投下だ投下だ~
「うわぁぁぁぁぁぁぁ~~~---・・・」
俺は崖から落ちた。クロも俺のあまりの間抜けさに呆れてかすぐに行動できない様子。
クロが慌てて崖縁から覗き込んでいるのを見ながら俺は森の中へと消えていった。
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激痛にうなされ目を開ける。木々の天井に一ヶ所だけポッカリと空いた場所から光が差し込む。
「っつ 痛い いやマジで痛い・・・」
どうにか生きているようだ。左腕から激痛がしている。他の場所も所々痛いが小さな傷ばかりで出血も少ない。どうやら致命傷だけは避けることができたようだ。
「オボンの実でもなんでも回復できるものは・・・ まじ?」
どうやら背中に背負っていたリュックのおかげでこの程度の傷で済んでいるらしい。俺を救ってくれたリュックはどこにもなく見当たらない。周りに落ちているのは破けた地図と画面がブラックアウトしているポケモン図鑑。
「図鑑があるなら連絡取れるか?」
痛む体をどうにか動かし図鑑を手に取る。
「ダメか・・・」
どうにかつかないか弄ってみたが変化はない。壊れていても大事な物なのでポケットに入れておく。
「クロ、いやしのすずをしてくれなぃ・・・、クロ?」
クロに少しでも直してもらおうと話しかけたが周りにクロはいない。
「あ~、ほんとにヤベェな」
痛む体ではあまり動くことができない。連絡を取る手段はない。頼みの綱のクロとははぐれてしまった。周りは鬱蒼とした森。明らかに人の手が入っていない森だ。そう言った森は野生のポケモンが猛獣と同じぐらいに危険な対象になる。追い打ちをかけるように現在地は不明だ。地図は何の役にも立たない。
「つんだかなー」
現実味が無さ過ぎて軽ーく絶望しながら呟いた。
絶望感にしばらくボーッとしてしまったがどうにか切り替えた。
まずしなければならないことは安全の確保か?傷の治療が先だろうけど治療する手段が手元にない。薬学には詳しくないからオレンの実かオボンの実を探すのが早いかもしれない。この二つの木の実であれはどこでも育つからこの森の中にもあるはずだ。
まずは体力の回復をしないと何もできないか・・・。
「っ やっぱ左腕が痛いな 多分これ骨がいってるな さ、わった感じだと完全には折れてないか、な?」
あ~、痛い。こんな重症こっちの世界に来て初めてだ。
どうにか体を動かし木の陰になる場所に移動した。
「少しの間なら大丈夫かな? クロも来てくれるかもしれないし祈るしかないか・・・」
身体から力を抜くと緊張も切れてしまったのかそぐに寝てしまった。
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それからの日々は酷かった。
どうにか体力を回復しオレンの実を見つけたところまではよかったのだ。オレンの実を見つけて直面したのは怪我をした体では木の上に実っているそれを取ることが難しいことだ。
いつもであればクロがサイコキネシスで簡単に取ることができるのだがそれはできない。
俺は痛む体をどうにか動かし石や木の枝を投げ収穫した。投げる動作をするたびに激痛は走るし見当違いの方向に飛ぶし脂汗が酷いしと何もいいことがない。オレンの実を一つとるだけで体力をほとんど使ってしまった。
オレンの実を食べてある程度回復したが休む暇もなく次の問題に直面する。
木の実を食べに来るのは俺だけではないということだ。
ガサガサ
木に体を預けて座っていると後方から草木をかき分ける音がした。
慌てて振り向いた先にいたのは見たことのない生物。いや、この世界の生物なのだからポケモンなのだろう。
目の前にいるのは四つん這いに移動している人型の何か。黒子のような真っ黒な姿で頭部には大きな口はあるが目がない。人型なのになぜ四つん這いなのかと他の箇所も調べていくと両方の足の甲に頭部にあるはずの目がついていた。
「きゅげ?」
声を聴いた瞬間に言いようのない悪寒が這いよった。本能的にコイツがヤバいと言っている。寒気からしてもしかしたらゴーストタイプなのかもしれない。
すぐに踵を返し全力で逃走に移行する。
「きゅきゅきゅきゅっげっげげ~」
最悪なことに俺を追いかけているようだ。後ろを振り返ってみると・・・。
「きゅげげ!!」
陸上選手も思わずうなずいてしまうような綺麗なホームで全力疾走していた。
「さっきの四つん這いは何だったの!?」
痛む体に鞭打っての逃走劇はしばらくの間続いた。後方で何度か「きゅ!?」と声がしたときに後ろを振り向くと木に激突して目を回していた。もしかしてだけど、足に目があるから視界が悪いのかもしれない。
徐々に「きゅ!?」といった声も遠くなり聞こえなくなったころに休憩を入れた。俺はどうにか逃げ切れたようだ。
「クロがいればこんなことないのに・・・」
俺がクロに対してどれだけ頼りきりだったのか今になって理解させられる。クロがいなければ俺はこの世界で簡単に死んでしまう。できることが少なすぎる。不甲斐ない。
「もし、生き残れたらクロに今まで以上に優しくしよう」
それからも苦難の日々は続く。
水を飲もうと川に近づいたら野生のポケモン同士の戦闘に巻き込まれる。
まともに食事ができないため常に空腹。
常に警戒していなければならないためまともに寝ることができない。
木の実を取ろうにも野生のポケモンと遭遇するためなかなかとることができない。
少しでも腹を満たそうとそこら辺の草やキノコを食べて幻覚に悩まされる。
余りにも疲れすぎて気を抜くと例の足に目があるポケモンに遭遇する。
洞窟を見つけやっと休めると思ったらイシズマイやイワパレスの亜種?なのか背中に鍾乳石を背負ったポケモンに石をぶつけられ慌てて逃げ出す。
開けた花畑に出ると片足片腕のビブラーバ?の集団に出会いUターンして逃走。
沼に訪れればウパーに泥だらけにされラグラージのだくりゅうに巻き込まれて流される。
キレイハナに遭遇すれば ねむりごな を浴びてしまい放置される。
木の上で休んでいるとバチュルに悪戯され、しびれる。
ゲッコウガの集団に遭遇したときは気づかれないようにそっと逃げた。
イワークの移動に巻き込まれないように回避しアーボなどの毒タイプのポケモンには特に注意しケンタウロスに目をつけられた時は本気で死を覚悟した。
そんなサバイバル生活を一ヶ月も続けていると気がふれてくるというものだ。
少しでも腹を満たすためにキノコや雑草を食っているため幻覚が切れない。四角、三角、丸、アルファベット、カタカナ、記号なんかが空中を漂うように視界の中を動き回っている。
それらの記号を追い出すために俺は木の幹や地面、岩の表面に書き記していく。書けば書くほど視界に飛び交う図形は少なくなるが少し経つとまた増えている。自分が今どんな状態なのかも理解しないまま、感情がぐちゃぐちゃになり何かに追い立てられるように書き記していく。
最後には幻聴まで始まった。何かの怪物の声、身を切るような不快な鳴き声、何が何だか理解せずに気持ちが悪いからと走り回り、腹が減ったら手当たり次第に口に入れる。
幻聴まで極まったら次の幻覚が酷くなっていく。いないはずのものが見え、何も口に含んでいないの不味い味がし、汚臭が漂い始め、体中を何かが這いまわる錯覚を起こす。
時折、幻覚がスッと抜けたかと思うと体表の周りを漂うオーラのようなものが見えた。そのオーラは自身だけでなく植物、動物、ポケモンと生きているものなら誰彼問うことなく強弱はあれど漂っている。
幻覚を見ながらもそのオーラを無意識のうちに扱い、致命的な危機は脱していった。
幻覚にうなされ碌に眠れなかったが体力が尽きたのか糸が切れるように意識を失った。
「みゅ?みゅみゅみゅっwww」
何か生き物の鳴き声が聞こえる。重い瞼を開けるとぼやけた視界にはピンクの小さな何かがいるのがわかる。
「な、んだ?これ、も幻覚、か?」
「みゅ~?」
なんだかわからないが疲れたので重い瞼をそのまま閉じ眠りについた。
「クロ・・・」