俺たちの冒険の書No.002〜ローレシアの王子〜   作:アドライデ

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Lv.5:サマルトリアの王子を見つけた。

 

 城下町の道具屋の横で休憩した後、ローレシア城に戻り、謁見の間にいる父王に会いに足を進める。彼がローレシアに来る目的は旅の同行を願い出ること、先代勇者より受け継ぐ使命。つまり、謁見の間にサマルの王子もいると思ったのだが………。

「先程、サマルトリアの王子がお前を訪ねてきたぞ。しかし、そなたがサマルトリアに行ったと知って、また戻っていったようじゃ」

「えー」

 かなり強行して来たと思ったのに、もう旅立っていた。

「引き止めてて、欲しかったんだぞ」

「サマルトリアの王がお前を引き止めておったら、いかんと思ってな」

 上手くいかないものだ。

またすれ違いになる前に行くしかない。今度こっちに来たら引き止めるように言って、翌早朝にローレシアの城を後にする。

 

「まだパウロ王子と会えぬのか? ここには戻っていないぞよ」

 サマルトリアの城に直行したにもかかわらず返ってきたのは気の抜けた返答。まだ戻って来てないのか。思わず両手を床に付きそうになるのを堪えて、礼を言う。

 

「どこ行ったんだ?」

 サマルトリアのお城を出て首を捻る。

見事なすれ違い。

わかっていることは、サマルトリアのお城から勇者の泉に行き、ローレシアのお城で父王を訪ねて、サマルトリアのお城に戻るはずだと言うこと。でもこのお城にはまだ戻って居ない。

 

「うーん。困ったぞ」

 

 途方に暮れて居たときに、ふと最初に来たときに出会ったサマルの妹の言葉を思い出した。

『お兄ちゃんは割と暢気者なの。結構寄り道したりするんじゃないかなぁ…』

 もしかしてと思い、その勢いのままリリザの町に強行したのだ。幸い最初に苦労していた魔物達は、いつの間にか一撃で倒せるようになっていたので、最初に比べて進みは速い。

 

 流石にリリザの町に到着する頃には、日はどっぷりと暮れていた。仕方がないので、王子の捜索は明日にしようと、宿屋に直行する。

まさか、その探し人のサマルトリアの王子が丁度、その宿屋いるとは思わなかった。

 

 宿の受付のすぐ奥、フリースペースにその人物はいた。最初に来た時にはいなかった見知らぬ人影に、もしかしてと思い声をかけた。

「いやー探しましたよ」

 そうしたら自己紹介の後、気の抜けた声の返事が帰ってきたのだ。こちらは気どころか何もかも抜かれて、何の言葉も出せなかった。

「どうかしました?」

 キョトンと覗かれて、飛ばしかけた意識を戻す。

「やっと、出会えて嬉しいんだぞー」

「さあ、力を合わせ共に戦いましょう!」

 ニコニコと話しかけるので、疲れも合間って殆どのことがどうでも良くなった。彼と握手をして、部屋をシングルからツインの部屋に変えてもらう。

当たり前だが、料金が6Gから12Gになった。

 

 これまでの道程を語る。なんと、サマルはモンスターから全逃げで来ていたらしい。ここまで逃げ延びることができるとは…。その驚異の運に度肝抜いたが、なんとかなるものらしい。そういうものなのかな。

「かなり寄り道しちゃいましたから、早速ムーンブルクの状況を見に行きますか?」

 明日からどうするかと、寝る前に相談された。

そうだった。最終目標はハーゴンだが、何の手掛かりもない状況である。それなら、魔物に襲われたムーンブルクの現状を確かめることで、何か進展するかもしれない。サマルと合流しなくてはと言う思いが先走って当初の目的、どうやってハーゴンを倒すかと言うことを完全に失念していた。

「あ、でもその前にローレシアのお城の南にある祠も行ってみたいんだぞ。門にいた爺さんがそこにいる弟に会って欲しいって」

 折角言ってくれたのだから、行きたいとにこやかに言えば、サマルが少し呆気にとられた後、緊張気味の表情からへにゃと穏やかな表情へと変わる。

「そうなの? ならそれで行こうか」

 サマルは特に反対する様子もなく、目的地が決まり、そこに向けて明日準備して出発しようとなった。

 

「こっちは勇者の泉だよ?」

 翌朝、出発した二人はサマルトリアのお城から遥か東、勇者の泉がある洞窟に来ていた。

「おう。その洞窟の奥に行ってない道があったのを思い出したんだぞ」

 この頃になると力がついて来たのか、この辺りでも大体のモンスターを一撃で倒せるようになって来ていて、悠々と進める。

「そうなの?」

 のんびりとだが、後ろから付いて来てくれるサマルに『おう』と頷き先に進む。

気合い入れて勇者の泉に潜ったのだが、入り組んでいると思ったその先は、単純構造でどうってことなく、最奥にはお金が入っていた宝箱があったぐらいであった。

落胆しつつも泉から出て、ローレシアのお城へ戻るだけだ。実は事前に近道を発見していた。山の切れ目と湖の周りに毒沼が有り、その間を抜けなければならないが、南に大きく迂回せずに着けるので、かなり時間短縮になる。

しかし、この近道が一行にとって、プチ惨劇となろうとは、予想できなった。

 

 ロレンLv.5、近道が地獄の始まり。


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