ポケモン世界に転生しました……え、それだけ? 作:まんまフラグ
眠い。超眠い。そう思っていると、目の前に真っ赤なナイフが落ちてきた。
——血の色だ。誰の?……俺のだよ馬鹿野郎。
俺は倒れているんだ。しかも死にかけ、そりゃ眠いよな。永遠に眠る一歩手前なのだから。
バカだなぁ……本当に。人をかばって死ぬとか。ホントにバカだ。
ああ、沈んでく。底なしの暗闇に呑まれる。
ねむ……い………
○
目覚めた。いや、さっきまでの寸劇はなんだったんだって話だ。完全に死んだ流れだろ、さっきの。
ふと、俺が寝転んでいる横に何か動物が来た気配がした。それに目を向けると、そこには大きな青虫の姿が。
「キャタピー?」
その姿に俺は見覚えがあった。いや、ポケモン?なんで?
ポケモンとは、世界的なゲームであり、もはやジャンルというべき存在である。それが目の前に現れた。
困惑する俺にキャタピーは、取り敢えずと言わんばかりに糸を吐いてきた。
俺の顔に直撃したそれは、的確に俺の視界を奪い取った……って待てや!
「イィッタイメガーッ!」
慌てて目を擦るようにまとわりついた糸を引き剥がす。そして、恨みがましくキャタピーを睨みつけた。
「いきなり何すんだよ!……って怪我してるのか」
結構大きな怪我をしていた。バトルで負けたのだろうか?まぁ、俺には関係ない……助けるのはただのバカだろう。
「治療してくれる場所に行くから、ほら来い」
だから俺はバカなのだ。こんな見ず知らずの土地で見ず知らずのポケモンを助けようとする俺は大変なバカなのだ。
これはどうしようもない癖である。なんというかこればっかりは治せそうにもない。だからか貧乏くじを引くのはいつも俺だった。だというのに、俺はその時の最初に、この役目が他の人に行かなくてよかったと思ってしまう。
それ故に根っからのバカだと、とある人から言われた。でも、それでいいのだ。俺らしく生きるにはそれが不可欠なのだから。
キャタピーはその意図を汲んでくれたのか、恐る恐る俺の腕に近づいてきた。それを待ってから、キャタピーを持ち上げる。
「多分、この世界がポケモンならポケモンセンターがあるはずだよな」
周囲を見渡すと、看板が存在したのでそれを見に行く。
「どれどれ、トキワの方が近いのか」
距離も書かれていたので、どちらの方が近いのかは一目瞭然だった。
取り敢えず、トキワのもりらしきこの森を早い所抜けるとしよう。
○
「はい、お預かりしますね」
「よろしくお願いします」
無事に……無事?スピアーに追いかけられたけども、まぁ、なんとか森を抜け、ポケモンセンターにたどり着いた俺氏。
そんな俺にポケモンセンターで休んでいたおっさんが声をかけてきた。
「君、たしかマサラタウンのキド君じゃないか?一人で来たのかい?」
「へ?あ、はい。トキワのもりで昼寝してました」
咄嗟に出た嘘方便でなんとか誤魔化そうとする。ほんの少しホントのことを混ぜながら。
どうやら納得してくれたようだ。
「さっきのは君のポケモンかい?」
「いえ、野生ですよ。生憎とモンスターボールを持っていないので」
「そうかい、なら私のをあげよう」
「へ?」
なまらびっくり、いきなりそんなことを言われて動きを停止させる俺。そしてその間におっさんは俺の手にモンスターボール押し付けた。復活してから慌てて、渡されたモンスターボールを返そうとする。
「う、受け取れませんよ!」
「随分と懐いていたようだし、ゲットしてあげなさい」
「でも!」
「あのキャタピーのためと思って、ね?」
う、そう言われると弱い。この人は俺の弱点を知ってるかのごとく俺の心を刺激して来た。
そして、おっさんは俺を置いてその場を離れていった。
「……どうしよ?」
呆然と立ち尽くす俺の元にジョーイさんがキャタピーを伴って戻って来た。
「治療、終わりましたよ」
「へ、あ、ありがとうございます」
キャタピーがおずおずとこちらにやってくる。その視線は俺の手のモンスターボールだった。
俺はキャタピーの前に跪き、不器用に問いかける。
「な、なぁ、よ、よかったらなんだが、俺のポケモンにならないか?」
それに少し考えるそぶりをしてから、キャタピーは大きく頷いた。
俺はそっとボールをキャタピーに当てる。すると、自動的に開いたボールはキャタピーを取り込んだ。
少し揺れたのちにカチリと音がする。
「キャタピー……ゲット」
なんというか、とんでもなくワクワクとした感情が俺の中を渦巻く。
いつぶりだろう。こんなにもワクワクしたのは。
そして、俺は……とりあえず自分の家がマサラタウンにあること以外知らないので、どうしようかと途方にくれた。