俺たちの冒険の書No.002〜ローレシアの王子〜   作:アドライデ

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Lv.22:水門を開けた。

 

「よし! 水の紋章ゲットだぞ」

 ムーンペタの町に行っていない場所があることを思い出し、行くとここにも捕まっていた魔物がいた。

どこかしこも狂い出しているのだろう。幸いたいしたことなく、山彦の笛の導きで四つ目の紋章を見つけたというわけだ。

「海のどこかに精霊の祠があるのじゃそうじゃ。五つの紋章を手に入れそこに行けば精霊を呼び出すことができよう」

 池の中央にいた老人が教えてくれた。太陽、月、星、そして今回の水だ。自然が司る象徴化された紋章。それらは全て大地の精霊へと導かれる生命への恵み。

徐々につながって行くのを感じる。場所も散々迷っていたときにここかなって言うのを見つけている。また迷いそうだが。

 

「ここはお裁縫の店です。あまつゆの糸はいりませんか?」

「貰えるのか?」

「あらどうしましょう。ちょうど切らしておりました」

 ラダトームの町の裏手で、普段はあまつゆの糸を売っている。今回は購入できなかったが、代わりに取れる場所を教えてもらい、ドラゴンの角の北側に行った。糸は足元を調べると簡単に見つけた。ゆっくりと巻き取るときらきらと水面が反射すように輝き美しかった。

 

 そんなのんびりとした船旅に陰りを落とす惨状に絶句した。

再び訪れたザハンの町。

明るく漁に出かけた人を待っていた雰囲気から、絶望へと変わっている。

 

「私はタシスンの妻。夫はとても犬が大好きでした」

 悲しげに語る夫の行方。優しく撫でている犬は金のカギをくれた正しくその犬である。許可を得るどころか出会うことすらできなかったのだ。

その報告をしてくれたのは宿屋に泊まっている一人の商人であった。

「実はこの町の男たちの船が魔物たちに襲われて海のもくずに…。そのことを知らせに来たのですが…」

 意気消沈していた。帰って来ると期待を込めている女性にはとてもじゃないが言えない、その女性が若いので尚更である。

「春になれば私の恋人ルークが漁から帰ってくるんです。ああ、ルーク…」

 確かに帰りを心待ちしている人に告げる残酷な事実は胸が痛む。ん? どこかで聞いたことがある名前である。どこだっけ?

「ペルポイの町にいた記憶喪失の人だね」

 サマルの言葉で思い出す。彼だけは、彼女の恋人だけは無事だったんだな。複雑に思いつつもここを統括しているシスターにそのことを告げる。

「ありがとうございます。希望が有れば、生きる術となるでしょう」

 お礼後に水門や聖なる織り機のことを尋ねると、神殿の電流が流れる床の先にある聖なる織り機があると教えてくれた。それが必要であると説明する。

「行けるのなら、持って行くといいでしょう。止めはせぬ」

 そう返事をしてくれて、快く譲って貰えた。

床がどんなに電流を走らしてもトラマナという呪文で無効化できる、本当に凄い。改めて、それに感動する。

 

 果てしない海。大分航海も慣れて来たが、なかなかどこに何があるかわからない。魔物が犇めき航路が断たれた今、完全な地図がないのも原因である。

「ローレ、どこに向かっているの?」

「テパの村だぞ!」

「どこにあるか知っているの?」

「知らないんだぞ!」

「今どこに向かっているの?」

「デパの村だぞ!」

 不毛な会話にムーンが頭を抱えるのを横目に、サマルが製作した簡易地図を見ながら『ここかなー』『あそこかなー』と進路を指差し示す。マイペースな二人を取りまとめるように咳払いをしてムーンは指示を出す。

「取り敢えず、私たちも少しは強くなったと思うわ。だから行けなかった場所に行きましょう」

 以前、上陸して死にそうになったあの地である。その場所もどこにあったか不確かなので発見するには少し時間がかかった。

 

 水の都ベラヌールから北上した場所に多くの川が流れる大陸が見える。漸く上陸した一行を出迎えたのは…。

「はぐれメタルだ!!」

 銀色のメタルボディに固く覆われた粘性のある謎のスライム【はぐれメタル】そこに一気に剣を振り下ろしたが素早い動きで避け、逃げる前にベギラマの魔法攻撃を置き土産にして追いかける間も無く去った。

彼らの存在は有名で倒すととってもいいことが起こるらしいが、残念ながら逃げられた。

 

「ローレ、悔しがっている暇ないわよ!」

 航海も中はムーンのトヘロスという呪文で魔除けをしていてほぼほぼ魔物が出ないが、この陸路はその魔除けが効かない。正確には術者よりモンスターの方が強い場合効果がないということだ。

倒せない相手ではないが、苦戦は必須。

「紫のを倒すぞ!」

「マホトーンが効いたよ。先に緑お願いー」

 対象を【ヒババンゴ】(ゴリラのような紫色の魔物。視界を塞ぐマヌーサや体力を削るルカナンの呪文を唱えてくる)から、【くびかりぞく】(人型だが人でないぴょんぴょんと奇怪な動きで斧を振り回し翻弄する)に変え、思いっきり力任せに剣を振り上げる。

 【くびかりぞく】が倒れるのを確認したムーンが雷の杖を振り上げると雷鳴の如く【ヒババンゴ】に雷が降り注ぐ。その威力に毎度使ってみたい衝動にかられるが、『そんなことする暇があったら普通に倒しなさい』と一蹴りされた。

 

「青い人形を先に砕いて!」

 【パペットマン】(どろにんぎょうの強化バージョンか体を青いオーラを覆った人形)の不思議な踊りで吸い取られたらしい魔力に体が翻弄されつつムーンが叫ぶ。

荷物が最近多くて薬草などの予備を持ち歩けない。サマルとムーンの魔力でそれらを補っているため、取られると大変なことになる。稲妻の攻撃ができる雷の杖やピンチのときに癒しの術を出す力の盾(21500G×二個を購入後一気に金欠)のおかげで、なんとか進めているが二人の魔力が枯渇したら終わりである。

なので、【パペットマン】は強敵であり最も優先して倒す。

 

 船で川を上り行けないところを西に大きく迂回しながら山を登る。木々で視界が悪い中でもモンスターは否応無しに襲ってくる。何があるかは、わからないがこの先に何かがあることを祈る。

 

「テパの村にようこそ。遠い所までよく来なすったな」

 そうして見つけた村に暖かく迎えられて、村に着いただけなのに泣きそうになった。のんびりとした田舎の村で水門の管理をしている。そこで得た水力で工芸品を作り生活している。

その一つに水の羽衣があるという。ムーンがすごく気にしていた装備である。旅の兵士が作ってもらおうと思ったが断られたそうだ。

 

「ええい作らんと言っておるじゃろうが!」

 先程の人と違っていたからか、入って来た一行を罵声してから、はたと、眉を顰める老人、ドンモハメ。その目の前に水の羽衣を作るのに必要な材料を揃えて差し出す。

「お若いの。道具を揃えてきたな。わしの負けじゃ。よし! 水の羽衣を織ってしんぜよう。しかし時間がかかるぞ。日を改めて取りにくるがよい」

 溜息混じりのドンモハメの許しに三人でハイタッチした。

 

 偶然というものは重なるものである。テパの村にはラゴスが盗んだ水門のカギを使う水門がある。困っていたそうなので無事に返せてよかった。

ラゴスの話はどの町でも聞いたが、しかしなんのために盗んだのやら、結局わからずじまいである。

 

 水門で水を開けた先には満月の塔があり月の欠片が手に入るそうだ。月の欠片? どこかで聞いたことがあると首をかしげると、サマルが整理して色々教えてくれた。

 

 最終目的はハーゴンの討伐。ハーゴンはロンダルキアに拠点を置いており、そこに行くには邪神の像をペルポイの町から北西のロンダルキアの麓に置かなければ行けないそうだ。

その邪神の像は海の真中深き洞窟に眠るらしい。その洞窟の入り口は浅瀬に囲まれた洞窟で、月の欠片が浅瀬をなくすのに必要らしい。

 

「あれ? いつの間に邪神の像がある場所を知ったんだ?」

「散々迷ったときに偶然見つけて入った祠の老人がそう言っていたわ」

 素朴な疑問をムーンにバッサリ切られた。迷ったときに色々小島を見つけていたことを思い出す。立て続けにいろんな脈略ない話を聞いていたのですっかり忘れていた。

「あと、ロンダルキアへ行く洞窟内には紋章があるみたいだから、五つの紋章を全部集めるためにも必要だねー」

 サマルの言葉にピンと記憶が繋がる。

「それは覚えてるんだぞ! 幻覚を打ち破るのに必要なんだよな」

 ハーゴンが妖術みたいなのを使うとか言ってた気がする。

「そういうことね。と言うわけでできることが増えたけどまずは満月の塔に行きましょう」

 水門のカギを開けて一度船に戻り満月の塔へ向かう。

 

 ロレンLv.22、ごちゃごちゃだった話が一つに繋がる。




あまつゆ どんな漢字だろう。
天露 雨露 天梅雨 …?
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