ブラック鎮守府と折木   作:素人

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「ブラック鎮守府6」艦娘視点

長門side

 

提督が消えてから二週間が経過し新たな提督が鎮守府に着任する事になった。正直に言ってしまえば不安で仕方ない。前任の提督と同じだったらどうしようか私は妹を鎮守府の仲間を守ることは出来るのか。自らを犠牲にしてまで皆を救おうとは思えるだろうか。

 

 

そんなことを考えながら提督が来るのを鎮守府の入り口で金剛と待っていた。金剛が来た理由は概ね予想がつくが一番はどんな人物か見極めようとしているのだろう。だが金剛の瞳は暗く濁っている。初めて会った日の輝きは無くこの空間に二人でいるだけで息がつまりそうになる。

 

「長門」

 

そんなことを考えていると金剛から呼ばれ慌てて返事をする。

 

「ど、どうした?」

 

「長門は新しい提督が前任のような奴だったらどうしようと考えてマスカ?」

 

.......。先程までずっと考えておりそして答えを出せないでいる質問だった。

 

「.......」

 

口ごもってしまったせいか金剛は返事を待たずに続ける。

 

「私は提督を沈めると思いますヨ。もう誰も失いたくありませんからネ」

 

「金剛....」

 

「長門。貴女が考え悩んでいた事は知っていマース。いつも思い悩んだ顔をしていましたからネ」

 

どうやら毎日酷い顔をしていたようだ....。

 

「だからこそもう一度聞きマス。貴女はどうしまスカ?」

 

「私は...」

 

私が答えようとした時門がキィという甲高い音をたてて開き始めた。私達艦娘を閉じ込めるようにして佇む巨大な門。その巨大な門からはとても小さな老人が一人入ってきた。恐らく提督なのだろう。前任の提督と比べると年はかなりとっており貫禄がある。

 

「出迎え御苦労」

 

皆目一番のその一言に私と金剛は敬礼で返して姿勢をただす。正直安心していた。この人は前任とは違うと思ったから、これでようやくまともな日々を過ごしていけると思ったから。だが私の理想は提督との開口僅か数秒でボロボロに崩れ去る事になる。

 

「ふむ。ここには駆逐艦は幾つ配属されておるのじゃ?」

 

一瞬どんな質問なのか理解出来なかった。頭の中は真っ白になり直ぐには答える事が出来なかったが提督が咳払いをしたことで我に返り答える。

 

「じゅ、13名配属されています」

 

「そうか。なら5名まで適当に優秀なのを選んで後で伝えるように」

 

「て、提督。提督はその5名の艦娘以外の子をどうするつもりなんデスカ?」

 

金剛の声は震えていた。いや私も震える手をなんとか堪えるために握りしめている。

 

「?そんなの決まっておるじゃろ」

 

提督は当たり前のように言ってくる。私達が恐れていた言葉を。

 

「駆逐艦なんぞ使えん兵器に金をかけるほど無駄な事はないからの。解体じゃ」

 

その後の事はよく覚えていない。

 

気付いた時には鎮守府を照らす太陽は無く、あったのは暁の水平線に沈み始めて辺り一面が真っ赤に染まっており私を必死に抑えている陸奥と大淀の姿だった。

 

「はぁはぁ...」

 

体は重くその場に膝から崩れ落ちる。抑えていた陸奥は涙を流している。私は自分の手を見ると思わず渇いた笑みを浮かべていた。辺り一面が真っ赤に染まって見えたのは夕陽のせいではなく新しく着任した提督の血だった。提督は目の前に頭が無い状態で転がっており辺り一面が血で染まっていた。

 

「長門さんどうしてこんなことを....」

 

大淀から聞かれるが記憶が欠落しており自分が何故このような事をしたのか自分でも分からなかった。このような事をしたのが大本営にバレれば間違いなく解体されるだろう。

 

「金剛は....?」

 

辺りを見回したが一緒にいた筈の金剛はいなくなっていた。

 

「金剛さんなら....この事を知らせてくれたあと何処かに出撃していきました...」

 

「逃げ...たのよ」

 

陸奥から恨みとも怒りともとれる声が聞こえてくる。

 

「一緒にいた筈なのに...自分可愛さに逃げたのよ!!」

 

「陸奥....」

 

「長門に何かあったら絶対に許さないんだから....」

 

「そのことなら問題ないですネ」

 

「金剛!」

 

陸奥は金剛に擬装を展開させて砲台を向ける。

止めるように叫ぶが止めるつもりはないのか聞こえていないのか此方を見ようともしない。

 

「金剛教えなさい。貴女どうして一人で逃げたの?」

 

「陸奥それは誤解ネ。私は逃げていたわけではありませんヨ。私は提督と会う前に長門に聞きましタ。前任のような奴だったらどうしまスカ?と。返事を聞く前に提督が来てしまいましたが長門は行動で示してくれましたネ。ですから私は長門が無事に済むように今まで妹達と出掛けてましタ」

 

金剛が後ろを振り返り振り返ったほうを見ると榛名と霧島が何かを紐で結び片手で紐を掴み空いている方の手で敬礼をしていた。

 

「榛名帰艦しました」

 

「霧島帰艦しました」

 

紐で口も縛られているのか言葉になっていない声をあげ続けているそれの正体は艦娘なら誰でも知っている相手だった。それは私達が倒すべき相手。仲間を傷付ける相手。

 

「深海悽艦....」

 

「ザッツライト、そのとおりネ長門」

 

「ま、まさか金剛貴女この出来事を全て深海悽艦のせいにする気なの?」

 

「yes!流石陸奥ですネ。理解が早くて助かりマース」

 

ウインクをしながら言ってくる金剛の瞳は未だに暗く濁っている。いや金剛だけではないな。陸奥もホッとしながら瞳には光は無いし、それに私も見えないだけでどうなっているかなんて知れているだろう。

 

「それではお姉様。まず提督を海に捨てましょう」

 

「yes!霧島よろしくお願いしマース!」

 

「どうして提督を海に捨てる必要があるんだ?それに深海悽艦を生きて連れてきた意味はあるのか?」

 

危険なだけじゃないか、とその時は思った。だが次の金剛の言葉を聞いた瞬間聞いたことを後悔することになる。

 

「Why?長門は何を言っているのデスカ?そんなのコレ(深海悽艦)がやったっていうリアリティーを出すために決まってるじゃないデスカ。それと」

 

金剛が言葉を繋げようとした時榛名と霧島が紐を持ち縛られている深海悽艦を門の前まで運び深海悽艦だけ門の前に置き二人は此方に戻ってきた。

 

「お姉様。提督も海に捨てましたので」

 

「「止めを」」

 

そこまで聞いて何をしようとしているのか理解できた。金剛は提督だけではなく深海悽艦を利用して門を壊そうとしているのだと。

 

「ま、待つんだ!金剛、門を壊しても私達は外にはいけない!意味がないんだ!」

 

深海悽艦を殺す事だけを教えられてきた私達は外で暮らすなんてこと出来る筈がなかった。

 

「長門さん大丈夫です。お姉様は何も門を壊すことを目的にしているわけではありませんから」

 

榛名が呟き霧島が眼鏡をあげながらそれに頷く。

 

「yes!私の目的は外にいる門番ネ!それじゃ派手にいきますよー!!ファ「金剛待ちなさい!」」

 

陸奥がギリギリの所で金剛を止める。睦奥が止めたことで少し残念だと思ってしまった自分がいることに気付き罪悪感により悪態をつく。

 

「睦奥何故止めるのデスカ?」 

 

「貴女ばかりずるいじゃない。やるなら私も一緒よ」

 

そう言った睦奥の顔は愉悦により口元が綻んでいた。

 

「分かりましタ!では着いてきてくださいネ!行きます!フォルミー!!」

 

残ったのは大砲により壊された瓦礫と瓦礫に付着した深海悽艦の血。そして門番だと分かる服が破れたのか私の所まで風にのって飛んできた。

 

 

この光景を私は一生忘れることは無いだろう。

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