家出少女の幻想奇談   作:Ar kaeru Na

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前回のあらすじ
逃げた少女を捕まえて事情聴取


「博麗の巫女代理よ」

 

 

女の子はぽつぽつと語り出す。

 

「家を出て、夜の林に入っていったら……」

 

「ちょっと待って。家を出て…って1人でかしら?夜の散歩にでも出たの?」

 

霊夢が訝しげに訊ねる。

夜に女の子が外に出るなんて、幻想郷でもあまり見かけない。

 

「それは……そのまんまです。家出したんです」

 

「「「家出ぇ~?」」」

 

霊夢、魔理沙、華扇の3人が素っ頓狂な声を上げる。

 

「どうしてそんな事したのよ」

 

「おい霊夢、そういうことは突っ込むべきじゃないぜ」

 

魔理沙がそう釘を差す。確かにそうなった経緯は少なからず私情を挟むもの。

幻想郷の住民ならいざ知らず、外の人間、初対面の者に訊ねるのはいささか失礼だったかも知れない。

 

家出経験者が言うのだから、多分そうなのだろう。

 

「いや別に構いませんけど……」

 

「いいのかよ、じゃあ遠慮無く訊くぜ。どうしてだ?」

 

「実は、家の方が何だか由緒ある家柄らしくて……そのせいで学校にも通えないし、友達とも全然会えなかったんです」

 

「由緒ある家柄ねぇ」

 

霊夢は魔理沙の方を見るが、当の本人はどこ吹く風という様子で口笛を吹いている。

 

「家の中じゃ礼儀作法やつまらない勉強、縁談ばかりで息が詰まる生活……」

 

「縁談って、見たところ貴女はそんな年齢じゃないでしょう?昔ならともかく、今の時代にしちゃ少し特殊ね……」

 

「少し特殊じゃなくて、異常なんです私の家は。時代遅れにも程があります!」

 

華扇の言葉に、弥継という女の子は声を強めて言い返す。

 

その姿を見て、華扇は一瞬だけ目を細めた。

 

「まぁ落ち着いて。それで…家出したのね」

 

「そうです。家を抜け出して近くの林に入ったのは良かったんですけど、一瞬だけ変な……目眩(めまい)みたいな、林じゃない不思議な光景が見えたんです。それで気がついたら森の中に……」

 

「紫ね」

 

「紫だな」

 

「紫ですね」

 

霊夢たち3人は隙間妖怪のせいだと断定した。

 

「……?大まかにはそんな感じですけど、私からも質問があります」

 

弥継という女の子は逆に霊夢達に何者かを訊ねる。

 

その問いに、華扇がかいつまんで説明した。

 

「忘れ去られた世界に住む幻想の住民……」

 

「おぉ、詩的にまとめたな。さすがいいとこのお嬢様だ」

 

魔理沙がそう言い終わるか終わらないかの時に、霊夢がズイッと前にでた。

 

「訊きたいことはもういいかしら?

今度はこっちから訊くわ。アンタが昨日、妖怪に襲われそうになっていたのを私が助けたのは覚えてる?」

 

「は、はい……」

 

「あの時は空を飛べてたのに、アンタの手を掴んでから空を飛べなくなったのよ!これはどういうことなのよ!」

 

「どういう、と言われても……」

 

「アンタ以外に原因なんて無いのよ!正直に白状なさい!」

 

弥継という女の子は、本当に何も知らないと言う様子で頭をブンブンと振った。

 

「霊夢、ちょっと」

 

その時、華扇が小さく霊夢に手招きをした。

呼ばれた霊夢と、特に呼ばれた訳では無いが魔理沙も華扇のもとに頭を寄せる。

 

「(何よ)」

 

「(その事ですが、さっきあの子が声を強めた時があったでしょう。あの時に、ごくわずかながらあの子から妖気を感じました)」

 

華扇が声をひそめて2人にそう伝えた。

 

「(妖気だと?見た目人間だが、半妖か?)」

 

「(いや、それは無いわ。あの子は確実に外の世界の()()よ。華仙、感じたのは霊気や魔力じゃなくて本当に妖気なの?)」

 

「(間違いありません。そしてあの子の中から妖気が出ているとしたら考えられる事はただひとつ。

あの子の家系、血縁には妖怪が関わっている。

そう考えれば、外の世界の人間だとしても霊夢に影響を……この場合、空を飛べなくということですが、影響を与える可能性を持っていると言えるでしょう)」

 

「(にわかには信じられんな、そんな事。第一、証言は茨華仙(おまえ)だけで確証が無いじゃないか)」

 

華扇の推測を聞いて魔理沙がそう言った。

華扇はこくりと頷く。

 

「(そう、確証がありません。ですから霊夢、あの子からその手の情報を引き出して下さい)」

 

「(何で私が……)」

 

「(貴女の空を飛ぶ力を取り戻す為です)」

 

そう言われてしまうと言い返す事が出来ない。霊夢は大人しく弥継という女の子の方へ振り返る。

 

「質問を変えるわ。アンタの家系で何か謂われみたいな、どんな由緒があるのか、話せるわよね?」

 

弥継という女の子は、戸惑いの表情を霊夢に向けた。

 

「知っている事だけでいいの。なにも貴女の血筋について全部教えろってワケじゃないから、安心して」

 

華扇が見かねて助け舟を出す。

そしてその言葉を聞いてやっと口を開く。

 

「私の家が大きいのは、遥か昔に御先祖様が朝廷に仕えていたからだとおばあちゃんから聞きました……なんでも、結構重要なポストだったらしくて」

 

「ほう、由緒ありまくりだな」

 

魔理沙が茶々をいれる中、華扇は口元に手を当てて先程の言葉を反芻(はんすう)していた。

 

(朝廷……朝廷……?)

 

「ふーん、他には無いの?そんな由緒ある家なら不可思議な伝承の1つや2つあるでしょうよ」

 

「他に…他に……あ、あとおばあちゃんの占いがよく当たるって有名で」

 

「何の話をしてるのよ。もっと昔の言い伝えとかないわけ?」

 

弥継という女の子はしばらくうーんうーんと唸っていたが、ふと思い出したようにこんな事を言った。

 

「そういえば、小さいときにおばあちゃんが『この家は、昔に1羽の鳥を助けたのがきっかけなのよ。だからあなたも優しく温かい心を持ちなさい』って言ってくれた覚えがあります……」

 

「「ほう?」」

 

魔理沙と華扇は、声を揃えて目を輝かせる。

 

「そんな有力情報どうして忘れてるのよ……」

 

思い出したのなら良いけど、と付け加えて霊夢は魔理沙と華扇に小さく話し掛ける。

 

「(こんなもんでいいかしら。今のは大分手応えあったわよ)」

 

「(ええ、上出来です)」

 

「(霊夢にしちゃ上出来だな)」

 

「(しまいにゃ殴るよ?)」

 

「(怒るなよ霊夢。私の方でもアイツについて調べてみるから)」

 

魔理沙は「どうもアイツからは感じるモノがあるぜ」とつぶやいて華扇を見る。

 

「(茨華仙もそうだろう?)」

 

華扇は少し驚いた顔をする。

 

「(え、えぇ。よくわかったわね。確かにあの子は外から来たにしては幻想郷に順応している…と思いまして)」

 

3人がヒソヒソと話していると、弥継という女の子が「あのぅ…」とおずおずと声を掛けてきた。

 

「私は元の世界に戻れるのでしょうか……?」

 

「そ、そうねぇ~」

 

華扇はちらと霊夢を見る。

霊夢はふん!と腕組みをすると言い放った。

 

「普通だったら神隠しにあって迷い込んだ外の世界の人間は送り帰すのが常だけど、アンタは私の空を飛ぶ力を元に戻すまで帰すわけにはいかないわ!」

 

「そんなぁ~」

 

弥継という女の子は、ぐずぐずと涙ぐんだ。

しかし霊夢にも、ここは譲る事は出来ない。博麗の巫女として、空を飛べないというのは致命的なのだ。

 

その時、華扇が訊ねた。

 

「ん?待って、貴女は家出してきたのよね?」

 

「はい…そうですけど」

 

「家に帰りたくは…」

 

「ないですね」

 

「なら、元の世界に戻れなくても問題ないんじゃないかしら?むしろ、幻想郷に居れば見つかって連れ戻されるなんて事無いと思うけれど」

 

「…………あ」

 

弥継という女の子はポカンとしてその事実に気付く。

 

「(ナイスよ華仙)」

 

「(あの子が納得していた方が今後とも都合が良いでしょうからね)」

 

霊夢と華扇が女の子に聞こえないように言葉をかわす。

 

「じゃあコイツは幻想郷(こっち)にいるとしてこれからどうするんだ?人里に置くのか?」

 

魔理沙が疑問を口にする。それに霊夢は困った顔をする。

 

「いや……人里に置くのは都合が悪過ぎるわ。ここは面倒だけど、うちで預かるしかないわね」

 

「じゃあちょうどいいじゃないか」

 

「何がよ?」

 

「霊夢は巫女の仕事を全然しないからな。コイツにやってもらえば…」

 

「ハッ!?そうか…!」

 

霊夢は弥継という女の子に振り返ると、ビシィ!と指差して宣言する。

 

 

「よぉーし決めたわ。今日からアンタは『博麗の巫女代理』よ!」

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

・博麗霊夢

怒りっぽい巫女さん。周りの八割は厄介事。

 

・霧雨魔理沙

自分勝手な魔法使い。大抵の事は何とかなると思ってる。

 

・茨木華扇

冷静沈着な山の仙人。たまに冷静じゃない。

 

・女の子

小動物系外来人。本名は矢村弥継。

 

霊夢「由緒ある~~」

魔理沙の実家は里の有名な大手道具屋。

 




プロローグ終了で次回からほのぼの行きます
次回は挿絵描きます
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