投下だ投下だ~
クロは激怒した。
自分の主人の危機に対する対応の遅さに自分自身に対して激怒した。
気づいたとき、主人は既に森の中へ消えていくところだった。サイコキネシスの射程圏外であり救出に間に合わない。
この状況の中で自身が何もできないことを理解してしまい。主人が落ちていく様子をただ見ているしかできなかった。
ブラッキーであるクロは切り替える。主人は背中を下にして落ちていった。であれば落下の衝撃は樹木の枝を折る衝撃も合わさって即死は免れるかもしれない。
私がここから飛び降りても多少の負傷はあれど致命傷はなく着地できるはずだ。自身の体の頑丈さには他のポケモンよりも自信があるのだから。
クロは主人を追いかけるためにすぐさま飛び降りた。
ここで想定外のことが起こる。主人が落下している時にはなかった強風に煽られ主人と違う場所に飛ばされてしまった。
ブラッキーの高さは1.0m。重さは27.0㎏。人の子供程度の重さ身長しかない。
ブラッキーは悪タイプの単タイプ。悲しいかな、飛行タイプは持ち合わせていないため必死の制御も虚しく主人とは違う場所に落ちることとなった。
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何度も枝を圧し折り、姿勢をどうにか制御して足を下側に持っていき着地する。
風に煽られたときに空中を錐もみしながら飛ばされてしまったため主人のいる方向が分からない。
クロは想定外の状況に焦燥に駆られる。
ついさっきまで他愛もないことを話しながら歩いていたというのに今の状況は何なのだろう?さっき考えたように主人は非常に危険な状況のはずだ。早く駆け付けねばならない。早くしなければ!
クロの性格はずぶといだ。少々のことではビクビクすることなく、どんな状況でも主人の言葉に従いポケモンバトルを繰り広げる。普段も主人の構い方が少しうざく感じることもあるが気にしていない。
そんなクロでもこの状況は焦りを隠せない様子。主人が今にでもいなくなってしまうのではないかと悪い方向に考えが進んでしまい返って今まで以上に体力を消耗してしまっている。
鼻で探そうにも匂いのキツイ植物が自生しているようで鼻が利かない。味覚も何やら苦みを感じるためここの空気は正常ではないのだろう。
クロはあまり長居するべきではないと判断を下した。主人と合流するために鬱蒼とした森の中を駆け回る。
どれだけ探しても主人は見つからない。
道中で見つけた木の実を齧りながら主人を探し回った。
黒い人型のポケモンはイカサマで吹き飛ばした。
クロにとって夜が自分のフィールドだ。仮眠もそこそこに主人を探し回った。
遭遇した野生のポケモンは敵対したものだけ吹き飛ばす。
洞窟の中には敵対するポケモンしかいなかったのでバークアウトを放ち次へ移動した。
黒い奴がうざい。とっておきを使ったが当たらなかった。どうやら、ゴーストタイプらしい。イカサマで吹き飛した。
沼地は住んでいたポケモンに話を聞くといないそうなので次に移動した。
花畑には同じような左右対称のポケモンしかいなかったので次へ移動した。
この森は思っていたよりも毒タイプのポケモンが多い。主人は大丈夫なのだろうか?
友好的なポケモンに話を聞いてみたがそれらしい情報は手に入らない。
同じような青い姿の集団に遭遇した。私が縄張りに入ると水を投げてきたのでたぶん水タイプだろう。主人の手掛かりになる情報が何もないことにイライラし八つ当たりだとわかっているが戦闘を開始した。
水の手裏剣はそこまでダメージにならないが数が問題だ。 バークアウト を放ちダメージのついでに特攻と特坊を下げさせる。
黒に紫色の混ざった衝撃があたりにばらバラ撒かれる。相手は バークアウト のあまりの音量に驚いているようだ。この技は ハイパーボイス の叫び方を応用しているからそれ相応の音量になるのだろう。
このままでは不利と思ったのか焦った何匹かが突っ込んでくる。
その行動は私にとって悪手だ。相手の近接攻撃を イカサマ で絡めとってやりどくどくを浴びせながら投げ飛ばす。
今の私は気が立っているんだ。私の体に触れただけでも毒に侵されるぞ?
仲間が一瞬で投げ飛ばされたことに理解が追い付かないのか相手の動きが止まった。
私はその間に ふるいたてる や つぶらなひとみ を適当なやつに放つ。運がいいことに相手が雌だったのかメロメロ状態になった。
数匹が集まって協力しハイドロポンプを放ってきた。これは流石に直撃するのは威力が高いので まもる を発動した。水煙で見えない内に つきのひかり を発動して体力を回復しておく。これで七つ目の技の解禁だ。
渾身の技だったのか。無傷で立っている私を見て相手は茫然としている。
突っ立っていていいのか?とっておきだ。喜んで受け取ってくれ。
私が とっておき を発動すると一瞬にして蹴りがついた。水草の生い茂るこの場所には私以外立っている者がいない。どうやら みきり や まもる といった技を使えるものはいなかったようだ。それとも使う暇もなかったのだろうか?
八つ当たりだったが気分が少し軽くなった。それにしてもなぜ彼らは逃走を選択しなかったのだろう?
「っ!?」
強大な何かが私の後ろに突然現れた。
『あなたは何でそんなにイライラしているの?』いるの?』
テレパシーか?エコーしたように二重に聞こえてくる。振り向くと二体のポケモンがいた。いや、二体で一体のポケモンなのだろう。視覚では二体いるように見えるが気配は一体分しかない。
『質問には答えてくれないの?』ないの?』
(これはすまない 私はこの森の中で主人を探しているのだが見つからなくてね 手がかりがなさ過ぎてイライラしていたんだ)
『それはたいへんね~』ね~』
そのポケモンは何やら思案する様子で黙り込んでしまった。それにいても不思議なポケモンだ土と水を泥にならないように分離したまま流体の体を持っている。それらを覆うように植物の蔦や木の枝、根、葉、花で覆われている。何タイプなのだろう?水草?水地面?水岩だろうか?
『・・・ここら辺にはいないみたいなの~』なの~』
(私は特徴を話していないのだが分かったのか?)
『記憶を少し覗かせてもらったの 人間さんでしょ?』でしょ?』
記憶を覗ける?エスパータイプの可能性もあるのか?
(ああ、私の主人は人間だ 協力感謝する 私が倒してしまったこの者たちはどうしたらいいだろう?)
『問題ないの 私たちにまかせて』まかせて』
そう言うと光る何かを倒れているポケモン達に振りまいていく。その光に触れたポケモンは忽ち傷が癒え静かな寝息を立て始めた。
(これはすごいな 治療感謝する)
『これぐらいどうってことないの~』ないの~』
(この場を荒らしてすまなかったな それではまたいつか)
『バイバーイ』バイバーイ』
私は謝罪しその場を離れた。初めに感じた力は過去にも感じたことのあるものだ。彼女たちはおそらく準伝説に位置する方々だ。この地方のバランスを取っている存在なのだろう。
私は彼女らに勝てるだろうか?過去の戦いの様に交互に技を出し合い避けないなんてことは今ではあり得ない。私の素早さではそもそも追い付けないかもしれない。私の攻撃力ではダメージを与えられないかもしれない。
だが、私の頑丈さは折り紙付きだ。決して彼女らに劣るものではないだろう。対峙してそう確信できた。
思わぬ出会いがあったが収穫もあった。捜索範囲を広げて、もっと森の奥を探すことにする。
主人の捜索は手がかりも掴めぬまま長い月日が経過してしまった。
ここまで月日が流れてしまっては生存は絶望的かもしれない。主人がこの世にいないと仮定しただけで私の膝は崩れ落ちてしまった。
いや、今日このときまで碌に休まずに探し続けたことで限界が来ていたのだろう。最後の止めとして気持ちが折れてしまったことで地面に横たわってしまった。
「ぶらぁっきぃ・・・」
流石に疲れた。少し寝よう。
いつかの温かい日と違う眠りにつこうと瞼を閉じたとき視界の端にピンクの浮遊する者が見えた気がした。
「みゅぅ~」
ブラッキーは♂です