歌う少女たちの裏側で。   作:さんらいん

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アニメ本編開始より約10年前

夜空に大音量の銃声と爆発音が断続的に鳴り響く。東京都の海沿いに存在する古ぼけた倉庫群は、俺たちの部隊と黒服の男たちが撒き散らす鉛玉で瞬く間に損傷していく。こちらはライフルで反撃を試みるが、相手側はライフルに軽機関銃、おまけにグレネードランチャーまで持ち出してくる始末。結局、奇襲には成功したものの、不明勢力側の火力で俺たち部隊は遮蔽物の陰で亀のように小さくなっていた。

 

「火力が足りん、どうします、緒川さん?」

 

「弦十郎さんが来てくだされば楽だったんですがね」

 

「無いものねだってもしょうがありませんよ。そもそも彼、公安で組織違うし。で、どうします?こっちの遮蔽物もそろそろ厳しいですが」

 

「頭を潰すしかありませんね。援護は任せましたよ」

 

そう言い放ち、うちの上司は返事も聞かずに見事な隠形で夜の闇に溶けた。

 

「クソ、せめて返事ぐらい聞いてくれよぉ。お前ら、頭を押さえろ、弾幕張れ!」

 

部下に指示を出し、遮蔽物に隠れながら正面の敵陣地に火線を集中させる。そうして敵勢力の注意を完全にこちらに向けたところで、

 

ふ、と。上司が上空から降ってきて、敵の指揮官を気絶させ、そのまま敵集団の中で暴れ始める。不自然に動きを止める敵や、消えたり現れたり、身代わりだったり増えたりしながら敵を殲滅していく上司に動揺する敵の隙を付くようにこちらも一人ずつ撃ち倒していく。内と外から攻撃され、浮足だった敵が瓦解するのはそれからすぐのことだった。

 

「掩護ご苦労様です」

そういうと上司は平然と笑って見せた。うちの部隊いらなかったんじゃないか?この職業についてからそこそこになるが、世の中にはコミックの登場人物みたいな人間がわんさかいる。うちの上司もその中の一人だ。そもそもなぜスーツ姿で敵陣に突撃して無事なのか。大将首をしっかりと獲ってるし。これが忍者……!

 

風鳴機関が正式名称のうちの職場だが、上の人間になればなるほど濃ゆい人間が多い気がする。上司の忍者なんて人を筆頭に、マッドな科学者(研究内容がオカルト)とか巫女(予知できる)とか侍(斬鉄可能)とか日本の暗部なお家柄の国体絶対守るマンな司令とか。特に司令は精神的怪物というか、色々と人間離れしたお方だ。

 

部下に指示を出し、撤収準備を始める。今回のように国内に侵入しようとする勢力を排除する任務はいつも行っていることだが、今年は妙に多い。例年なら一桁ほどしか水際での戦闘は起きないのだが、今年に入ってから23回目の首都襲撃未遂である。これも最近警備が厳重になった例の『聖遺物』とやらのせいなのか。そんな疑問を上司にぶつけてみる。

 

「そこのところ、どうなんですかね?緒川さん」

 

「アメノハバキリ、イチイバル、ガングニールそしてネフシュタン。日本は現在4つの聖遺物を保有していますが、その聖遺物でノイズに対抗する研究をアメリカが進めているとか」

 

「で、その研究がどうやら好感触だから各国聖遺物確保に忙しい、と

 

 うち担当の水際までこんなに押し寄せてくるんだ、自衛隊の連中は今年は過労死寸前でしょうね」

 

「海の友人が追加ボーナス寄越せとぼやいてましたよ」

 

「こういうことにはたいてい海から、ですもんねえ。それをいうなら俺たち二課にもボーナスが欲しいところだ」

 

そんな軽口を叩きながら上司と二人で気絶させた敵の指揮官を護送車にぶち込む。

 

「緒川さんはこれからどうするんです?」

 

「私はこれから捕虜の尋問を。徹夜コースですかね……」

 

「そりゃご愁傷様です。こっちは解散しますが、何かあれば連絡を。不平たらしながら駆けつけますよ」

 

「尋問で何か有益な情報が分かればいいんですが、まあ今回のこいつもトカゲの尻尾でしょうがね」

 

そうぼやく上司を尻目に部隊を集合させ、お疲れ様です、と声をかけた後撤収した。

結局今回の戦闘ではこちら側には大した被害も出ず、まずまずの結果だったわけだが、捕虜が尋問で相手がアメリカ合衆国だったことを吐いた。あれ?日本ピンチ?

 

 




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