あなたをみている『あなた』のおはなし   作:ダレトコ

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True Pacifist

 ごきげんよう。

 こうして挨拶するのは2度目? 3度目? それとも……ううん、どうだったっけな。なんにせよ、はじめましてはいらないよね。

 さあ、次はどうするのかな? 何をするにせよ、ぼくはあなたを見ているよ。特等席から、ね。

 

 

 

 

 あなたは本当におかしな人だね。

 ……確かにこうして『自分』を取り戻して、あなたと一緒にundergroundを見て回っているうちにぼくは自分が何者かを思い出してきた。

 でもさ、あなたの中にいるぼくがそうなっていくにつれて……あの最後の廊下で小さいほうの骨が言っていたように、『自分を遠ざけていく』気にはならないのかい?

 言っておくけど、もしあなたがそうなったらぼくは遠慮なんてせずに『自分』を取り戻すよ。いまさら未練があるわけじゃないけどやりたいことはあるからね。

 え? まだ今回はExpもLoveも稼いでいない? いや、ぼくが言いたいのはそうことじゃなくて……もういいや。

 わかったよ、あなたがそんなに言うんだったら、道中気が向いたときにでも話してあげようかな。

 

 

 

 

 そう、ぼくはこのundergroundに最初に落ちてきた人間だ。

 ここに落ちてきてからのぼくの顛末は……まあ、何度か経験しているのなら話くらいは聞いてるんじゃない? 概ね、その通りさ。今からだいぶ昔にぼくは死んだ。

 

 

 

 

 でも、病死なんかじゃない。

 ぼくは……ふとした、くだらない勘違いを経てキンポウゲ(バターカップ)の花に毒があることを知ってね。それを使ってまあ……そういうことさ。

 どうしてそんなことをしたかって? そうだね……

 あなたがどういう事情で落ちてきたのかは知らないけど、ぼくは少なくとも落ちた後のことなんかなーんにも期待しちゃいなかった。終わりたかったのさ。ずっとね。

 で、勇気を出して飛び降りたのはいいけれど……ぼくの期待はまた裏切られたわけだ。けれど、それは別に不幸なことじゃなかった。

 TorielやAsgoreは優しかった。ぼくなんかのこと、本当の子供だって言ってくれて、ずっとここにいていいって抱きしめてくれた。それに……

 

 

 

 

 ――――友達が、できたんだ。

 すごく泣き虫でね。悲しくても寂しくても痛くても嬉しくてもとにかく泣くやつだった。

 最初はちょっと鬱陶しいやつだなって思ったけど……すぐに、彼がすぐに泣くのは彼がすごく優しいやつだからってわかった。

 そんな彼がいつか……waterfallに人間たちのゴミが流れ着く場所があるって聞いて、行ってみたいって言いだしてね。ぼくは人間のゴミになんて興味はなかったけどどうしてもって言うからついていった。

 案の定、人間のゴミなんてぼくのこころを大して動かしやしなかったけど……思いの他、収穫はあった。モンスターたちを閉じ込めている結界を破る方法と……彼の夢、さ。

 

 

 

 

 おかしな話だよね。

 何もかもおしまいにしたくて落ちてきたっていうのに、『そのとき』はちょっと怖かったんだ。

 きっと、皆が惜しんでくれたからだろうね。特に『彼』は最後まで泣いていたよ。

 でも、こんなぼくが誰かの夢……特に、彼の夢のためにこの命を使えるなら、それでいいって思えた。

 ついでに……ぼくはモンスターたちの未来のために消えてもらうのに相応しいやつらを知っていたからね。ことをなす前に、彼には一番最初にそこに行くように伝えておいたん、だけど……

 ……本当、バカなやつだよ。故郷の花が見たい、なんてあんなの彼を最初に外の世界にだしてあげるための便利な方便だったのに、彼、泣きながらぼくの亡骸を抱えて外に出て行ったんだ。

 

 

 

 

 作戦は結局失敗した。

 うん、元々同じモンスターに苛められても反撃はおろか言い返すことすらできないで泣くばっかの彼には無理だって、薄々は感じてたんだ。だから彼がぼくの亡骸をぼくの故郷の花畑に横たえたとき、ぼくは彼の体をぼくの意思でも動かせることに気がついて、代わりに役目を果たしてやろうとした。

 けど、他でもない彼に止められてしまった。彼はぼくを押さえ込んだ上で人間たちには何にもやり返さずに、ボロボロになってただ逃げた。

 そのときはすごく怒ったよ。このバカ、って。そうしたら彼は、ポロポロ泣きながら笑って、

 

 「ああ。まだ、いてくれた。嬉しいよ――――」

 

 なんて、ぼくの名前を呼んで死んでいったんだ。当然、彼に吸収されていたぼくのソウルも、運命を共にするはずだった。

 

 

 

 

 けれど、何の因果だろうね。

 あるときぼくは『起きた』。とはいえ、今なんて比べものにならないくらい意思も薄弱で、周りのことだって殆ど認識できない。

 精々わかったのは近くに彼がいたってことくらいさ。それも何を思ったのか、彼が折角拾った命を今まさに捨てようとしてる瞬間に目が覚めてしまったんだよ。

 とっさのことだけど、彼に死んで欲しくないってぼくは願った。そうしたら……彼は確かに死んだのに、遥かに時間を遡ってまだ生きている『時間』に戻ってきた。

 あなただって、散々利用してきただろ? そう、『SAVE』能力発現の瞬間だ。

 彼の体はどういうわけか子供だった前よりも弱っていたようでね、何度でも死んだ。

 ぼくはそのたびに彼の時間を巻き戻した。彼自身がいつかそれを望まなくなっても、ずっと……ぼくにできることはそれだけだったからね。

 彼は最初の頃こそいつもの優しい彼だったけど……ぼくがそうしているうちに、だんだんおかしくなっていった。

 ぼくはそれを近くで感じていたけど、どうすることもできず……そんな中ある時、頭を殴られるような感覚と同時に、今度こそはっきりと覚醒した。

 

 ――――あなたが落ちてきたんだ。後のことは、知っての通りさ。

 彼は今もこのundergroundの何処かにいるんだろう。何処で、何をしているのかな。

 

 

 

 

 ――――ああ。

 ぼくはきっと、最初にきみに会ったときからきっと気づいてたんだろうな。ただ、そのことを認めたくなかっただけみたいだ。

 今回もまた、きみはぼく達にとっての『最初の場所』で最後の瞬間を待っているのかな? ねぇ、Flowey……

 

 

 

 

 成程ね……きみにしては随分と姑息な手を使うじゃないか。繰り返すうちに学んだってことかな。

 だけどまぁ……それはきっと失敗だよ。そもそも、この人をぼくと勘違いしてる時点でもうきみは詰んでるんだ。

 ほら、こんなのあなたなら全然平気でしょ? ぼくはここで見ているから、ガツンと決めてきちゃえ。

 ……随分と回り道をした気がするけど。また会えて嬉しかったよ、Asriel。

 

 

 

 

 はは……参ったな。こいつはすごいや。ぼくのSAVEでもまるで歯がたちそうにない。

 でもなぁに、問題ない。こういう時こそ基本に立ち返るんだ。まずは『決意』。

 それに加えて、あなたはここに至るまでExpでもLoveでもないものを確実に積み上げてきている筈だ。

 数値で量れるものじゃない。力かといえば、Loveの上昇で得られるものと比べれば微々たるものだろう。

 けど、そんなちっぽけな力で……ぼくのSAVEとは違う何かを今、SAVEできるんだ。

 最後はぼくが背中を押してあげる。だから――――世界も何もかも、全部まとめてSAVEしちゃえ!

 

 

 

 

 大団円、だね。

 おめでとう。それとありがとう、かな。ぼくの親友を救ってくれて、本当に感謝してる。

 あなたをあなた、と呼ぶのも改めた方がいいかな……いいや、やめておこう。この後のことはいざ知らず、Friskはまだあなたに自身の選択を委ねているみたいだ。そうしている間は、まだこちらのほうが相応しいだろうからね。

 ん? 彼と一緒にいなくてもいいのかって? まぁ、そうしたいのは山々だけど、今更あわせる顔もないし……なによりまだ、あなたから離れられないみたいでね。余程ソウルの性質が近かったのかな、すっかり馴染んでしまったみたいだよ。

 そういうことだから……SAVE能力は健在だ。あなたは自分の決意一つでこのハッピーエンドだって全部『なかったこと』にできる。

 ふふ、その表情を見るにもう釘を刺されたってとこかな。彼は優しいからね……自分の幸せを棚に上げて、あなたになかったことにしないで欲しいと頼み込んだ、違うかい?

 

 ああ、ぼくは止めないよ。全部、あなたの好きにするといい。

 それでいいのかって? そりゃあ、少しは嫌な気分にはなるかもしれないけど……そんなぼくの気持ちをあなたに伝えたところで、決めるのはあなただからね。

 それに正直なところ、折角奇跡的に蘇ったっていうのにさ、結局ぼくの望みって何回やりなおしても一度だって叶ってないんだよね。

 え? じゃあ今から叶えてやるから言ってみろって?

 そうだね……じゃあ、あなたがもう一度、『やりなおす』決意を固めたのなら、その時にでも話してあげようかな。

 

 地上を見た天使が戻る時、か……奇しくもwaterfallで見た予言の通りだね。

 けれどundergroundからモンスターを救い出した天使は一人地下に残り、いずれは花に還る。

 それに……地上には、あなたやぼくと同じ人間がいっぱいいる。あなたは二つの種族を取り持つ役目を負うことにしたようだけど、果たして上手くいくのやら。

 まあ、その辺りも全部ひっくるめてぼくはあなたの中から見ているよ。

 

 ――――どうかいい夢の続きもいい夢でありますようにって、願いながらね。

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