運命は彼女を逃さない。
ジャンヌ・ダルクは火刑に処される。それは世界によって決められた決定事項。誰が何をしようともこの事実が覆ることはない。世界はあるべき真実へと収束する。いくら時間がかかろうとも彼女は観衆の前で火に炙られる。
それが彼女の
それでも彼は……。
◇
カインは思考を止めることはなかった。
ジャンヌがどこからともなくやってきた兵士たちに捕らえられ、カインも彼女を隠していた事に対する罪で捕まった。捕まるのは彼女のなしてきた事から順当である。しかし、問題はそこではない。
カインが思考を続けている理由、彼等はどうしてここに来れたのかという事だった。
カインの自宅は森の奥深くに位置しており、未だ嘗て誰もここに人が来たことがなかった。それに加えて家を囲むように認識阻害の魔術もかけている。仮に相手側にどれだけすぐれた魔術師がいても術を解く間カインが気づかないということはあり得ない。
それにざっと見ただけで百人以上の兵が突然現れた。
以上の事からカインはこう結論づけた。
ーー神、もしくは世界が力を貸している。
カインは現在ジャンヌと共に連行されている最中であるが、彼が本気を出せばこんな包囲網くらい簡単に抜け出すことが出来る。しかし、先の結論が正しいのだとしたらジャンヌを連れて逃げたとしても謎の力によってまた捕まってしまうのがオチだろう。
ジャンヌと出会う前にカインの異能が観測した未来ーー火刑に処されるーーを変えてはいけない。
今まで、カインは見てきた結果を変える事が出来ていなかった。カインが見てきたものは必ず現実で起こされてしまう。
いくら、努力してもその運命は変えられた事はない。
おそらくは絶対に変えられない。だが、カインにはそんなことは受け入れられるはずもなかった。
ーージャンヌはただ皆を守りたかっただけなのに。ただ、それだけのために自らの手も血で汚し、聖女という肩書きを押し付けられた。ただの村娘だった彼女にだ。どれだけ不安だったのだろう。突然神の啓示という一方的な物を押し付けられ、兵の命さえ彼女の手腕によって如何様にもなる状況。
ーー暮らしていく内に僕はジャンヌが普通の女の子だと知ってしまった。料理もそんなに上手に作れない。そのくせ人並み以上に食べる。初めての事に対しては子供のように目を輝かせて夢中になった。あまりにも普通の女の子すぎた。そんなジャンヌに対する報酬が処刑だなんてあまりにも救われなさすぎる。
だからカインは考える。ジャンヌが生きてられる状況。カインの持ち札全てを使ってもジャンヌだけは生かす。それがカインの唯一の望みだった。それが彼女を盗んだ者としての意地でもあった。
ーー脳が千切れても構わない。何かあるはずだ。希望になり得る一手が。
カインの思考は長かったのかそれとも短かったのか本人でも分からない早さで回っていた。そしてある一つの事に気がつく。
「世界を、騙す」
ジャンヌを救い出せるかもしれないという可能性を。
全然人が喋ってないですね。
しょうがないんだ。悪いのは全部抑止力のせいだ‼︎