魔法使いと魔法少女   作:T&G

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第一話

「うっ、ここは・・・・・・」

 

まず目をあけて飛び込んできたのは太陽の光であった。

 

眩しさに目を細めながら俺は自分の周囲を確認する。

 

「ここは一体・・・・・・」

 

確認してわかったが、俺は血だまりの中心にいるらしい。

 

あと草木が生茂っていることから森か林の中にいると考えられる。

 

「そう言えば、ゲンジは?」

 

俺の覚えている限りではゲンジを庇って怪我を負って、そこから意識が朦朧としていたような気がする。

 

「つまりは何も覚えていないということか」

 

とりあえず意識ははっきりしてきたのでいつまでも寝たままでいるわけにもいかない。

 

そう思い、俺は起き上がろうとしたが、なぜか体が動かない。

 

「血が足りないのか? 力がはいんねぇ・・・・・・」

 

自力で起き上がることが出来ないので、頭上に見える太陽の位置を確認した。

 

「・・・・・・真上ってことは昼か?」

 

この世界で以前居た世界と同じ法則が通用するか俺にはわからなかった。

 

そもそも、人がいるのかどうかも不明だ。

 

色々と考えている内に太陽の位置が変わったが、俺の周囲は変わる気配がない。

 

「俺は結局死ぬのか・・・・・・」

 

そんなことを考えていると隣の草むらがガサガサと揺れ動いた。

 

良い人ならいいが、盗賊とか魔物なら今の俺では生きていける自信がない。

 

「・・・・・・」

 

揺れ動く草むらをジッと見つめているとそこから可愛らしい動物が姿を見せた。

 

「狐? しかも子狐か?」

 

そこから出てきた動物は小さな子狐であった。

 

最初に考えていた通り、盗賊や魔物だったら困っていたのだが。

 

「・・・・・・」

 

野生の狐なのか、草むらから首を出したままでこちらの様子を窺っている。

 

「狐なんて久しぶりに見たな。 まぁ、狼よりはマシだよな」

 

色々な世界を旅していると動物の名前も世界によって違うこともある。

 

たとえば俺から見れば狐だが、他の世界に行くとその世界の住人は狸と呼んでいたこともあったのだ。

 

「でも、アレは絶対に子狐だ」

 

誰もいないのに言い聞かせるように話してしまった俺。

 

何だか悲しくなり他に出来ることもないので、しばらく狐を見つめていた。

 

すると何を思ったのか、子狐が草むらから出てきてこちらにやってきた。

 

「おいおい、野生の狐ってこんなに人懐っこかったか?」

 

野生と思っているのは俺だけで、本当は誰かのペットの可能性もある。

 

俺のそばまで寄ってきた子狐は身動きが取れない俺の顔をペロリと舐める。

 

「ちょ、くすぐったいって!」

 

そう言いながら避けようとするが、体が動かないのでされるがままに舐められてしまった。

 

「くぅ」

 

さんざん舐めても起き上がろうとしない俺を不思議に思ったのか、子狐は鳴き声をあげた。

 

まるで何かを尋ねられたように感じたので俺は子狐に向かって話しかける。

 

「俺は怪我して動けないんだよ。 遊んで欲しかったら他をあたりな」

 

「くぅ!」

 

俺がそう言うと子狐は言葉がわかったかのように返事をした。

 

そして返事とともに、もと来た道を戻って行った子狐。

 

「・・・・・・あいつ、言葉わかんのか?」

 

去って行った子狐のことを考えたが、居なくなってしまったので確認のしようもない。

 

考え事をしていると再び意識が朦朧としてきた。

 

「ヤバイ、頭がクラクラしてきた」

 

だんだん視界が狭くなり、あたりが暗くなっていくように感じる。

 

そしてそのまま、俺の意識は深い闇へと向かっていった。

 

 

 

***

 

 

 

再び太陽の眩しい光を直接顔に受けて俺は目を覚ました。

 

「うっ、ここは・・・・・・」

 

先ほども同じ言葉を言った気がしたが、深く考えないことにする。

 

それに今度の周りは草木ではなく、広い部屋に高級そうな家具が置いてあった。

 

「俺、どうなったんだ?」

 

そう言いながら身体を見ると、怪我をしていた背中に包帯が巻かれている。

 

どうやら親切な人に助けて貰い、この部屋に寝かせてくれたようだ。

 

人ではない可能性もあるのだが。

 

そんなことをしばらく考え込んでいると、ドアが開く音が聞こえたのでそちらに視線を向ける。

 

「あっ、起きた?」

 

声の主は小学生くらいの小さな身長で金髪の少女であった。

 

かなり可愛いので将来はきっと美人になるであろう少女がこちらに近づいてくる。

 

「君は?」

 

俺はそばまで来た少女に対してそう話しかける。

 

その時俺は、この世界に人が住んでいて良かったと心の中で安堵していた。

 

「あたしはアリサ・バニングスよ。 昨日、アンタが怪我をして倒れているのを見つけてウチまで運んできたの」

 

アリサと名乗った少女は学校の制服らしきものを着ており、鞄を背負っている。

 

おそらく、学校に行く前に俺の様子を見に来てくれたのだろう。

 

「そうだったのか。 助けてくれてありがとう」

 

寝たままの状態では命の恩人に対して失礼だと思い、痛む身体を無視しつつ身体を起こす。

 

そして、俺は真剣にアリサを見つめ感謝の意を込めて頭を深く下げた。

 

「べ、別に良いわよ。 たまたまウチに運んだだけで、助けを呼ぼうと一番早く動いたのはなのはだし」

 

俺から視線を逸らしたアリサは照れた様子でそう言った。

 

その時に出た『なのは』という名前に聞き覚えがなかったので尋ねることにする。

 

「えっと、アリ・・・・・・」

 

「アリサお嬢様、そろそろ学校へ向かう時間です」

 

いつの間にか部屋に入っていたのか、執事服を着た白髪混じりの男性が俺の言葉を遮ってアリサにそう声を掛けた。

 

「わかったわ。 それじゃあ、あたしは学校に行ってくるからアンタは大人しくしてなさい」

 

俺にビシッと指を向けてそう注意したアリサは執事服の男性と共に部屋から出て行ってしまった。

 

「・・・・・・行っちまった」

 

詳しい話も聞けず、俺は一人で部屋に取り残された。

 

というか、アリサお嬢様ってことはもしかして金持ちのご令嬢なのか。

 

身元とか調べられたら俺は証明するものなんて何もないんだが。

 

「まぁ、考えても仕方ないか。 大人しくしてろって言われたし」

 

起こしていた身体を再びベッドへ倒し、天井を見上げる俺。

 

怪我を負っているのは背中なので横になったときに痛みで顔を顰めたが、誰もいなかったので気付かれなかったはずだ。

 

「・・・・・・ん?」

 

ベッドで横になってからしばらくして、下半身の部分で何か動いているのに気付いた。

 

視線を向けると一部分がポコッと膨らんでおり、それが動いていたようだった。

 

「・・・・・・」

 

気になったが布団の中を見てはいけない気がしたのでそのまま見つめていると、膨らんでいる部分がどんどん上に向かってくる。

 

そして、胸の部分まで来るとその進行はピタリと止まり動かなくなった。

 

「な、なんだ?」

 

「くぅ!」

 

鳴き声と共に顔を出したのは俺が最初に目覚めた森にいた子狐であった。

 

「狐!?」

 

「くぅん」

 

俺の驚きも気にした様子もなく、俺の顔に身体を擦り寄せて来る。

 

今回は背中の傷も手当して貰っているので少しなら動くことが出来る。

 

「くぅ!?」

 

擦り寄って来た子狐を両手で捕まえ身動きを封じる。

 

俺はそのままの状態で身体を起こし、ジッと子狐を見つめる。

 

「・・・・・・お前、妖狐か?」

 

「っ!?」

 

俺の問いかけにビクッと身体を震わした子狐。

 

「魔力っていうか、お前の場合は妖力か。 それがとてつもなく大きく感じる」

 

子狐を目の前で抱えて、話しかけるように喋る俺。

 

もっとも、いくら妖狐と言っても人間の言葉を理解できるとは思っていない。

 

「・・・・・・なんてな。 狐が人間の言葉なんてわかるわけないよな」

 

俺は冗談を言うようにそう言いながら目を閉じて自分の言葉に呆れ返った。

 

すると突然、子狐を抱えていた腕に重みが増した。

 

「?」

 

俺が目を開けてみると、子狐の代わりに狐耳の少女が抱えられていた。

 

「・・・・・・」

 

「くぅ!」

 

抱えられたままで俺と目が合い、嬉しそうに微笑む少女。

 

「えっ? えぇえぇえぇ!!?」

 

「やっぱり気づいた。 久遠のこと、わかってくれた」

 

俺の絶叫をよそに微笑みながら人間の言葉を話す狐耳の少女。

 

久遠という名前があり、さらに人間の姿にもなれるらしい妖狐。

 

「・・・・・・人間に化けれたんだな」

 

「久遠、ずっと生きてる。 これくらい簡単」

 

ずっとという詳細がわからないが、何故俺に正体を明かしたのか気になる。

 

ニコニコした可愛らしい笑顔で尻尾を揺らしている久遠に尋ねてみる。

 

「なんで俺なら気づくって思ったんだ?」

 

「懐かしい匂いした」

 

「懐かしい?」

 

俺がわけもわからず聞き返すとコクンと頷く久遠。

 

この世界には来たことないはずだし、こんな妖狐の知り合いもいないはずだ。

 

「昔会ったアサに似た匂い」

 

「アサ?」

 

俺はその名前を聞いてさらに訳がわからなくなる。

 

アサという名前の知り合いはいない。

 

しかし、俺はその名前をどこかで聞いたことがある。

 

「アサのこと知ってる?」

 

「いや、聞いたことはあるが、知らない・・・・・・はずだ」

 

自信がないためとりあえずそう言っておく。

 

アサのことを知っていると思っていたのか、期待に満ちていた久遠がシュンと落ち込んだのがわかった。

 

とりあえず、いつまでも抱えているわけにもいかないので、ベッドの上にソッと下ろす。

 

「くぅ?」

 

そして、落ち込んでいる様子が可哀想に思えた俺は、何となく久遠の頭に手を乗せる。

 

手を乗せた俺は久遠の頭をそのまま優しく撫でてやった。

 

「くぅん」

 

撫でられた久遠は嬉しそうに鳴き声を上げながら微笑む。

 

「そう言えば俺の名前を言ってなかったな。 俺はトシアキ、敷島トシアキだ」

 

「トシアキ?」

 

俺の名前を確かめるように言いながら小首を傾げる久遠。

 

久遠の言葉に頷いた俺はまた頭を撫でてやる。

 

「そうだ。 偉いな、久遠は」

 

「くぅん!」

 

やはり動物はキチンと出来たら褒めてやらないといけないな。

 

いくら人間の姿になれると言ってもまだ子狐だ。

 

良いことと悪いことをはっきり教えておいた方が良いだろう。

 

「ちなみに普段もその姿なのか?」

 

「ううん、いつもは狐の姿。 久遠、人間の姿になると耳と尻尾が消えない」

 

ピコピコと動く狐の耳とフリフリと揺れる狐の尻尾。

 

俺は久遠の答えに『魔法』のような異能や『獣人』のような種族はこの世界にないものだと判断した。

 

「そっか。 じゃあ、いつもの姿に戻ろうか。 ここの人たちが驚くからな」

 

「うん、わかった」

 

久遠の身体を眩しい光が包み込んだかと思うと、そこには先ほどまでの人間ではなく子狐の姿があった。

 

「くぅ!」

 

さて、久遠の問題は解決した。

 

他にも何年生きているのかとか、飼主はいないのかとか、聞きたいことがあるが今度にしよう。

 

「次の問題は俺か・・・・・・」

 

そう、問題は俺自身のこれからについてだ。

 

先ほども考えた通り、この世界での身分を証明するものは何もない。

 

相棒のゲンジの行方もわからないままだし、俺はどうするべきか。

 

「・・・・・・とりあえず、俺を拾ってくれた人と話をしよう」

 

アリサの話では『なのは』という人物も俺の為に色々としてくれたようだ。

 

とにかく、二人と話をしてそれから考えることにしよう。

 

「さて、寝るかな」

 

「くぅ」

 

結論を出した俺は子狐姿になった久遠を抱きながら布団に入る。

 

俺はアリサが戻って来るまで久遠と一緒に眠ることにしたのであった。

 

 

 

~おまけ~

 

 

あたしは今日、人を拾った。

 

今まで捨てられた犬は沢山拾って面倒を見てきたけど、人間を拾ったのは初めてだった。

 

最初はなのはに連れられて八束神社にいるという子狐を見に行っただけだった。

 

目的の子狐を見て触っていたのだけど、急に子狐の様子がおかしくなってなのはとすずかとあたしで森の中を探しまわった。

 

ようやく見つけたと思ったらそこには血塗れの男の人が倒れていて。

 

「アリサちゃん?」

 

「えっ、あ、ごめん」

 

あたしは目の前にいる親友の月村すずかに名前を呼ばれ、先ほどまで考えていたことを中断させた。

 

でも、すずかともう一人の親友である高町なのはとの会話を全く聞いていなかったので素直に謝る。

 

「昨日はごめんね? 私、怖くなっちゃって・・・・・・」

 

あたしたち三人で子狐を見に行ったのだが、すずかは倒れている人を見つけたときにすぐに帰ってしまったのだ。

 

人が血だまりの中で倒れていたら誰だって怖くなるわよね。

 

「仕方ないわよ、あたしもそうだったし。 それに比べてなのはは」

 

「にゃはは、やっぱり怪我をしている人がいたら助けなくちゃって思ったから」

 

確かに言っていることは立派だけど、もし倒れている人を襲った人が近くに居たらどうしていたのかしら。

 

「そう言えば今朝、様子を見に行ったら起きてたわよ」

 

「そうなの? 良かった、ちゃんと助かったんだね」

 

あたしの言葉に心から安心したように言ったなのは。

 

すずかも自分が逃げ出したことに罪悪感があったのか、ホッとした様子だった。

 

そりゃ、逃げ出したことが原因で手遅れになってたら辛いわよね。

 

「よかったら今日、ウチに来る? 一応、自分の目で見ておいた方がいいかもしれないし」

 

「それじゃあ、お邪魔しようかな」

 

「あ、なのはも!」

 

こうしてすずかとなのはは学校帰りにあたしの家に来ることになった。

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