ここはジョウト地方のポケモンリーグ、毎回どのポケモンバトルも観客の熱い歓声の中熱いバトルが繰り広げられる。今は、優勝者をきめる決勝戦が行われていた。
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァ………!!
「リザードン! トドメのブラストバーン!」
『ギャース‼︎』
リザードンが放ったブラストバーンが相手のカメックスに命中し派手な煙を上げながらカメックスがバタッとバトルフィールドに倒れた。
「カメックス!」
ブラストバーンの煙が晴れるとフィールドには目を回したカメックスの姿があった。
「カメックス戦闘不能! リザードンの勝ち!」
審判が威勢の良い大きな声で結果を言った。
「よって、ジョウトリーグ優勝者は高坂穂乃果選手です!」
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
優勝者の声を高らかに叫ぶ審判に会場の観客の興奮のボルテージが一気にスパークした。
「やったぁぁぁ‼︎」
穂乃果と呼ばれた少女は笑顔で右腕を勢いよく上にあげて飛び跳ねていた。まるで勝利の喜びを体全体で表現しているようだ。
相手がカメックスをボールに戻していると穂乃果はバトルの相手のところへ行き、スッと手を差し出した。
「バトルありがとうございました! 貴方とバトルできて本当に楽しかったです!」
穂乃果はバトルの相手に眩しいほどの笑顔を向けた。その笑顔にバトルの相手だけでなく審判や観客、さらにはポケモンまで見惚れてしまっていた。
「あれ? どうかしたんですか?」
固まったまま動かない相手に疑問を感じたのか穂乃果が相手の顔を覗き込んだ。相手は慌てて顔を見られないようにしながら穂乃果の手を握り返した。
それに穂乃果は再び笑顔になり、「また機会があったらバトルしてください!」と言った。
「ああ! もちろんいいよ」
相手も自然と笑顔になった。
その光景に会場が再び熱狂に包まれた。
やがて表彰式になり穂乃果は優勝のトロフィーと優勝賞金を受け取った、表彰式はすぐに終わり、ジョウトリーグは幕を閉じた。
「はあ……」
ジョウトリーグが終わった後、穂乃果は1人、自分の住んでいる地方に帰るための船の便で夜の海をデッキでみながらため息をついた。とてもリーグを優勝したようには見えなかった。
ちなみに今回ジョウトリーグで戦った手持ちのポケモンたちは全員モンスターボールの外に出してある。
『ギャギャ、ドラ』
『メタ! メタグロース』
『ガブ、ガブ、カブリアス!』
『ゲコ、ゲコ、コウガ!』
『レッキ! レッキ!』
『バフ! バウ!』
自分の主人がため息をついているのを見て穂乃果のポケモンたちが穂乃果の元に集まってきた。
「ああ、リザードン、メタグロス、ガブリアス、ゲッコウガ、エレキブル、ルカリオ、今日はありがとうね。」
穂乃果は笑顔でリザードンたちに今日のお礼を言うが穂乃果と長い付き合いの
リザードンたちは穂乃果の笑顔に影がさしていたことに気づいた。
穂乃果も心配そうな顔をしているリザードンたちに気づいたのか優しく言った。
「大丈夫だよ、みんな、私は…」
そう言う穂乃果の顔はすごく悲しそうだった。そんな悲しそうな顔ををリザードンたちは穂乃果にして欲しくなかった。
穂乃果も同じだ。リザードンたちを自分のことで悲しませたくなかった。
穂乃果が自分の今にも泣きそうな顔をリザードンたちに見られないように再び夜の海に顔を向けた。
どこまでも真っ暗で光1つない暗い海はまさに今の自分自身の心のように思えた。
穂乃果がそう考えていたとき…
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「っ‼︎」
突然、船内で悲鳴が聞こえた。穂乃果の周りの乗客たちも「何事か⁉︎」とあたりを見回している。
ダッ!
穂乃果はリザードンたちをモンスターボールに戻し、船内へ一直線に走って行った。
ー船内ー
「お前たち! 動くんじゃねえぞ!!」
「黙って有り金全部よこしたら命までは取らないぜ?」
「痛いめにあいたくないなら従いなよ!」
「そうだな! ギャハハハハハ!!!!」
穂乃果が船内に入ると4人の若い男たちが乗客や乗務員を自分達のポケモンで脅していた。
穂乃果はその光景を見て激しい怒りが湧いた。
男たちはなかなか乗客たちが自分達の言う通りにしないのに痺れを切らしたのかポケモンに指示を出して攻撃をさせた。
「チッ! 言う通りにしないのなら力ずくでさせるまでだ! クロバット、エアスラッシュだ!」
1人の男が自分のクロバットに指示を出した。
クロバットの翼から出た空気の刃が乗客たちに飛んでいく。乗客たちは観念して目を瞑った。
「メタグロス、まもる!」
ドガーン!!
強い衝撃が船内に響いた。
乗客たちは自分たちが攻撃を受けたのだと思ったがどこにも痛みはない。
不思議に思った乗客たちが恐る恐る前を見るとメタグロスが自分たちを
まもる、で守り攻撃を防いでくれたのだ。
「だ、誰だ⁉︎」
男たちはいきなりメタグロスを出したトレーナーを探した。
「ありがとう、戻ってメタグロス」
明るい少女の声が聞こえた。
男たちが声のした方をみるとオレンジ色のサイドテールの髪型に青い瞳をした17歳くらいほどの少女が立っていた。
男たちは少女だと知った瞬間「フン」と鼻で笑った。
「なんだ? 姉ちゃん、お前も俺たちにやられに来たのか?」
クロバットで攻撃した男が聞くと「バカなことを言ってないでさっさと消えなよ。」と穂乃果が返したので男たちは怒った。
「なんだとコラ! 目にもの見せてやるよ! クロバット、あいつにエアスラッシュだ‼︎」
男がクロバットに指示を出した。
「そっちがその気なら… ファイトだよ! リザードン!」
男に対して穂乃果はリザードンを出した。
「リザードン! 火炎放射でエアスラッシュを全て相殺して!」
穂乃果の指示を聞いてリザードンは火炎放射を放った。
「ハハハ! バカだなお前は! 全部のエアスラッシュを相殺できるわけが…」
男が笑っていると、「それはどうかな?」穂乃果が言った。
リザードンの火炎放射はクロバットのエアスラッシュと衝突するといとも簡単にエアスラッシュを消し去り後ろにいたクロバットに火炎放射が命中した。
『クロッ!』
「な、何ぃ⁉︎」
クロバットも全部相殺されるとは思わなかったのだろう、完全に油断していたクロバットに火炎放射があたりクロバットがひるむ。
「リザードン、続けて鋼の翼!」
『ギャフ!』
怯んだクロバットの隙をついてリザードンはクロバット鋼の翼を叩き込んだ。おまけに全ポケモン共通の急所である顎にだ。
『クロッ! クロ…』
クロバットはもうフラフラになっていた。
「おい! 何してんだ⁉︎ クロバットしっかりしろ! ヘドロ爆弾だ!」
クロバットはフラフラしながらリザードンにヘドロ爆弾を放った。
「避けてドラゴンクローでとどめ!」
リザードンはクロバットのヘドロ爆弾を天井ギリギリまで飛んで避けてクロバットにそのまま突っ込んでドラゴンクローを決めた。突っ込んだ勢いもありかなりの威力だ。
煙が晴れると目を回したクロバットが倒れていた。
「チッ‼︎ 戻れ! クロバット!」
男が舌打ちをしながらクロバットをボールに戻すと、男の仲間の2人が男に言った。
「何してんだよ。相手は女の子だぜ?」
「だ、だけど、あいつ凄く強いぞ!」
「バカか? 一対一なんて誰も言ってないだろ? 4人がかりで倒すのさ。」
「そうだな、大人に逆らったら怖いことをあの小娘に教えてやらないとなぁ…」
乗客や乗務員はこれを聞いて「卑怯だぞ!」と怒鳴ったが4人の男たちは無視し、「お前は乗客たちを見張ってろ」と穂乃果に負けた男に3人は言った。
3人の男たちは穂乃果の前に立った。
「お嬢ちゃん、今、ここで俺たちに黙って荷物を差し出すなら何もしないぜ」
「三体一じゃ、勝つのは流石に無理だろう?」
男たちは気持ちの悪い猫なで声で穂乃果に言ったが穂乃果は平然とした顔で言った。
「貴方たちみたいな人に差し出すものなんてなにもないよ」
この言葉に男たちはイラッときた。
「そうか… それならちょっと痛い目にあってもらわなきゃな! いけ! ワルビアル!」
「お前もだ! サマヨール‼︎」
「いけ! ストライク!」
『ワルビッ!』
『ヨルー…』
『ライーク‼︎』
男たちはワルビアルとサマヨールとストライクを繰り出した。
三対一なため、数的にも圧倒的に戦況は穂乃果が不利になってしまい乗客たちは不安そうな顔をする。
「リザードン、いける?」
『ギャフ!』
しかし、穂乃果がリザードンにいけそうか聞くとリザードンは『任せろ!』というように威勢良く頷いた。
「よし… 行くよ! リザードン!」
『ギャーフ‼︎』
穂乃果の掛け声にリザードンは威勢良く鳴いた。
「フン! ワルビアルにリザードンを出すとわな! 瞬殺してやるぜ! ワルビアル、ストーンエッジだ!」
ワルビアルの足元から出た尖った岩がリザードンに迫る。
「避けて!」
「サマヨール、シャドーボール!」
「ストライク! きあいだめから連続斬り!」
穂乃果の指示でリザードンがストーンエッジを避けたのでサマヨールがシャドーボールを飛ばす。
ストライクもきあいだめで攻撃を急所に当てやすくして連続斬りを放ってきた。
「リザードン、ドラゴンクローでシャドーボールを弾き返して! 連続斬りを火炎放射で跳ね返して!」
リザードンのドラゴンクローで弾き返されたシャドーボールをサマヨールは避けきれずに、サマヨールに直撃した。
『ヨルッ!』
ドラゴンクローで勢いよく弾き返されたシャドーボールは自分で放ったとはいえゴーストタイプであるサマヨールは大ダメージを受けた。
ストライクも急所に攻撃を当てようと接近したのが仇となり、リザードンの火炎放射の格好の餌食になり、効果抜群の技を真正面から受けてしまい火炎放射の炎がおさまると目を回して戦闘不能になってしまった。
サマヨールもシャドーボールがドラゴンクローよ勢いもありはじき返されたことにより大ダメージを受けて戦闘不能寸前になっていた。
「ああ! 俺のストライクが! 一撃で…!」
「くっ… しっかりしろ! サマヨール!」
「お前たち何やってんだ! ワルビアル、あのリザードンに破壊光線だ!」
『ビアール!』
ワルビアルの口から黒い強大な光線がリザードンに向けて勢いよく発射された。
「リザードン! 避けて、火炎放射!」
ワルビアルの破壊光線をするりと避けてリザードンはワルビアルに火炎放射をはなつ。
しかし、炎タイプの攻撃は地面タイプのタイプを持っているワルビアルに効果はいまひとつだ、
「ハッハッハ! ワルビアルに炎タイプの攻撃をするとはな! そんなの効かねーよ‼︎」
男が笑っていると穂乃果はふっと軽く笑った。
「そんなの百も承知だよ」
「何ぃ…?」
火炎放射の煙が晴れるとワルビアルの目の前にリザードンがいた。
「今だ! リザードン、 ワルビアルにドラゴンクロー!」
リザードンが至近距離でワルビアルにドラゴンクローをくらわせた。
『ビアール‼︎』
至近距離で防御もなしにドラゴンクローを受けたワルビアルは苦痛に顔を歪めて怯む。
「リザードン、続けてドラゴンクロー!」
ワルビアルが至近距離での技を受けて怯んだ隙を見逃さずリザードンはドラゴンクローを叩き込みワルビアルは怯んだこともあり吹っ飛ばされた。
『ビアール!」
さらに、ワルビアルが吹っ飛ばされた先には大ダメージを受けてヨロヨロしているサマヨールがいた。
『ビア!』
『ヨル〜!』
二体は思い切り強く衝突してバランスを崩し倒れた。
「今だ! リザードン、ブラストバーンでとどめ!」
『ギャーフ!!』
ここぞとばかりに、リザードンが出した凄まじい威力の炎がワルビアルとサマヨールを取り囲んだ。眩しい炎の光があたりを包みこみ煙が巻き上がる。
煙が晴れると、そこにはストライク同様、目を回したワルビアルとサマヨールがいた。
「ワルビアル!」
「サマヨール!」
男たちがいくら呼びかけてもワルビアルとサマヨールが動くことはなかった。
4人の男たちの全てのポケモンが戦闘不能になり男たちは闘うポケモンはもういない。
「くっ、戻れ!」
「サマヨール戻れ!」
「クソッ! ストライク戻れ!」
男たちが舌打ちをしながらワルビアルとサマヨールとストライクの3体をボールに戻すと穂乃果は静かに男たちに言った。
「さあ、もう観念しなよ、 その様子からあなた達にはもうポケモンはいないみたいだしね…」
穂乃果が言うと男たちは怒りの目で穂乃果を見て動けない乗客たちと乗務員たちの方を見た。
「誰が観念するか‼︎ こうなったらこうだ‼︎」
4人の男たちは船内にあったナイフや椅子を持ち近くの乗客の中にいた小さな女の子に襲いかかろうとした。女の子はショックで動けない! ナイフを持った男が女の子を人質にとろうとしたその時!
「メタグロス、サイコキネシス」
『メター!」
「「「「うわぁっ‼︎」」」」
穂乃果がメタグロスをボールからだし、男たちがメタグロスのサイコキネシスで浮かび上がらされる。
それに男たちだけでなく、乗客たちと乗務員までもが驚いていた。
男たちと乗客たちが穂乃果の方を見ると肩を震わせて俯いている穂乃果の姿があった。
「酷い…… すごく酷い… こんなことをするあなた達には同情の余地なんてものは必要ないよね……!」
俯いたままの穂乃果がすごく低い声で男たちに言った。
「そんな酷い人間にはもう容赦しない!」
穂乃果は鋭い声で男たちに言い放つとゲッコウガをボールからだしリザードンとゲッコウガを見た。
「リザードン! 火炎放射! ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」
穂乃果の指示を受け2体がそれぞれ男たちに技を出した。男たちにリザードンたちの出した技が迫る。
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」
ブハァーーーーン!!!!!!!!
ゲッコウガのハイドロポンプとリザードンの火炎放射が4人の男たちの目の前であたり蒸発した。
男たちはあまりの衝撃に気を失った。
「ありがとう、リザードン、ゲッコウガ、メタグロス」
穂乃果はリザードンたちに労いの言葉をかけボールに戻すと乗務員に言った。
「今です。この4人をロープか何かで縛り上げて下さい。船が船着き場に着いたら4人をジュンサーさんに引き渡してください」
乗務員は穂乃果の言葉を聞いて我に返りロープで気絶している3人の男たちを縛りあげた。
穂乃果はそれを見た後、男たちに襲われた女の子の元に行った。
「大丈夫だった? もう安心だよ。 さあ、お母さんのところへお帰り」
優しい笑顔で女の子の頭を撫でながら言うと、女の子は安心したらしく「うん!」と笑顔で頷き母親のところへ走って行った。
母親は戻ってきた女の子を強く抱きしめた。
そして、恩人である穂乃果を見て、
「あの、娘を助けていただき本当にありがとうございました!」
娘を助けてもらった母親が穂乃果に頭を下げてお礼を言った。
「いえいえ、私はお礼を言われることは……」
穂乃果が照れ臭そうに言うと、
「いえ! 私たちを助けていただきありがとうございました!」
乗客と乗務員が口々に穂乃果に感謝の言葉を贈る。
穂乃果は嬉しくて照れ笑いをしたが心の底では笑顔にはなれなかった。
(私は褒められる人間なんかじゃない、私は感謝される資格のある人間なんかじゃない。私は幸せになっちゃいけない人間なんだ……)
しかし、そんな穂乃果の気持ちに気づいた人間はこの場には誰もいなかった。
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