僕と新年と初詣っ!   作:mos

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part W

「おわっ!」

 

 社務所の横の曲がり角を曲がると、突然目の前に障害物が現れた。

 慌てて走っていたので危うく頭をぶつけるところだった……。

 まったく、誰だ? こんなところに柵なんか立てたのは。

 

 ん? なんだこれ? 木の柵に大量の白い紙が張り付けられている?

 

 不思議に思って正面に回ってみると、柵には何本もの紐が横向きに張られていて、紙切れはそれに結び付けられていた。

 

 この紙切れは……おみくじ?

 そうか、これが姫路さんの言っていた”おみくじ掛け”か。

 そういえばあの漫才コンビに”悪かった運勢が良くなる”なんて教えてたっけ。

 こんなに沢山の人が運勢を変えたがっているのか。

 

 僕はポケットから自身のおみくじを取り出し、改めて開いてみた。

 しかしそこに書かれているのは当初と変わらず、”凶”という一文字だった。

 

 ま、ポケットに入れておくだけで書かれている文字が変わるわけがないよね。

 

 ……利き手と反対の手で……か。……よし。

 

 僕はおみくじ掛けの前に立ち、”右手”で紙切れを結び付ける。

 むむ、これはなかなか難しい。片手な上に利き手と逆だから結び辛いことこの上ない。

 小さな紙切れを相手に苦戦を強いられる僕。

 悪戦苦闘の末、何度か落としながらも、なんとか結び付けることに成功した。

 

 ふぅ……これでいいのかな。

 姫路さんの言うことが本当なら、これで僕の運勢は吉に転じるということになる。

 でもまぁ気休めだよね。もともと占いみたいなもんだし。

 

 と、おみくじ掛けを眺めていたら、その横に別の柵が立てられているのに気付いた。

 向こうの柵には紙ではなく、木製の五角形をした板が掛けられている。

 その木の板はこの三時間半の間、僕がずっとお客さんに渡し続けていたもの。

 

 絵馬だ。

 

 なるほど。こっちは絵馬掛けというわけか。

 正面に行って見てみると、絵馬には様々な目標や願いが書込まれていた。

 

 『志望校への合格』、『ダイエット』、『子供の健康と成長』、それと……何だこれ?

 『アニキに正しい名前で呼んでもらう』?

 

 これってどう見てもあの漫才コンビの子分の男だよね。

 あはは……あの人も苦労してるんだなぁ……。

 

 僅かながら彼の祈願成就を祈りつつ、他の絵馬に目を配る。

 すると、一つの絵馬に目に留まった。

 

 

 『先輩への告白』

 

 

 その文字を見た時、僕の脳裏には美波から受けた告白の記憶が鮮明に甦ってきた。

 

 一回目は交通事故で入院した時の病室。

 二回目は夕暮れの坂道で。

 

 最初に美波の本当の気持ちを聞いた時、僕は戸惑った。

 こんな僕が美波に何をしてあげられるのかと思い悩んだ。

 今の自分では美波の想いに応えられない。そう思い、自ら変わろうとした。

 

 だが二度目のあの時、僕はそれが間違っていたことを教えられた。

 そして、ずっと心の奥底で(くすぶ)っていたものの正体に気付いた。

 

 『一緒にいたい』

 

 それが僕が心から願っていることだった。

 

 

 ──あれから二ヶ月。

 

 今、僕にとって美波は最も大切な存在となっている。

 あの時の想いは今でも変わらない。むしろあの時より一層強くなっているように思う。

 クリスマスの時にやってしまった喧嘩がそうさせているのかもしれない。

 

 

 けど……。

 

 

 これからの僕は何をすべきなんだろう。

 

 今はこうして美波と一緒に遊ぶこともできて、楽しい日々を送っている。

 でも僕たちは今年の春には進級し、来年には卒業する。

 仮に三年生で一緒のクラスになれたとしても、きっと将来は別の道を歩くことになるだろう。

 

 今、僕には将来について明確な目標は無い。

 前に鉄人に進路希望を書かされたこともあったけど、あの時は大人になった召喚獣が大騒ぎしたこともあって、結局自分が将来やりたいことは見つけられなかった。

 

 僕は将来、どうしたいんだろう……?

 誰が書いたかも分からない絵馬を前に、僕は将来について今までに無く真剣に考えた。

 

 大学? 何か専門的な学校? それとも就職?

 

 急に考えてもやっぱり自分のやりたいことが分からない。

 こうして考えていても、頭に浮かぶのはポニーテールの彼女の笑顔のみ。

 

 ……ハァ……こんなんじゃダメだよな……。

 

 あまりの情けなさに落胆し、肩を落としていると、

 

「あ、いたいた! もう! こんなところで何やってるのよ!」

 

 急にそんな声を掛けられた。

 

「気付いたらいなくなってるんだもの。びっくりしたじゃない!」

 

 美波がちょっと怒ったように僕を(たしな)める。

 だが僕は今考えていたことから頭を切り替えられず、呆然としてしまっていた。

 

「アキ? どうしたのよ。ぼーっとしちゃって」

「……ほぇ? ……あ……ご、ごめん」

「ほら、早く行こ? 皆、先に行っちゃってるわよ?」

 

 彼女はそう言って僕の腕を掴んで引っ張る。

 

 ……そう。僕の彼女。

 

 僕は胸が躍るような感覚に戸惑いながら、引きずられるように足を運んだ。

 

 

 

 ────美波と一緒に飲食店経営……なんてのもいいかもしれないな。

 

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