ポケットモンスターミューズ   作:sunlight

25 / 26
続きです。
長らくお待たせして申し訳ありません。


音ノ木坂の双璧と呼ばれた2人

一方こちらは空き地。

 

小宮が彼のポケモンたちによって吹っ飛ばされた後の空き地に新たに響き渡る2つの声。

海未たちが怪我をした穂乃果の手当をしようとするとき空き地の入り口から聞こえたのだ。

そして、1人の青年が公安委員会の他のメンバーたちに怒鳴ると蜘蛛の巣を散らしたかのように空き地から逃げ出していった。

 

2人の青年は公安委員会の近衛たちを追い払うと穂乃果たちの元へ歩いてきた。

公安委員会のことを知っていたということは彼らと関係があるかもしれないと思い穂乃果たちが緊張の眼差しで2人を見た。

 

すると、茶髪の優しそうな青年が微笑みながら穂乃果たちに話しかけた。

 

「怖がらなくて大丈夫だよ、俺たちは君たちに危害を加えたりはしないからね、ただ、さっき殴られていた君の怪我の手当てをしたいだけだよ」

 

茶髪の青年がイケメンに似合うようなスマイルで穂乃果たちに話しかけるが、公安委員会と何か関係があるかもしれないという不信感が残り、警戒心は解くことができなかった。

 

「自己紹介が遅れたね、僕は天城飛彩、君たちの学校の卒業生で今はポケモンドクターを目指している学生だよ」

 

天城飛彩は自分の自己紹介が終わると、今度は自分の後ろにいる目つきの悪い男性を紹介する。

 

「こっちは花谷大我、僕の同級生で見た目は目つきが悪くて怖そうだけど、とてもいい奴だよ」

 

飛彩に自己紹介されると花谷大我も「よろしくな…」とだけ言った。

 

「大丈夫や、みんな! この人たちはさっきの公安委員会の奴らと違って良い人たちや! それにこの2人は凄くバトルが強くて在学中は【音ノ木坂の双璧】とも呼ばれてたんやで!」

 

自己紹介されても警戒心を解こうとしない穂乃果たちに2人が困っていると希が助け舟をだした。

口ぶりからどうやら2人と面識があるらしい。

 

「希先輩、この人たちと知り合いなんですか…?」

 

穂乃果が希に聞くと希が2人を改めて紹介する。

 

「そうや、改めて紹介するで茶髪の人が天城飛彩さん、音ノ木坂の卒業生でウチと同じ生徒会のメンバーであり元生徒会長やったんや、バトルもものすごく強いんやで! ちなみに、ウチはその時は庶務やった。 もう1人は花谷大我さん、この人は飛彩さんのライバル的存在で言わずもがなバトルはとても強い、そして、元公安委員会のメンバーやったんやけど…」

 

「っ!」

 

 

そこまで希の説明を聞いて『公安委員会のメンバーだった』という単語に穂乃果たちは敏感に反応し大我に対して身構えた。

それを見て慌てて希が顔の前でブンブン手を横に振り穂乃果たちに違うと言う。

 

 

「ち、違うで! 大我さんはさっきの奴らとは違う! 大我さんは公安委員会と言っても穏健派の方や!」

 

希の言葉に「穏健派?」と海未が聞き返す。

落ち着きを取り戻した海未を見て安心したのか希が説明を続ける。

 

「そうや、公安委員会と言っても今は分からんけど、当時は穏健派と過激派の2つに別れてたんや」

 

「どういうことですか?」

 

まだよく理解をしていないのか穂乃果がさらに説明を求めた。

希が説明を続ける。

 

「当時の公安委員会… 大我さんたち穏健派は公安委員会と言っても学園警察という名の名目をキチンと遵守して規則を破って抵抗する者にだけ最低限の制裁を加え処分を学園に促すという至って普通の学園警察としての組織、逆に過激派はさっきの小宮とかいう奴のような公安委員会という名を語り前にウチが説明した通り暴力に物を言わせて弱い人間から金品やポケモンをせびり取るヤクザこような組織、この2つに別れてたんや」

 

希はそこで言葉を区切り大我の方に目を向けた。

大我は「続けろ…」と希に静かに言った。

 

「その中で大我さんは穏健派のリーダーやったんや、まあ、過激派と穏健派は言わずもがな対立していて、過激派はことある事に穏健派に嫌がらせや暴力を振るっていたんや。 そして穏健派の人たちも過激派の暴力に屈して過激派に寝返る人も少なくなかったそうや… とは言っても、過激派は脅しの材料になるポケモンバトルの強い人だけを穏健派や一般生徒から過激派に入れ込んで、そうでもない人はポケモンや金だけを奪って男女問わず動けなくなるまで暴力を振るい、公安委員会から追い出すということをしていたんや… 酷い話やな… でも、大我さんはそんな過激派を壊滅させようと尽力してたんや…」

 

希はそこまで説明すると目を伏せた。

 

「でも、分かる通り過激派の方が圧倒的多数で多勢に無勢の状態で大我さんたち穏健派は壊滅、過激派は当時の公安委員会のメンバーで一番バトルの強い大我さんを公安委員会の過激派に引き入れようとしたんやが大我さんは穏健派の解散と同時に当時の穏健派のメンバーを引き連れて公安委員会を辞任したんや…」

 

「えっ…!」

 

その言葉に穂乃果たちは言葉が出なかった。

希も悔しそうに続ける。

 

「穏健派が壊滅し、大我さんたちが辞めた後は公安委員会の過激派はさらに横暴になったんや、過激派が大我さんたち穏健派を壊滅させたことや大我さんのバトルの強さを逆手に取られて『自分たちは無敵だ! 学園警察に逆らったら痛いめを見るぞ!』と言うスローガンを掲げ始めた。 こうなったら独裁者と一緒や… そこから学園生徒のみならず中学生や他の学校の生徒、一般人からポケモンを奪うというのが始まったんや… ウチら生徒会がいくら動いても無駄やった… 飛彩さんは公安委員会の過激派にバトルを申し込み壊滅を目論んだけど数で押し切られ敗北し、さらに『学園警察に逆らった!』と公安委員会が騒ぎ立て、教師陣に飛彩さんの有りもしない噂を誑し込み挙げ句の果てに生徒会から飛彩さんを追い出したんや!」

 

「「「「⁉︎」」」」

 

聞いていた穂乃果、海未、ことり、真姫は余りの公安委員会の過激派の酷い仕打ちに言葉が出なかった。

飛彩たちの方を穂乃果がちらりと見ると当時のことを思い出したのだろう悔しそうに唇を噛みしめていた。

 

「で、でも、それならどうしてさっきの人たちは逃げ出したんですか?」

 

ことりがさっき大我の声に尻尾巻いて逃げ出した公安委員会のメンバーの近衛たちのことを聞いた。

確かにこれなら近衛たちは穂乃果や自分たちにしたように大我たちにも強気に出るはずだ、なぜ怯えたように逃げ出したのか、ことりだけでなく穂乃果たちも分からなかったようだ。

 

希が説明を続ける。

 

「多分今の公安委員会にも穏健派のことが伝わってるからやろ…… 最後まで残った穏健派の人たちはみんなバトルが強い人やったらしいからな…… 過激派が総動員で穏健派を壊滅させたらしいし… せやから1vs1でバトルだと勝てる訳ないからと理解しているからやろう…」

 

 

希の説明を聞いて穂乃果は納得できた。

 

あの時、近衛たちは4人しかいなかったので大我たちにバトルでは勝てないと思い逃げ出したのだ。

 

恐らく大多数でいれば大我たちのみならず穂乃果とのバトルに小宮が負けても大我たちを壊滅させた時のように大多数で多勢に無勢状態にして穂乃果の仲間の海未たちもろとも強引に暴力を振るい、勝利を収めるつもりだったのだろう、なんとも卑怯な手だ。

 

公安委員会の卑劣さは再確認したが大我たちに対する警戒心は無くなったため穂乃果は大我たちに自己紹介をした。

 

それに続いて海未たちも2人に軽く自己紹介をした。

 

穂乃果の怪我の手当ては医者志望の飛彩が受け持ち、的確な処置のおかげで傷は早めに手当てが完了した。

 

 

 

 

その後は大我たちも交えて少し談笑をした。

 

大我と飛彩は今は大学生で飛彩はポケモンドクター、大我はブリーダーを目指しているのだそうだ。

 

穂乃果たちも廃校阻止のためポケモンリーグの出場を目指しているのだと明かした。

 

しかし、現在の生徒会長の絢瀬絵里がなかなかそれを認めなくて困っているとも話した。

 

海未やことり、真姫はバトルに勝っても認めようとしなかったなどと不満を明らかにしていた。

 

大我は「大変なんだな…」と言っただけだったが飛彩は態度が違ったことに穂乃果が気づいた。

 

飛彩は下を向き「未だに彼女はそうなのか…」と悲しげに呟いた。

希も「はい…」と消え入りそうな声で呟いた。

 

「………」

 

そんな2人に気づいたのは穂乃果だけだった。

 

 

 

 

(もしかして、生徒会長がやたらとポケモンリーグへの出場を認めないのは飛彩さんたちの事件が関係しているのかな…?)

 

 

希と飛彩のため息を吐く仕草を見て穂乃果は心中で呟いた。

 

 

 

そして、この穂乃果の読みが当たっていたことを穂乃果たちが知るのはもう少し先のことだった。

 

 

 

 

 

 

そして、自分たちとは違い別の人間が公安委員会の壊滅を目論んでいたことを知るのももう少し先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー別 sideー

 

ここは、音ノ木坂学園の生徒会室。

ここに公安委員会を今度こそ壊滅させようと動いている人がいた。

 

「メンバー編成はこれで良いわね… さてと… 週末を利用して里帰りしてお祖母様の所から取ってきた私の最終兵器もあることだし… 今度こそ、私は誰にも負けないわ!」

 

その人物は金色の綺麗な髪を靡かせてそう呟いた。

そう、学園の現在の生徒会長であり学園最強の称号を持つ絢瀬絵里だ。

 

穂乃果とのバトルに負けた後、彼女は自分の生まれ育った故郷であり祖母がいるオトノキ地方からはるか離れた年中気温は氷点下であるとても寒い地方、ロォーシーアーン地方に里帰りしていたのだ。

 

彼女はそこから最終兵器というものを持ってきたらしい。

 

彼女はその最終兵器を使いかつて飛彩たちでも壊滅させられなかった公安委員会の壊滅を目論んでいるのだ。

 

絵里がそう独り言を言って息巻いていると。

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

その時、無遠慮に生徒会室の扉が開いた。

その人物はドサッとカバンを乱暴に生徒会室の机に置いた。

自分の世界に入り込んでいた絵里もいきなりの乱入者に驚いたらしく生徒会室に入ってきた人物を驚いた目で見た。

 

入ってきた人物はこんな容姿をしていた。

 

黒いツインテールの髪型で背が低くて紅い瞳、形の整った鼻と唇に少しつりがちの大きな目が勝気な印象を与える少女だ。

 

少女はそんな絵里をジト目で見た後、刺々しい口調で話しかけた。

 

「息巻いてるところ悪いけど、あたしたち以外でも公安委員会とバトルしてる奴がいるみたいよ、そして勝利して公安委員会による強奪を未然に防いだらしいし…」

 

「え⁉︎」

 

ツインテールの少女の言葉に絵里は驚いた。

すぐに「その人は誰⁉︎ 」と聞いた。

 

 

ツインテールの少女は絵里に特徴を伝える。

 

「…え? ええと…? 1年生の子が言ってたんだけどオレンジ色のサイドテールの髪型にアンタと同じ蒼い色の目をした2年生の子だったって… にしてもそんなバトルが強い生徒がいるなんて… ん? アンタ、どうしたのよ…?」

 

 

 

ツインテールの少女の説明を聞くたびに絵里は顔が怒りの表情な染まっていった。

ツインテールの少女もそれを見てギョッとした。

その子と絵里は面識がないとばかりに思っていたからだろう。

絵里はツインテールの少女の両肩をガシッと掴み顔を近づけて言った。

 

 

「何としてでも先に公安委員会を壊滅させるわよ!」

 

それにツインテールの少女が言い返した。

 

 

「な、ならその子に手伝ってもらえば…「ダメよ!」…ええっ⁉︎」

 

 

ツインテールの少女がそのサイドテールの2年生の生徒に自分たちといっしょに公安委員会の壊滅をしてもらおうと持ちかけるが絵里はそれを聞くなりその考えを否定した。

 

絵里は特徴を聞いて公安委員会の暴動を未然に防いだ生徒が誰なのか気づいた。

 

廃校阻止のためにポケモンリーグ出場を目指していると巫山戯たことを自分に言って自分を打ち負かした女子生徒だ。

そしてさらにクラス最強にも勝ち、そのクラス最強の暴動も収め、副生徒会長を救ったことで彼女に注目が集まっていたから自分もよく知っている。

 

絵里は穂乃果のことが異様に気に食わなかった。

そんな相手の手を借りるだなんて冗談じゃない。

絵里はツインテールの少女を鋭い目で睨みつけてまるで命令するかのように言った。

 

「私とあなたで公安委員会を壊滅させるわよ! 最初からそう言う手筈だったでしょう? あなただって公安委員会が憎いはずよ! あなたの居場所を奪ってあなたの1番のパートナーを奪ったんだから!」

 

「ぐっ‼︎」

 

絵里の言葉にツインテールの少女は顔を歪めた。

さして、ゆっくりと頷いた。

 

 

「そう、それで良いのよ、この計画に加担して公安委員会を壊滅させるのは私たち… そうよね、“矢澤にこさん”」

 

 

絵里にそう言われて矢澤にこは再び小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー? sideー

 

そして、こちらは別side、フードを深く被った人物が空き地の隣の廃ビルの3Fから空き地の様子を見ていた。

最初から一連の様子を見ていたため勝敗も知っている。

 

そして、その後、上から男子生徒の悲痛な泣き叫び声も聞こえた…

 

その人物はその泣き叫び声を聞いて小さく呟いた。

 

『ヤハリ小宮ハ切リ捨テテ正解ダッタナ… 宮下二根回シシタ甲斐ガアッタ… 彼ハ暴力バカリノ使エナイ奴ダッタカラナ… ソレニ引キ換エ…』

 

どうやらボイスチェンジャーを服に装着しているらしく声は機械からの穴埋めような声だった。

フードを被った人物は今度は小宮のバトル相手だった穂乃果に目をつけた。

 

 

『アンナ逸材ガイタトハナ、バトルノ腕モ確カナモノダッタシ、最後ノ救イ方モ気ニ入ッタンダナ』

 

 

 

 

どうやらその人物は穂乃果の強さに目をつけたようだ。

フードの人物は機械のアナウンスのようにそう呟くと『明日カラ調ベテミルカラ…」

とニヤリと笑って呟いた。

 

 

 

 




ご指摘、感想を良かったらお願いします。

受験生になるので執筆が遅くなります。
本当に申し訳ありません…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。