【Unnecessary Fragment】
夏休みはもうすぐ終わる。
マリーと蓮子は久々に二人揃って、カフェに足を運んだ。そのカフェは今日が初めてで、マリーはアイスコーヒーとビターチョコレートアイスを、蓮子はオレンジジュースとイチゴパフェとパンケーキのベリーソースを注文した。
「それでね――」と、蓮子は一口サイズに切ったパンケーキを口に運ぶ。
マリーと十日ぶりにあった蓮子は色々と調べ物をしていた。
病院での軌跡は病院の外にまで広がった。何せ身を焼かれた機械により死亡判定がなされた少女が無傷の状態になったのだ。
患者監視カメラから、霊夢の姿と声がはっきりと残り、さらに毛髪が発見される。
情報の流出から、蓮子の名と霊夢の名が知れ渡る。その為、蓮子は一時的に外出を控えた。病院での軌跡と霊夢の古風な見た目ということがあって、かなりの話題となったが、それも一週間も経てば別の話題で次第に消えていった。
病院が霊夢について調べた結果、彼女は蓮子の血筋と関係があると思われた。そこから蓮子の縁者の追跡が行われ、顔の相似率が高い女性が発見される。
その人物はマリーと面識があった。凡そ千年前に存在した人物。彼女は冴月麟という名前だった。
彼女がこちらの世界に来たのは恐らく自分のせいだと、マリーは思う。あの時の彼女の答えなのだ。
「だけどね、その人がどこから来たのかは幾ら調べても分からないの」
記憶喪失だと言われている彼女は冴月家の男性と出会い、その男性と結婚した。
「――で、その人も不思議な力を持っていたそうなの」
彼女は憑物落としとしていたそうだ。それを生業としていたわけではなく、人助けとして行っていたらしい。最初の頃は憑物落とさなければ命に関わる人と偶然出くわしたことだそうで、それが何度かあり特殊なネットワークを介して、憑物落としをしたという。
マリーは蓮子の話を聞きながら、コーヒーを飲む。
「ねぇ蓮子、このコーヒー結構甘いんだよね。ちょっと飲んでみて」と、マリーはふと思いついた事を口にする。
「いらないわよ。マリーがただ砂糖入れすぎただけなんじゃないの?」
「まあそうなんだけど。ちょっとシロップを入れすぎたと思うのよ。だからこれぐらいなら蓮子も飲めるんじゃない?」
「ホントかしら?」
ストローに口をつける。蓮子はコーヒーを少し啜り、すぐに口を離した。
「何よ、凄い苦いじゃない!!」
その表情はどこかなつかしい。
「ごめんごめん! ちょっと蓮子のそういう顔が見たかったの!」
むっとする蓮子に笑いながらマリーは謝った。蓮子はすぐさまオレンジジュースを口に含み、口の中をすすぐ。
「酷いわ。なら、今度ベッドで私が攻めさせてもらうわよ」
「たまにはそれもいいかもね」
「……」ジト眼でマリーを睨む蓮子。「なんで、ビビらないの! 面白くないわ!」
「別に……嬉しいから」
むくれる蓮子。
マリーは謝り、一品奢ると言う。それで蓮子の機嫌がすぐに直る。
追加注文した苺のシフォンケーキとパンケーキを交互に食べながら「マリー、秘封倶楽部って知ってる?」と、蓮子は話題を変えた。
「実は彼女のことを調べているときにね、知ったんだけど……宇佐見菫子っていう私のX代前の人がいて――」
心なしか、さっきまでと目の輝きが違うなぁと、マリーは感じる。
たぶんこれからが、蓮子が話したいことなのだろう。
マリーは相づちを打った。
了
・マエリベリー・ハーン
八雲紫の子孫。
境界を見ることができる能力。+触れることもできる。
・宇佐見蓮子
冴月麟の子孫。
星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる能力
冴月麟は外の世界も観測するために博霊大結果を細工、蓮子は無意識下でそのシステムにアクセスし、時間と場所を特定する。
・博麗霊夢
マエリベリー・ハーンと冴月麟の子。
夢想天生:博霊大結果にRed Magicを利用し、幻想郷内にあるあらゆるものを世界と非干渉化させる。