匍匐の姿勢を取って下を眺める。

 見渡す限り生えている植物が紅、紅、紅。いざここにいると意識してしまうと幻想的な景色に対する畏怖と美しさで自分を見失いそうになる。

 

 だがそれは今重要なことではない。下にはチームRWBY、CHNG……そしてピュラやノーラ、レンたちが樹液を集めている。

 

「カーディン……どういうつもりだ?」

 

 カーディンの意図が読めないが、苛ついた顔が良からぬことを成そうとしていることを隠そうとしていない。

 

「借りを返す……ピュラ・ニコス。天才だか何だか知らないが気に食わねぇ」

 

 そうして大きく「W」と書かれているダンボール箱を取り出す。それは振動しながら大きな羽音を立てている。こいつを集めてきた時は何に使うのか理解できなかったが……

 

「さて、先週ジョーンにやらせたレポートにあったが、このレイピア・ワスプは甘いものに集まる習性があってな……」

 

 俺の手を掴んで引っ張り上げ、並々と樹液の入った瓶を押し付けてくる。まさかこれを……

 

「あの女に投げつけてやれ。そうすりゃこの蜂が群がるって寸法だ!」

 

 こいつ。投げつけなかったらバラすつもりだ!畜生め――――

 

 そうして振りかぶってピュラの方を見る。本当にいいのか?彼女は恩人だ。こんな恩を仇で返すような真似をして……投げたらこれからこいつらにずっと頭が上がらなくなる。

 だけどやらないとバラされて退学にされてしまう。あんなことまでやって退学になったら家族に顔向けなんてできやしない。 

 

 そんなことを考えていたらネロが此方を見ている。気づかれた!?いや、この距離だ。見えている訳がない。さっさと投げ――――

 

 

 

 お ま え は そ れ で い い の か ?

 

 

 

 ネロの口の動きがそう言っている。読唇術はできないが、そういったとしか考えられない。

 

 恐ろしかった。心を見透かされているようだった。だけど彼の言う通りだ。

 

 本当に恐ろしいのは――――

 

「……やらない」

 

「……おい。どういうつもりだよ?」

 

「俺の答えは……こうだ!」

 

 瓶をピュラではなくカーディンに投げつける。ボディプレートに赤い蜜が垂れ、ドロドロに汚れている。カーディンも取り巻き共も俺が逆らわないとでも思っていたのか、唖然としている。

 これが今の俺にできる精一杯の反逆。どんなもんだ。まあその顔を見れば効果は覿面だったみたいだけどな。ピュラに投げる?そんなことを一瞬でも考えていた俺がバカだった。

 

 再びネロの方を見たが、こちらは向いていなかった。だけど笑顔でハルトと話している。

 きっと、俺が絶対に後悔しない選択肢を選ぶという事を信じていてくれたからだろう。

 

 

 次の瞬間、世界が反転していた。覚悟していたことだが、かなり痛い。地面に叩きつけられ、体に衝撃が走る。

 こんなチンピラのようなカーディンでもつい最近オーラに目覚めて戦闘訓練を受け始めた俺よりも幾らかは強い。

 

 乱雑に掴み起こされ、襟元を引っ張り上げられる。身長差のため足が付かず、宙吊りになる。さっき顔にいいのを貰ってしまったから痣もできているだろう。

 

「覚悟はできてんだろうな?」

 

 ああ、こいつバカなんだな。分かり切ったことをいちいち聞くのは考えなしのすることだ。今更逃げる真似なんざするもんか。

 

「今更だろ。おまえまさかまだわかってねえのか?……仲間を売るなんざ御免だね」

 

 やられる――――

 

 

「うおっ!?」

 

 鈍い音ではなく、金属をぶつけ合ったような甲高い音を立て、カーディンの拳を弾いた……らしい。というのも目を閉じていたから何が起こったか理解できなかったからだ。

 だが、俺の手から白いオーラが滲み出ているところからすると、何かして防御したのは俺という事は間違いないらしい。

 

 これならあいつらとやり合える、そう思っていたら後ろからカーディンの取り巻きに蹴り倒される。

 

「へっ……驚かせてくれるじゃねえか。それならどこまでやれるか見せて――――」

 

 

 やってやる……徹底的に!こんな奴らにペコペコしてるのは御免だ――――!

 

「おい!どうしたジョーンくん、よ……?」

 

 こいつらには負けたくはない。だけどその覚悟が一瞬で砕け散りそうになった。

 

 あ、ああ……あれは……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「……グリムだ」

 

 遠くで雄叫びと悲鳴が聞こえる。種別は……恐らくアーサ。音の低さや大きさからすると巨大な個体といったところか。だが気のせいという可能性もなくはない。

 ……ここにグリムが出る事もあるというグリンダ女史の話を聞く限りだと、そんな考えはこれっぽっちも気休めにもならなそうだが。

 

「みんな、今の聞こえた?」

 

「聞こえた。ルビーもか?」

 

 樹液を採る手を止めたルビーも聞こえたという事はやはり気のせいではないようだ。

 だが誰が襲われているんだ?ここには各チームのメンバーはほぼ全員いる。

 

「アーサ!アーサだ!」

 

 ソフトモヒカンの生徒がグリムの名を叫びながら走ってくる。足が縺れて転びそうになりながらよくもまああそこまで走れるものだ。

 いや、そんなことはどうでもいい。確かあいつは……そうだ、チームCRDLの奴だったかな?そいつらが慌てて走ってきたという事は……ジョーンが襲われているのか!

 

「何!?どこにいんの!?」

 

 ヤンにぶつかったモヒカンが首元を吊られながら走ってきた方向を指差す。

 地面から足が浮くほどに持ち上げられてかなり焦り気味ではあったが、最低限の役目は果たしたといったところか。

 

「ジョーン……!」

 

 ヤンがモヒカンを投げ捨てたのと同時にピュラが手に持った瓶を落とす。冷静沈着な彼女にしては随分取り乱している。

 

「まだ他の場所にもグリムがいるかもしれないからブレイクとお姉ちゃんはグリンダ先生に伝えてきて!」

 

「レンとノーラもついて行って。私はジョーンを助けに行くわ」

 

 伝言と遊撃のグループ分けを迅速に終え、モヒカンの

 

「ハルト、ゴルド。見つけたグリムを片っ端から殲滅してこい。なあに、露払いみたいなもんだ。俺たちはそれだけで十分仕事した事になる」

 

 剣呑な指令だが、適材適所という意味では間違ってはいない。 

 

「ネロは俺と一緒にジョーンの所に行くぞ。三人もそれで構わないな?」

 

 ピュラとルビーは無言で頷いた。ワイスは何か言いたげだったが同じく無言で頷き、叫び声の方へと駆けて行った。

 

 

 

 やはりアーサだ。棘のように逆立った白い甲殻を背負った大型の獣。通常の個体よりも強いのは明確だろう。

 カーディンが自前の武器で抵抗しようとした痕跡が地面に転がっているが、情けなく腰を抜かしている当人から離れた場所にそれがあるという事は無駄だったらしい。

 

「うおっとお!」

 

 ジョーンがその凶爪を転がりながら避けてはいるが、このままでは引き裂かれるのも時間の問題か。

 

「ジョーン、今助けるよ!」

 

「ルビー、ちょっと待った。ここはジョーンの可能性を信じよう」

 

 クレセント・ローズを構えて飛び出そうとしたルビーのフードを掴んで手繰り寄せ自分の脇に抱きかかえる。

 

「ええっ、ネロなんで? みんなでやればすぐに倒せるよ?」

 

「男にはやらなきゃならない時がある……それが今なんだ。黙って見てな、ルビー」

 

「あなた何をいってますの!?現にジョーンはボロボロ、生きるか死ぬかの瀬戸際ですのよ!」

 

 言わんとすることはよくわかる。ワイスの言う通りかなりオーラを削られているし、相手もかなりの大物だ。ジョーンには荷が重いと見るのも間違ってはいない。

 ……だが、ここで手を貸すのはあまりにも無粋。あの覚悟を決めた目。いつもよりもキレのある動作。

 

 

「ここで逃げたら本当にダメな奴になっちまう……!」

 

 

 ……ここで助けでもしたらジョーンのプライドを傷つけることになってしまう。

 カルマも同じ考えなのか、静かにその時が訪れるのを待っている。

 

「……ええ。ネロの言う通りジョーンを見守りましょう」

 

「ピュラまで……ああもう、どうなっても知りませんわよ!」 

 

 

 

「……別に見殺しにしろなんて鬼のような事を言うつもりはないよ。だけど彼の覚悟を見届けてくれ」 

 

 がんばれ、ジョーン。お前はやっぱり見込んだ通りの男だったよ。これを皮切りに英雄としての第一歩を踏み出すといい。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 カーディンのような奴でも目の前で死なれるのは嫌だ。

 だから俺が何とかするしかない。

 例え荷が重いと言われても。

 ここで逃げたらあいつと同じになっちまう。

 

 怖い。やると決めたとはいえ……目と鼻の先を剛腕から繰り出される一撃が掠めていくのはやっぱり心臓に悪い。

 

 二発ほど直撃してしまったけどまだ行ける。講義で教わったことを脳内で反芻しながらスクロールを見る。

 自分のオーラ残量は34%。もう一発喰らえば死は目前まで迫ってくる。

 

 ならば恐らく次の一撃を当てるか、当てられるか。そこで勝負を決めるしかない。

 

「GUOOOOO!」

 

 咆哮と共に覆いかぶさる形で上を取った獣が命を狩り取ろうとしてくる。

 近くで見ると俺よりも三倍ほど大きく、横幅もかなりあって迫力がある。

 

 ……だけど初めてネロを見た時。あの時は目が合っただけで死んだと思ったが、今は心臓にちょっと悪いだけであの時よりかは恐ろしくはない。

 

 ……楽観的になって現状を顧みても、チームのみんなとデスストーカーを倒した時と違って誰も頼ることができない。ピンチであることには変わりはない。

 

 

「ジョーン!講義の内容を思い出しながらやれば貴方はできるわ!」

 

 いつの間にかピュラたちが俺を見ている。ネロも手助けをしようとしたルビーを止め、こちらを見守ってくれるらしい。……期待は裏切れないな。

 

 ……だから次の一撃で奴の首を刎ねて決着を付ける!

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ジョーンは懐に潜り込んで首を刎ねとばすつもりだろう。だが、アーサの首は刎ねることが出来たとしてもいかんせんガードが甘い。低い角度で盾受けしようとしている。

 このままではリーチの差で爪を防ぎきれずに吹っ飛ばされ、致命の一撃が届く前にジョーンの頭は潰れたトマトになるだろう。

 

 本音を言うとすぐにでもアーサを膾切りにしたいが……

 

 

 ここでジョーンに手を差し伸べるのは自分ではない。もっと相応しい人物がいる。

 

 

 ピュラが手を伸ばす。その手からはピュラのオーラの臙脂色ではなく鈍く黒い輝きが放たれる。

 それと同時にジョーンの盾が黒く輝いて軌道が頭を守るように修正されたのを見逃さなかった。

 

 これは……成程、磁力か。装備は金属でできていることが多い。人間に干渉する類のセンブランスとしては最高峰のものだろう。

 それとピュラの類稀なる戦闘センスと噛み合い、抜群の戦闘能力を生んでいるという訳だ。

 

 盾をを滑って行った腕の内側にジョーンが更に潜り込み、クロケア・モルスが首に深々と食い込んでいき、首と胴体を泣き別れさせる。

 宙を勢いよく舞った首は重い音を立てて落下し、体と共に黒い塵へと還っていく。

 

「へーえ…… そういうことするんだぁ……」

 

「ネロ、カルマ、これはチームの問題なの。私はジョーンに傷ついてほしくはないの。だから……」

 

 ジョーンの手助け自体には何ら文句はない。完璧だろう。

 ……それにピュラとジョーンの関係がごたついた一因は自分にもあるのであまり強く言うつもりはない。

 

「いや、別に不満だったわけじゃないよ。……でも君ってジョーンのお姉さんみたいだよね」

 

「そういうネロはお節介なお兄さんよね。これからもうちのジョーンを助けてあげて?」

 

 ……ジョーンも難儀な男だ。ピュラと付き合うのはかなり大変だろう。いろんな意味で。

 

「ねえねえ、ネロー。今のって何が起きたの?」

 

「ピュラに聞いて。俺って結構説明下手だから……」

 

 ルビーとワイスは何が起こったのかいまいち理解できていなかったのでピュラから説明を受けていたが……

 

 

 

「これは俺たちの胸の内に仕舞っておけばいい……ジョーンは確かに自分の力でやりきった」

 

 防御は少しばかりのお膳立てはあったが、その剣捌きは間違いなくジョーンのものだ。

 

 

 

「ジョーン、なかなかやるじゃねえか」

 

「おいカーディン……二度と俺のチームメイトや友達をバカにすんな!もっぺん同じ事したら……」

 

 ジョーンがカーディンの手を掴み起こしていたが、もうその目はビクビクと恐れをなしているようではなく、毅然としたものに変貌していた。

 カーディンはジョーンが「俺のチームメイトや友達」といった時に捨てられたチワワのような目で見ていたが……因果応報だろう。

 

「……いいな?」

 

 既にどちらが格上か決していた。もうカーディンに脅されることはないだろう。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「カルマ、ここからが俺たちの仕事だな?」

 

 ジョーンたちと別れた後、森の更に深部に潜っていた。

 赤の鮮やかさは失われ、凝固した血のように黒々としている。

 

「応ともよ。あんまり時間かけると不審がられるのは御免だろ?五分くらいで始末していくぞ。……さ、隠れてないで出てこい」

 

 カルマが促す。のそり、のそり。ずんぐりむっくりとした人型が現れる。どうやらアーサを基にしているようだ。

 

「じゃあリニューアルしたこいつのお披露目と行くか」

 

 アークドライバーを巻き付けることにより、使用者によってバックルに現れるレリーフの形状は変化する。

 自分は白と黒の何かを模したもの。ハルトは四大元素を模した四色のダスト。そしてカルマは……

 

 

「変身!」

 

「Faunas……Faunas……Moments Beetle!」

 

 銀色の輝きを放つ重厚な鎧。それでいて下半身はすらりとしていて動きやすそうだが、どこかちぐはぐにも見える。

 これでも強いのかもしれないが……まだ不完全で、蛹のような印象を受ける。

 そしてバックル部分。赤い甲虫……カブトムシだ。機械的なカブトムシを模したものが彫られている。

 

「お?あんまり変わった感じはしないな……」

 

 自分が変身した時はあんな音声は鳴らなかった筈だが……カルマがああいうのであれば以前からあった機能なのだろうか?

 

「まあいいや、俺も……変身!」

 

「■■■■■……■■■■■……Mask Of ■■■■■!」

 

「……何だ!?」

 

 エラー……なのか?だが肉体は変化しているようだ。肌は白と黒の装甲に覆われ、顔に手を当てると掌に硬い感覚が伝わってくる。

 

「おい、ぼさっとしてる場合か!死ぬぞ!」

 

 アーサ・プリテンダーとがっぷりと四つに組み合ったカルマの声で現実に引き戻されたが、それでも疑問は尽きない。

 

「……」

 

 あまりにも一方的。元より高い身体能力を更に強化されているというのもあるが、それを余すところなく使うカルマの戦闘センスも大きな要因だろう。

 その結果が押し倒し、組み伏せ、マウントを取って顔面を鉄のような拳で打ちつけるといった目を伏せたくなるような光景を繰り広げていた。

 

 アーサ・プリテンダーが弱々しく抵抗したが、それでもカルマは止まらない。仮面の下の顔は見えない。

 ……いや、一旦停止した。カルマが立ち上がって脇腹を蹴り飛ばし、距離を取った。

 

「ネロ、合わせろ……止めを刺す」

 

 カルマが投げ飛ばすのと同時にセンブランスを浴びせられたアーサ・プリテンダーの動きが鈍くなる。

 自分はそれに合わせ、大剣で片方だけ足を切り飛ばし、怪物は地に突っ伏した。

 

「叫び声の一つや二つはあげて貰わねえとやってらんねえな……」

 

 カルマが腰に提げられていたクナイと銃を合わせたような紅い武器を右手に取り、執拗に切りつけていく。

 胸、両腕、太腿、腹、首筋……全身余すところなく切り刻み、アーサが悲鳴をあげる。

 

「もうそのくらいにした方が……」

 

 血が飛び散るといったことがないとはいえ、これはいくら何でも常軌を逸している。ここまで激昂したカルマは初めて見たがここまで恐ろしいとは……

 

「……ああ。見苦しいところを見せちまったな。いつもはもっと抑えられるんだが……」

 

 塵を尻目にしてカルマが立ち上がる。依然として仮面の下は伺い知れない。

 

「やっぱり復讐相手って……」

 

 グリムに対して人並み以上に強い敵意を持っているのは薄々感じてはいたが……

 

「そうだ。俺の親父の殺された夜。全身漆黒で顔は良く見えなかったが、金色に輝く目。あれだけは一瞬たりとも忘れたことはなかった……」

 

 

 さ、もう帰ろうぜ。カルマはそう言っていたが、彼がいつもの姿になるまで俺はその場を動けなかった。

 恐ろしかった。記憶を失う前はどうだったかは知らないが、初めて誰かを恐ろしいと思った。

 

 

 朗らかで明るい男。復讐に身を捧げた男。どちらが本当の彼なのだろうか。

 ……彼の背中は何も語らない。それだけで今は救われた。




 次回からRWBY一期のクライマックス部分なので、完成まで少し時間がかかるかもしれませんがのんびりと待っていただければ何よりです。

 感想、ご指摘、好評の声等々お待ちしております。



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