永遠の超銀河宇宙No.1アイドル、み〜んな大好きにこにーこと、矢澤にこだよっ!♡
前回のお話は、にこにーや海未ちゃんがAqoursの皆と島に行くまでのお話だったよね?♡今回はにこにー達の番もあるにこ♪
素敵な出会いだけじゃなくってハチャメチャな旅になりそうかもっ!?や〜んどうしよぉ〜っ!!
でもぉ〜にこにーは皆と協力して、めいっぱい楽しんじゃうぞ〜!!♡
それじゃあOVA第2話も〜⋯にっこにっこにー!♡
⋯⋯『キツイ』ってカンペに書いてんじゃないわよ。
「はい、1050円丁度、ありがとねぇ。」
のほほんとした声にシワだらけの手。どうだ、まるで骨と皮だけではないか。然しそこに愛嬌と暖かみを感じてしまうのが、田舎育ちの感性。SAGAなのだ。近所のババ達もこんな感じだっけし。
あー⋯
いや、そんな事はどうでもいいんだよ、うん。
取り敢えず⋯。
「ふっ⋯!ふぅっ⋯⋯!!」
「ダ⋯ダイヤ、さん⋯?」
「うぅ⋯固くてあかないよぉっ⋯!」
「呪文でも唱えてみれば良いんじゃないかしら♪開け〜〜〜ゴマっ!!」
「開け〜〜〜ゴマずらっ!!」
「
「アンタが1番うっさい。」
「あふんっ!?」
クソぅ⋯俺よか全然ちっちぇ只の超銀河宇宙No.1美少女の癖に、スネをピンポイントで蹴り飛ばしてくるなんざ⋯血も涙も慈悲もねぇ!!
まぁ何をしてるかといえば、俺らは夏喜達と違う山沿いのルート、集落へとスタンプを押しに来ている。こんなスタンプラリー聞いた事ないっての。何個あるのか分からないドキドキスタンプラリーって。
取り敢えず今は2つ集め終わり、風情ある駄菓子屋さんでラムネ休憩と洒落込んでるわけなんだが⋯如何せんこの元アイドル達が騒々しい。ラムネを開けられないのが3人、そもそも開け方を知らないのが1人。元東京在住、バリバリ都会人現代っ子(悪意は無い)の梨子ちゃんだけが、唯一開けてる状況だ。
まぁ恐らく夏喜ちゃんならここで手を出すんだろうが⋯このヒロさん、そう甘く見てもらっちゃあ困る。自分の困難は自分で乗り越えねばならない⋯たとえそれが、誰であってもな!ふははははっ!!
「ほれ、にこにー。」
「ん、あんがと。」
ただし身内は別。
ツインテールをやめ、下ろした髪を後ろで纏めた姿もまぁ何ともイケメンで。
「ヒュー、見せつけてくれるじゃないヒロ♪」
「なんだいマリーちゃん、ヤキモチかい?心配しなくても俺ちゃんは───」
「あ、ごめんなさい。少し寒気がするから話しかけないでもらえる?」
「チクショーーーーッ!!」
「うっさいっての。」
「おふん!?」
1度ならず2度までも⋯なんだいこの仕打ち。これを毎日相手にして、無自覚でコロコロ転がしていたのか。夏喜ちゃん。お前さん、スゲーよ⋯。
「いいからさっさと開けてきてあげなさいよ。どの道ここで飲んでかなきゃ、空き瓶業者が回収に来れないんだから。」
「あい⋯。ほらルビィちゃん、まるちゃん、貸してみな。」
「は、はい⋯。」
「ずら?」
「こういうのは思い切りが大事なんだよ。ダイヤちゃんもな。マリーちゃんは⋯取り敢えず良く見ておきなね。」
淡い緑色の『玉押し』を、圧力で内側から力のかかっているビー玉に引っ掛ける。後は至って単純。力を貸してくれよ、師匠⋯。
「はーい、ぷしゅっ!!」
「ぶっ!?」
「やーい、にこにー噴いてやんの〜!」
「アンタねぇっ⋯!」
「とまぁこんな感じだよ。この時、押し込んだ手の力は絶対緩めちゃダメだかんな。エラい目にあっちまう。」
「こんな感じ?」
「そうそう、そんな感じで逆噴射する⋯っておーい!!」
あ〜あ〜、おててがベタベタじゃんか⋯。
「ほれティッシュ。」
「Oh,Thankyou♪」
「服とかに付いて無いな?拭いたらそこの蛇口で手洗ってきなよ。蟻さんが群がってくるからな。」
「ふふっ、それはそれで楽しそうね♪じゃあ行ってくるからこれ持ってて!」
「はいはい。」
「⋯意外ですわね。」
「何が?」
「いえ⋯。」
1人驚いた様子のダイヤちゃん。別段変わった事はしてないと思うばって───
「人の親みたいな事が出来るんだな、と。」
「えっ、俺のイメージってどんなんだったのよ。」
『釣りバカ。』
「何も言えねぇ⋯。」
ダイヤちゃん、まるちゃん、戻って来たマリーちゃんに嫁までもが同じ答えだった。
そりゃ確かに釣りばっか行ってっけどさ⋯流石にもう弁えてるつもりだよ?
「バカで思い出しましたが、向こうは大丈夫でしょうか。」
「思い出す理由が酷いけど⋯大丈夫じゃないか?夏喜ちゃんに海未が付いてるし。」
「甘いわヒロ。」
「そうだよヒロ君。純粋におバカな千歌ちゃんに制服バカな月曜の2人⋯。」
「堕天バカの善子ちゃんに。」
「体力バカの果南よ?」
「オマケに夏喜は天然ジゴロの無自覚バカと来たもんだから、向こうのパーティーは詰んでるんじゃない?」
ひっでぇ言われよう⋯。
「け、けど海未が⋯海未が⋯⋯あ〜⋯。」
「あの⋯う、海未さんってどういう人なんですか?」
「⋯山バカ、だな。」
「海未さんなのに⋯?」
「例えばだ、ルビィちゃん。あそこにうっすらと山頂が見える山があるだろ?あれを今日頂上まで登るって言ったら⋯どうする?」
「帰りたいです。」
「ふふっ⋯だろうな。あの子はやるぞ?」
「えっ⋯。」
「『山頂アタックです!』⋯それだけで、あの子はどこへだって登っていくんだよ。」
何度俺や夏喜ちゃんがあの笑顔の元に苦しめられた事か⋯もう、登りたくはない。いやさ?たまにならいいよ?森吉山くらいなら全然良いんだけどさ⋯あ、森吉山ってのは秋田さある俺の地元のとこの山で⋯ってどうでもいっか。
「しかも海未は、1人でもしっかり者が居たら意外とボケる。いや⋯本人は至って真面目なんだが、ボケにしか思えないことを本気でやるからこっちも強く言えなくて余計タチが悪い⋯。面白いし良い奴なんだけどな。」
「つまり、あの子はあっち側に付けといた方がしっかり者のままで居られるってことよ。こっちに夏喜と来てたら⋯どうなってたか分かんないにこ♡」
『ひっ⋯!!』
おー怖⋯。にこにーの笑顔に皆すっかり怯えちゃってまぁ。
すまんな海未。フォローはしとくから。
そんな他愛もない会話を挟みながらも、俺達は再びスタンプラリー巡りの旅路へと歩みを進めるのであった。
◆
「海未さ〜ん⋯もう解いて下さいよ〜⋯!」
「反省してますから〜⋯!」
「何で私まで⋯。」
海岸が見える距離まで近付いてきた僕らは、相変わらず山道で停滞していた。たまたま見つけた名前も知らない大きな木の下に、僕らは立っている。
いや⋯違うか。立っているのは3人で、残りのメンバーは木に括りつけられているよ。
からかった果南ちゃん。
便乗した(?)千歌ちゃん。
巻き添えの善子ちゃん。
そして両手両足を縛られた月ちゃん。
はてさてどうしたものか⋯。
「いいえ!貴方達には少し反省する時間が必要です!」
「まぁまぁ奥さん、娘達もこう言ってる事だし───」
「同じ様になりたいですか?お・父・さ・ん♪」
「皆、しっかり反省するように。」
『裏切り者ぉっ!!』
許してくれ、千歌ちゃん、果南ちゃん⋯君達は、本当に怒った海未を知らないだけなんだ。彼女は『音ノ木坂の暴れ饅頭』と
「あっ、じゃあ夏喜さん!僕の方を解いてくれますか?このままじゃ歩けないので!」
「そうだね。取り敢えず月ちゃんの方は先に解いてあげても───。」
「ナツ君。」
「えっ。」
彼女を縛り上げた張本人は微笑んでいるが笑ってはいなかった。
「引き摺って行くから♪」
「あ⋯はい。」
「えっ!?夏喜さーん!?」
「許してくれ、皆⋯僕は⋯無力だ⋯⋯。誰一人として助けてあげられないっ⋯!」
「無駄に重いよっ!!」
「ここそんなシリアスな場面じゃないからねっ!?」
「くぅっ⋯!よ、曜ちゃんっ!」
「何?」
「解いてくれたら、この間気になってるって言ってた僕の制服!あれを───着させてあげるからっ!!」
「⋯今回だけだよ。」
良いんだ⋯いや、本人が良いならいいんだけれど⋯⋯良いんだ⋯。
「海未さんっ!!」
「何ですか?」
「解いてくれたら⋯あの⋯えっと⋯。」
「千歌さん⋯何も考えてないでしょ⋯。」
「よ、善子ちゃんを進呈しますからっ!」
「何でよっ!!」
「足りてます。」
「!?」
「まぁまぁ海未。そろそろスタンプラリーも再開しないといけないからさ。」
「夏喜が甘過ぎるんです!大体、貴方はいつもそうやって───」
「はい、あーん。」
「むぐっ!?」
おこりんぼさんな彼女には、暴れ饅頭(仮)から貰っておいたスペシャル甘味を食べさせなければ。『和菓子屋 穂むら』の名物、ほむまん⋯即ち、彼女にとっての精神安定剤だ。
「落ち着こ?海未。ね♪」
「むぅ⋯///」
「じゃあ皆、そろそろ───ぬぁああっ!?」
大木の方を振り返った僕に飛んできたのは、月曜の2人に封印が解かれた恐るべしミカン砲と元祖カナン砲だった。1人だけでも耐えきれないのに2人分の質量なんて抑えられるはずが無い。下に敷き詰められた細かい砂利と僕の背中との間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間は、まさに歯車的砂嵐の小宇宙っ!!
「ふぃ〜⋯やってやったぜぃ☆」
「どーだナツ!私達にも構う気になったか!⋯⋯ナツ?」
「⋯⋯⋯。」
「⋯死んだんじゃない?」
『あ〜。』
「いや、あ〜って⋯。」
「⋯何で笑ってるのさ月ちゃん。」
「曜ちゃんは良いのかなーって♪」
「また縛られたいの?///」
「あははっ!ごめんってば!」
うぅ⋯何やら頭と背中が痛い⋯。
「では行きますよ。」
『はーい。』
「えぇ⋯どうすんのよこれ⋯。」
「うぅ⋯いたた⋯。酷い目に───あ。」
うっすらと開けた視界の先。昼を回って、1番高い所まで登っていた太陽が眩しかった。だが何より───
「ん、起きた?」
「⋯はい。」
「早くしないと置いていかれる⋯って、何で目押さえてんのよ。」
「⋯はい。」
善子ちゃんが居た。
というか⋯⋯ミニスカートを履かれたまま顔の横に立たれると⋯その⋯。
「?変なナツキ。」
「善子ちゃーーーん!置いてくよー!」
「今行くー!」
「後そこに立つとナツ君にパンツ見えちゃうからねーーー!!」
「よっ!小悪魔的堕天使っ!!」
「んなぁっ!?///」
曜ちゃーーーんっ!!!!千歌ちゃーーーんっ!!!!
「アンタ⋯その手って⋯///」
「見てない見てない見てない見てない。」
「はぁ⋯⋯。」
あれ⋯足音が段々遠くなって⋯⋯。
「だっしゃあっ!!///」
「いったぁあああああああああっ!!!!」
「何で私だけこんな目に会わなきゃいけないのよーーーっ!!」
助走をつけてからのまさかの臀部へキック!!しかもヤーさん顔負けの蹴り方って⋯うっ⋯⋯。
結局彼女も走っていってしまった。
静まり返った炎天下の中、唯々夏の日差しと灼熱の地面だけが僕を見守ってくれていた。
◇
「痛い⋯。」
「自業自得でしょうがっ!///」
「いや⋯善子ちゃんが───」
「っ!!///」
「僕のせいです、はい。」
視線が怖いです。
そして蹴られた場所⋯サワサワと撫でているのは誰でしょう?
「ふふふっ、お客さん中々良いのをお持ちで⋯あだっ!?」
「何してるのさ。」
「曜ちゃぁん⋯スリッパはダメだよ〜⋯。」
元生徒会長でした。
「まぁまぁ曜ちゃん、『女の子』にスリッパは⋯ね?」
「む〜⋯あっ。」
「えっと⋯大丈夫かい、月ちゃん。あんまりこういう事はしない方が───月ちゃん?」
「そうだよねぇナツ君♪月ちゃんも『可愛い女の子』だもんね〜?ごめんごめん♡」
「ぁ⋯う⋯⋯。」
水を得た果南ちゃんのように、急にイキイキとしだした曜ちゃん。一体どうしたのだろうか?反対に月ちゃんはぷるぷるしてるけど⋯。
「月ちゃん?」
「見ないでっ!///」
帽子を軽く上にあげれば、顔を真っ赤にした彼女が居た。拒絶の言葉と共に帽子で顔を隠し、そのまま先行く千歌ちゃん達の方へと駆け出してしまった。
「月ちゃんね?女の子扱いされるのがすっごく恥ずかしいみたい。」
「そうなのかい?」
「ふっ⋯加虐に満ち溢れた罪深き王は、1度懐に入られれば隙を見せるものよ。」
「⋯つまり?」
「うぐっ⋯///」
「ドSは押しに弱いって事♪」
あぁ⋯そういう⋯。
『ひぃいいいいいっ!!』
沼津組の2人とそんなやり取りをしていたら、月ちゃんが駆けて行った方向からは悲鳴が聞こえてきた。千歌ちゃんに果南ちゃんの声⋯また何か海未を怒らせたのだろうか。
「行ってみよ、ナツ君、善子ちゃん。」
「あぁ。」
「ギラン☆」
3人で歩いてみれば、他のメンバー達はそう遠くない所に居た。
だが気になったのは、全員が茂みの方を見て一様に怯えていた事だ。
海未でさえも。
そこまでいって初めて只事では無いと感じ、その足を早める。
「皆、どうしたの?」
「ナツ、あ、あれ⋯!!」
「えっ────。」
酷く怯えた様子の果南ちゃんが指差す方向⋯周りを沢山の木で囲まれて、他の場所よりも薄暗くなった所にそれは居た。
木に括りつけられ、首に巻きついているボロボロの縄。
ダラりと力無く垂れ下がった身体に、笑みを浮かべた顔。
─────てるてる坊主。
「⋯⋯⋯何あれ。」
「見たら分かるじゃん!!首吊ってるじゃんっ!!」
「いや言い方⋯。」
「あそこ⋯スタンプあるみたいだね⋯。」
千歌ちゃんの言う通り、てるてる坊主(故)に向かって『←スタンプ』と書かれた1枚の紙が木に打ち付けられていた。まぁ⋯誰が考えたかは想像付くけれど⋯。
しかし行きたくない。あそこだけまるで別世界じゃないかと思えるほど重たい空気が流れている。何より笑みを絶やさないあの子が怖い。
あの子は怒ってもいいと思う。
「⋯行きましょう。」
「うぇっ!?」
「止めようよ海未さん!絶対ヤバいって!!」
「ここで足を止めていても先に進めません。いざ!」
「『いざ!』って言いながら海未さんずっとナツの服掴んでるじゃないですかぁっ!!」
「うぐっ⋯!///」
「ま、まぁまぁ皆で行こうよ!ねっ!」
「千歌ぁ⋯。」
大人になっても暗がりやお化けの類が苦手な果南ちゃん。遂にプルプルしだしてしまった。
えっと⋯怖がり果南ちゃんと、意地っ張りな海未。未だ恥ずかしがってる月ちゃんと宥める曜ちゃん。眠そうな善子ちゃん。そして茂みに入っては出てくる、RPGの挙動不審な動きをするモブのような行動の千歌ちゃん。
⋯⋯詰んでる。
さぁ考えろ夏喜。考えるんだ。知恵を振り絞れぇ⋯!
「果南ちゃん。海未。皆で行けば怖くないよ?」
「ナツまでぇ⋯ぐすっ⋯。」
「⋯⋯果南。」
服を掴んでいた海未が、果南ちゃんの手を取った。
「手を繋いでいきましょうか。私も怖くなってきたので⋯。」
「海未さん⋯うん⋯。」
何と美しい姉妹愛⋯ホロリとしてしまう様な光景だ。
「ひぃいいいっ!!い、今!何か動いたぁっ!」
「おおお落ち着きなさい果南!気の所為です!」
「2人共うるさい〜っ!!」
「あっはは⋯まぁまぁ⋯ほら、着いたよ?」
淀んだ空気の中、千歌ちゃんが分厚いスタンプラリー台帳を開く。今更ながら、何でこんな広辞苑並に分厚いんだろうか⋯。
「じゃあ行くよ⋯せーのっ!!」
そして彼女がスタンプを振り下ろし、当てた瞬間───
『パンパカパーン!!おめで───!』
「わぁあああああっ!!」
何かが飛び出た。
広辞苑の中から、金色の髪をした人形のようなもの───と言うか鞠莉ちゃんだ。
そしてその鞠莉ちゃん人形は、一瞬の内にその可愛らしい頭の形が変形する事になった。
『オメ⋯ト⋯トウオメデ⋯オメデ⋯ャイニー⋯』
「う⋯⋯海未⋯さん?」
「⋯⋯さっ、行きましょうか♪」
海未の手刀が人形にめり込み、鞠莉ちゃん(仮)はバグってしまった機械の様に音声が途切れ途切れに流れてくる。
『シャイ⋯オメ、メ⋯ト⋯二ー⋯。』
⋯⋯こわ。
さすがに可哀想ということで、てるてる坊主も救出した僕らは歩みを進めた。
ここには何も無かった。
ここでは何も起きなかった。
そんな気持ちだけを胸に抱えたまま、合流場所であった海へと急ぐのだった⋯。
◆
「⋯おっせーな夏喜ちゃん。」
「そーね。」
「所でいつまで俺を埋めてんだい。嫁よ。」
「飽きるまでよ。」
合流地点である砂浜に来た俺達集落組は、先に海で遊んでいた。目隠ししてスイカ割りを楽しむルビィちゃんにダイヤちゃんにマルちゃん、梨子ちゃんとマリーちゃん。
そして頭しか出ていない俺。埋める嫁。何だこの構図。
「まぁしかしあれだな⋯まさかこんな形でμ'sとAqoursが一緒に過ごす時が来るとは思わねがったわ。」
「ふふっ⋯またそれ?」
「何度でも思うさ。どっちも関わりはあんだからさ⋯。」
「⋯そうね。」
静かに笑ったにこは、どこか優しげに皆の方を向いて微笑んでいた。
「でもあれだな。」
「ん?」
「若い水着の女の子達に囲まれて海っていうのも中々悪く───。」
「ルビィー!スイカこっちよー!」
「ん?」
HA☆HA☆HA!おいおい、なんだって言うんだ?何処にもスイカなんて無いじゃないか。なのにどうしてルビィちゃんはフラフラしながらこちらへ向かってくるんだい?
「はーいそのまま真っ直ぐ!」
「にこにー?」
「ちょっと右よ右ー。」
「ここですか?」
「そうそう。そのままよ。」
「おいちょっと待でって!にこ!?にこさーん!?」
「さっ、後は力一杯振り下ろしなさい。出来る限り。最大の敬意を込めて。」
「YA☆ZA☆WAっ!!!!」
「よいしょっ⋯。」
「待て待て待て待てルビィちゃん!スイカじゃねぇから!確かに丸くて赤い汁飛ぶけどスイカじゃねぇからっ!ねぇってば!!」
「ふぇいっ!!」
「危ねぇっ!!」
人間命がかかると凄い力が出るもんだコノヤロー。砂の山を吹っ飛ばして緊急回避だコノヤロー。
「ちっ。」
「今『ちっ』て言った?ねぇ、今舌打ちしたよね?」
「ヒロくーん!夏喜君達来たよーーー!!」
「⋯⋯はぁ⋯。」
何てタイミングだ。しかしまぁ⋯島で殺されかけるとは思わなかったわ。いや、俺が悪いんだろうけどさ!
なんにせよ夏喜達をお出迎えして早くロッジに⋯ん?
「なぁにこにー⋯アイツらどうしたんだ?」
「知らないわよ。まぁ⋯何かはあったんでしょうね。顔がヤバイわ。」
「あぁ⋯ボラの顔だ⋯。」
「その例え伝わんないから。」
「どうした夏喜ちゃん。」
「いや⋯何でもないんだ⋯何でもね⋯。」
露骨に目を逸らしやがる。
後ろの皆も何処か浮かない表情だ。
「あら?皆どうしたのよ、そんなcloudyな顔して。」
「ここに来たということは、無事スタンプを回り終えたのですね。」
『オメ⋯ト、トトト⋯。』
「ん?」
「あの⋯鞠莉ちゃん⋯⋯これ⋯。」
『二ー⋯シャ⋯スタンプ⋯オメ⋯♪』
『えっ。』
千歌っちが鞄から取り出したスタンプラリー帳からは、俺達がちょっとだけびっくりしたマリーちゃん人形が飛び出ていた。
⋯⋯いや、色んなもん飛び出てるけど⋯何したらあんなベッコリ頭の形変わんだよ⋯。
「あー⋯マリーちゃん?」
「Oh⋯Oh⋯Oh⋯Oh⋯Oh⋯⋯Oh⋯♪」
「鞠莉さん!?」
「気を失ってるずら⋯。」
「えぇ〜⋯。」
「取り敢えず⋯ロッジ、行くか。」
「⋯そうしよう。」
微笑みながら気を失ったマリーちゃんを背負い、俺達は海辺のロッジへと向かっていった。
◆
はてさて⋯真姫ちゃんに用意してもらった温泉付きのロッジでゆっくりしていた僕達は、皆で夕食を囲みながら思い思いの時間を過ごしていた。
そして部屋割りを決めようとなったのだが⋯。
『何で〜〜〜!?』
「あっはは⋯何でと言われても⋯ね?」
「2人部屋が2つに大広間じゃあこうなるわな。」
にこちゃんとヒロ。大広間にAqours+月ちゃん。そして海未と僕になったのだが⋯どうも皆は納得していないみたいだ。プンスコしてしまっている。
「まぁチュンチュンやパン娘と違って皆が思ってることは無いだろうさ。それに⋯海未はもう疲れて寝ちまってるし。」
「良いかい皆。何があっても海未を起こしたらいけないよ?絶対だからね?」
「も、もし起こしちゃったら⋯どうなるんですか⋯?」
「⋯⋯『怪物』が目を覚ますよ。」
「おぅ。それはそれは恐ろしい⋯幽霊すら逃げ出すモンがな⋯!」
『ひぃいいいっ!!』
「何2人して果南とルビィを怖がらせてんのよ。」
『いてっ。』
「さっさと寝るわよ。私も部屋に戻ってるから。」
「あっ、じゃあ俺ちゃんも戻るわ。せば、また明日!」
部屋に戻って行った2人と、取り残された僕。どうすればいい?この残ったメンバーからの視線をどうやり通せばいい??
「む〜⋯ナツ君!」
「は、はいっ!!」
「明日は皆一緒に寝ようねっ!海未さんもにこさんもヒロ君もっ!!」
「あぁ、分かった。じゃあお休み、皆♪」
『お休みー。』
『お休みなさい。』
「ふふふ、さぁ曜ちゃん。僕と楽しい事しない?♡」
「しないよ⋯ってぇ!///どこ触ってるのさ月ちゃん!///」
「良いでは無いか良いでは無いか〜♡」
⋯⋯さっ!僕も部屋に戻ろう!!
扉をゆっくりと開けると、暗くなった部屋の中には月明かりが差し込んでいた。カーテン越しに部屋に入ってくる淡い光は、何処か青白く輝いて見える。
先に布団を敷いていた海未はスヤスヤと寝息を立てながら穏やかに眠りについていた。
隣には僕の分の布団も敷かれていた為、彼女が用意してくれたのだろう。
いつもいつも世話をかけてしまう。昔も⋯今も。
自然と、彼女の頬に手を伸ばす。
その手は、白く細長い指に包まれた。
「夏⋯喜⋯⋯。」
そして⋯友達に耳打ちでもするかのように。
何かに願い事をかけるように。
彼女は小さく呟いた。
「好き⋯ですよ⋯⋯。」
「⋯⋯ありがとう、海未。」
どんな夢を見てるのだろうか。
それは、幸せな夢なんだろうか。
本当の所は僕には分からないし、無闇に知っていいものでは無い。
悪い気は勿論しないけどね。
「さて⋯僕も寝ようかな。ん?」
「すぅ⋯すぅ⋯⋯。」
「ははは、手が離れないや。起こしたらエラい目にあうし⋯うーん⋯⋯ちょっとだけ、お邪魔するよ。」
自分と彼女の布団の間に寝そべり、布団の中へ。
多少近い気はするけど⋯手が離れない不可抗力ということでどうか許して欲しい。
瞼も落ちてきたし⋯そろそろ僕も眠るとしよう。
明日は何が待ってるのか⋯楽しみだな⋯⋯。
「ねぇ、鞠莉⋯。」
「何?果南。」
「最後のスタンプラリー⋯やり過ぎだよ。あんな所にボロボロのてるてる坊主なんてさ⋯。」
「何の話?」
「何って⋯鞠莉の方で準備したんでしょ?今回のスタンプ。」
「ん〜⋯確かにしたけど、わざわざ果南が怖がりそうなとこには置かないわよ。」
「あれ?果南ちゃん、てるてる坊主って何処かに置いたー?」
「ううん、鞄から出してないけど⋯。」
「⋯⋯何処にも⋯無いんだけど。」
「ち⋯千歌ちゃん⋯果南ちゃん⋯⋯これ⋯。」
「ん?スタンプ帳がどうかした?。」
「⋯そこ、てるてる坊主の所で押したやつ⋯だ、よね⋯⋯?」
あ リ
が トウ
『⋯⋯え?』
皆さん、こんにチカ。
もれなく難病診断を頂きました、なちょすです。
お医者様に『原因不明』、『完治はしない』とか言われたら結構ビックリですよね。ましてや自分がかかるとは⋯笑
薬を飲みながら今と同じ暮らしを続けるか。
薬を飲みながら故郷へと戻るか。
きっと、ここが人生の分かれ道なんだと思います。まぁ⋯そんな簡単には決まらないですが(:3_ヽ)_
長々と私事で失礼致しました。
次は記念すべき50回にしてOVA最終話。ちょっと長くなるかもですが、お楽しみ下さい!
P.S.『ちょっと田舎で暮らしませんか?』は、全65話にて完結させて頂きたいと思います。もう暫しお付き合い頂けたら幸いです。
※アンケート投票は、2020/03/20〆切とします。
最終話の1個前、何を期待しますか?
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μ's妹勢+サブキャラとの絡み
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ヒロにこの馴れ初め+Aqours
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理亜ちゃんとのまさかのイチャコラ
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作者が1から考えるヤンデレもどき
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最終話に繋がる何か