ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第12話 序盤から波乱の幕開けです!

 グレイフィアさんのアナウンスでゲームは開始した。

 その瞬間に俺たちは動き始める……既に部長の立てた戦略と戦術は頭に入れてある。

 これは序盤戦……おそらくは両者とも『王』による読み合い、様子見だろうな。

 俺たちのチームは小猫ちゃん、ギャスパーであり、ギャスパーはすぐに各フロアにコウモリに変化させて送るつもりだ。

 ギャスパーの強みは変化することにある。

 そこで監視をする役目なんだけど、実際に戦力としては完全にサポートだ。

 後は……まあ俺がギャスパーを面倒見るのが最適ってのが部長の考えだな。

 

『なお、この試合においては追加ルールとして制限時間3時間。短期決戦(ブリッツ)となります。3時間で試合が終わらなければ残る駒の数で勝敗が決まります』

 

 ……追加ルールね。

 だけど制限時間がついたからには、向こうもある程度急いでこっちを攻略することに必死になるだろう。

 俺は手早く神器を二つ発現し、倍増と創造力を溜める……俺は時間が経つごとに強さを増すからな。

 

「……先輩は誰が一番最初に衝突すると思いますか?」

「…………セオリーなら、匙を当てるだろうが…………おそらくはすぐには当ててこないはずだ。向こうの最大戦力が匙となれば使いどころってものがある。下手に使ってリタイアしたら元も子もないからな」

 

 俺と小猫ちゃん、ギャスパーは一階のモールを少し隠れながら隠密活動のように動く。

 そして一度モールのトイレ付近に移動し、そしてギャスパーをコウモリに変化させた。

 

「いいか、ギャスパー。まずギャスパーはコウモリを分裂して辺りにある全ての監視カメラを破壊しろ。それが最初に俺たちに課せられた任務だ」

『監視カメラ、ですか?』

「そうだ」

 

 ギャスパーが不思議そうに言うのは当たり前だ。

 だけど意外とカメラってもんは面倒なものだ。

 しかも監視カメラを全て同時に作動させている集中管理室は相手側の方が近い……つまり序盤戦はそこを占拠したほうが楽に戦いが出来るのが普通。

 だがこちらには監視役のギャスパーがいるからな……監視カメラは別になくても構わないし、それに仮に占拠されたら面倒だ。

 だから出来る限りカメラを破壊する。

 それが俺たちの役目。

 

「お前が危機になれば俺と小猫ちゃんで救出に行く。お前は序盤で消えるのはダメだからな―――心配しなくても、可愛い後輩は俺が守ってやるよ」

『……はい!!イッセー先輩、何かあれば連絡しますぅ!!』

 

 ……するとギャスパーは凄まじい速度で飛んでいく。

 ―――あれも部長の囮の一つ、『明らかに誘っているだろう?』作戦だ。

 序盤戦において、まさかこうも分かりやすく飛ぶ馬鹿はいない。

 いや、実際にいるんだけど……まあそれは置いておくとして、相手側からしたらギャスパーは囮、実は釣られた奴から落とす気じゃないか?と思わせる。

 そしたらギャスパーを警戒するしかない。

 手を出したら俺が魔力弾を操作して遠距離から攻撃する……隠密作戦だな。

 どちらにしろ、俺たちに損はない。

 ギャスパーの武器を封じられたから向こうはギャスパーを軽視しているかもしれないが、ゲームにおいて最も必要なのは度胸とはったり。

 心理を読まれ、焦れば立てた作戦が崩壊する。

 全く……部長はすごい。

 

「……イッセー先輩、気配察知はどれほどの範囲で行けますか?」

「うん…………俺の場合は殺意を送った時点で分かるかな?何しろ死線上の修行だったから、敏感になったのは攻撃に対する気配なんだ……油断しているとそれすら無理だけど」

 

 ……俺はガルブルト・マモンによる不意打ちを思い出し、つい後悔する。

 

「……イッセー先輩はちゃんと守ってくれましたから……」

「ありがと……ギャスパー、現状はどうだ?」

『はいッ!監視カメラを数台破壊して、今は相手側の動きを見てますぅ!!』

「了解……深追いはするな。向こうは頭の切れるソーナ会長だ……それとお前のコウモリの分身体は深追いさせても大丈夫だが、術者であるお前はやめておけよ?」

 

 俺はギャスパーと通信を切り、そのまま物陰に隠れて辺りを確認する。

 小猫ちゃんは既にファンシーな猫耳と尻尾を出現させて仙術を発動させていて、辺りの気配を確認している。

 

「……大雑把ですが、かなり先に気配が二つ…………どう見ますか?」

「そうだな……囮だ」

 

 俺はそう断言する……向こうもギャスパーの監視は怖いんだろうな。

 あいつは今は次々に監視カメラを壊して行っているから……まあ当然と言えば当然だ。

 ここらで一つ目のアクションを起こしたいだろうから、囮を用意した。

 で、囮と俺たちが交戦した時に隠れていた伏兵が俺たちを倒す、もしくはダメージを与える。

 それが普通の作戦だろうが…………おそらく裏がある。

 

「小猫ちゃん、戦闘準備だ」

「……はい」

 

 小猫ちゃんは俺の言葉に頷いて拳を握る。

 向こうからしたらまさか俺がこんな物が多いところにいるとは思わないだろう。

 そこがこの作戦の意味。

 俺の力は何もない平地で最も花開く力だ。

 つまり向こうからしたら俺は居るはずもなく、この俺は大方、ゼノヴィア辺りと思われているのかな?

 本来、俺は祐斗と動いた方が効率的だった……テクニックとテクニックならどんな相手でもある程度は圧倒できる。

 祐斗の話では立体駐車場は車の数が多く、代わりに屋上はほとんど車はないらしい。

 たぶん休日ではなく平日のデパートを元にフィールドを創ったからだろうな。

 ソーナ会長はだからこそ、俺は屋上に向かうと想定するはずだ。

 だけど俺はあえてこっち……これは牽制だ。

 俺を最初の戦闘にぶち込むことで、下手に動けばそっちは狙い撃ちされる……そんな印象をつけさせる。

 俺はとりあえず、手元に魔力を固めた。

 

「……この距離から魔力弾を撃つつもりですか?」

「大丈夫。こいつはただの魔力弾じゃない―――性質付加の弾丸だよ」

 

 俺は手元をおそらく相手がいる方向に向けた。

 

「小猫ちゃん。気配を察知してるなら、ナビを頼めるか?この距離を狙い撃つにはそれなりに正確な位置がいるんだ」

「……分かりました」

 

 小猫ちゃんは俺の手を握る……と共に仙術により俺に相手の気配を握った手越に教えてくれる。

 ……仙術にはこんな使い方もあるんだな。

 俺は目を瞑り、神経を集中させる。

 ――――――そして、撃ち放つ!

 ほぼ直線の動き、が二度ほど曲がる魔力弾だ。

 俺は撃ち放った後に再び魔力弾を操作……そしておそらく相手に直撃しそうになった瞬間―――

 パァン!!

 …………その音と共に弾丸がまるで閃光弾のように光る!!

 

閃光の龍弾(フラッシュ・ドラゴンショット)

「…………今のはどうして発動したんですか?」

 

 小猫ちゃんは首を傾げてそう尋ねてくる。

 理由は……まあ二つだな。

 その一つがさっきの牽制……そしてもう一つが……

 

「気配をもう一回確認してみると良いよ」

「……はい……ッ!?」

 

 小猫ちゃんは仙術を使い気配を確認するしぐさを取ると、何かに気付いたのか驚いた顔をしていた。

 

「……さっきの気配が……無くなっている?」

「そ。おそらくあれは魔力を応用したものだろうな。かなり面倒な手があると思うが……あれが人の囮か偽りの囮か気になってやってみた。さっきの閃光弾、びっくりしただろ?」

「……はい」

「つまりそう言うこと。術者は驚いてつい術を解除した……つまりは牽制。俺はもうお前のしていることを分かっているっていうな―――ギャスパー」

『はいです!さっきの光の後におそらくですが姿を隠していた人物が二人いました!イッセー先輩!!僕は本体で今はそれを追っています!!』

 

 ……なるほど。

 中々面倒な手を使ってくるな。

 俺は大体の手を理解した上で、部長に連絡を入れた。

 

「部長、聞こえてますか?」

『イッセー?どうしたのかしら……何か動きが?』

「はい。もしかしたらこの序盤戦、これ以上ギャスパーを無理に飛ばす必要はないかもしれません」

「……そうね。私も薄々気づいていたけど―――ソーナはおそらく、監視カメラのことも全て予期して動いているわ」

 

 ……なんつう頭脳だよ。

 これが序盤戦……『王』と『王』の駆け引き。

 チェスでも序盤戦では失う駒、動かす駒によってゲームが有利か不利かが決まる。

 

『ソーナは防御(ディフェンス)を徹底しているようで攻撃(オフェンス)をしているわ。おそらくギャスパーを放置したのは監視カメラを壊させて時間を稼ぐため―――何か仕込む気かしら?』

「だったら危険ですね……俺たちはまんまとその手に引っかかった。だけど向こうももう少し時間を稼げると踏んでいたでしょうから……」

『挽回はむしろ可能、ね……分かったわ。イッセー、あなたの思うようにギャスパーを動かしてちょうだい……私も一つ、仕込むわ』

 

 部長は含み笑いを浮かべつつ通信を切る……と次に俺はギャスパーに通信を入れた。

 

「ギャスパー、一度と俺と合流。潰した監視カメラの数は?」

『七割弱です……でも良いんですか?』

「ああ、むしろ丁度良い数だ……小猫ちゃん、食材品売り場に行こうか」

「……でも確か敵が」

「ああ、まんまと引っかかってやるんだ―――で、二人で圧倒してやろう」

 

 俺が小猫ちゃんの手を引っ張り、走る。

 恐らく向こうは俺たちの手を読んだ上でこのことをしている……まあ予想の範疇だけど。

 俺と小猫ちゃんは走り、目的の食材品売り場に到着……と共にギャスパーと合流した。

 

「さてと……今から徹底抗戦だ。この中に入ればその時点で敵陣と思った方が良い―――祐斗、そっちの手際は?」

『……順調に進んでいるけど、こっちもそろそろ相手が来ると思うよ』

 

 俺は祐斗と連絡を取り、確認する。

 よし―――行くか!

 俺たち三人は食材品売り場に入る……どこから来るだろうな。

 俺は神経を全力で気配察知に向けながら、広場を歩く。

 ―――その時だった!!

 シュン!!……その音が聞こえたと思うと、ななめ前の野菜売り場から何かが飛んできた。

 

「予想通り、お前かッ!!」

 

 俺はその飛んできた物体を避けて

 

『Explosion!!!』

 

 神器に溜まる倍増の力を解放!

 それを全て身体能力に変換し、籠手でその飛んできたもの―――カメレオンの舌のようなラインを握ってそれを強く引いた!

 

「―――うぉッ!?」

 

 すると男の声が聞こえ、俺に引かれて飛んできたその男をそのまま全力で殴り飛ばす!!

 ……だけど感触がないな。

 恐らくは防御に成功したんだろう。

 ―――俺が殴り飛ばした匙は、足を踏ん張り、飛ばされるのを我慢した。

 

「悪いな、匙……俺は殺意には敏感だから、普通に気付いたぞ」

「へっ……ここに来たってことは、全部理解されてんのかよ―――会長の言った通り、『王』が二人いるんだな」

 

 匙はそう言うと、腕を払って食品材売り場で俺たちと睨み合いになる。

 ……いや、匙以外にも一人いるはずだ。

 

「ギャスパー、お前は今すぐに祐斗とゼノヴィアの元に行け。おそらくここはお前にとって最悪の敵地だ」

「え?それってどういう……」

「ニンニク、食わされたいか?」

 

 ……俺がそう言った途端、ギャスパーは猛スピードでその売り場から消えていった。

 あの速度ならば他の敵にもやられないだろう。

 さて……

 

「…………会長、最悪の結果になったっす―――イッセー、やっぱりお前が俺の壁かよッ!!」

「俺も大分焦ったぜ…………だけどこれはほとんど部長の予想からの結果だ。俺だけと思うなよ、グレモリー眷属を!!!」

 

 空気が少し動いた気がした。

 俺と匙に訪れる静寂……互いに睨み合い、動けなくなる。

 

『Reset』

 

 ……そういうことか!!

 俺の籠手からリセットの音声が響いた瞬間、匙は動き出す!

 手には神器―――進化したのか、黒い龍脈(アブソーブション・ライン)は俺の籠手のように何匹も蛇がとぐろを巻いている状態だった。

 匙の神器は接触した者の魔力やら力を吸う物……俺の籠手の譲渡と同じことも出来るサポートタイプに近い神器だ。

 見たところ、いくつかラインを使えるんだろうな……くっつかれるのは面倒か。

 匙は俺に蹴りを放つ……と同時にラインを飛ばしてきた……面倒くせぇ!!

 蹴りは容易に避けれる。

 それほどの単調な動きに加え素人に毛が生えた程度だ。

 だけどあの一つでも接触が面倒なラインがあれば話は別だ。

 ……ここは

 

『Blade!!』

 

 俺は籠手からアスカロンを取り出し、まずはラインを切り裂く!!

 龍殺しの力を持つアスカロン……匙の神器はドラゴンタイプの力だからな!

 ただアスカロンも余り使用は出来ない……なんたって、従来のアスカロンよりも出力が高いからな。

 だけどラインは確実に切り裂き、そして……こっちには小猫ちゃんがいることを忘れるな!!

 

「……ッ!!」

「くっ!こうなるか!!仁村!!」

 

 小猫ちゃんが掌底を放とうとするが、物陰から現れた会長の残りの『兵士』が小猫ちゃんに襲い掛かる。

 しかし小猫ちゃんはそれを読み、残る腕でそちらを殴った!

 俺は一度聖剣を仕舞い、更に匙に向かい裏拳を放つも、匙は『兵士』の少女の腕を掴んで一度俺たちから距離を取るが―――逃げ腰か!

 俺はその一瞬を突き、一気に距離を詰めて匙もろとも二人を視線の先の肉製品の売り場に殴り飛ばす!

 次は耐えきれなかったのか、二人は肉製品を辺りに撒き散らし、そこに衝突。

 今のは俺の攻撃に耐えることの出来なかった向こうのミス。

 俺は特になにも壊してはいない。

 序盤からこうなるとはな…………だけどあまりここに居座るのは得策じゃない。

 ここは―――

 

「小猫ちゃん……この場は相手側のどちらかをリタイアさせれば十分だ―――俺が匙を止める。小猫ちゃんはその間に……」

「……分かりました」

 

 俺は耳打ちでそう言うと、二手に分かれる。

 匙たちがいる方向は真っ直ぐに行く道と一度曲がって菓子製品の場所を通る二つの行き方がある。

 菓子製品の方から行けば姿は見えない……俺は真っ直ぐ、小猫ちゃんは見えない方から向かう!

 

『Boost!!』

『Force!!』

 

 二つの神器から音声が流れ、匙と仁村さんとの距離がなくなっていく。

 

「仁村、俺から離れんなよ!ラインよ!!」

 

 匙はラインをよくわからない方向に放つ……と思いきや、そのラインは色々な屈折をした後に俺の方に向かってきた!

 こいつ……神器をここまで使えるようになってるのか!?

 だけどこの程度、オーフィスの蛇の弾丸に比べたら!!

 俺はラインを避けながら進み、そして走る最中で胸のフォースギアに手を当てた。

 

「―――四十段階、創造力が溜まったな」

 

 この戦い、一つの籠手では火力不足だ。

 でも禁手ならば火力は高すぎる。

 なら話は簡単……二重倍増の倍増を身体能力面に特化させればいい!

 

「小猫ちゃん!時間を十秒稼いでくれ!!」

 

 俺は大声でそう叫ぶと、その場で止まる。

 

「『創りし神の力……我、神をも殺す力を欲す―――故に我、求める…………神をも殺す力―――神滅具(ロンギヌス)を!!』」

 

『Creation Longinus!!!!』

 

 フォースギアより放たれる白銀の光が俺の右腕を覆い、次の瞬間、俺が動き出すのとほぼ同時に白銀龍帝の籠手(ブーステッド・シルヴァーギア)が装着された。

 

「行くぞ、匙ッ!!」

『Start Up Twin Booster!!!!!!!』

『Boost!!』『Boost!!』

 

 俺は匙に叫び、ツイン・ブースターシステムを発動し、二重倍増を開始する。

 倍増感覚は二分の一になり、それ以上の利点である左右別の解放も可能になる。

 

「あれはライザー・フェニックスを追い詰めた力ッ!ラインよ!!」

 

 匙は向かい来る俺に向かいラインを五本放つ……限界のライン数は知らないけど、それでも五本はかなりの精神力がいるはずだ。

 しかも付近には既に小猫ちゃんがいる……あまりラインを使わせるのは抑えたいが……

 ―――度胸はいるか。

 俺は魔力を右手の籠手に集中し、更に……

 

『Right Explosion!!!』

 

 倍増の力を解放し、力を上げる!!

 そしてようやくたどり着いた匙に向かい左手の打撃を放つ!

 

「ラインよ、巻け!!」

 

 匙は神器を装着している手でラインを円状に巻いていく……ラインによる盾!?

 あれは触れるのが危険だろうが……ここは押し通す!

 俺の拳がラインの盾とぶつかり合い、激しい轟音を轟かす!!

 こいつ……身体能力がかなり上昇してる!!

 俺の打撃の衝撃に耐えているほど……魔力による身体能力の上昇か。

 しかもラインの盾もかなりの強度だ!

 

「右手解放!!」

『Left Explosion!!!』

 

 俺は右手の倍増を解放、更にそれにアスカロンの力も乗せ、そしてラインの盾に打突を放った!

 

「くっ!アスカロンか……ッ!!だけどイッセー!!一矢報いるぞ!!!」

「―――ッ!!」

 

 盾は崩壊するも、その内からかなりの本数のラインが俺に放たれるッ!!

 こいつ、俺から嫌でも力を吸い取るつもりか!!

 

「……させませんッ!!」

 

 小猫ちゃんは俺から少し離れたところから相手の『兵士』を殴り飛ばし、それを匙に直撃させた。

 それにラインは俺のところには来ず、匙は味方の『兵士』にぶつかってそのまま同じように飛ばされる。

 ……とはいえ、ここまで粘るとはな。

 

「小猫ちゃん、やれたか?」

「……いえ、恐らくは私の動きはかなり研究されています。思い通りに攻撃が進みませんが……さっきの通り、向こうは私の動きについてこれません」

「なるほど……でも今のは本気でヤバかったな。あれが当たったら匙はかなりラインで俺の力を吸ったはずだから……」

 

 やっぱり匙は危険だ。

 予想をはるかに上回る勢いで神器を扱う上に、普段よりも魔力が高まっている気がする。

 というかそもそも匙はあまり魔力がある方ではないのに、この魔力量はおかしい。

 

「……まさか」

 

 俺は少し離れたところで膠着状態となっている匙を見た。

 ―――あいつの胸の辺りにラインが伸びており、あいつは今、何かをラインから吸った。

 

「お前……自分の命を魔力に変換しているのかッ!?」

「……ばれちまったら仕方ねぇ……ああ、そうだ!俺はお前みたいな魔力もなければ最強クラスの神器もねぇ!!そんなお前に勝つには、これしかないんだ!!」

「真正面から、正々堂々……」

 

 俺は以前、匙が言っていた言葉を思い出す。

 俺を絶対に倒してみせる…………そんなことを匙は言ってたよな。

 すげぇよ、お前……

 惚れた女のために命を賭けて、向かいくる。

 ――――――お前は俺が全力を持って倒す。

 

「匙、お前はすげぇ。認める……そんなことが出来る奴はめったにいねぇ―――好きな女の想いを守るために、そこまで出来るんだ…………いいぜ」

『Boost!!』『Boost!!』

 

 ……数段階の倍増が完了した。

 ―――考えるのは止めだ。

 こっから先は

 

「ここから先は男の勝負だ、匙!!!」

『Twin Explosion!!!』

 

 俺はそう叫び、二つの籠手の力を同時に解放した!!

 

 ―・・・

『Side:木場祐斗』

 僕、木場祐斗とゼノヴィアは立体駐車場を抜けて屋上に行くために現在行動している。

 元々のセオリーをあえて破ったこの戦法……部長もかなり大胆な手を取ったと僕でさえ思うよ。

 僕とゼノヴィアは屋上までの道を作りながら動いており、隠密行動のイッセー君なら、僕たちは陽動だ。

 そしてイッセー君たちが暴れる時には僕たちが隠密にことを進める。

 更に部長たちのチームが布石を打つ……パワーバランス的には一応は平等に分けられた理想的なチームだろう。

 

「僕たちの目的は避難所の確保……すなわち屋上を占拠することだ。ゲームの性質上、屋上というのは一番派手な戦いが出来る場所……ここを取れば僕たちの最大の武器を使えるってことなんだけど……理解していたかい?」

「いや、全くわからんかった……が、要約すると私を生かすために屋上を取れと言いたいのだろう?」

 

 僕は頷くも、少し溜息を吐く……まあゼノヴィアにそんなものを期待してもダメだよね……

 ―――部長の予想は的中したよ。

 僕とゼノヴィアは車の陰に隠れるとともに、今の一瞬で目視した相手の影を車のバックミラーで確認する。

 向こうからしたら屋上を取られてしまえば終わりだ。

 だからこそ、ここから僕たちを止めに来る。

 そんな予想だってけど、当たっていたようだ。

 ただ一つだけ考えるとしたら……いや、うまく行っているのなら構わないね。

 何かイレギュラーが起きてもそれを瞬時に対処する……それが僕の役目だ。

 

「ゼノヴィア、行くよ」

「了解」

 

 僕は小さくゼノヴィアと声を掛け合い、飛び出そうとした時だった。

 

『びぇぇぇぇぇん!!にんにく怖いよぉぉぉ!!!』

 

 ………………………………僕たちが出陣しようとした瞬間、複数体のコウモリを引き連れてギャスパー君が泣き声を叫びながら飛んできた。

 ―――僕の口とゼノヴィアの口は半開きになり、苦笑いをするしかなくなった。

 ギャスパー君は猛スピードで駐車場を駆け抜ける。

 何て速度だ……だけどあれでは格好の的だ!

 序盤からギャスパー君を失うのはまずい!

 僕は即座に小さめの聖魔剣を二本創りだし、ゼノヴィアと共に車陰から飛び出した―――と、その時、僕たちの近くにあった車が爆発したッ!?

 ……どういうことだ。

 そう思っていると、僕は僕たちがさっきまでいた付近にあるものが染み込んでいるのを確認する―――この匂い、今気づいたけど…………灯油だ。

 恐らくは術か何かで匂いを消したんだろうね……灯油自体はこのモールから調達したんだろう。

 そして僕たちが走り去ろうとした時に靴の摩擦で火花が起き、そして爆発した―――ギャスパー君が叫び来て、焦って速度を出し過ぎたのが幸いした。

 一歩遅ければ僕とゼノヴィアは間違いなく負傷を負っただろう……

 

「……外しましたか。まさかあんな乱入があるとは……」

「―――なるほど、こんな芸当が出来るのはそちらの眷属ではソーナ会長か、それとも―――あなただったというわけですか。真羅椿姫副会長」

 

 すると僕たちが先ほど人影を見かけた逆方向から薙刀と短刀を持つ『女王』の副会長と、確かソーナ会長の『僧侶』の花戒桃さんと草下憐耶さんが出てくる―――『女王』と『僧侶』をこっちに送るってきたのか!?

 部長の予想ではこっちには『戦車』を送ると踏んでいたけど……まさか3人を向けてくるとはね。

 

『……祐斗。イッセーからの連絡で、イッセーと小猫は現在相手の兵士と交戦中。そちらにギャスパーを送ったわ。そちらは?』

「……向こうは『女王』と『僧侶』が二人、合計で3名です」

『……なるほど。あえて魔力に秀でた三人をそっちに送って来たのね……祐斗、カウンターには気を付けて。特にゼノヴィアはカウンターにめっぽう弱いから……それでギャスパーは?』

「…………何かに恐怖して、立体駐車場を全速力で突き抜けていきました」

『………………………………………………………………そう』

 

 すごく長い間の後、部長は呆れきったように頷く。

 でもギャスパー君の呆れた行動は結果的に言えば僕たちを救い、しかも今は屋上に向かっている。

 向こうからすれば止めるはずだった敵をみすみす逃がしてしまった……これは好機だ。

 

「ゼノヴィア、荷が重いと思うが、君はあの僧侶二人を相手してもらえるかな?最悪、足止めだけでも良い」

「私を誰だと思っている?足止めと言わず、リタイアにさせてやる」

 

 ゼノヴィアさんは空間に裂け目を作り、そこから聖剣デュランダルを引き出した。

 

「木場、一本、剣を創ってもらえるかい?」

「……了解」

 

 僕はゼノヴィアの目の前にシンプルな聖魔剣を創りだす……形はゼノヴィアが以前使っていたエクスカリバーに似せてあるから使いやすさは上々だろう。

 それと性質をパワー重視にしているからね……さて。

 

「僕はリアス様に仕える『騎士』、木場祐斗」

「私はソーナ様に仕える『女王』、真羅椿姫」

 

 副会長は薙刀と短刀を構え、僕は小ぶりの聖魔剣を両手に構えて動き出すッ!

 女王は全てのパラメーターが全体を通して高い万能タイプ!

 ならば『騎士』の強さで圧倒する!!

 僕はそう思い、初めから速度を全開で発動する。

 周りの障害物……足元は怖いから車の天井を伝って翻弄するように動いた。

 

「ッ!!以前よりもはるかに速いッ!!」

 

 副会長は僕に追いつこうとするも、僕は立体駐車場をここにいる誰よりも速い速度で駆け抜けていった。

 向こうだって大きな攻撃は出来ないからね……今回に関しては肉弾戦が多いだろう。

 イッセー君にはそう言われたけど、予想以上だ。

 

「聖魔剣よ!!」

 

 僕は車と車の間を飛ぶような動きをしながら、地面から次々に聖魔剣を生やしていく。

 先ほどここを見に来た時にここの配置を全て確認したからね!!

 僕は相手を翻弄しながらもゼノヴィアの方を確認する。

 

「……あれは結界!?」

 

 するとゼノヴィアは二人の僧侶に挟まれ、結界のようなもので動きを止められていた。

 ……やはりテクニックタイプか!

 あの熾天使の一人、ガブリエル様がアドバイザーをしていたそうだけど、テクニック関連が相当技術が上がっているようだ。

 だけどゼノヴィアに対してあれだけの結界で動くのは自殺行為だ。

 

「むぅ……―――デュランダル、その刀身に宿る聖なるオーラの加護を御剣へ……」

 

 するとゼノヴィアは僕の創った聖魔剣とデュランダルの刃を重ね合わせる……あれを使うつもりだね。

 アザゼル先生はデュランダルの使い方もそうだったけど、更にそのデュランダルの余りある聖なるオーラに着目した。

 あのオーラをイッセー君のように他の物体……他の剣に譲渡出来ないかと。

 本当はイッセー君のアスカロンをゼノヴィアが借りて、そのアスカロンであれをするはずだったんだけどね。

 アスカロンは宿主をイッセー君だけと認識しているのか、彼以外は使えないという欠点がある。

 代わりにその力は従来の聖剣の何倍もの力を発揮するんだ。

 デュランダルにはまだまだ可能性が秘めているというのがアザゼル先生の見解だけど……あれはただの全てを切り刻む聖剣ではないと思う。

 …………ゼノヴィアは動いた。

 デュランダルによる斬撃では辺りの車を波動で大破させてしまう恐れがあるからね。

 ゼノヴィアもそれを分かっているんだろう……デュランダルの力を聖魔剣に譲渡しての斬撃ならある程度、パワーは落ちるだろうけど、結界くらいなら簡単に切り裂く。

 

「たわいもないな」

 

 結界は破れ、ゼノヴィアは二人の僧侶に攻撃を開始する……相手は魔力を操った遠距離戦。

 だけどこれは序盤戦だ……相手も深追いで自分の味方を減らそうとはしないだろう。

 頃合いを見て戦線から離脱するはずだ。

 

「聖と魔、二つの聖魔によって形を成す」

 

 僕は小振りの聖魔剣を二本、片手で持ちもう片方の手に集中する。

 僕のしていた修行は剣技の再認識と神器の可能性を更に見つけることだった。

 そのために色々なことを考え、たくさんの経験を踏んだ……今ならば、出来るはずだ。

 僕はずっと聖剣計画によって犠牲になったみんなの想いはどんなものだろうと考えてきた。

 ―――皆、聖剣を……エクスカリバーを使いたかったはずだ。

 なら僕が、僕の中に永遠に生き続ける皆の想いに応えたい。

 

「僕の願いを、皆の願いを、魔の力と聖の因子によって紡げ―――ソード・バース!!」

 

 僕の手元に一つの剣が形作られていく…………それは以前の僕の憎しみの対象だったもの。

 当然、本物に比べたらさして脅威にもならないものだ。

 だけど僕たちの想いのこもったこれは―――聖魔剣エクスカリバー・フェイクは絶対に負けない!!

 

「―――ッ!!?」

 

 僕は白と黒の混じった聖魔剣・エクスカリバーを片手で持ち、もう片方に持つ聖魔剣二本を副会長に投げつけた。

 副会長は薙刀に魔力を集中し、斬撃波を放ってくるが、あの剣は両方とも囮。

 

偽・天閃(フェイク・ラビットリィ)!!」

 

 僕の声に応えるように、聖魔剣による力で僕の速度が上昇するッ!

 僕が使える能力は僕が実際に見て、対決したエクスカリバーのみ!

 その力も本物に比べたら劣るけどね!

 はぐれ神父、フリードがエクスカリバーを使いこなした状態で戦えたからこそ出来たことだ!

 

「せ、成長の幅が予想外ですッ!桃、助太刀を頼みます!!」

「はい!!」

 

 すると花戒さんから魔法陣が生まれ、僕に向かって何かを放つ……それと共に僕に何か重力のようなものが掛かった!

 ……だけど、魔法陣を切り裂けば問題はない。

 

偽・破壊(フェイク・ディストラクション)!!」

 

 僕の声を鍵として、天閃の力が解除され、そのまま破壊の力に換わる……この剣の弱点は能力の装填が必要なこと。

 普通のエクスカリバーと違い、僕の声を認証して力を変える必要があるんだ。

 ただ、研究されていれば予測は立てられるだろうけど……初見ならば強さは倍増する!

 僕は魔法陣を切り裂き、そのまま相手側の僧侶へと攻撃を仕掛ける―――と、その時、僕の前に一つの装飾された鏡が現れた。

 

「―――追憶の鏡(ミラー・アリス)……まさか序盤戦で見せてしまうとは……」

 

 すると車の上で薙刀と短刀を持つ副会長は、その鏡を自分の近くに移動させる……あれは彼女の持つ神器ッ!

 イッセー君の推測によれば、進化しているのは間違いないはずだ……ここからは用心して責めないとね。

 ……それにしてもなぜ会長は僕たちのチームに『騎士』を当ててこなかったんだろう。

 それに『戦車』もだ。

 ……まあ良い。

 

偽・夢幻(フェイク・ナイトメア)!!」

 

 僕は夢幻の力を発動させ、僕と全く見た目が同じの分身を創る。

 とはいえ幻術な上にエクスカリバーの足元にも及ばないレベルだ。

 ただの気休めでしかないけど……僕はもう片方に聖魔剣を創りだし、更に次の瞬間、かつて堕天使コカビエルがイッセー君に放ったように剣を次々に撃ち放つッ!

 そして僕は分身を操作し、副会長に挟み撃ちを掛けるように聖魔剣を振るった!

 

「鏡よ!!」

 

 すると僕の前に再び鏡が現れる―――どの類の神器かはわからないけど、危険な物に手を出すべきではないか。

 僕はそれをステップを踏み、それを回避―――そして副会長にエクスカリバー・フェイクを振りかざした!!

 副会長はそれを薙刀で受け止めようとする……今だ!!

 

偽・破壊(フェイク・ディストラクション)!!」

 

 聖魔剣の性質を瞬時に変換、僕は破壊化したエクスカリバー・フェイクで薙刀を粉砕した。

 エクスカリバー・フェイクをそのまま副会長に向かい振り落す…………と、またもや剣が触れる寸前で鏡が現れた。

 ……まさかこれは。

 僕は剣を止め、一度距離を取る。

 

「…………なるほど、あなたにゼノヴィアを当てなくて良かったです」

「―――まさか、私の神器を」

「ええ……追憶の鏡…………それはカウンター系の神器ですね」

 

 僕は副会長にそう言い放つ。

 副会長は先ほどから決まって僕が攻撃を当てる寸前であれを使っている。

 つまりあれには攻撃をする寸前で当てると効果のある神器と仮定すると……おそらくは防御系かカウンター系。

 フェイクで一回目に僕の前に壁として出したんだろう……僕に神器を防御系と思わせたいがために。

 ……と、僕の頭ではここまでが限界だ。

 

「能力は何かは分かりませんが、つまり僕はそれをカウンター系の神器と想定した上であなたを見切れば良い―――僕にあなたを当てたのは失敗です」

「…………そうでしょうか?それに向こうの『騎士』の方はかなり苦戦しているようですが……」

 

 僕は副会長が示した方を見ると、そこには相手の魔力戦に苦しむゼノヴィアがいた。

 ……おそらく、全力のデュランダルによる斬撃波を放てば一発で終わるだろう。

 だけどルール上は派手で周りに被害を与える攻撃は出来ない。

 とはいえ、ゼノヴィアに副会長を相手させるわけにはいかない……ならば

 

偽・擬態(フェイク・ミミック)!!」

 

 僕は聖魔剣の形状を擬態させ、それを鞭のような形にする……これはフリード・セルゼンが行った応用法だけど、使わせてもらおう。

 剣は鞭のようにしなって副会長に迫るものの、副会長はそれを避けて一台の来る前の上に乗った。

 

「……その聖魔剣の力は大体理解できました。おそらくいくつかの能力があると思いますが、それを一度に使えるのは一つまで。しかも声で力を変える必要があるなら、対処法はいくらでもあります」

「ですが得物を失った今のあなたではカウンター系神器と短刀では限界があるでしょう…………それとも何か秘策があるんですか?」

「さぁ?」

 

 副会長は意味深な笑みを見せる…………これは何かがあるんだろうね。

 とはいえ、ゼノヴィアの援護に回らないといけないけど、目の前の敵はかなりやりにくい。

 流石は『女王』……一筋縄ではいかないね。

 

『祐斗、聞こえる?』

 

 ……すると部長が通信を入れてきた。

 

「部長……どうしたんですか?こっちは戦闘中ですが……」

『さっき屋上に向かったギャスパーから連絡があったわ。屋上には一瞬だけど人影を見つけたそうよ……おそらく、今の状況を考えるに―――ソーナは屋上で何かをしようとしていたわ。でもおそらく、無理と察したから引いたのでしょうね……そろそろ序盤は終わりよ』

「了解です…………それでは僕は一人でも多くを倒して見せます」

 

 通信は途切れ、僕は剣を構える。

 危惧すべきは彼女の神器。

 それ以外では僕は基本的に彼女を圧倒しているはずだ。

 ―――っと僕の背中にゼノヴィアの背中がぶつかり、背中合わせとなる。

 

「悪いね、木場…………予想以上にやりにくい。出来れば私も最小限の破損物で一撃、必殺のものを放ちたい」

「……本当に必殺かい?」

「ふふ……私の必殺は頼りになるだろう?」

 

 僕は少し笑みを浮かべつつも頷く。

 ……ならばやることは決まった。

 その必殺を直撃させる舞台を整えよう。

 

「ゼノヴィア、副会長はカウンター系の神器を持っている―――気を付けて」

「了解……行くぞ、木場!」

 

 ゼノヴィアはそう言うと、手元にあったパワー重視の聖魔剣を地面に刺し、デュランダルのオーラを溜めていく。

 なるほど、僕はそれの守護をすれば良いということか!

 僕はゼノヴィアの周りにいくつもの聖魔剣を彼女を守るように出現させ、そしてゼノヴィアに魔法陣による攻撃をしようとしている二人の『僧侶』に向かい聖魔剣を二本放つ!

 一撃でも当たればこの剣は悪魔を蝕む!

 

偽・透過(フェイク・トランスペアレンシー)!!」

 

 僕は今現在使用できるエクスカリバー・フェイクの最後の能力、透過を発動させ、僕の体を透明にした。

 これは制限時間があり、恐らく数十秒しか持たない……だけどそれだけあればこの場においては強い武器だ!

 

「消えたッ!?」

 

 花戒さんが驚いたように魔法陣を解いて僕を詮索し始める―――せめて一人だけでもリタイアさせるッ!

 僕は『騎士』の速度を発動させ、そのまま全速力で僧侶二人を剣で一閃しようとした―――その時だったッ!!

 

「―――ごめんね、木場君」

 

 ―――突如、すぐそばの車の陰から現れた刀を持った会長の『騎士』、巡巴柄さんが日本刀を鞘から抜いた状態で奇襲をかけてきた。

 不味い……僕の反応が少し遅れた。

 刀は真っ直ぐ僕に振られる……これは余りやりたくなかったけど……もう迷っている暇ではない。

 まさか序盤でこれを見せるなんて…………失態だ。

 

「ソード・バース―――聖魔の剣鎧」

 

 ―――次の瞬間、僕の体の周りに次々と聖魔剣が包んでいく。

 それにより剣は僕の体を覆う剣の鎧となり、巡さんの刀は僕には届かず、僕から『騎士』の速度で離れていった。

 

「はぁ、はぁ…………エクスカリバー・フェイクと剣鎧を創るのは容易じゃないね」

 

 僕は二つの技をしたことで少し息が荒くなる。

 ……これは僕の新しい可能性だけど、代わりに少し燃費が悪い。

 イッセー君の神創始龍の具現武跡(クリティッド・フォースギア)と同様に、彼ほどではないが精神力を削り、体力も消耗してしまう。

 序盤戦でこの二つを見せるのは展開的にも体力的にもあまり良くない。

 ―――だけど、もう心配はなさそうだ。

 

「―――木場、ありがとう……行けるぞ!!」

 

 すると僕の後方には準備を終えたゼノヴィアの姿…………よし、これで数人のリタイアが決定した。

 悪いけど、これはもう避けることは出来ない。

 僕はゼノヴィアの宣言を聞いた瞬間、『騎士』の速度でその場を離脱した。

 副会長は鏡で警戒しているけど…………これはその次元ではない。

 

「木場の地中からの剣の出現を見て私は思った…………それは私でも出来るんだろうかと…………実際にはあんな芸当、今の私では瞬時では不可能だったが、な!!」

 

 ゼノヴィアのデュランダルから圧倒的な聖なる波動がオーラとして放たれ、更に地面に刺す聖魔剣も輝く。

 まるで右から左へ、聖なるオーラが移動するような感覚……電線の回路がゼノヴィア自身とすると、発電機がデュランダル、そして地面との接続器具が聖魔剣。

 そして次の瞬間、事態は急変した。

 

「―――アンダー・デュランダルッ!!」

 

 ―――地面から噴火のように放たれる聖なる斬撃!

 しかもそれは聖魔剣を通過していることから魔の力も混じっており、それはいくつかの支柱のように敵へと放たれる。

 

「り、リバー――」

「止めなさい!それはまだ―――」

 

『僧侶』の二人が何かを言い合う中で、次の次の瞬間……『僧侶』の二人は聖なるオーラの光の中に消えていく…………いや、恐らくは……

 

『ソーナ様の「僧侶」二名、リタイア』

 

 これはまともに当たれば普通の悪魔なら命を落とす……その前に強制的にリタイアさせられたのだろう。

 巡さんはあの攻撃をいとも簡単に避ける…………あれを避けるとは。

 

「…………桃と憐耶の仇は!!」

 

 副会長の神器である鏡はあっさりと粉々になる…………あれをまともに受け止めるのは至難の技だ。

 だけど少し可笑しい…………なぜ、聖なるオーラは止まっているんだ?

 そう思った時だった。

 

「追憶の鏡は…………破壊されたときに衝撃を倍にして相手に返します」

 

 ―――その瞬間、聖なる地中からの斬撃がゼノヴィアへと放たれたッ!!

 まずい、あれはもう追いつかない!!

 ソード・バースで剣による盾を―――ッ!?

 

「邪魔は、させないよ!!」

 

 ……巡さんは僕と刀をぶつけ、僕の集中の邪魔をする。

 そしてゼノヴィアは―――

 

『―――ゼノヴィア先輩ッ!!!!』

 

 ―――突如、現れたコウモリの群れによって守られた……ギャスパー君が……ゼノヴィアを守っている?

 でもダメだッ!!

 あれではギャスパー君が!!

 

「ぎ、ギャスパー……?」

 

 ゼノヴィアがコウモリの群れを見ながら、呆然とする。

 

『僕、は……序盤以外では使えません……だからゼノヴィア、先輩ッ!!僕の代わりに―――戦ってくださいぃ!!!』

 

 ……ギャスパー君はそう叫び、そして―――

 

「ギャスパァァァァァァァァ!!!!」

『……リアス様の「僧侶」、リタイア』

 

 ……ゼノヴィアとアナウンスの音声が同時に僕の耳に鳴り響いた。

 

『Side out:木場』

 

 ―・・・

『……リアス様の「僧侶」一名、リタイア』

 

 ……俺と小猫ちゃんが匙と仁村さんと交戦中、そのアナウンスが響く。

 ―――ギャスパーが、やられたのか。

 だけどその前に相手の僧侶が二人、リタイアしている……そのことから考えるとギャスパーの敗退はそこまで戦況を左右するものじゃない…………でもッ!

 俺は自分の心を落ち着かせる……確かにやり切れないけど、今は目の前の戦闘が一番だ。

 俺は両手の紅蓮と白銀の籠手を構え、少し傷がある二人と対峙した。

 

「はぁ、はぁ……やっぱり、イッセーは強いな……だけど負けねえ」

 

 ……この二人は何度殴り飛ばしても起き上ってくる。

 …………正直、怖いな。

 諦めない瞳、自分がダメージを負っても俺を殴る根性…………俺もある程度は傷が出来ている。

 小猫ちゃんも無事には見えるが、服の下は少し殴打による傷があるらしい。

 俺はツイン・ブースターシステムを使っているけど、いつも通りに戦えないからな。

 一撃一撃は弱いし、大きな力技は避けられる……かと言って速度を出し過ぎることも出来ない。

 この物が多いフィールドは俺にとっては最悪だッ!!

 

『Boost!!』『Boost!!』

 

 二重倍増は問題なく行われ、俺はかなりの倍増が溜まった。

 これはもう確実にここは仕留めた方が良い―――多少の物を破壊するのも覚悟しよう。

 俺は籠手を打ち鳴らし、足元に力を入れる。

 そして―――力を解き放った!!

 

『Twin Explosion!!!』

 

 二つの籠手の同時解放!!

 その力を全て力に送り、そして走り出す!!

 瞬時に俺は匙の前に到着し、そして拳を匙に放とうと―――

 

「―――へへ、悪いな、イッセー…………俺も本気なんだよ」

「ッ!?先輩、ダメです!!!」

 

 その時、匙は笑い、小猫ちゃんは俺に静止の声をかけた。

 だけど俺はそんなものお構いなしに匙に打撃をうち放つ!!

 その瞬間だった。

 

「―――反転(リバース)!!」

 

 ……突如、横の物陰から人影が姿を現し、そんな言葉を口にした。

 

 

 ――――――その瞬間、俺の力が一気に…………………………無くなった。

 

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