プロローグ
相良 豹馬は詠唱を始めた。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公」
ユグドミレニアムのマスターとして参戦するにあたって相良は自らの技量を考慮に入れた上でアサシンのサーヴァントを召喚することに決めていた。
「手向ける色は『黒』」
しかし、アサシンのサーヴァントというのは触媒を用いなければ基本的にはアサシンの語源になっている山の翁の中から選ばれる。だが山の翁は過去にも何度か召喚されており、ある程度の情報が残ってしまっていた。そこで、相良はある触媒を用いて山の翁以外のアサシンのサーヴァントを呼び出すことにした。
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
用いた触媒はジャック・ザ・リッパーが実際に使用したとされるナイフ。また、召喚の可能性を高めるためにジャック・ザ・リッパーの犯行現場を再現する。相良の足元にはそのために使う予定の女性が魔術で暗示をかけ逃さないようにして転がっていた。
「
彼女の名前は六導 玲霞。玲霞はとにかく運が悪かったとしかいいようがない。たまたま相良という魔術師と出会ってしまい暗示をかけられ、彼の事を好きだと思わされ、金も取られ、命までも取られようとしている。
「ーーーー告げる。汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に」
玲霞は自分の人生を思い浮かべていた。玲霞の人生は今の状況と少し似ていた。幸せだった時間はすぐに終わり、それからは身をもって金を稼ぎ生活していく人生。挙げ句の果てにはよくわからないやつに殺されそうになっている。
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
サーヴァント召喚の詠唱はもう少しで終わるという事を玲霞はなんとなくだが悟っていた。そして、詠唱が終わる前に自分が殺されるという事も。分かっていながらも玲霞にはどうする事も出来なかったしするつもりもなかった。玲霞は生きることに疲れていた。こんな世界生きていても良い事なんて一つもない。寧ろ、辛い事の方がたくさんある。ここで死んで楽になろう。
ーー本当にそれでいいの?
玲霞はどこからかそんな声が聞こえた様な気がした。中性的な声であるが、女性か男性かと聞かれたならば男性だと答える声だった。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
相良は犯行現場を再現するためにナイフを手に持ち玲霞の胸の上に照準を定める。玲霞はその様子を見て思ってしまった。
ーー死にたくない。
もう生きることには疲れている。それは本当だ。と玲霞自身そう思っていて生きたくないとも思っていた。けれど、実際にナイフを見ていたら死ぬ事が怖くなってしまった。まだ自分は何もやれていない。こんな終わりでは本当に玲霞という人間が生まれてきたことに意味がない。
ーーまだ、死にたくない‼︎
しかし、相良はナイフを持った手を振りかぶり玲霞の胸に突き入れようとする。玲霞は思わず目を瞑ってしまった。
一秒、二秒、三秒たっても玲霞に痛みはやってこなかった。玲霞はおそるおそる目を開ける。
「君が俺のマスターかな?」
なんで彼が召喚されたのかは次回で…
黄色バーから脱出したいので評価が欲しいな…