[金魚 illust_id=56884409 ke-ta]で検索
のPIXIV絵をイメージしたものです。
【除】
①とりのぞく。
②古いものをのぞいて新しいものを迎える。
③わり算。
明鏡国語辞典 第二版
◆◆◆◆◆
透明な金魚袋の中で泳ぐ二匹の金魚。
赤い紐で口を縛ったその袋の中でゆったりと泳いでいる。
光りを反射しきらきらと揺れる。
紅白の金魚と真っ白な金魚。
遠くから歌が聞こえる。
君さえいれば、他は何もいらない――
良くあるラブソングの、良くある歌詞。
二匹の金魚が恋人同士なら――
この金魚袋は、二匹にとって楽園なのだろうか?
◇◆◇◆◇
透明な金魚袋の中で泳ぐ二匹の金魚。
赤い紐で口を縛ったその袋の中でゆったりと泳いでいる。
光りを反射しきらきらと揺れる。
紅白の金魚と真っ白な金魚。
遠くから歌が聞こえる。
君さえいれば、他は何もいらない――
良くあるラブソングの、良くある歌詞。
二匹の金魚が恋人同士なら――
この金魚袋は、二匹にとって楽園なのだろうか?
◇◆◇◆◇
「……」
「……ぇ」
声が聞こえる。
少女の声。
「早苗、朝ご飯できたわよ」
霊夢さんのその声。
ゆさゆさと揺り動かされる私の体。
「お早う……ございます」
私は重たい瞼を少し開け、定型文的な挨拶を零す。
呼び起こす少女の姿は朧気で、はっきりと見えない。
「返事は良いから、体を起こしなさい」
「はぁぃ」
朝は苦手な方ではないけれど、体が重い。瞼を擦り、体を起こす。「んんー」と両手を挙げ、体を伸ばした。
横を見ると、霊夢さんが寝ていた布団はいつものように折りたたまれている。更にその先には、古めかしい丸いちゃぶ台と座布団が置かれ、その上には朝食が並んでいる。
布団は部屋の奥に敷かれ、テーブルは部屋の対角に置かれている。縁側へと続く襖は開け放たれ、鮮やかな朝日が部屋を照らしていた。
無精ながら四つん這いで歩き、紅色の座布団に座った。
ご飯に、油揚げと長ネギの味噌汁、きゅうりの漬け物に卵焼き。霊夢さんは私を待たずに食べ始めていた。
服も着替えており、いつもの二色の巫女服を着て、耳飾り、大きなリボンで髪を留めている。
「いただきます」
手を合わせ、箸を手に取り、卵焼きを一口サイズに割って、口に運ぶ。
「今日は、仕事が少ないから三時ごろに帰れると思うわ」
食事をしながら、今日の予定を伝える。こちらは、変わらず家の掃除、洗濯などの家事だ。
「帰りに、魚でも買ってくるから」
いつも通り夕食のおかずは霊夢さんが買ってきてくれる。焼き魚にするか、煮魚にするかあるいは――
帰りが早いのであれば、そのとき決めればいい。と言うか、いつもそれだ。
先に食べ終えた霊夢さんが、お茶を用意し、朝食を平らげて、熱いお茶をゆっくりと飲んだ。
食事が終わると、食器をお盆に載せ、台所のシンクにある水を張った桶に浸けておく。
すぐに食器を洗わず、私は着替えを先に済ませる。霊夢さんとは型は違うが、同じツートーンの巫女服に着替え、髪留めをつける。
私は白いエプロンをつけ、食器を洗う。
洗い終わった時には、霊夢さんはお茶を飲み終え仕事に出る準備をしていた。
「それじゃあ、行ってくるわね」
「はい。気をつけて」
宙へと舞う霊夢さんを、鳥居の前まで見送り、私は家事を行う。
まずは、洗濯。寝間着、巫女服、下着を水の張った深めの桶に入れ、洗濯洗剤を投入する。大幣をふり、桶の中で水流を作る。
しばらくして、洗濯物を取り出し、泡だらけの水を入れ替え、すすぎと脱水を行う。今日も天気が良いので、神社裏手にある物干し竿に洗濯物を掛けた。一緒に布団も干しておく。
洗濯が終わると、境内の掃除を行う。
今の季節は落ち葉も少ないので、石造りの参道の上の砂埃を払う程度だった。
「早苗さん、お早う御座います」
箒で掃いていると、鳥居の方から本居小鈴さんの元気な声が聞こえた。「お早う御座います」と私は挨拶を交わす。
小鈴と一緒に歩いてくる稗田阿求さんが、遅れて小さな声で「お早う御座います」と会釈をした。
神社には毎日ではないが、参拝客が訪れる。顔ぶれは今の二人の他に、豊聡耳神子さんに物部布都さん。あとは聖白蓮さんといった感じ。
二人が参拝を終えると、いつも通り世間話をする。
夏の強い日差しもあって、縁側に案内し、お茶とせんべいを出した。
「明日の夏祭り、霊夢さんと一緒にまわりませんか」
小さな口を大きく開けてせんべいを食べる小鈴さんに対し、阿求さんはリスのように少しずつ囓っている。
「早苗さんはこちらのお祭りは初めですし」
そうだっただろうか? それとも外でのお祭りと混同してしまっているのか? 今日の朝、霊夢さんも同じようなことを言っていた。
祭りは霊夢さんと一緒に行く予定だ。
皆で言った方が楽しいだろう。私は約束し、一時間ほどおしゃべりをし、二人は里へと帰っていった。
表の掃除の続きを終えた頃には昼頃で、私は簡単に昼食を済ませた。
外から涼やかな風が流れ込む。
柔らかな風。
チリンチリンと軒先に吊った風鈴が涼やかな音を立てる。
お腹が満たされたこと、肌を、髪を撫でるそよ風が気持ち良く、いつの間にか私は寝てしまった。
「ちょっと人が仕事をしてきたのに、あんたは居眠り?」
頭を小突かれ、ちゃぶ台から重い頭を起こす。瞼が重い。
「ふぁれ、早かったんですね」
「明日の祭りの準備があるらしくてね。早苗、よだれ」
「ふぇ?」
慌てて、私は口元を拭う。
「霊夢さん、今日本居小鈴さんと阿求さんが訪ねられて……」
覚醒した私は夏祭りの約束を伝えた。
「別にいいわよ」
予想通りの返事が帰ってくる。
「それと……はい、お土産」
突き出された籠を覗き込む。歪な氷をかき分けると二匹の鮎が入っていた。
「鮎ですか」
「どう料理するかは早苗に任せるわ」
後はいつも通りだった。洗濯物を取り込むのを手伝って貰い、夕暮れ時までお茶を、菓子を抓み、まったりと二人で過ごす。
日が暮れ始めると私は夕食を作る。ご飯を炊き、味噌汁を作り、鮎は塩焼きにすることにした。
作った夕食を二人で食べ、片付けて、風呂に入る。
艶めく髪を乾かし、私達はいつもと同じように床に就いた。