俺たちの冒険の書No.002〜ローレシアの王子〜   作:アドライデ

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Lv.26:ロンダルキアへの洞窟に潜った。

 

 ここは水の都ベラヌールの町。ロンダルキアへの洞窟がある大陸と直結している旅の扉があり、何度も挑戦するには打って付けの場所である。

その宿屋で三人は議論を交わす。

 

「集団で襲われたとき、何もできなさ過ぎるね」

 サマルが自己の脳内の整理を兼ねて、現状を語る。ロンダルキアへの洞窟での全滅が、これで二回目になってしまった。場所も似たようだったので早急に打開策を練らなければならない。

 苦戦したのは全体攻撃を得意とする赤き炎を身にまとった【フレイム】その炎の体を駆使して回転攻撃して周囲を焦がす。炎の揺らめきが、あたかも嘲笑っているように見え、余計に悔しくなる。一匹なら何ら問題ない。仲間を呼ぶ上に、皆が皆、一斉に攻撃してくるので回復が追いつかない。

今までそういう敵には出会わないように回避していたが、ここは狭い洞窟内の上に、その場所自身が魔の掛かった迷路となっている為、回避が難しい。つまり、毎回ちゃんと撃退しなければならない。

更に攻撃力の高い【ハーゴンのきし】(青い骨の体に紫色の鎧を纏った骸骨。骸が持つ、過去の遺恨を利用されたかのように怒り狂っている姿)の痛恨の一撃に追い打ちをかけられた。

【ドラゴン】もそうだ。集団で広範囲の攻撃を仕掛けてくるのが厄介である。

「魔力の温存とか言ってられないわね。逃げにくくなった今、私のイオナズンは出し惜しみしないわ」

「その呪文、何だ?」

 前にも一度耳にしたが詳細を聞いていないことを思い出す。

「閃光爆発系の攻撃呪文だよ。あれは凄いよね」

 サマルの最大の攻撃呪文であるベギラマの威力を遥かに上回る威力がある。

「だいぶ慣れて来たとはいえ、コントロールが難しいの」

 壮大な威力の代わりに魔力の消耗が大きい上に目標を設定するのが難しい危険な魔法である。

「最初に匹数を減らすことで被弾の数を減らせれば、ましになるかもね」

 入り乱れる前に先手必勝でムーンのイオナズンとサマルのベギラマで相手の体力を奪い、ローレがそこから追い討ちをかけると言う作戦に落ち着いた。魔力は温存せず、なくなれは直ぐに町に戻る。今までと大差はないが、確実性を優先して今まで以上に難攻不落の洞窟を攻略して行こう。

 

「キラーマシーンだわ!」

「任せるんだぞ!」

 遠く離れれば左手のボーガンから矢が飛び出し、近づけば右手の剣撃が襲う。四つ足の丸みを帯びたメタリックブルーの甲冑を纏いし機械兵【キラーマシーン】同種族と思われる【メタルハンター】とは比べ物にならない程に硬く、魔法の効果にも耐性があり、非常に厄介である。

 洞窟に入りどれくらい上り下りを繰り返したであろう。その落とし穴の先で出迎えたくれたのは死を呼びそうな感情のない殺戮兵である。

「うおりゃぁぁー!」

 渾身の力を込めて、細い腕を関節の隙間を狙い叩き斬る。一度に一匹しか攻撃できないローレは、数が多いと後手に回りやすい。しかし、サマルの力では【キラーマシーン】にまるで歯が立たない。

「ローレ!」

 後方の隙をサマルが盾で防ぎ、守る。

「倒すことはできないけれど、ローレ、君を守ることはできるよ」

 力の盾で回復しつつ、キラーマシーンの動きを翻弄してくれるサマル。

「守りは任せて」

 ムーンの癒しが全身を駆け巡る。自然と笑みが零れる。光の剣を振り回し、目の前の敵を薙ぎ倒す。一体ずつしか倒せない。だが、その一体一体を確実に闇へと葬ろう。ローレにはそれができる。最初から最後まで戦うしかできない自身の道だ。

 

 どんな敵が来ようとそれを突き通そう。

 

「慣れて来たかな」

 ふうと溜め息つきつつ、バラバラになった骸に祈りを捧げてサマルは顔を上げる。モンスターの対処に慣れてきた頃、新たな問題に直面する。慣れてきたことにより、道が明確になったと言うべきだろうか。

「無限回路ね」

 最初とは違い、気づいたら同じ場所に戻される。この手の幸いは虱潰しでも最後には正解を引けるだろう。今回もサマルが製作してくれた簡易地図はとても助かる。

「次は右奥だっけ?」

「うん。右手前に落とし穴があるから、左奥を通って右に行ってね」

 細かい指示に従いつつ確実に奥へと進む。やっと進んでいると言う実感が湧いてくる。この洞窟はどこまで続くのか皆目見当が付かない。

 

 しかし物事には必ず終わりが来る。待ち受けているのは果てしない銀世界。そう、出口だ。

そこに四季はなく、常に雪が積もっており、溶けることのない極寒の大地、ロンダルキア。

この先にハーゴンがいると言う神殿があるらしい。吹雪いているからか、その姿はここからは見えない。

ロトの鎧と水の羽衣の力なのか、息が凍りつくようなこの場所でも、凍え死ぬと言う感覚はない。薄い暖かなオーラで護られているそんな体感である。

 

「ここがロンダルキア…」

 ムーンが静かに呟いた。待ち望んでいた憎き輩が鎮座している土地である。

「いよいよ終盤って感じだね」

 緊張した面持ちで呟くサマル。まっすぐに見据えるは何も見えない吹雪の中。目的地が見えない恐怖。魔力の温存はそれなりにできているが、この襲い来る不安は拭い去ることができない。

 

「………」

 でも、なんか忘れている気がする。とっても大切な……。邪神の像はまだ持っている。ルビスの御守りも懐に入れてある。ロトの鎧も手に入れたし、防御面では問題ない。

 

ん? 防御面だけ? 攻撃面はどうだろう。

………っ!?

 

「あ、稲妻の剣を持ってないぞ!」

 ここまで来て無いとかありえない。くるりと踵を返し、元来た道を戻る。まだ行けていない場所があるはずだ。

「ちょっとローレ!?」

「緊張感ないなー」

 へらりと笑い後ろからついて来てくれる。ローレの唐突な行動も許容範囲してくれるその有り難さには、いつも感謝している。

「確かに光の剣ではこの先しんどいかもね」

 【キラーマシーン】のボディーを切り裂くには少し心許ないのは確かだ。もう一押し欲しい。

「おう! 稲妻が操れる剣だぞ。絶対凄いはずだ!」

「え、そっち?」

 ローレ専用の魔法武器に心踊るのを抑えられない。

 

 ロレンLv.27、最強の剣を追い求める。




マジどこにあるか、わからなかった。

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