艦これの方の息抜きとして東方のを書いていきます。
どうぞよろしくお願いします。
「何で飛べなくなってるのよ」挿絵有
あるところのお屋敷に、1人の女の子が住んでいました。
女の子の家は普通とは少し違っていて、そのために、あまり家から出してもらえず、友達ともほとんど会えませんでした。
それが嫌だった女の子はある日家を飛び出しました。
家の人がすぐに後を追いましたが、女の子の姿はどこにも見当たりませんでした。
え?いきなり何を言ってるのかって?失礼ね、ちゃんと嘘はついてないわ。
じゃあ、こんなお話はどうかしら。空を飛べなくなった巫女の話。そう、あの巫女よ。滑稽でしょう?
これなら面白いんじゃないかしら。勿論、嘘はついてないわ。
それじゃあ、私が創り変えた
―――――――――
「ふぅ、すっかり遅くなったわね」
「あぁそうだな。夜は妖怪の天下だ。人間は家に帰って寝るに限るぜ」
妖怪が跋扈する夜の幻想郷。
そんな危険極まりない夜の小道を2人の少女が歩いていた。
「しかし良かったな霊夢。これでしばらくは生きていけるな」
白黒の少女、霧雨魔理沙は少しからかうようにそう言った。
「うっさいわね、っていうかどういう事よ。そもそも、うちは決してお賽銭がゼロな訳じゃないわ。それにもしゼロだとしても今まで生きてきたんだからどうとでもなるわよ」
紅白の少女、博麗霊夢は魔理沙に向かってそう言い、ふん、とそっぽを向いた。
いつもは神社でお茶を飲んだり境内の掃き掃除などで暇を持て余している霊夢だったが、今日は珍しく里の庄屋が御祈祷をお願いしてきたため、巫女の仕事として里に出向いていたのだ。
御祈祷だけのはずが、庄屋に悪霊が憑いているのを霊夢が気付き、裏で操っていた妖怪を退治したことで、庄屋は大いに感謝し、その分、報酬は弾んだのだった。
霊夢の言葉に、それはそれで巫女としてどうなんだろうな、と魔理沙は言いつつ、分かれ道の所で立ち止まる。
「私はこっちだ。じゃあな霊夢、家に帰るまでが妖怪退治だぜ」
手に持っていた箒にひょいと跨がると、魔理沙はふよふよと空へと飛んでいった。
霊夢もため息を1つつくと神社へと歩を進めた。
春が終わり、夏に近付いているとはいえまだまだ肌寒い。
身体が冷えないうちに帰ろうと足を早めたとき、突如、静かな夜に叫び声が響き渡った。
「きゃああああーー!!」
「っ!?今の声は……!」
霊夢は地を蹴り宙に浮き、樹木の上に出て辺りを見回す。
「……こっちか」
持ち前の『勘』で悲鳴の上がった方角へと直行すると、少しもしないうちに、悲鳴の主を発見した。
見たところ、霊夢と同じくらいの女の子に見えるが、幻想郷ではあまり見かけない服を着ていた。
(あれは……外の世界の人間ね)
霊夢の勘がそう告げていた。
幻想郷には忘れ去られたものがやってくる。人間もまた
このような場合は“迷い込んだ”と言ったほうが正しいだろう。
ともかく、悲鳴を上げた女の子は妖怪に襲われる寸前だった。
妖怪が飛びかかろうとした瞬間、霊夢は
「警醒陣!」
女の子の目の前に霊力の壁が作り出され、飛びかかった妖怪はそれに阻まれ、次いで衝撃波のようなもので吹き飛んだ。
霊夢が妖怪と女の子の合間に割り込むように降り立つと、「ひっ!」と女の子が小さく悲鳴を上げる。
「あんたは『
霊夢がそう言うと、猩々は一息に飛び込んできた。ほとんどの妖怪は博麗の巫女が妖怪退治の専門家である事を知っているため、よほどの事が無い限り戦闘を仕掛けることは無いのだが、目の前の猩々は気が高ぶっているようだ。
「そう、なら一撃で決めさせて貰うわ!
“スペルカード”!夢符『封魔陣』!」
取り出した1枚の
その瞬間、霊夢の周囲に結界が形成され、物理的な障壁となって展開される。
猩々は
「ふん、ザコね。私に勝とうなんて四十九日早いのよ。……さぁ、これでもう安心……」
くるりと後ろを振り返って女の子に声を掛けようとした霊夢だったが、いるはずの女の子がその場におらず言葉を詰まらせた。
見ると女の子は、霊夢に背を向けて(恐らく)全力で走り出していた。
「って、ちょっと!」
霊夢が呼び掛けても女の子は止まる素振りを見せない。
仕方なく霊夢も走って後を追う。
「何で逃げるかなぁ、やっぱり外の人間はどこかズレてるのよねぇ……こら止まれーーっ!」
しばらくそんな追いかけっこが続いたが、しびれを切らした霊夢は再び重力から解き放たれ宙を舞う。
女の子の頭上を飛び越え先回り。女の子の前にタっと降り立つ。
女の子は目の前に急に現れた霊夢に驚き、ズテン!と派手に転んだ。
「全く……夜の
迷い込んだ人間はそういう決まりなの」
霊夢がへたり込んでいる女の子に手を差しのべる。しかし女の子は怯えた様子で霊夢を見つめるばかり。
「あーもーじれったいわね!」
霊夢が女の子を立たせようと強引に腕を掴んだその時だった。
霊夢の身体中を電気が流れたような衝撃が襲い、まるで拒絶されるように後方に吹き飛ばされた。
突然の出来事に暫く呆けていたが、我に返ると女の子の襟首に掴みかかり、ブンブンと前後に揺さぶりながら怒りの言葉を連ねる。
「アンタ一体何したのよ!そもそも妖怪から助けてあげたっていうのに、恩を仇で返す気!?」
女の子は何も答えない。額に青筋を浮かべながら顔を覗き込むと、女の子は気を失っていた。
ため息を吐いて襟首から手を離す。
相手が聞いていないのなら、ここでいくら怒ったところで無駄。
この怒りは女の子が目覚める時まで取っておくとして。
(それにしてもさっきの衝撃は何?まるで結界が壊れたときみたい)
霊夢はそう先の出来事を疑問に感じつつも、女の子を神社に連れ帰る事にした。
このまま気絶した状態で外の世界に帰した方が、何かと面倒事が少なくて済むと思ったからだ。
よいこらしょ、と女の子を背負うと、霊夢は重力の束縛から解き放たれ空を飛ぶ。
………そのハズだった。
「……え」
霊夢が自らの足元を見る。いつものように、先程のように、空を飛ぼうとしているのに霊夢の両足は地に着いたままだった。
その後、力を込めたり、飛び跳ねたりしてみるが、霊夢の身が宙に浮かぶ事は無かった。
「……何でよ」
ゼーハーと息を切らして霊夢は叫んだ。
「何で飛べなくなってるのよーーーーっ!!」
先程と同じように、気を失っている女の子の襟首を掴んで揺さぶる。
「アンタでしょ!?いやアンタしかいないわ!!やっぱり私に何かしたわね!?
ハっ……!まさか人間に化けた妖怪か!」
霊夢が女の子を無理やりにでも起こそうと激しく揺さぶっていた時、周りの木々から妖気を感じ取った。
(……さっきの猩々の仲間か。囲まれているわね……)
御札を取り出し臨戦態勢を取る。
そんじょそこらの妖怪にやられるなんて事は殆ど無い霊夢だが、今は突如として空が飛べなくなったことによるショックの方が大きかった。
猩々たちに囲まれて、じりじりと間合いを詰められる。敵の数が多い。霊夢と言えども、圧倒的な物量には
一触即発の中、暗い夜の闇が突如として、降り注ぐ星の雨でかき消された。
「“スペルカード”魔符『ミルキーウェイ』!」
降り注ぐ星屑と共に、夜の闇と同じように黒い服をまとった少女、魔理沙が
「さらに駄目押しの……魔符『スターダストレヴァリエ』!」
魔理沙を中心として星弾の輪が広がり、辺り一帯に飛び散った。
潜んでいた猩々たちは恐れをなしたか、悲鳴を上げて散っていった。
「昼間は霊夢に譲ったんだ。夜くらい暴れてもいいだろう?」
「いつも暴れてる気がするけど……家に帰ったんじゃなかったの?」
「悲鳴のみならずドッタンバッタン聞こえたんでな。それよりどうした、
霊夢は魔理沙の肩を勢いよく掴み、鬼気迫る表情で一連の事態を説明した。
「うーん、霊夢が言うと全部冗談にしか聞こえないな。本当に飛べなくなったのか?」
「本当だって言ってるじゃない!絶対にコイツが何かやったのよ!」
物凄い剣幕に押され気味だった魔理沙は、霊夢を一旦
「まぁそれが嘘か本当かは別として、ひとまず神社に戻ろうぜ。どちらにせよ、そいつには話を聞かんとならんだろうし」
「どこまでも信じないつもりね……でも確かに神社に帰らない事にはどうしようもないわ」
結局、2人は謎の女の子を連れて神社に戻る事となった。
霊夢は人知れず、最近やっと落ち着いてきたのに、また厄介事が舞い込んできたな、と思うのであった。
◇◆◇◆◇◆
・博麗霊夢
言わずとしれた巫女。空が飛べなくなったっぽい。
・霧雨魔理沙
ひねくれ者の魔法使い。今回暴れただけ。
・女の子
外来人のようだが、気絶中。
・猩々
妖怪。動物の方じゃないです。
次話は挿絵描けたら投稿します