東風谷早苗(1)
◆
光の雨に包まれ落下していく少女。その少女の名前は――
◆
もう残っているのは、私達二人だけ――
◆
東風谷早苗(1)
周囲は緑で一杯だった。外の世界のような人工物は、ここから見る限りは見当たらない。その景色に東風谷早苗は心地よさを感じる。それに
緑色の長髪。その髪には蛙と白蛇をあしらった髪飾り。アクセントに青色を入れた白い巫女服を着ている。
「早苗」
後ろから早苗を呼ぶ声が聞こえる。早苗は振り返り声の主の元へ向かう。
声の主――八坂神奈子は守矢神社の前に立っていた。青い髪。白の長袖の服の上に半袖の赤い上着。黒いロングスカートを履いている。
守矢神社は先ほど外の世界から、東風谷早苗と二柱の神とともに引っ越しをしてきた。
「早苗、着いてそうそう悪いけど、使いを頼めるか?」
二柱の神の一人、八坂神奈子は早苗に一つの頼み事をした。
聞けば、この幻想郷へ下見で赴いた際、出会ったカッパに頼まれたのだそうだ。神奈子はまずはカッパからの信仰得るため、これを了承した。
信仰。二柱の神は多くの信仰を得たいため、この幻想郷に引っ越しをした。外の世界は技術の進歩により、神への信仰が減ってきたのだ。
信仰は神にとって、力。外の世界での信仰の衰退は止まらないと考え、彼らと早苗はこの地に移動した。
神奈子曰く南下した先の川にいる河城にとりを訪ねれば良いそうだ。
早苗はかご一杯のキュウリを――霊力で重さを減じ――、目的の場所に赴いた。
人里は早苗が思っていた以上に田舎――建物が一世代程古く――で、しかし人が多く活気があった。
ここに来たのは河城にとりから、キュウリのお礼として手書きの地図を受け取ったからだ。二柱の神とは違い、早苗は幻想郷に来たのは初めてで、地理を頭に入れておきたったからだ。
あと食料も。今は買い置きのものがあるが、ここで暮らしていく以上は知っておかなければいけない。
地図を見ると、幻想郷は中央に魔法の森が広がっており、この人里はその東のほうに存在する。
森の北側には霧の湖――上から見た限り、霧が立ちこめ湖は確認できない――があり、その中州に紅魔館という紅い建物が建っているそうだ。霧から北に向かって伸びる川がにとりと出会った川で守矢神社の近くまで繋がっている。
地図には書かれてはいないが、守矢神社は北にある妖怪の山の中腹にある。山は険しく、頂上は雲で隠れて見えない。
早苗にはよくわからなかったが、西のほうには無縁塚、南のほうには太陽の畑、無名の丘というのがあるそうだ。あと南東のほうには竹林が広がっていた。
人里からさらに東には神社があるようだ。なぜ、人里からこんなにも離れているのか早苗は疑問に思ったが、思えば守矢神社はこの神社よりも遠い。
そんな事(あと地図を見たり)を考えながら歩いていたせいで、前から歩いてきていた二人組みの少女の一人とぶつかった。早苗は転けることはなかったが、相手は早苗より小さく小柄なせいか尻餅をついてしまっていた。鈴の音が鳴る。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
早苗は謝りながら手を差し出す。その手を握り少女は立ち上がった。
明るい茶色の髪。その髪には鈴のついた髪留め。紅色と薄紅色の市松模様の着物を着ている。
もう一人の少女――稗田阿求と言うそうだ――が、早苗に「見かけない顔ですね」と声をかけた。
紫色の髪でおかっぱ頭に鮮やかな色の着物。
早苗は最近ここに来たのだと伝える。すると先程の少女が一つの通りを指差し、「鈴奈庵という貸本屋を営んでおります、本居小鈴と言います。お暇があればどうぞ遊びに来てください」と営業スマイルで宣伝した。
早苗は二人の少女から先の神社についての情報を聞き、少し食料を買い、その日は岐路に着いた。
東風谷早苗――奇跡を起こす能力
???
本居小鈴――あらゆる文字を読める能力
???
稗田阿求――一度見た物を忘れない能力
???
NEXT EPISODE 博麗霊夢(1)
それとなく、霊夢は札を手で隠した。