俺たちの冒険の書No.002〜ローレシアの王子〜   作:アドライデ

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Lv.15:港町ルプガナを散策した。

 

「体が痛いんだぞ」

 何も考えずに寝てしまったので節々が痛い。体を動かし凝り固まった筋肉を解す。

その後、朝食時に皆で集まりどうするかを相談する。

「おれは塔を攻略したいんだぞ!」

「そうね。その前にお店で買えるものがあるかを確認したいわ」

 ここまで来るのにたくさん戦ったから金銭面的には余裕がある。その提案にのる。

それで良いかとサマルに尋ねるとまだ半分夢の中だっただろう。

「おはよー」

 サマルの暢気な発言にはちょっと笑ったけれども。

結論としては買えるものは買って、足りないのは目標金額として掲げるため、武器と防具のお店を見に行く。その後、この大陸を散策しようということになった。

 

 港町ルプガナは活気のある町で、行く道でいろんな情報が聞けた。

海を越えた東にはラダトーム城があり、物資の交流が盛んである。ムーンブルク城とは少し離れているためか、滅んだという情報は入って来ていない様子。

ドラゴンの角にあった橋がなくなり、交流が滞っていたのも原因であるようだ。

しかし、その所為かは不明だが、あまり治安が良くない気がする。少なくとも女性にはあまり居心地の良い場所ではない。

「イヤだわ。品がない人がいるのね」

 下心満載の人に見られて不快になっているムーン。

中には女の子を『大事にしてね』と言ってくれた人がいる。きっとその人も危ない目にあったのかもしれない気をつけようと思う。

 

「身躱しの服があるぞ!!」

 武器と防具のお店で見つけたのは、三人とも装備できる服だ。今着ているのと大差はないから、二着で良いだろう。

値段が1250Gと高い。しかし買えなくはない。

早速購入してムーンに渡す。

もう一着欲しいがちょっと足りないどうしたものかと悩む。

「鎖帷子を売れば良いよー」

 サマルに言われて、そう言えばそうだと、一度道具屋に行き、二着目も無事に購入する。本当は魔道士の杖(2500G)も欲しかったが諦めた。

 

 良い買い物に満足していると、左手奥側が少し騒がしい。武器と防具のお店の主人に聞くと、この奥は一応手入れのされていない広場と言う名の空き地がある。完全に町のデッドスペースになっていて、滅多に誰も近づかないとのこと。

皆で顔を見合わせ、頷く。

剣を構えて先頭を陣取り、町の奥へと進む。キーキーという鳴き声に混じり、女性の声がする。

危険信号が脳内を駆け巡り歩く速度が速くなる。

「たっ助けて!!」

 逃げる少女とそれを追う魔物…【グレムリン】二匹の間に割り込み、対峙する。

【グレムリン】(背中にコウモリの羽を生やした悪魔のような出で立ち。ぱっと見の印象は子どもの悪魔のように見える)は牙と爪を剥き出しにして襲い来る。盾でそれを防ぎ攻撃へ移る。

背後から、ムーンのバギの風が吹き二匹を切り刻む。

相手がラリホーを打つ前にサマルのマホトーンが上手くかかる。

しかし【グレムリン】が吐く、火の息は皆を巻き込み燃え盛る。焼かれながらも、剣で振り払い追撃する。

 

 万全の状態だったのが功を奏し、あっという間に撃退できた。魔物の消滅を確認し剣を収める。

既にサマルの回復魔法で治療を終えていた女性は、立ち上がって頭を下げた。

「危ない所を有り難うございました。私について来て、どうかうちのお祖父様にも会ってくださいな。さあこちらへ」

 行く方を示し、スタスタと通りに戻る道を歩く少女。そこに先程の怯えた姿がなく、切り替えの早さに驚く。

 

「………船が手に入ったんだぞ」

 何と、助けた少女は船を管理している老人の孫娘であった。それに恩を感じたのか無償で船をくれたのだ。

厳密には貸してくれるだけなのだが、いつ返すとかもなく、実質船を手に入れたということになる。

 

「それにしても、町の中にまで魔物が出るなんて…」

 指を噛みながら険しい顔のまま呟くムーン。

「…聖なる礎に綻びが出て来たのかなー」

 基本、町や城を作るにはその礎を中心に置き、その結界の範囲で町を発展させる。そうすることで、モンスターが町の中に入るのを防ぐのだ。

「…ムーンブルク城の襲撃を考慮すると、ハーゴンにはそういう小細工が効かないのかもしれないわね」

 抜け穴を知っているのか、無効にできるのか、判断ができないが脅威の存在であるのは確かだろう。

「あ、これで頂上だぞ! でも何もないんだな」

 二人の深い長考を気にせず、自身の関心ごとであるドラゴンの角の北側を制覇した喜びで声をかける。少し期待していたのに宝箱一つなかったので落胆が少し混ざる。

港町ルプガナの北西にあった祠も金の扉があり中には入れなかった。

「飛び降りるんだぞー」

 二人に合図して脇に抱え飛び降りる。

「ちょ、ローレ待ちなさい。あなたまだ風のマントを装備……」

「あーあ」

 向こう岸に着いてしまったときに、ムーンに少し怒られた。

このあと戻るつもりがピンチになって、慌ててキメラの翼を使い飛んだら、なぜかムーンペタの町に着いてしまい、港町ルプガナに再び戻るのに苦労することになる。

 

「もう少し後先を考えて欲しいわ」

 

 ロレンLv.15、計画を立てよう。


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