君のコスモは   作:JALBAS

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今回は、今迄のクロスと大幅に展開を変えました。それどころか、基本ストーリーも大きく変えてしまいました。
最初は、糸守の何気ない日常から……でも、何かが原作と違います。
朝起きて、いつものように学校に向かう三葉。サヤちん、テッシーとも合流して、一緒に登校します。
ところが、そこにもうひとり……




《 第一話 》

 

「ん……んん……」

スマホのアラームの音で、目が覚める……いや、覚めているのだろうけど、中々目が開けられない。まだ、眠い……

そのまま、起きられずに布団に包まっていると、

「お姉ちゃん、いつまで寝とんの?もう、ご飯やよ!」

「ふぁ……ふぁ~い……」

四葉の言葉に、ようやく体を起こして目を開ける。

「早よしい!遅刻するに!」

そう言って、四葉は下に降りて行く。

私は気怠そうに体を起こし、のっそりと起き上がる。まだ、かなり眠い。

最近、気になる事があって、夜は中々寝付けない。だから、朝は非常に辛い。

 

「お姉ちゃん、遅い!」

「ご……ごめん、ごめん!」

身支度を終えて降りて来たところで、四葉に怒られる。既にお婆ちゃんと四葉は、朝食を食べている。私もテーブルについて、自分のご飯をよそう。

寝ぼけてても、顔はしっかり洗って、髪はいつも通り結って来た。そのため、降りて来るまでに非常に時間が掛かった。例え遅刻する事になっても、ここで手を抜く訳にはいかない。何故かというと……

そこに、テレビのニュースが耳に入って来る。

『1200年に一度というティアマト彗星の来訪が、いよいよひと月後に迫っています……』

ああ、もうひと月後には彗星が近づくんだ……綺麗だろうなあ?丁度その日はお祭りだし、浴衣を着て、彼と……

「お姉ちゃん!」

「あ……ご、ごめん!」

呆けて硬直していたので、また四葉に怒られた。

 

食事を終え、通学の途に就く。私が遅いので、四葉は先に行ってしまった。ちょっと遅れ気味なので、のどかな田舎道を走って学校に向かう。

私の名は“宮水三葉”。飛騨地方の、山の中の田舎町“糸守”に住む女子高校生だ。

家族は、お婆ちゃんと小学生の妹、四葉との3人暮らし。お母さんは、まだ四葉が幼い頃に亡くなった。お父さんは健在だが、訳あって、今は別居中。家は、代々宮水神社の神主を引き継いでいて、私も四葉も“巫女見習い”となっている。ゆくゆくは、私が神主を継がなければならないのだが、それが嫌でたまらない。少し前までは、高校を卒業したら東京の大学に進学して、早くこんな町は出て行きたいと思っていた。そう、1週間前までは……

通学路の半分くらいまで進み、もう歩いても大丈夫と思って走るのを止めた時、後ろから声が聞こえて来る。

「三葉~っ!」

振り向くと、自転車にふたり乗りした男女がこちらに向かって来る。親友の、サヤちんこと“名取早耶香”と、テッシーこと“勅使川原克彦”だ。

「おはよう!三葉!」

「おはよう!サヤちん、テッシー。」

自転車の荷台から、声を掛けて来るサヤちんに私は答える。

「お前、早く降りろ!」

辛そうに自転車をこいでいたテッシーが、サヤちんに不満を言う。

「いいにん、ケチ!」

文句を言いながら、サヤちんは荷台から降りる。

「重いんやさ!」

「失礼やな!」

夫婦漫才のような、会話を続けるふたり。

「相変わらず、ふたりとも仲いいな。」

『良くないわ!』

私の突っ込みに、ふたり揃ってハモって返す。

その後、サヤちんが私の耳元に近付いて囁く。

「そんな事言うて、三葉こそ、憧れの君がお待ちやよ。」

そう言って、サヤちんは私の前方の、道の脇に聳え立つ大木を指差す。

そこには、同い年の男子高校生が木にもたれ掛って、文庫本を読んでいる。

「?!」

その姿を見て、私は言葉に詰まってしまい、俯いてしまう。自分では見えないが、多分顔はかなり赤くなっているだろう。

「瀧く~ん!」

喋れない私に代わって、サヤちんが声を掛けてしまう。

彼は、私達に気付いて、文庫本を閉じてこちらに向かって来る。

「おはよう!三葉、サヤちん、テッシー!」

にっこり笑って、瀧くんは私達に挨拶して来る。

「おはよう!」

「おす!」

「お……おはよう……瀧くん……」

元気に挨拶を返すサヤちん達とは対照的に、私は蚊の鳴くような声でやっと挨拶を返す。

「あれ?三葉、元気無いね?どこか、具合悪いの?」

「え?う……ううん、そ……そんな事、あらへんよ。」

瀧くんが、心配して私の顔を覗き込んで来る。

だめ!そ……そんなに近づかないで!

心臓の鼓動が、どんどん高まっていくのが分かる。とても、顔を上げられない。

「たき~っ!」

その瀧くんを、テッシーが彼の首に腕を巻き付けて、自分の方に手繰り寄せる。

「罪なやっちゃな、お前も。」

「は?何言ってんだ?やめろよ、おい!」

そこに、サヤちんが脇に肘を入れる。

「うぐっ!」

「少しは、雰囲気読みなさいっての!」

「はあ?何を?」

「は~っ……だめだ、こりゃ……」

サヤちんは、天を仰ぐ。

 

彼の名は、“立花瀧”1週間前に、お父さんの仕事の都合で東京から越して来た。

席が隣になったという事もあるけど、彼は直ぐにテッシーと意気投合した。そうなると、当然私達の仲良しグループにも加わる事になり、その日からお昼は4人で一緒に食べ、登下校も一緒になった。ただ、私にとって彼は、ただの転校生では無かった。

それまで、男の子に恋心というものを感じた事は無かった。テッシーとは幼い頃から仲がいいけど、“恋人”という感覚で見れた事は無い。サヤちんがテッシーに恋心を抱いているのには気付いているし、テッシーの事は好きだけど、どうしてもそういう気持ちにはなれなかった。

しかし、瀧くんは違った。

初めて会った時から、“この人だ”と思えた。今迄会った事も無い。顔も名前も知らなかった。なのに、ずっと昔から、生まれる前から知っていて、“私は彼と出逢うために生まれて来たのだ”とすら思えてしまう。

だけど、そう思えてしまうが故に、彼の顔を満足に見られない。言葉も、満足に交わせない。そのくせ、夜は彼の事ばかり気になって眠れないのだ。

 

その日の昼食は、いつものように校庭の隅で4人で食べる。

「そういえば、例の行事って今夜やな?三葉?」

テッシーが聞いて来る。お祭りに先だって、舞と口噛み酒の儀式を、今夜宮水神社で行うのだ。

「そうやよ……だから、気が重くて……」

「え?何があるの?」

瀧くんが聞いて来る。

「豊穣祭の舞と儀式や!三葉が踊るんや!」

「え?ほ……ほんと?」

「う……うん……」

私は、恥ずかしそうに答える。

「瀧も、一緒に見に来るか?」

「ああ、是非……」

「やめてっ!」

思わず、大声を出してしまった。

「え?……」

「み……三葉……」

ふたりは驚いて固まって、私を見詰めている。

「お……お願いやから、絶対に見に来んで……」

私は、少し涙ぐみながらそう言って、以降、黙り込んでしまった。

瀧くんは、何か、凄く寂しそうな感じだった。でも、あんな姿、好きな人に……瀧くんに、絶対に見られたく無い!

その後、サヤちんの肘打ちが、思いっきりテッシーの鳩尾に炸裂していた……

 

その夜、宮水神社の神楽殿の前に、町の人達が集まっている。舞台では、巫女装束に身を包んだ姉妹が、舞を踊っている。私と、四葉の姉妹だ。

お婆ちゃんから仕込まれた、先祖代々伝わる舞を、カラフルな紐の付いた鈴を鳴らしながら踊る。もう、何年も続けている行事であるが、年を重ねる程恥ずかしさも募っていく。お年寄り達の視線はまだいいが、同年代、特に同級生の好奇な視線には耐えられない。いつも嫌味を言う松本達3人が、薄ら笑いを浮かべながら、こちらを見ている。

少し離れた所に、サヤちんとテッシーも居る。ふたりからは好奇な視線は感じないが、それでも何か嫌だ。あれだけ嫌がったから、瀧くんは来ていない。それが、せめてもの救いだ。

ただ、本当に辛いのはここからだ。

舞が終わり、私達姉妹の前に、米の乗った台と升が運ばれて来る。

私と四葉はその前に座り、米を少し手で摘み口に入れる。そして、ひたすら噛む。噛んで、柔らかくなったところで、唾液と共に升の中に吐き出す。これが、口噛み酒の儀式だ。

唾液と混ざった状態で放置しておくことで、発酵してアルコールになるという、日本古来のお神酒。今時、こんな方法でお神酒を造っている神社が何処にあるのだろうか?

だがそんな事より、人前で口に入れた物を吐き出す等、年頃の女の子にやらせる事か?本当に恥ずかしくて、今直ぐ何処かに消えたい。松本達は、相変わらず馬鹿にしたような嫌な笑みを浮かべてこっちを見ている。こんなの、瀧くんにだけは、絶対に見られたくない!

 

サヤちんとテッシーは、そんな三葉の気持ちが分かるのか、険しい表情で口噛み酒の儀式を見詰めていた。

「あんな、噛んで吐き出した物をもらって、神様嬉しいんやろか?」

「そりゃ、嬉しいやろ!」

「でも、三葉の気持ちも分かるな……」

「はあ?」

「あんな姿、大好きな人に見られとう無いやろ?」

「そりゃ、そうかもしれんが……あれはまずいで。」

「あれ?」

「“絶対に見に来んで”って、あれじゃ嫌われてると思ってまうで。」

「そやね……」

「三葉が、はっきり自分の気持ち伝えられりゃ問題無いんやが……」

「駄目やね……三葉、瀧くんの前じゃまともに話もできんで……」

「せやな……」

「そんな三葉の様子から、三葉の気持ちを察してくれればええんやけど……瀧くん鈍いから……」

「なんとかせにゃな……」

「なんとかせんとね……」

ふたりは、大きな溜息をつくのだった。

 

 

その日は気分が優れなかったので、夕食の後直ぐに風呂に入り、10時前にはもう寝床に入っていた。ただ、まだ全然眠くは無かったので、布団の中でずっと彼女の事を考えていた。そう、宮水三葉の事を。

俺はこれまで、女を真剣に好きになった事は無かった。女性に興味が無かった訳でも、女友達が居なかった訳でも無いが、恋愛の対象と思えるような女性には会った事が無かった。

しかし、三葉は違った。

一目で、“彼女しかいない”と思えた。今迄、どんな女性にも感じた事の無い衝撃を、彼女を始めて見た時に感じた。ずっと昔、それこそ前世から知っているような、彼女と一緒になるのは、もう宇宙が創造される前から決まっている法則のようにも感じられた。

でも、やはり俺は嫌われているんだろうか?日に日に、俺に対する対応が悪くなって行くように思える。顔を見ても、直ぐに顔を背けられる。話しかけても、小さな声で片言の返事が返って来るだけだ。極めつけは、今日のあの言葉……

“お願いやから、絶対に見に来んで”

そんなに、俺に見られるのが嫌なのか?俺が嫌いなのか?

せっかく、運命の人とめぐり逢えたと思ったのに……

そんな事を考えながら、俺はいつの間にか眠っていた。

 

 

 

翌朝、目が覚めた俺は自分の目を疑った……

「え?」

何処だ?ここは?俺の部屋……どころか、俺の家じゃねえぞ!

全て、石で敷き詰められた部屋の中に、家具類は殆ど無く、簡素なベットに俺は寝ていた。

しかも、寝間着等は着ていず、かなり使い込んだ赤いボロシャツに、こちらもかなり使い込んだジーンズを履いている。“着の身着のままで寝た”という感じだ。まだ夢でも見ているのかと思ったが、そんな感覚では無い。

起き上がってみると、体にも違和感を感じる。何か、凄く鍛え上げられたような、締まった体だ。筋肉も相当付いている。まるで、自分の体では無いみたいだ。部屋に鏡は無いので、顔は分からない。まさか、鏡を見たらまるっきり別人だった……なんて、そんな事ある訳無いか……

そう思いながら部屋を出て、更に俺は驚愕した。

「な……ど……何処なんだ?ほんとに……」

そこは、まるで古代の神殿の中だった。西洋の、そう、ギリシャの世界遺産のような、巨大な柱で支えられた広い空間だった。

「覚悟!」

呆けていたら突然、神殿の奥から黒い影が急接近して来て、俺に攻撃を仕掛けて来た。

「ぐわっ!」

何発もパンチを受けて、俺は大きく後ろに跳ね飛ばされる。

「はっ、こんな攻撃も避けられないとは、噂に聞くアテナの聖闘士も大した事は無いな?」

俺に攻撃を仕掛けた男が、そう言い放つ。その後ろに更にふたり、相手は3人居る。全身黒づくめで、黒い甲冑のような物を纏っている。

アテナの聖闘士?何だそれは?そもそも、何で俺を狙う?

驚いたのは、それだけでは無い。いきなり攻撃されて跳ね飛ばされはしたが、体にダメージは殆ど無い。何て頑丈な体なんだ?

「どうした?自慢の聖衣は纏わないのか?ペガサスの星矢?」

聖衣?ペガサス?星矢?何だ、それは?

「抵抗する気が無いなら、遠慮なく殺らせて貰うぜ!」

そう叫んで、妖しい男達はまた向かって来る。

何だか訳は分からないが、一方的に殴られる趣味は無い。

俺は、立ち上がって反撃する。

「ぐわっ!」

「ほんげっ!」

「ぶへっ!」

何発かこっちも貰ったが、最終的には3人とも殴り倒した。本当に、この体は強い!とても、俺とは思えない。

「もういい!お前達は下がれっ!」

部屋の奥から、怒号が響き渡る。そして、新たに、ひとりの男がこちらに向かって来る。先程の男達とは違い、赤いサソリに似た甲冑のような鎧を身に纏っている。

「全く……聖衣も纏っていない、コスモも殆ど感じられない相手にこのザマとは……」

喋り方からして、この男達の親玉なのか?確かに、何とも言えない強者のオーラは感じる。何か、やばい雰囲気だ。

「俺は、こんな雑兵達とは違うぞ……聖衣を纏え!ペガサス星矢!」

また、聖衣?……いったい何なんだ?それは?

「俺を舐めているのか?なら、今本気にさせてやる!」

一瞬、何かが光ったように見えた。次の瞬間!

「ぐわああっ!」

凄まじい衝撃が全身に走り、俺は再び跳ね飛ばされる。さっきよりも、強く、遠く。

体にも、大きなダメージを受けた。とても、直ぐには起き上がれそうに無い。それより、俺はいつ攻撃されたんだ?相手の攻撃が、全く見えなかった……

「さあ、早く聖衣を纏え……次は、本気でやるぞ!」

な……あれで、本気じゃ無かったというのか?

や……やばい、本当にやばいぞ!こ……このままじゃ殺される!でも、どうしたらいいんだ?見えない攻撃に、対抗する術なんか無い!相手はやたら“聖衣を纏え”とか言っているが、それが何なのかも分からない……

「ふん……あくまで本気を出さない気か?ならば、死ね!」

また、何かが光った。

駄目だ!殺られる……そう思った次の瞬間、

「ローリングディフェンス!」

突然、鎖が俺を囲んで攻撃を跳ね返す。そして、鎖と共に俺の前に、ピンクの鎧を纏った人物が姿を現す。

「大丈夫?星矢!」

え?……誰?あんた……

 





というわけで、最初から瀧くんが三葉達と一緒に糸守に居ます。
だから、このお話しには瀧くんも出演します。
それで、いきなり瀧くんは星矢と入れ替わってしまいます。目覚めた場所は、ギリシャの聖域……
となると、三葉は誰と入れ替わるのか?
瞬じゃ無いですよ(笑)。当然、あのお方です……

ちなみに、星矢側の時代は映画の“天界編”の後~“Ω”の中間です。聖域にはもう黄金聖闘士はひとりも居なくて、後継者もまだ育っていません。だから、星矢達が“黄金聖闘士代行”として、アテナと聖域を護っています。
但し、一輝だけは聖域には常駐していません。
何故かって?“俺は、群れるのが嫌いだ!”からです。
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