俺たちの冒険の書No.002〜ローレシアの王子〜   作:アドライデ

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Lv.18:大灯台に登った。

 

「メルキドの南だな!」

 元メルキドの町は既に探索していたのでわかる。船は何度かラダトーム城にルーラした時について来たので東に迂回して大陸を目指す。

「ルーラで付いてきてくれるのは有難いよねー」

「ルーラ自身をあまり唱えている人がいなかったから、本来はキメラの翼と船を魔法陣でリンクしているのよ。ただ、思わぬところに飛んでしまうリスクが回避できないので、特定の場所にしか設置できないようになっているわ」

 魔法陣がきちんと働いているのを確認しているのだろう。『良し』という頷きとともに色々説明してくれた。全く理解できなかったので、『ふむ』としか返せなかったが…。

「凄いよねー」

「ムーンブルクの魔法技術の一つよ。ルーラで飛べるところにちゃんと付いてきてくれるって、わかれば問題ないわ」

 そうねと、クスッと笑い、噛み砕いて説明してくれた。

「輸送とか便利そうだねー」

「そこまで、重いのはまだ無理ね。せいぜいこの小型船ぐらいよ」

 成る程とサマルが考え込む。その光景を見てサマルとムーンは凄いなと思う。

 

 海は【うみうし】(青いナメクジみたいな軟体生物)のラリホー攻撃や【しびれくらげ】(麻痺を引き起こす白いくらげ)とかいるが、生死の恐怖が来るほどではないので、気分は穏やかなものだ。

 

 暫く南下すると、竜王の曾孫の言う通り、小島の中央に聳え立つ塔が見えてきた。

何階ぐらあるのか途中まで数えようと思ったが、指の太さと窓の数を追うのがぐちゃぐちゃになったので諦めた。

 

 中は広く複雑で外周を一回り回ってから漸く中央への道が開かれた。そこに行くと複数の階段が出迎えた。

しかも、魔物がはびこっている。

 【ゴーゴンヘッド】(メドーサボールを緑色にしたような蛇が毛玉にようにうじゃうじゃ生えている)直接攻撃は大したことないが、味方全員に守備力上げる呪文スクルトや敵の守備力を下げるルカナンを連発、さらにラリホー、マヌーサと補助呪文のオンパレード。

倒すのが一苦労な上に補助呪文や攻撃呪文が効きにくい。ロトの剣の攻撃で何とかと言う硬さを初期から持っており、サマルの槍では歯が立たない始末。優先で倒したい相手である。

このモンスターが同一種族で出てくると時間の浪費が激しくなるので厄介だが、それよりも恐ろしいのは他のモンスターと一緒に出てくる時だ。

攻撃力が高い相手だとどちらを優先したらいいか迷う。攻撃に特化している狼が凶暴化した魔物【サーベルウルフ】と全身に包帯を巻いた人型の魔物【ミイラおとこ】は守備力はそれほどでも無いので優先して特攻するのも手。

だが【ゴーゴンヘッド】を放置したらろくなことにならない。

「スクルトで守備を上げられたぞ!」

「ローレ急いで!」

「魔法が効かない相手が多すぎるわ!」

 ロトの剣で【ゴーゴンヘッド】の目と思われるうじゃうじゃしている中心を切り裂く。その隙にサマルが【サーベルウルフ】の相手をし、【ミイラおとこ】はムーンのバギで足止めする。

 

 この階だけで魔力を取られてしまい、諦めて一時退却する羽目に。想定よりかなり捜索が難攻する。何度目の挑戦か、登っては降り、誰かが棺桶に入ったら引き返し、蘇生後、再挑戦するを繰り返す。

 

「ドラゴンフライよ!!」

 徐々にだが、階層が上がってきた頃、【ドラゴンフライ】(赤いリザードフライ)が襲ってくるようになった。集団で尚且つ一斉に吐く火の息は全てを焼く強敵。攻撃が追いつかず何度強制送還されたか。

「逃げるぞ!」

 見つけたら脱兎の如く逃げることにしている。

対抗なんて無理、抵抗する間も無く焼かれてそれまでだ。

このモンスターのお陰で、【アンデットマン】(骸骨が武器と鎧を纏ったモンスター)が凄く弱く感じる。確かに攻撃力は強いが、サシで勝負してくれる。向こうもグループで出てくるので、本当のサシでは無いが、それに近い感覚である。

 最上階近くではここのドン的存在か、【ゴールドオーク】(槍を持ち二足歩行した猪のような顔。毛が金色に輝いている)が出てきたときは手の汗を握った。攻撃力と体力が桁違いなのである。不幸中の幸いは、単独行動を好んでくれていることだろう。でなければ、【ドラゴンフライ】のときと同じ末路を辿っていただろう。

 

 そんなこんなで、扉に閉ざされたその奥もう何階に登ったかすら数えれなくなったとき、一人の老人に会った。

「なにも言わなくてもじじいには、わかっておりますとも」

ほっほっほと軽快に笑い、付いてくるように言い、スゥッと歩き出す。

「ローレ、罠かもしれないから油断しないで」

 サマルに助言に耳を傾け、頷く。老人の案内で、永遠と登った階段を降りて行く。

サマルが罠と忠告した理由として老人に会う少し前に、辺りの空気が振動したとのこと。そしてあったはずの魔物の気配が消えたらしい。

 

 結果からいうと、案の定魔物が化けていて、紋章が入っていると言う宝箱を開けると襲ってきた。

モンスター自身は【グレムリン】で、いつでも反撃できるように警戒していたお陰で対した怪我もなく一掃できた。しかし、また【グレムリン】である。

「これが紋章」

 【グレムリン】のそばに落ちていた星型の何かを拾う。パチンと弾けてそれは体に溶込んで行った。

「消えたんだぞ!?」

 慌てたが『大丈夫。必要になったら現れてくれるわ』とムーンが手を掲げて言った。そうするとそれに反応してか、その手に星の紋章が輝いた。

どういうことかわからなかったが、ムーンが大丈夫と言ったなら、大丈夫なのだろう。

 

「頂上だぞ」

 ここに向かう途中、ハプニングが起こったが何とか探索を終えて最上階まで登れた。

大灯台と言われているだけあって、頂上には大きな炎が燃やされていた。そこの番人だろうか、縁に立ちじっとある方向を眺めている人がいた。

「私はずっと前からここで、ハーゴンの神殿を見張ってきた。大陸の真ん中、空にそびえる大地がハーゴンのいるロンダルキアだ」

「ロンダルキア」

 灯台の高さをもろともしない巨大な山の上にそれは聳え立っていた。全ての元凶、この旅路の最終目標がそこにいる。

今は行き方すらわからない現状。

 

「次の紋章を探しましょう」

 じっとロンダルキアを睨んでいたムーンは一度目を閉じてから、こちらに振り返りそう告げる。

「おう!」

「そうだね」

 例え小さな一歩でも確実に前に進む方法を選ぼう。

 

 ロレンLv.18、奴はロンダルキアにいる。


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