ブラック鎮守府と折木 作:素人
「提督」
7月27日晴れ。大学も夏休みに入り俺はリビングで怠惰な日々を送っている。怠惰、あーなんて人間らしい甘美な響きだ。
思い返せば俺は働きすぎたのだ。省エネ主義の俺が一人の女の子に影響されて。
「あーそうだったな。懐かしい....あれは確か高校一年の時に姉貴に古典部に入れと言われてからが始まりだったな」
古典部は俺とえると里志と伊原を最後に入部希望者がおらず俺達の卒業と同時に結局廃部になったんだっけな。大学に行ってからは里志と伊原にはあまり会わなくなった。違う大学に進んだって事が大きいだろう。えるとは同じ大学で今も良く会っている。
伊原は里志を追いかけていったようだが里志はどうするんだろうか。結局伊原には返事を最後まで返さずに保留のまま卒業を迎えてしまったからな。
....止めだ、止めだ。こんな非効率的な事を考えていては折角の休みなのに無駄なエネルギーを使いかねん。
俺はリビングのソファーに腰掛けテレビを消して目を閉じるとガチャっと家の玄関が開いた音が聞こえた。
「姉貴か?」
一昨日までアゼルバイジャンにいたらしい人物を呼ぶと「ただいま♪」といつも通りの声で姉貴の声が聞こえた。
姉貴は俺を見付けると頭をくしゃくしゃと撫で回してからシャワーを浴びにお風呂場に向かっていった。
俺はすっかり目が覚めてしまいもう一度テレビを付けるとニュースがやっていた。
[国は政府は我々国民に“何か“を隠しています!海近海には立入禁止の看板を建て鉄格子まで付けています!これはもう我々国民に何かを隠していると言って良いでしょう!!]
ある日を境に海に続く道や海に面している都道府県に行くことを政府から禁止された。何も説明しない政府に暴動も起きたが死刑という言葉で国民は引き下がった。
偶々近海から物凄い爆発音のような音を聴いた人がいることから国民には秘密の軍事訓練をしている。や一部では国が化物と戦っているなんて噂が飛び交っていた。
化物なんて枯れ尾花だと思うし噂が風にのって産まれた都市伝説のようなものだと俺は思っている。だがこんな噂が飛び交っていれば必然的に黙っていない知り合いが一人いることを俺は知っている。
ブーブー...と机に置いておいた携帯のバイブ音が鳴り携帯が振動により俺の方に近付いてくる。まるで電話に出ろと言わんばかりに。
「あんた携帯鳴ってるわよ?」
いつの間にシャワーを浴び終えたのか姉貴が俺の後ろから言ってくる。分かっていると言い返したい。先程から震えている俺の携帯だが発信者の名前がえるなのだ。この貴重な休みを消費する訳にもいかない。なので敢えて電話に出ていないだけだ。
「何よ、携帯に出ないならあたしが出ちゃうわよ?」
「は!?」
俺の反抗虚しく携帯は姉貴が持っており通話ボタンを押して現在会話をしている。いや何でだよ...。
先程から姉貴が笑いっぱなしでえると電話をしている。何て言うか嫌な予感しかしないのだ。
「あーでもごめんね。こいつちょっと今から用事あって行けないのよ」
あれ?なんか誘いを断ってくれているようだ。よし!でかしたぞ姉貴よ!俺は今まで生きてきてこんなに姉貴に感謝した日はないだろう。
姉貴は電話を終えると俺に携帯を渡して、俺の隣に座りだした。
「ねえあんた。彼女出来たの?」
開口一番にこの質問はどうなのだろうか。嘘つく必要もないし良いのだが。
「出来てない。作るつもりもない」
「ふーん。そっなら良かったわ」
何が良かったのだろうか?嫌な予感がしてきたのだが...。
「ねえあんた。バイトしない?」
「は?」
笑顔で俺に働けと言ってくる姉貴。バイトしない?って事は聞いてるってことだよな。強制じゃないんだよな?やらなくても良いことならやらないのが俺だ。そんなの答えは決まっている。
「やら「あっ因みに断ったらさっきの子の誘いオッケーしちゃうからね」.....因みになんて誘いだったんだ?」
「なんでも化物と言われている存在がいるのかどうか気になるらしくて一緒に車で行けるところまで泊まり掛けで調べるって」
....成る程。姉貴よ。最初から拒否権なんて無かったんだな...。
「分かった...バイトをする。それでどんなバイトなんだ?」
「そう!良かったわ。あんたのバイトは、明日から提督になってもらうことよ」