キッドは未だ霊的パスが繋がっている相良の下まで歩く。相良の手にはサーヴァントのマスターの証である令呪が三画刻まれている。それをキッドは魔術で二画を自分に、一画を玲霞に移す。
「これが、令呪?」
「あぁ、これが令呪。これで契約しているサーヴァントに対して絶対強制させることができる」
「自分に二画移したのはなぜなの?」
「サーヴァントは基本的にはマスターである魔術師から魔力提供されないと世界にとどまっておくことができないんだ。でも、マスターは魔術師じゃないから魔力がない」
魔力は魔術回路があるものしか持っていないので玲霞にはキッドを世界にとどめておく事ができない。自らのせいでキッドに危機が迫っているので玲霞は少し慌てる。
「じゃ、じゃあどうするのこれから。会ったばかりなのにすぐにさよならなんていうのは嫌よ私」
「英霊は人間霊に近い性質を持つから人の魂を食べることで一応、魔力の補充はできる」
「じゃあ、それでいきましょう」
さらっとゲスい発言をした玲霞に少しひきながらその発言にキッドは反対する。
「自分の為に誰かを犠牲にするなんてことは絶対にしたくない。ましてや、俺は既に死んでいるんだ」
「でも、そうしないと貴方が……」
「俺のために言ってくれるのは嬉しいんだけど、誰かを殺すなんて簡単に言ってはダメだマスター。……それでなんとかする方法がこの令呪だ」
キッドは自らの令呪を指差しながら玲霞に見せる。
「令呪は膨大な魔力を内包している。使い方によってはこんな事もできる」
「令呪を以て我が肉体に命ずるーー玲霞を守り続けろ」
令呪は本人の抵抗がないおかげかしっかりと発動し、消えかけていたキッドは完全に現世に体をつなぎとめておくことに成功した。
本来ならこの命令をしたところで令呪分の魔力がなくなってしまえば魔力供給を受けていないので最終的には消えてしまう。しかし、幸いなことに彼は単独行動のスキルを持っていたので日常では魔力をあまり使うことなく過ごすことができる。また、キッドお得意なルーン魔術には周りから魔力を集めるという魔術もあるので半永遠的に玲霞を守り続けることが可能になった。
キッドは続けて令呪を使う。
「重ねて令呪を以て我が肉体に命ずるーー俺は玲霞を幸せにする」
「一回目の令呪の意味は分かるけど、二回目って使う必要あったかしら?」
玲霞はキッドの令呪の使用を見てふと疑問に感じたので言ってみる。
「そうだな。秘密」
キッドは何か含みのある言い方をするだけで詳しくは玲霞に教えてくれなかった。
「さて、コイツをどうしようかな」
相良を見ながら呟くキッド。
「きっと私はこの人のことを愛していたわ。魔術で印象操作していたとしてもその事実は変わらない。でも、裏切ったのだから仕方ないわね。ごめんなさいね、貴方のことは、大切な思い出にして生きていくわ」
キッドは狂気を孕んだ玲霞を見て心が痛くなる。どうしてこんな考えを持った人になってしまったのか…。こういう風な考えを持つような周りの人間の行為にキッドは怒りを感じる。だが、一旦それは心の奥に隠して玲霞を止める。
「さっきも言ったが人殺しはなしだ」
「でも、この人はきっと何人も人を実験の材料にしているわ」
「殺すなら俺がやる。でもマスターはダメだ。マスターには、玲霞にはこんな世界とは無関係で生きてほしい。それこそが玲霞が望む願いにも繋がると俺はそう思うよ」
今にも相良を殺しそうな玲霞の雰囲気が少し収まった。
「ねぇ、キッドは人を殺した事があるの?」
不意に玲霞は尋ねる。
「普通の人間はない、かな。ゾンビやら動物やら掃除屋とかなら殺したことはあるけど生粋の人間はないな」
「そう。ならこの人を殺すのはやめておくわ」
突然の心の変化にキッドは軽く驚くものの殺さないという良い変化だったので深く問い詰めたりはしなかった。
遅くなってすみませんでした。
いろいろ忙しくて書く暇がなかったんです。
次もいつになるか分かりませんが書きますのでお待ちください。