拙い文章ですがよろしくお願いします。
命を賭けて挑戦する者に試練を与え、攻略者に不思議な力をもたらすと言われている迷宮。しかし風の噂によると不思議な力をもたらされるのは一部の特別な人間のみと言われている。
そして今宵、その迷宮に挑み、攻略した少女もまた特別な存在なのだろう。黒髪にして黒眼であり、顔はまだ幼さが残っているが綺麗に整っている。まさに美少女、その顔立ちを見ると誰もがふり返るであろう。
「はぁ…なんでこんな事に……」
少女はため息を吐く。無理もない、まだ幼さが抜けない少女が命を賭ける場所にいるのだから、パニック状態になっていても仕方ないだろう。
しかし…少女の言い方はまるで何かをめんどくさがっているように聞き取れる。果たして迷宮内でそんな事を言えるのだろうか?
「まぁまぁ、そんなに邪険にしないで!ほらっせっかく大サービスで直通で宝物庫まで連れてきたんだしさ〜」
少女に馴れ馴れしく話しかける青色のチャラ男。名はアザゼル、生命と怠惰のジンである。ジンというのは迷宮の主であり不思議な恩恵を与えてくれる存在なのである。しかし分かっているのはそれぐらいであり、ジンについて詳しい事はわからない。ちなみに彼が少女をいきなり自分の所…つまり宝物庫まで連れてきたのはその少女が彼の好みの娘だったのだからであろう。
アザゼルがさりげなく腕を少女の肩に回そうとする。
しかし少女はその手を振り払い、アザゼルの頭を叩いた。
「馬鹿かっ!お前今の俺に手を出すって事は犯罪だぞ!犯罪なんだぞ!」
「痛っ。もー、ガード固いなぁ…仕方ない、じゃあ君には二つの選択肢をあげよう。僕の物になるか死ーーー」
「じゃあお前が、俺の持ってるこのダガーに入って金属器になる選択で」
「ちょっ即答!?酷くない!?」
「うるせぇよこのロリコンが!」
「だーかーらーロリコンじゃないんだって!!僕は君が好みなだけなんだって!」
「それを世間一般ではロリコンって言うんだよ!分かったかエロとアホのジン!」
「僕は怠惰と生命のジン!何度言えば分かるの!?」
「お前が俺に好意を寄せるのを止めるまでだよ!」
「それ実質永遠だよね!?」
少女の嫌悪を受けたアザゼルはシクシクと泣き始め少女に背を向け三角座りをしていじける。
そしてその状態が暫く続いた後、アザゼルはいじけるのを止めて立ち上がる。
「分かったよ…一応君は王の器みたいだし今のところは金属器で我慢してあげるよ」
「そうか、ならさっさと入れ。そんでもって塔の外に帰せ」
「見てろよ…いつか君にあんな事やこんな事、果ては○○○な事もしてやるぞ…!!!」
「せいぜい頑張ることだな」
まぁその気はないけどとアザゼルに告げる少女。実際、少女は男に興味など無い。むしろ彼女は女の方に興味があると断言できるだろう。果たしてアザゼルのアピールは届くのだろうか。いやそれ以前にジンが人間に恋をして結ばれるのだろうか。
「じゃあ取りあえず帰り道は出しておくよ」
ちんたらほいっとアザゼルがまぬけそうな呪文を唱えると少女の目の前に円形の青いガラス盤みたいな物が出現する。迷宮の主であるジンは帰り道を作る事が出来るので恐らくこれは迷宮の外にでるための物だろう。
少女はそれにひょいと飛び乗り、アザゼルに早く帰すように促す。
その態度にアザゼルは驚いて少女に尋ねる。
「え、いいの?ここにある財宝を持って帰らなくて?」
迷宮をクリアした者には不思議な力が与えられると共に宝物庫に眠っている財宝を持って帰る事ができる。
なので大きな国家などでは財宝を求めて挑む事がある。しかし少女は財宝に目もくれずに帰ろうとしている、それがアザゼルにとっては不思議でたまらなかったのだ。
「…あぁ、そうだったな。じゃあ適当に集めてくれよ」
「やっぱり僕の扱い酷くない!?」
「出来ないのか?」
「いやできるけどもさ…」
アザゼルが拍手を打つ。すると少女の横に袋に詰められた財宝の山が3つほど現れた。一つの袋でも10年は遊んで暮らせると言っても過言ではないという程の黄金を少女は大した物ではなさそうに見つめている。その考えがアザゼルには理解できなかったが口には出さない。
「これくらいでいい?」
「十分だ。さっさと帰してくれ」
「OK、じゃあいくよ!ついでに僕もダガーに入っとくよ!」
アザゼルが拍手を鳴らすと、少女の乗っているガラス盤がゆっくりと浮き上がる。徐々に宝物庫が遠くなっていくのを眺めながら、少女は眠そうに欠伸をして腕を組んで考え始める。
(本当に〝マギ〟の世界に来ちゃったな……。特典の金属器がこんな形で貰えたのは少し驚いたけど…。さて、これ使ってどの辺りに行こうかな)
少女が考えている事は恐らく誰も分からないだろう。何故なら彼女は元々この世界の住人ではないのだから。
(取りあえず外に出たらアリババに会ってみようかな。金属器集めは…後でもいいか)
少女が会いたいと思うアリババという人物が誰なのか、また何故金属器を集めるのか。
答えは単純かつシンプルである。
(それにしても…本当これだけは勘弁して欲しかったな…。見た目は女中身は男とか誰得なんだよ?)
そう彼女は―――――彼は、この世界に存在しないはずの存在。
つまり…彼は異界より転生した転生者なのだ。
□■□■
七月中旬のある日の夜中。
スーツを着た彼は額に汗をかきながら人気の無い歩道を歩いていた。
「今日は珍しく日が変わる前に帰れそうだな!」
彼は中小企業の社員であり、今日は日付を越える前に残業を切り上げる事が出来たので疲れながらも喜んでいる。
その喜び故か、右手には少し高めのビールとつまみとコンビ二弁当が入った袋が揺れている。
「それにしても暑い…。もう異常気象だろ」
彼は額の汗を拭いながら家へ帰る。
そんな彼の少し後ろに何かを握りしめブツブツと何かを呟いている太っている男が立っていた。
「俺だって…俺だって、やるときはやるんだ……」
彼は背後にいる男に気づいていない。
男はジリジリと確実に一歩ずつ近づいて行く。
やがて男が街灯の光に照らされると男の持っている物が見える。
男が持っている物それは…スタンガンと果物ナイフ。どちらもホームセンターで売られているような代物である。
「そろそろ彼女作らないとなぁ…。悠の事引きずってるって言われてるし」
「!!!?」
彼の独り言から、彼が彼女がいた事があるのを知った男はジリジリと動くのをやめ全力疾走する。彼の右手にはスタンガンが握られている。
「う……うわぁぁぁぁこのリア充があああぁあ!!」
「え?」
彼が発する事ができた声はそれだけ。その後は男が持っているスタンガンで気絶させられた。そしてその場に彼は倒れこむ。
「はぁっ!はぁ!…やったぞ!僕は!僕はリア充を殺せるんだああぁぁあ!!」
気絶した彼を見て男は叫ぶ。
しかし男はすぐに我に帰り、彼の体を持ってすぐに退散する。
その後彼が何をされたかは男が持っている果物ナイフを見ると殆ど分かるだろう。男は果物ナイフで彼を何度も刺し、殺したのだ。
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「はっ!俺は一体…?って、ビールがねぇぇぇ!!!」
持っていた袋がないことに彼は驚く。そしてその直後、自分が見慣れない場所にいることに気づいた。
「ここは…?」
≪生と死の狭間、それがこの空間の名称です≫
彼の頭に突如響く高い声。
彼は周りを見渡すが、周りには誰もいない。
なら一体、誰が自分に語りかけているのだろうか?そう思った彼は一人しかいない空間で問いかけた。
「あんたは誰なんだ?」
≪私は生と死を分かつ者、人は私を死神という呼称でもまたあるいは神様という呼称などでも呼びます≫
「…どうやら、話はできるみたいだな」
≪はい、会話自体は可能です。しかしながら私の姿をお見せすることはできません≫
「そうか、なら一つ聞きたいんだけど。何で俺がこんなところにいるんだ?」
彼がそう問いかけると、謎の声はしばらく無言になりやがて意を決したように答えを返す。
≪それは貴方様が私の予定していた時期より非常に早く死亡したからです≫
「……そうか」
≪何故…驚かないのですか?≫
「夜道を歩いていたのに持ち物は消えてこんな殺風景な空間に連れてこられたらそれぐらいは考えるだろ」
≪随分と冷静なのですね≫
「まぁ特に未練みたいな物はないしな」
彼は生まれた時から両親がいなかった。つまり捨て子である。
しかも彼には彼女がいなかったため、強いていうなら仕事が心配くらいの気持ちしか無かったのだ。
だから彼は貴方は死にましたという宣告に至って冷静になれるのだ。
「で?この後俺はどうなるんだ?」
≪貴方様には二つの選択肢がございます。一つは輪廻の輪に帰り、記憶失くして新しい生を得るか。もう一つは記憶を保持したまま私の指定した世界に転生するか。この二つのうちのどれかを≫
「じゃあ二つ目の方で」
≪よろしいのですか?≫
「あぁ、大丈夫だ。じゃああんたが指定する世界を選んでくれ」
≪承りました。では貴方様の転生先は"マギ"の世界です≫
「マギの世界っていうと…確か金属器とか魔法を使える世界だったよな?いやいやそれより、漫画の世界にいけるもんなのか?」
≪はい、大丈夫です。何せパラレルワールドという物は無限の可能性を秘めているのですから≫
「そうか…なら頼む」
≪何か特殊な能力などはが必要ですか?≫
「じゃあ金属器一つと適度な金、あと魔法を使えるようにしてくれ」
≪承りました。それでは段々と眠くなっていきますので、目覚めたら転生完了です≫
「分かった」
しばらくすると彼は強烈な睡魔に襲われる。
しかしそのまま眠りに落ちる前に彼は謎の声に再度問いかけた。
「なんであんたは…ここまでしてくれるんだ…?」
彼は強烈な睡魔に耐えられなくなって倒れる。
そして彼が眠りに落ちる直前、謎の声は返事をした。
≪貴方様の死に方があまりに理不尽だったので同情してここまでしました≫
「そう…なの…か……」
とうとう彼は眠りにつく。すると彼は生と死の狭間から瞬時にして消え去ったのだった。
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そして時は現在に戻り、彼は彼女となり新たな生をうけたわけである。
「ねぇ」
「なんだ?というかまだ喋れたのか」
「まぁね、まだ外に出てないし」
「そうなのか、早いとこ出してくれよ」
「もうじき出るよ。その前に一つ聞いていいかな?」
「何だ?」
「君の名前は何?」
「俺か?俺はな…えーっと……レイリスだな」
「長いからレイちゃんでいいや。よろしくねっ我が主レイちゃん♪」
「あぁ、よろしくなエロとアホのアザゼル」
「だーかーらー!!怠惰と生命のジンって言ってるでしょ!?」
「気が向いたらそう呼ぶよ」
彼女…レイは上を向く。
彼女の頭上には見渡す限りの星々がキラキラと光っている。
(取り敢えず全身魔装目指しながらアリババのいる町にでも行くか)
レイは自分の金属器である小ぶりのダガーを握りしめて小さく呟いた。
「第二の人生?上等だよ」